仮面ライダーディケイド オールライター対大ショッカー:ストーリー

 いつものように世界移動した光写真館。
 背景ロールには、どこかの屋敷の外観が映っている。
 そして今回は、士の撮影した写真がピンボケせずにちゃんと写されていた。
 得意げに写真を見せる士に、夏海は「この世界こそ士の世界なのではないか」と予想する。
 栄次郎が以前室内に飾った写真を見ると、そこにはこの世界に来た時から士が着ている服と同じものをまとった人物が写っていた。
 それを見て、少しだけ記憶を蘇らせる士。
 コートのポケットには、古めかしい形の鍵が入っていた。
 ユウスケの提案で、士達はその屋敷に直接行ってみることにした。
 ひょっとしたら、これが士の失われた記憶を蘇らせるきっかけになるかもしれないと……

 士の記憶に従い辿り着いた山奥の屋敷は、例の写真とまったく同じ造りの扉が付いている。
 そして、士の鍵はその扉にピッタリと合った。
 屋敷の二階には、ピアノを弾く一人の少女がいた。
 彼女は、士の姿を見るなり「お兄ちゃん!」と叫んで胸に飛び込んできた。
 少女の名前は、門矢小夜。
 正真正銘の士の妹だったが、彼はそれを思い出せない。
 また、屋敷の内装や外の景色も、彼の記憶を呼び覚ますには至らなかった。
 兄の変貌ぶりに戸惑う小夜に事情を説明するユウスケと夏美だったが、小夜は士に「十年前に亡くなった父から譲られたカメラ」を見せる。
 小夜の話では、今から一年前、士が突然彼女を残して一人旅に出てしまったのだという。
 屋敷を出た直後に士は玄関を撮影したが、それが光写真館に飾られていた写真だったのだ。

 そんな時、彼らの前に一人の男が姿を現す。
 男・屋敷の執事は士の帰還に驚嘆し、同時に記憶を失っていることに衝撃を受ける。
 とその時、夏海は、かつて自分がいた世界と同じように「消滅していく建物」を発見する。
 世界の崩壊は、士の世界をも蝕んでいたのだ。
 どうすれば世界の崩壊を止められるのかと問う士に、執事は答える。
 各世界に存在するライダーの力が互いに引き寄せ合い、そのため世界の融合(崩壊)が進んでいるのだという。
 崩壊を止めるには、たった一人だけ最強のライダーを決めるしかない。
 士は「世界を繋ぐ橋」を作り出す力を持っており、これを利用して異世界を巡り、各ライダーを破壊する目的で旅立っていた。
 執事の説明を聞きながらふと空を見上げた士は、昼の空に浮かぶ月に重なる“双頭の鷲”のマークを見取る。

 その瞬間、士の記憶が完全に蘇った。

「月影――すべてのライダーを集めろ!」

 執事・月影ノブヒコに、士の鋭い命令が飛ぶ。
 士の突然の変化に戸惑う夏海とユウスケだったが、彼の表情はそれまでとは違う、何か邪悪なものが宿っていた。

 三日後、士はある闘技場に一人佇んでいた。
 そこは、ライダーバトルの会場……月影が用意した場所だった。
 ディケイドライバーでディケイドに変身した士の前に異次元のカーテンが開き、そこから仮面ライダーアマゾンが飛び出した。
 緑林の仮想空間に変異した闘技場内で、アマゾンとのバトルを開始するディケイド。
 響鬼にカメンライドし、かみつき対鬼火、モンキーアタック対音撃棒烈火と激戦を繰り広げ、アマゾンキックにディメンションキックを合わせて辛くも勝利したディケイドだったが、続けて仮面ライダーBLACK RXが立ちはだかる。
 リボルケインの猛攻に翻弄され、カブトへのカメンライド→クロックアップで応戦するが、RXもロボライダー、バイオライダーとなって食い下がる。
 ファイズへのカメンライドでクリムゾンスマッシュを決め、ようやく勝利を勝ち取るディケイド。
 次はユウスケが、Xライダーと対戦。
 ドラゴンロッド対ライドルスティックの接戦は、クウガの勝利に終わる。

 同じ頃、別な場所では龍騎とゼクロス、ブレイドとストロンガー、イクサとスカイライダーらが闘いを繰り広げていた。
 ライダーバトルは最終的に6人に絞られ、どさくさ紛れにシード入りした海東大樹を加え3対3の最終戦に突入する。
 ディケイド、ディエンド、クウガに対するは、仮面ライダーV3と仮面ライダースーパー1、そして仮面ライダーBLACK。
 だが、V3スクリューキックからディケイドをかばいクウガは敗退、ディエンドはブラストを放った直後インヴィジブルで早々に撤退してしまう。
 一人残されたディケイドは、三人のライダーキックに対してFARディメンションキックとイリュージョンの組み合わせで対抗、なんとか勝利を物にする。

 勝ち残った士に拍手を送る月影は、「おめでとうございます。すべて思惑通りに行きましたね」と意味深な言葉を呟く。
 と同時に、突如闘技場が崩壊を始め、その下から巨大な……南アメリカの遺跡を彷彿とさせるような、巨大な「大ショッカー基地」が出現した!

