仮面ライダーアギト研究室

 え〜っと、一部で研究室の復活を求める声もあったし、リクエストも若干あったので、この度『仮面ライダーアギト研究室』を開設する運びとなりました。
 で、第1回は、
あかつき号事件とアンノウン

ということでやってみようと思います。
 
 様々な謎をはらんだ『仮面ライダーアギト』の中でも、1クールラストの求心力となっている『あかつき号事件』。
 3人のライダーそれぞれがこの事件を軸に繋がりつつあるし、3人とも何らかの形でこの事件と関わっているようだ。
 一応おさらいしておくと、この『あかつき号事件』というのは
 半年ほど前(2000年8月ころ?)、瀬戸内海を航行中のフェリーボート『あかつき号』が暴風雨で遭難し、それをたまたま目撃した香川県警の制服警官(当時)氷川誠がたった1人であかつき号まで泳ぎ着き、行方不明者1名の犠牲で事なきを得た

という事件だ。
 この時、海上保安庁の巡視艇は、あかつき号からの救難信号をキャッチしていながら、なんら行動を起こしていない。
 この理由として
 実はこの時、海上保安庁の巡視艇は、保安庁幹部の幼なじみである警視庁の警視正を迎えに行っており、あかつき号の救助信号を無視してしまった

らしいということになっているのだが、氷川は
 当時、海上は怖いくらいの快晴で、どういうわけかあかつき号の周囲が光に包まれ、その範囲だけが暴風雨に見舞われていた

ことを目撃しており
 海上保安庁では、救難信号をキャッチしたものの、信じないで無視した

のではないかと考えている。
 氷川の記憶によれば、あかつき号だけが嵐に覆われているという雰囲気であり、正にアンノウンの殺人同様、不可能犯罪的状況だったようだ。
 
 いずれにせよ、氷川は、この時あかつき号に乗り込んで乗客を救助した実績を評価されてG3装着員として抜擢され、今日に至っている。
 恐らくは、緊急事態における行動力・判断力・体力・精神力を高く評価されたのだろう。
 
 氷川ほど直接的ではないが、ギルス=葦原涼もこの事件の影響を受けている。
 涼の父は、この時あかつき号に乗船しており、救助された直後に失踪している。
 彼がどうして、何のために失踪したのかは分からないが、その遺品である手帳には、数人のアドレスが記載されていた。
 そのアドレスの中には、アギト=津上翔一の過去を知っていたらしい三浦智子や、その友人である篠原佐恵子の名前もあった。
 三浦智子は、翔一と会うことを目上の何者かに連絡しているし、篠原佐恵子は、涼の父の手帳を見て顔色を変えている。
 あかつき号事件と何らかの関係があると見て間違いないだろう。
 
 さて、あかつき号事件が意味するものは何なのだろう。
 まず重要なのは、どうしてあかつき号だけが暴風雨に見舞われたのかだ。
 考えられるのパターンは4つ。
   1 たまたま暴風雨が巻き起こっている(これから起こる)水域にあかつき号が入ってしまった。
   2 暴風雨圏が移動しているルート上にあかつき号がいた
   3 あかつき号を中心として暴風雨が起きた
   4 暴風雨圏があかつき号を飲み込もうと追い掛けてきた
 このうち、1と2は偶然あかつき号が飲み込まれたという偶然説と言えるし、3と4はあかつき号標的説と言えるだろう。
 いずれにせよ、暴風雨が何らかの超常現象であったことは疑いようがない。
 
 そこで、次に浮かぶ疑問は“氷川はどうやってあかつき号を救い出したのか”だ。
 何らかの力によって引き起こされている暴風雨で、しかもプロの操舵士がいてもどうにもならなかったような状況を、どうして船に関して素人の氷川が打開できたのだろうか。
 あの超絶不器用な氷川が、プロ顔負けの操舵技術をもって脱出したとは考えにくい。
 となれば、何らかの理由で暴風雨圏の方があかつき号から離れたと考えるのが筋だろう。
 2の場合なら問題ない。
 氷川が何とかしようと努力している間に、暴風雨圏が勝手に離れていってしまう。
 1の場合も同様に、何とか自力で圏内から脱出できそうだ。
 だが、3と4の場合はそうはいかない。
 暴風雨があかつき号を狙っている以上、それを生み出している元凶をどうにかしない限りは絶対に脱出できないからだ。
 ここにあかつき号事件の謎がある。
 
