ボロボロになって倒れているレイズナー


 ちょっと分かりにくいので、ストーリーを簡単に説明しておこう。

 『レイズナー』は、宇宙進出を始めた地球人を、宇宙に害なす野蛮人として制圧にやってきたグラドス人と、それを止めるためにやってきたエイジの戦いを描いた近未来SFロボットアニメ(1985年放送で、舞台は1996年)だ。
 エイジは地球人の父とグラドス人の母を持つ混血児で、グラドスの地球侵攻を阻止するためにやってきたが、彼の乗るレイズナーは、絶体絶命のピンチになると蒼い光をまとって勝手に戦い始める上に、いつもより性能が上がるという不思議な現象を度々起こしていた。
 実はレイズナーには、メインコンピュータのほかに特殊なコンピュータ:フォロンが内蔵されていて、フォロンは、地球とグラドスに和平をもたらす情報を隠し持っているため、自己防衛の手段としてブーストアップシステム:V-MAXを使用していたのだ。
 現在のグラドス人は、遥か昔、種の限界を迎えた先住グラドス人によって地球からさらわれた人間の子孫であり、そのことはグラドス創世の秘密と呼ばれてトップシークレットとされていたのだ。
 エイジは、フォロンとの対話によってそのことを知り、地球攻略軍総司令グレスコと和平交渉を始めるが、結局総攻撃が始まってしまい、地球を守るためにレイズナーがグラドス艦隊に突っ込んでいって終わる。

 プラモデルの販売が好調だったため、番組は延長されることになり、この最終回は第1部最終回ということになった。

 第2部は、グラドス人に支配された地球を舞台に、レジスタンスとして戦うエイジ達の戦いが描かれ、支配軍司令官であるグレスコの息子ル・カインとエイジの対決と、「クスコの聖女」と呼ばれる女(実はエイジの姉ジュリア)を主軸に話が進み、やがて、地球には、先住グラドス人がいつか地球とグラドスの間に争いが起きたときにそれを回避する手段として残した遺産(グラドスの刻印)があること、ジュリアが身につけているペンダントがそれに関係していることが明かされる。
 こうした中、グレスコはジュリアを誘拐させ、ル・カインの乗るザカールがレイズナーを叩きのめすと、配下をエイジ抹殺・レイズナー破壊のために派遣する。
 エイジは、オーバーヒートして動かないレイズナーのコックピットから、ジュリアをさらってまで秘密を守りたいかとル・カインをなじる。
 そして、グラドス創世の秘密を知らなかったル・カインは、エイジの口から秘密を聞くために刺客の前に立ちはだかり、「手を出せば、死ぬものと思え!」と叫んで翌週に引いている。

 ところが、ここまで制作が進んだ後で、第2部になってからのプラモデル販売不振の影響により打ち切りが決定してしまった。
 今更37話の内容を変えたら、完成が放送日に間に合わなくなってしまう。
 そのため、その翌週である最終回で、本来数話をかけるはずの物語のラスト部分だけを凝縮してしまった。
 最終回では、グラドスの刻印の力で地球周辺の空間を歪ませることで、グラドス軍のワープを使えなくし、両者の行き来を不能にするという作戦が進行している。
 冒頭のナレーションでグレスコが急死したことなどが語られるものの、あまりに唐突な話の展開に、何があったか全く分からないということになってしまった。

 
 その後、関連商品の売れ行きはともかく番組自体の人気は高かったことから総集編ビデオが発売されることになり、第1部総集編『エイジ1996』、第2部総集編『ル・カイン1999』に続いて、この尻切れトンボな最終回をフォローするためのオリジナル最終回『刻印2000』が作成された。

 これは、最近で言うと、例の主人公逮捕事件のせいで放送された『ウルトラマンコスモス』の『特別総集編』のようなものだ。
 その中では、中破したレイズナーからレイズナーMkUへのフォロン移植、自分が野蛮人と思っていた地球人と同じ人種と知ってプライドを傷つけられて暴走を始めたル・カインによる父殺害と、ジュリアの脱出劇、刻印の発動という物語が展開する。
 だが、中破したレイズナーの奇跡の脱出劇については、遂に語られることはなかった。
 全てを解決するためのビデオの中でさえ解決されなかった希有な例と言えよう。
 当時のアニメ誌によると、ザカールはV-MAXを使いっぱなしで父の部下と押し問答をしていたためにエネルギー切れを起こし、その間に強制冷却の終了したレイズナーがV-MAXで一目散に逃げ出したので誰も追いつけなかった、ということだったらしい。



レイ、V-MAX発動! Ready!