悪役不在の戦い



  鷹羽なりに『アギト』での戦いをもう1度見つめ直すと、要するにこういうことになる。

 遙かな過去、光の青年と闇の青年が戦っていた。
 場所はこの地球上ではなく、平行世界なり異次元なりだったようだが、そこはこの地球に影響を与えることができる場所だったようだ。
 2人は生物ではなく、相反する2つの力の象徴だったが、光の青年は闇の青年に敗れてしまう。
 光の青年は、消滅の前に自分の力を分散させ、闇の青年が生みだした生物:人間に与えた。
 これによって人間は、遙かな未来に、闇の青年が作ろうとしていたものとは別種の生物:アギトに変わることになる。

 そして1999年3月、遂にアギト化した人間が発生した。
 その人間:沢木雪菜は、力の暴走と人ならざる者への変化に絶望して自殺し、その恋人だった津上翔一(通称:沢木哲也)は雪菜を救えなかったことを苦に後追い自殺した。
 闇の青年は、津上翔一が“アギトを殺した”と評価し、津上を“人間の側からアギトを滅ぼす者”として復活させた。
 そして、雪菜の弟:沢木哲也は、姉の死の真相を探るため、姉の遺品にあった手紙の宛先:津上翔一を訪ねるべくあかつき号に乗るが、いずれアギト化する哲也を殺すため、水のエルがやって来た。
 そして、そうなることを見越していた光の青年は、最後の力を振り絞って哲也の前に現れ、哲也の中のアギトを一気に覚醒させるが、覚醒したばかりのアギトは水のエルに破れ、海に没してしまった。
 また、このとき近くにいたあかつき号の乗客達は、アギトを覚醒させる光の余波を浴びたため、近い将来アギトの力が覚醒する運命にあった。
 そのことに気付いた水のエルは、アギト化する前の人間には手を出すわけにいかないので、関谷真澄の体内に潜り込んで彼らを監視することにする。

 約2週間後、岸に流れ着いた哲也は記憶を失っており、持っていた封筒の宛名から「津上翔一」と名乗ることになって、やがて美杉教授の家に引き取られた。

 2001年1月ころ、再びアギト覚醒の兆候を見せる人間が現れたため、ヒョウ怪人3体が派遣されるが、アギトによって撃破され、以後、G3、ギルスらを交えながら、闇の青年の使者(アンノウン)とアギトの戦いは続く。

 闇の青年は、アギトに覚醒しつつある者(三浦智子)を自らの手で殺してみるが、自分が生みだした“人間”を殺すことによる精神的ダメージは予想以上に大きく、直接手を下すことはできないと悟り、怪人による殺人を続けさせることになる。


 そうこうするうち、あかつき号の乗客の中からもアギトに覚醒した者が現れ、水のエルまでも倒されてしまった。
 そこで闇の青年はアギト化する人間抹殺は怪人に任せ、アギトに覚醒した者は自らがアギトの力を奪い取るという方策を採ることにして、覚醒したアギト全員の力を奪うことに成功した。
 ところが、アギトの力は元々闇の青年の力とは相反する力であるため、吸収した力を御しきれない。
 仕方なく戻るべき器:沢木哲也(通称:津上翔一)達を殺すことにした闇の青年は、アギトの力を失った者(哲也)とアギト化する恐れのない者(氷川)の連携、つまり全くの人間によって顔を殴られるというハプニングに驚愕し、アギトの力を持たない人間も自分の予定していた生物と違ってしまっていることに気付く。

 そこで闇の青年は、人間全部を滅ぼして作り直すことを決意し、蠍座の人間にドッペルゲンガーを見せて自殺させるという方式で人間を殺し始めた。
 その一方で、地のエルにアギト化しそうな人間を殺すよう命じてもいた。
 そして、遂に地のエルと風のエルをも失い、自分の光球にまでアギトのキックを食らった闇の青年は、離反した使徒である津上翔一(通称:沢木哲也)の前に現れ、津上の言葉から、人間とアギトが共存できるかどうかを見守ることにして一旦姿を消すことにした。


 いくらか本編では説明不足だった部分や矛盾する部分(日付など)もあるが、これが『アギト』での戦いの概要だ。




俺のために、アギトのために、そして人間のために!