仮面ライダークウガ研究室(第4回)
はい、今回は予告どおり
変身の謎
について。
クウガの変身のメカニズムは、現在のところ桜子も把握していない。
実際あのベルトが、いつ誰に作られた物なのかも判らないくらいで、本編中での扱いを見ても、相当神聖な物として描かれている。
アマダムが雄介の体に作用し、その神経・筋肉等を強化していることは間違いない。
MRIの断層写真で見るとおり、雄介の体の中には、アマダムから伸びていった神経状のものが雄介の体組織と融合しており、これによる何らかの作用によって強化されていることは間違いない。
この意味では、雄介は手術等の形式によらない改造人間と言える。
雄介が生身の状態で、サイ種怪人(ズ・ザイン・ダ)に散々ド突かれたにもかかわらず平気な顔をしていたのは、ひとえに強化された身体のお陰だ。
クウガに変身することで、その強化度合いは更に飛躍的に上昇する。
強化服でもない、純粋な意味での改造人間でもない雄介が、どうして外見すら変わるほどの変化を遂げるのか。
少し考えてみよう。
同じアマダムを持つ『天の使い』ゴウラムは、経年劣化した自らの身体を再生するために、周囲の金属を吸収した。
そして、ヤドカリ種怪人(メ・ギャリド・ギ)を倒すために力を使ったため、再び身体を維持できなくなってしまった。
これは、先の攻撃時に力を放出しすぎた結果と思われる。
そしてそのまま、雄介のアマダムから力を受けて復活するまで、石くれに戻っていた。
ということは、アマダムが消耗すると、変化を維持できなくなるということだろう。
その後も、雄介が変身するたびにゴウラムのアマダムも輝くという現象が起きている。
これは、何らかの形で雄介のアマダムと同調し、そこからエネルギーが送り込まれているからだと考えられる。
雄介の身体も同じようにアマダムの力で変化するのだとしたら、変身している間中、アマダムがエネルギーを消耗し続けているはずだ。
事実、初めて緑に変身した時アマダムはその力を消耗しすぎて輝きを失い、その後2時間以上にわたって変身不能の状態が続いたではないか。
必要なくなると変身が解除されるのは、不要なエネルギー消費を極力抑えるためなのだ。
アマダムは恐らく普段から雄介の生体エネルギーを少しずつ吸収してエネルギーを蓄積し、変身の際に放出するのだろう。
勿論、変身中は消費する方が多くなるから、余計に雄介の生体エネルギーを吸収することになるはずだ。
だから雄介は激しい戦いの後、疲れ切ってしまうのだ。
ただし、変換率が恐ろしく高効率だろうから、赤などでは消費エネルギーがさほど多くなく、EPISODE17のように何時間も戦っていても保つのだ。
ハチ種怪人(メ・バヂス・バ)を倒した後も、僅か50秒間の変身で、特に身体を動かしたわけでもないのに「くたびれたぁ」と疲労しきっていた。
あれは、ようやく変身可能に回復したばかりで、特にエネルギー消耗の激しい緑になったものだから、変身を維持するために生体エネルギーをごっそり持って行かれたからだろう。
だとすると、EPISODE23で桜子が「いつか空っぽになっちゃって五代君が死んじゃう」ことを心配していたことも納得できる。
桜子は、システムをはっきり理解しているわけではないにせよ、雄介が変身するたびに疲れ切っているのは見ているから、クウガが強化されることで消費エネルギーが多くなりすぎれば、雄介の生体エネルギーが回復する暇も得られず、吸い尽くされてしまう可能性も十分知っているのだ。
そういうわけで変身は、必要な時、すなわちクウガが戦う時にのみ行われるのだ。
なお、変身ポーズは本当は必要ないはずだ。
戦うという強い意志があれば、EPISODE1がそうだったように、アマダムはそれに反応して変身させる。
ただ、意志をはっきりさせるためと言うか「勢いづけ」に「変身!」と言っているだけだ。
そのいい例が「超変身!」だ。
これまでも、「もっと高く跳べたら」と願えば青に、「羽音はどこから聞こえてくる?」と意識を集中すれば緑に、「剣を使える形態になりたい」と思えば紫に、それぞれ勝手に変化していた。