 ここでちょっと目先を変えて、アンノウンの目的といったものを考えてみよう。
 アンノウン…公式設定によると超越生命体なる存在らしい。
 その名称は、主にデザイン元となった生物の学名から取られており、例の遺伝子モデルの存在とあいまって、生物の存在の根源といったものがテーマなのではないかと考えさせられる。 
 現在までのところ、怪人に殺された人達のパターンとして、誰か1人が殺された後、その家族が狙われるという展開を見せる。
 アンノウンとの関係がイマイチはっきりしない謎の青年が殺した三浦智子だけは母親が狙われなかったが、あとは襲ったアンノウンが死なない限り、一度は家族も狙われている。
 もう少し正確に言うと、『家族』ではなく『血縁者』が狙われるのだ。
 これについて、氷川の推察どおり“超能力者が狙われる”のだとすると、“超能力を持つ人間を生み出す恐れのある遺伝子を持つ者”を殺そうとしている可能性が高い。
 というのは、最初の被害者である佐伯一家の場合、両親揃って殺されているからだ。
 夫婦間に血縁関係があった可能性は低いから、本来彼ら夫婦が狙われる理由はないが、子供が超能力者であるため、両親のどちらが超能力者の遺伝子を持っているのか分からないから両方とも殺された、またはその2人の間には超能力者が産まれる組み合わせだったと考えられる。
 鷹羽は後者ではないかと思っている。
 この点で、佐伯安江を殺したのは、例の写真を氷川に見せようとしたからだという意見が出てきそうだが、それにしては氷川に対する攻撃が緩すぎる。
 2話では、関口姉を守ろうとしただけの北條が木の中に入れられそうになっていたというのに、氷川は単に締め上げられただけで終わっているからだ。
 安江が殺されたのが、氷川に写真を渡す=アンノウンの目的を教えようとしたことだとするなら、写真を手にすることができた時点で、氷川も殺害対象にならなければおかしい。
 もっとも、安江が写真以上に有力な情報を持っていたと仮定するならばそれはアリなのだが。
 
 そんなわけで、狙われた人達全員が超能力者なのかどうかは分からないが、今のところ血縁者が狙われていることから、その可能性が高い。
 つまり、怪人が狙う相手や殺し方には、一定の基準があると考えられるのだ。
 三浦智子は例外的に親が狙われていないが、怪人によって殺されたわけではない。
 謎の青年は、智子の母を殺そうと思えば十分できるのに、どういうわけかそれをせずに警察に捕まったままだ。
 青年の能力なら、ギルスの前から消えたように、留置場からでも病院からでも自由に抜け出せるはずだ。
 それをしないのには理由があるはずなのだ。
 
 話をあかつき号に戻そう。
 あかつき号を襲った暴風雨が何らかの意志に基づくものだとすると、先ほどの3、4の可能性が高い。
 3の場合、あかつき号の中に暴風雨を起こす原因となる“何か”が存在したと考えられるし、4なら暴風雨を起こす能力を持った何者かが、あかつき号の中の“何か”を追っていたと考えられるからだ。
 
 では、3だったとして、“何か”とは何だろう。
 まず、超常能力を持つ者が1か所に集まったことで、一種の特異点が発生して暴風雨を生み出したという可能性が考えられる。
 この場合、氷川という“ただの人”が混入したことで、特異点のバランスが崩れて暴風雨が消滅することもありうるだろう。
 だが、それだけのことだろうか。
 あかつき号の乗客には行方不明者が1名出ている。
 その1人が目的だったとしたらどうだろう。
 その人物、もしくはその人物が持っている“何か”を追い求める何者かが暴風雨の元凶だとしたら…。
 その人物が海に飛び込む、もしくは落ちることで、暴風雨はあかつき号から離れてしまうことになる。
 3の場合にしろ4の場合にしろ、暴風雨の狙いが行方不明になった人物(が持っている何か)ならば、この考え方で説明がつくのだ。
 そして、その人物はアギト=翔一である可能性が高い。
 
 そもそも、どうして翔一はアギトになったのだろう?
 変身の秘密があのベルトにあることはまず間違いないが、翔一はどこであのベルトを手に入れたのか。
 翔一が美杉家に転がり込んだ詳しい経緯は分からないが、少なくとも発見された時に記憶喪失だったのは確かだから、病院で精密検査を受けたり、身元を調べるために身体的特徴を調べたりしているはずだ。
 もし、翔一のベルトがクウガ同様に体内収納タイプだったら、精密検査で見付かるだろう。
 見付からなかったということは、通常のレントゲンやMRIでは発見できないようなタイプの収納をされているか、完全に翔一の身体の一部なのかのどちらかだと考えられる。
 つまり、普段は異世界にあって変身時に召還されるとか、細胞の中に溶け込んでいるパーツが現出するとかいった方式だ。
 前者は『強殖装甲ガイバー』に、後者は『仮面ライダーBLACK』に近い方式ということになるだろうか。
 いずれにせよ、翔一がホムンクルス(人工人間)か人間外生物でない限りは、後天的にベルトを入手しているはずなのだ。
 そして、謎の青年が涼がギルスに変身するのを見て
   アギト…いや、ギルスか。珍しいな
とつぶやいている。
 これは、アギトやギルスへの変身は翔一・涼だけのものではないということを意味している。
 少なくともギルスは同時に複数存在しうるのだろう。
 