 気絶から目覚めたユウスケと夏海は、薄暗い広間の真ん中で目覚めた。
 周りには、とてつもない数の怪人達がひしめき合い、広間前方中央に置かれた空の玉座を護るように、二人の男が立ちはだかっていた。
 一人は、クライシス帝国のジャーク将軍、もう一人は、黒い異形のスーツに身を包んだ地獄大使。
 地獄大使は、大ショッカー首領を二人に紹介するという。
 と、その時広間に飛び込んできたのは、なんと夏海の祖父・栄次郎だった。
 「紛らわしいわ!」と一喝され吹っ飛ばされた栄次郎だったが、何か様子がおかしい。
 不敵に笑う栄次郎は、どこからともなく飛来した黒マントをまとうと、白いスーツに身を包んだ紳士風の姿に変化した。
 光栄次郎の正体は、大ショッカーの大幹部の一人・死神博士だったのだ!
 驚くユウスケと夏海をよそに、中央の螺旋階段を降りて、ついに本当の大首領が降臨する。

 大ショッカーの大首領――それは、門矢士だった!

 首領の玉座に座り、ユウスケと夏海を冷たく見下ろす士は、「お前らはいい仕事をした。褒めてやる」と呟く。
 ユウスケは「ライダー潰し」に力を貸し、夏海は士が旅先で喪失したディケイドライバーを発見したからだ。
 大ショッカーはすべてのライダーを潰すことに成功し、これからはすべての世界を征服するために本格的な活動を開始するという。
 連続で明かされる驚愕の事実に翻弄されるユウスケと夏海は、地獄大使と士の手により落とし穴に落とされ、地下水路にたどり着いた。
 士の正体と真の目的、そして彼が「本当にすべてのライダーを破壊する者だった」ことに哀しみと苛立ちを隠せない二人は、再び門矢の屋敷へと戻り、小夜を問いつめる。
 「もしかして、士君は小夜さんのためにあんな奴らと手を組んで?」という夏海に、小夜は突然怒りの態度を示す。
 小夜は、自分を置いて旅立っていった士を憎んでいたのだ。
 十年前、両親を失った小夜は外に出ることが怖くなり、ずっと屋敷に引きこもっていたが、その時異世界を見ることが出来るようになった。
 しかし、その異世界に行けるのは士だけで、小夜は壁を乗り越える事が出来ない。
 異世界の花畑で楽しそうにはしゃぐ士に、待つことしか出来ない小夜は「士は異世界を旅するのが楽しいだけ」だと信じ込むようになった。
 そんな小夜を支持する月影は、突如シャドームーンに変身。
 そして小夜は、身に着けていた「地の石」から黒い光線を発し、ユウスケを貫いた。
 “究極の闇をもたらす”という地の石の力で、ユウスケは……

 一方士は、大ショッカー基地内で途方に暮れていた。
 ライダーバトルが終了したにもかかわらず、世界の崩壊は止まらない。
 そこに現れたシャドームーンは月影に戻りながら、「ライダーと世界の崩壊は、実は関係ない」と言い放つ。
 動揺する士の前に、続いて白い衣装をまとった小夜が姿を現す。
 月影の目的は、士に代わって大ショッカーを支配することだった。
 小夜は、あらたに「大神官ビシュム」を名乗り、士に宣戦布告。
 突然の事態に圧倒される士は、月影の振るうサタンサーベルで落とし穴へと追い詰められる。
 皮肉にも、かつて自分がユウスケと夏海を落とした地下水路に、今度は自分が落とされてしまった。
 そこに、突如ユウスケが姿を現す。
 ユウスケはクウガ・ライジングアルティメットフォームに変身し、地の石が放ったのと同じ黒い光線で士を攻撃し始めた。
 黒い目のライジングアルティメットはユウスケの意識を奪われており、大神官ビシュムに操られていたのだ。

「お兄ちゃん、巣に置き去りにされた雛の事を、考えた事ある?」

 妹の秘められた憎悪に触れた士は、抵抗の術もなく追い詰められていく。

 大雨の光写真館、その中では夏海が一人膝を抱えていた。
 そこに、辛くもライジングアルティメットから逃れた士がやってくる。
 中に入れてくれと懇願する士を、夏海ははっきりと拒絶する。

