つまりは、これもたとえ話なのだ。
 その後分かったのだが、なんと、ガラスは常温で液体なのだそうだ。

 非常にややこしいのだが、結晶構造を持たないが故に固体にはなり得ないのだそうで、冷えて固まっているのは、流体としての性質を失って固まっているだけで、凝固、つまり固体化しているわけではないそうな。
 
 文系の鷹羽は未だに理解しきれていないので、少々伝わりにくいかもしれないが、要するに、ガラスは無茶苦茶濃度の高いゲル状物質で、触ってもびくともしないくらい硬い状態だと思えばいいらしい。
 なんでも、地球上で存在しうる温度域内では凝固も気化もしないというもの凄く特殊な性質を持っているのだそうで、「パリン」と割れても液体なのだ。

 どうにも想像しづらいことと思うので、分かりやすい例にすると、水飴の強烈な奴だと思えばいいかもしれない。
 冷えた水飴は、指で押しても凹まないが、それでも完全に固まっているわけではないし、ちょっと暖めてやると軟らかくなる。
 ガラスは、それと同じようなことが、もっととんでもないレベルで起きているらしい。

 ガラスは、400度前後くらいから、触ると変形する程度に柔らかくなるのだが、常温のどう見ても固形物の状態でも、液体のままであり、それこそ何百年も経てば、重力に引かれて変形してしまうのだそうだ。
 なんでも、数百年前の建物の窓ガラスは、上と下で厚みが違っているのだとか。
 今回のビー玉も、何千年も経つとおはじきみたいに潰れてしまうわけだ。
 対流する速度よりも熱伝導の方が早いから、海の水みたいに対流はしないのだろうけれど、小学生に流体の性質云々を言っても始まらないから、簡単な例を挙げただけなんだろう。
 
 つまり、未来は嘘を言ってはいなかったわけだ。


 というわけで、未来の名誉のためにも間違いは正しておかなければならないので、ここで説明する次第です。
 ただ、掲載時点までに鷹羽が調べた範囲内では、“ガラスは常温ではどうやっても変形しない”という情報しか得られなかったのは事実ですし、放送当時の鷹羽の感想はその情報に基づいて生まれたものでもあるので、原文はそのまま残しておくことにします。
 
 まぁ、長い時間掛けて潰れていくだけというガラスの運命を考えると、年老いて死んでしまうという人間の運命に繋がるものがあるから、未来の寂しそうな目は当たり前なのかもしれませんね。

 というわけで、以下の文章はそのまま生かしておきます。