EPISODE22以降「超変身!」の掛け声と共に色が変わるようになったのは、雄介が「今、他の色に変わる」という意志をはっきりさせているからだ。
同様に、「これから戦う」という意志をはっきりとさせることで、クウガに変身しているのだ。
そして、ゴウラムが金属を吸収して形状を作り上げているように、クウガは、雄介の体表細胞を材質変化させて生体装甲を作り上げているのだ。
武器を自らの身体から作り出せないのが、その証拠だ。
武器は、材質は問わないまでも身体の一部でない何かを変化させなければ作り出せない。
そして武器を維持するにもエネルギーがいるのだろう、必要なくなれば直ちにエネルギー供給を止め、元に戻してしまう。
もう1つ疑問がある。
ゴウラムのアマダムはすっかり力を失っていたのに、クウガのアマダムは何故力を保っていたのか。
鷹羽は、こう考える。
アマダムは、先代クウガの身体を半冬眠状態にしつつ、自らも休眠状態になって力をセーブして生き続けていたのだ。
世界中どこを探しても見付からないような特異なミイラは、完全に死んでいないからこそ、特殊な形態を保っていたのだ。
そして危険を察知し、先代クウガの身体の蘇生を始めたところで第0号の襲撃を受け、エネルギーの供給源である身体から引き剥がされ、復活させることが出来なくなった。
そこで新たな宿主を探したところ、雄介が選ばれたというわけだ。
何故雄介なのかは、またいずれ研究してみたい。
さて、変身のエネルギーについては、一応の結論が出た。
次に、変身のプログラムがどうなっているのか考えてみよう。
クウガには1つ面白い特徴がある。
それは、クウガの鎧の縁取りを見ると判る。
赤と緑の襟・青の肩口・紫の肩口と胸の中央部分の縁取りには、ある模様が掘られている。
よく見ると、それはクウガ自身の説明文なのだ。
EPISODE11で桜子がまとめたクウガの各形態の説明文、
赤には「邪悪なるものあらば、希望の霊石を身につけ、炎の如く邪悪を打ち倒す戦士あり」が、
青には「邪悪なるものあらば、その技を無に帰し、流水の如く邪悪をなぎ払う戦士あり」が、
緑には「邪悪なるものあらば、その姿を彼方より知りて、疾風の如く邪悪を射抜く戦士あり」が、
そして紫には「邪悪なるものあらば、鋼の鎧を身につけ、地割れの如く邪悪を切り裂く戦士あり」という文章が彫り込んであるのだ。
自分の身体に自分の説明文を彫り込むバカがいるだろうか?
同様に、それぞれの武器にも「来たれ 空を駆ける天馬の弓矢」などと、その武器を呼び出す言葉が書いてある。
もうクウガの手の中にあるのに、だ。
こんなナンセンスな話があるものか。
これには何らかの秘密があるはずだ。
そう、これこそがクウガの変身の秘密に違いない。
アマダムは、この設定された情報に従って、その形態を具現化しているのだ。
いわば、この文字はクウガの身体や武器を存在させるための呪文のようなものだ。
耳なし芳一の身体を見えなくした経文のように、或いは呪符や魔法陣のように、その文字・模様が一種の力場を形成するような呪術的な力だ。
或いは言霊的な呪文なのかもしれない。
ともかく、ベルトの装着者の意志と同調し、「かくあるべき」姿を生み出す力は、この文字にも助けられて発生していると考えなければならない。
こうしてアマダムは、装着者の戦意と求める力に呼応して、装着者の生体エネルギーを吸収しつつ戦士の姿を生み出す。
逆に言えば、装着者が戦意を持たなければ何もできないということだ。
事実、雄介の意志と無関係に他の形態になることはなかった。
もしアマダム自体に戦闘マニュアルのようなものまで組み込んであるとすれば、バッタ種怪人との戦いではもっと早く青に変化していただろう。
しかし実際には、雄介が「もっと高く跳べたら」と願うまで、青にはならなかった。
だから、前回書いたように、椿が懸念したような“アマダムからの神経状のものが脳に達して生物兵器になる”という事態にはならないはずなのだ。
さて、クウガの変身だけではバランスが悪いので、当然次回は
グロンギ変身の謎
について考えてみよう。