「これ以上あなたには騙されません!
 あなたをずっと信じていました……けど、裏切られました」


 「俺の帰る場所は、ここしかないんだ!」となおも食い下がる士に、夏海は

「私の世界に逃げ込まないでください!
 ここが、この世界だけが、あなたのずっと探し求めていた世界です!」


 と、きっぱり言い放つ。

 大首領の地位も、妹も、そして仲間すら失った士は、雨の中姿を消す。
 光写真館の扉は、ついに開かれなかった。

 大ショッカー基地では、あらたに大首領となった月影が大幹部以下すべての者を配下に収めていた。
 地獄大使の指令で、ついに開始される全世界征服作戦。
 ミサイルのように飛翔し街を爆撃するショッカー戦闘員、人々を追い詰め無差別に惨殺する怪人軍団。
 大ショッカーの前に立ち塞がる者の姿は、全くない。
 逃げまどう夏海は、突如現れた鳴滝に連れられて別な世界へと逃亡するが、そこも既に大ショッカーの手に落ちていた。
 絶望的な状況下、ショッカー戦闘員に追い詰められる夏海と鳴滝。
 だがその時、戦闘員の一人がディエンドに変身し、彼女達を助けた。
 海東は、戦闘員に変装していたのだ。
 夏海の問いかけに、海東は士の正体を知っていた事、そしてディエンドライバーも大ショッカーから強奪した事を明かす。
 それを聴いた鳴滝は、ディエンドの力で異世界を巡り、まだ生き残っているライダー達を集めて大ショッカーに対抗する策を思いついた。

 大ショッカーの破壊活動が進む中、士は廃墟の中で独り途方に暮れていた。
 全てを失った衝撃に何も出来ない彼の許に、一人の男が近づく。
 突然士を殴り飛ばしたのは、かつて士が「大ショッカーを裏切った」という理由で右腕を奪った男・結城丈二だった。
 士への復讐心に燃える結城だったが、「ちょうどいい、消してくれ。俺はもう何も残っていない…」と自らの死を望む士に絶望する。

「今のお前にはな、殺す価値もない。
 俺の知っている門矢士はな、そんな男じゃない!」


 その時、大ショッカーの怪人軍団が姿を現し、二人に迫ってきた。
 結城は士の前に立ち、自らの右腕を引きちぎると、そこに巨大な武器を内蔵したアタッチメントを接続した。

「罪は消せない、背負って生きていくしかないんだ。
 たとえ孤独でも、命ある限り闘う――それが仮面ライダーだろう?
 闘うとは、こういう事だ」


 怪人軍団に挑む、結城丈二。
 だが士は、ただそれを眺めている事しか出来なかった。

 一方海東と夏海は、仮面ライダー王蛇と仮面ライダーキックホッパーを呼び出し、共に大ショッカーと闘うため協力を要請していた。
 だが二人は、逆に大ショッカーの方に興味を示し離反、海東の前に立ち塞がる。
 海東は仮面ライダーライア、ガイ、パンチホッパーを召還し、闘わせている間に脱出を図ろうとするが、既に迫っていたジャーク将軍率いる怪人軍団に包囲されてしまう。
 絶体絶命と思われたその時、士が怪人軍団に向かってゆっくりと歩み寄ってきた。

「俺はすべての世界に拒絶された。
 どの世界も、俺のいるべき世界じゃない。
 言い換えれば、どの世界も俺の世界に出来る。
 とりあえず、俺の世界は俺が決着をつける……
だから、大ショッカーは、俺が潰す!!

 ディケイドに変身した士は、ディエンドと共にジャーク将軍達と闘う。
 ディケイドが将軍の剣をはじき飛ばし、ディエンドがFARで怪人軍団ごと止めを刺す。
 士は、ようやく闘う気力を取り戻し、夏海もそれを受け容れた。

 同じ頃、大ショッカー基地の玉座前階段でひっそり酒盛りをしていた地獄大使と死神博士は、それぞれガラガランダとイカデビルに変身。
 怪人軍団を集め、大ショッカー基地の前でディケイド達を迎え撃つ体制を整えた。

 ついに大ショッカー基地へとやって来たディケイドとディエンドは、夏海を退避させると怪人軍団へ突入を開始する。
 だが、圧倒的な戦力差に次第に追い詰められ、二人はすぐにピンチ状態に陥る。
 と、その時、二人の背後に突然異次元のカーテンが開き、改造サイクロンに乗った仮面ライダー1号と2号、ハリケーンに乗った仮面ライダーV3が飛び出してきた。
 更に、その奥からは、大勢の仮面ライダー達が姿を現す。
 各世界のライダーが、大ショッカーと闘うために集まったのだ!