 ところで、アンノウンはどうして最近になってから現れたのだろうか。
 超能力を持つ者は、きっと以前からいたはずだ。
 それなのに、アンノウンが出現したのは、3ヶ月くらい前にすぎない。
 こういった怪物が出現するには、普通は何らかの原因があるものだが、それは何だったのだろう?
 そこで1つ考えてもらいたい。
 真魚の父:風谷伸幸は、どうして、誰に殺されたのか。
 もし教授を殺したのがアンノウンだとしたら、一体どうしてなのか。
 風谷教授の死は、未確認生命体が滅んだ少し後の1998年3月10日で、ごく普通の殺人事件として扱われているようだ。
 だが、氷川が感じたとおり、その死因はアンノウンが行う不可能犯罪系のものとしか思えない。
 そして、風谷教授は伝説や神話の研究者だ。
 彼が研究の過程でアンノウンに関する何かに行き着いたということは考えられないだろうか。
 篠原数樹が語った“湖の底の超古代遺跡の伝説”は嘘だったが、それは“あの湖にはない”ということであって、伝説そのものが嘘だということではない。
 どこか別の湖の底に眠っている可能性は高いはずだ。
 アンノウンが恐れているのが、“その遺跡を発見されること”であるとしたら、そこに近付く者に襲い掛かるだろうことは想像に難くない。
 そして、もう1つ。
 真魚が超能力を持っているということは、父である風谷教授にもその素質があった可能性が高い。
 風谷教授が遺跡の謎に近付いたことが殺された原因だったとして、それが彼の素質ゆえだったとしたら…。
 アンノウンは、超能力を持つ者が“遺跡の眠る湖”に近付きやすいことを恐れているのではないだろうか。
 では、それは何故なのか。
 そこにはアギトをも凌ぐ何かがあるからだ。
 少なくともアンノウンはアギトを恐れているわけではない。
 既にアギトは存在しているのだから、アギトの誕生阻止という目的は今更用をなさない。
 だが、アギトがまだ覚醒しきっていないのなら話は別だ。
 完全に覚醒するようなことになっては困る。
 アギトのストームフォームやフレイムフォームは、それぞれ左半身、右半身だけが変化する。
 実に中途半端な変身だが、これが覚醒前だからだとすると説明が付く。
 完全に青や赤に変身できれば、遙かに強力になるのかもしれない。
 そのために何かが必要なら、その何かを渡さなければいい。
 それが遺跡に眠っているのなら、遺跡に繋がる道標を全てなくさなければならない。
 それがアンノウンの目的なのではないだろうか。
 アギト自体はそれほどの脅威にならず、しかもいくらでも現れる程度の存在だから潰しにかからず、アギト以上の何かを導くことのできる存在を消しているのだ。
 “アギト”とは、1話のレビューで書いた“アルファにしてオメガ”という意味のほかにも、ラテン語で“目覚める”という意味を持っている。
 つまり、“何かに目覚める者”だ。
 だが、もしこれが“目覚めさせる者”だったら?
 
 再びあかつき号の話に戻る。
 あかつき号を襲ったのはアンノウンなのだろうか。
 結論から言って、鷹羽は違うと思う。
 アギトもギルスも光を放ちながら変身する。
 そして、あかつき号を襲った暴風雨も、海からのまばゆい光に包まれた空間の中だった。
 それは、アギト誕生の瞬間だったのではないだろうか。
 あかつき号を襲った暴風雨は、風谷教授が発見し、教授が死んだときに翔一が預かった何かを求めていたのではないだろうか。
 ノアの方舟に乗り、人類が生き延びる希望を託されたのが翔一、すなわちアギトなのではないか。
 暴風雨の中で、多分アギトの紋章が何らかの形で表れる。
 その時に、佐恵子が現実逃避したくなるほどの脅威があって、つまり翔一が力を受け継ぐための儀式とも言うべき奇蹟があって、翔一が海に消えた後、暴風雨がやむ。
 適格者でなかったほかの乗客は、あかつき号の中に取り残される。
 その時何が起こったのかを知ろうとした人間達が、涼の父であり、三浦智子なのではないだろうか。
 
 涼の父は、その時に海に消えたのが誰かを知りたくて、乗船名簿を写して1人1人当たっているうちに力尽きた。
 そして三浦智子は、沢木哲也と連絡を取りながら、船から消えた誰か=アギトとなった男と接触をしようとする。
 翔一が持っていた住所も書いていない封筒は、翔一が記憶を失う前に本当の津上翔一に渡そうとしていた物なのではないだろうか。
 風谷教授が本当の津上翔一にあてて渡そうとした遺跡に関する何かが入っていて、今の翔一がそれを何らかの形で受け継ぎ、それ故にアギトになった。
 今のところ、鷹羽はそう考えている。

 このほかにも、色々と謎は多いのだが、それはまた次回の機会に。

……平成13年4月27日現在



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