「悪がある限り、仮面ライダーは不死身だ!」

 大ショッカー怪人軍団に果敢に闘いを挑むライダー達。
 ガラガランダは、仮面ライダー1号、2号、BLACK RX、カブトと対峙し、ライダーダブルキックで倒される。
 イカデビル達は、ディケイド、ディエンド、電王ソードフォーム、キバ、ファイズ、ブレイドと対峙。
 ディケイドは電王をFFRでモモタロス化させ、更にディエンドと協力して残りの三人もFFRさせる。
 モモタロスを含めた三人は、キバアロー、ファイズブラスター、ブレイドブレードで集中攻撃を行いイカデビルを撃破。
 だがディケイドは、いまだにビシュムの支配から解放されていないライジングアルティメットの攻撃を受け、変身が解けてしまう。
 士は、生身のままライジングアルティメットの攻撃を受け止めながら、ビシュム(小夜)に呼びかける。
 「巣から飛び立とうとしない雛」である小夜に向かって、士は「そうやっていつまでも餌を運んできてもらうつもりか?!」と言い、月影にも「お前は小夜を閉じこめているだけに過ぎない!」と指摘する。
 士の言葉に心を乱すビシュムは、それでも自分は巣から出られないものと思いこみ、月影もそれを強調する。
 月影は、不安定になったビシュムから地の石を奪い取ろうとするが、抵抗したビシュムはそれを床にたたきつけ、砕いてしまう。
 同時に支配が解け、ライジングアルティメットはユウスケの姿に戻った。
 業を煮やした月影はシャドームーンとなり、士とユウスケの前に姿を現す。
 再び変身して挑む士達だったが、シャドームーンの戦力は圧倒的で全く歯が立たず、ライジングアルティメットですら触れる事も出来ない。
 再び窮地に立たされた二人だったが、どこからともなく乱入した黒と緑のバイクによって救われる。
 バイクに乗っていたのは、右半身が緑、左半身が黒い、見たこともない仮面ライダーだった。
 「仮面ライダーW」と名乗ったそのライダーは、シャドームーンを指さす。

「さぁ、お前の罪を数えろ!」

 仮面ライダーWは、シャドームーンの猛攻をものともせず、赤と黒、赤と銀へと次々に姿を変え、ついにはロッド状の武器を使って大ショッカー基地の外壁へ叩きつけてしまった。
 だが仮面ライダーWは止めをささず、「フィリップ」なる謎の声に促されて、さっさとどこかへ去ってしまった。
 ディケイドは、全ライダーに呼びかけ、一斉にライダーキックを放ち大ショッカー基地を粉砕する。
 攻撃に巻き込まれたシャドームーンは、「いつか影が光を支配する…」という謎の言葉を放ち、敗北した。

 ついに大ショッカーを壊滅させた、と喜ぶ間もなく、基地跡から巨大な影が立ち上がった。
 それは、数十メートルもの巨体を誇る人型ロボットだった!

「あれは、キングダーク!」

 Xライダーの言葉に、ライダー達の間に再び緊張感が走る。
 だがその時、山の向こうからもう一体の巨大な影が現れた。
 それは、ディエンドが召還した仮面ライダーJ・ジャンボフォーメーションだった。
 キングダーク対仮面ライダーJの戦闘が始まるが、Jですらキングダークには敵わず、一撃で倒されてしまった。
 万策尽きたと思われたその時、ディエンドはいきなり不思議な行動を取り始める。
 なんと、ディケイドに向かってFFRのカードを使用したのだ。
 カードの力で、巨大なディケイドライバーにFFRしたディケイドは、仮面ライダーJに装着される。
 すると、Jの姿は巨大なコンプリートフォームへと変わってしまった。
 コンプリートフォーム・ジャンボフォーメーションは、ファイナルカメンアタックフォームライドのカードを使用し、地上で待機する全ライダーをカード化。
 これを利用したディメンションキックで、キングダーグを一撃で破壊してしまった。

 闘いが終わり、ライダー達とも別れる時が来た。
 背を向け去ろうとするライダー達に向かって、海東は「忘れ物だよ」とギギの腕輪を示す。
 アマゾンは腕輪を受け取り、「ディエンド、トモダチ」と呟いて消える。
 士とユウスケ、海東と夏海を残し、他のすべてのライダー達も、それぞれの世界へと帰っていった。

 士は、門矢屋敷で小夜と再会する。
 「一緒に旅に出よう」と誘われる小夜だが、彼女はそれを丁寧に断り、自分で巣立つ約束を交わす。
 そんな彼女に、士は父の形見のカメラを手渡した。
 その後、光写真館で死神博士の写真を見ながら「もうイカでビールはこりごりだ」とグチっていた栄次郎は、戻ってきた士達にいぶかしげな目で睨まれる。
 いつものように椅子に座り、談笑する士を指し、夏海は「いい笑顔です」と微笑む。
 士のカメラで士を撮影する夏海。
 彼らは、これからも異世界を巡る旅を続けようと語る。
 新たに展開した背景ロールには、何が写っているのだろうか……?

 そして小夜も、父のカメラを持って屋敷から旅立とうとしていた――