●仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE : ストーリー

 1999年7月。
 太平洋に落下した巨大隕石の影響により、地球は大規模かつ深刻なダメージを受けてしまった。
 隕石衝突の衝撃で海はすべて涸れ果て、さらに、隕石から発生した「ワーム」が人類を脅かしていた。
 生き残った人類は、秘密組織ZECTを作り上げてワームに対抗し、同時に、水不足に悩む人々の救済活動も行っていた。

 だが、そんなZECTの持つ規律重視の風潮に、反旗を翻した者が居た。
 織田秀成風間大介、そして北斗修羅の三人を中心とする、反ZECT組織「ネオゼクト」。

 彼らはZECTの開発したライダーシステムを奪取しており、織田は「ヘラクス」、風間は「ドレイク」になる事が出来る。
 対してZECT側には、大和鉄騎「ケタロス」、矢車想「ザビー」、加賀美新「ガタック」と三体のライダーが所属している。
 織田達三人は、砂漠化した中野区付近で大和率いるゼクトルーパー&ライダー部隊に追い詰められ、ライダー同士の大規模な戦闘に発展するが、そこに、ある男が現れた。

 天道総司
 カブトゼクターに認められた、「カブト」の資格者。

 彼は、圧倒的な強さでザビー・ガタック・ドレイクを蹴散らし、ケタロスとヘラクスに呼びかける。

「どっちか俺の腕を買え。高い値段を付けた方に、俺という太陽は輝く!」

 ガタック資格者加賀美は、ZECT一員であると同時に、レストラン「ビストロ・ラ・サル」でアルバイトをするという一面も持っていた。
 店長に煽られつつ、同じバイトの日下部ひよりにプロポーズをしようと、気合を入れる加賀美。
 そんな彼の前に、突然、天道総司が姿を現す。
 天道は、結局ネオゼクト側に付く事になったと加賀美に告げ、同時に、これはネオゼクトを内側から潰す策である事も教える。

 天道は、加賀美からゼクト側の情報を貰い、それをネオゼクト側に流す事で信用を得、加賀美はあえて天道に情報の一部を与える事で、ネオゼクト側の様子を見ようと企てていた。

 天道が織田達に流した情報は、「天空の梯子計画」。
 これは、軌道エレベーター上に設置された「巨大なクロックアップシステム」を作動させることで移送空間を作り出し、そこから彗星を招き寄せて破壊、彗星の核を構成する大量の氷を集めて地表に移し、一気に水不足を解決するという内容だった。
 人類救済の可否はともかく、これが成功したら、ZECTは絶大な権力と支持力を得る事になる。

 北斗は、その計画を我々で奪い取らないか、と提案する。

 その晩、天道は織田に「ZECTが飼っているという、黄金のライダー」の噂について尋ねる。
 織田は、「戦う前から、相手はすでに負けている」「屍と共に、薔薇の花びらだけが残されている」という、不気味かつ意味不明な噂を持つ存在だと告げた。

 一方加賀美はひよりを呼び出し、もう一度プロポーズを行おうとしていた。
 だが、ひよりは加賀美の想いに応えようとしない。
 隕石落下時の被害の影響で、重い持病を抱えてしまったひよりは、いつ死ぬかわからない自分が、加賀美の想いを受け止める資格があるのだろうかと悩み続けていたのだ。
 そんなひよりに、突如襲い掛かるワームの群れ。
 たまたま場を外した加賀美よりも先に駆けつけた天道はカブトに変身し、叫びながらワームを撃退する。
 幸いひよりは被害に遭わずに済んだが、持病の発作で倒れてしまう。

 天道と、後から駆けつけた加賀美は、ひよりを病院に運ぶ。
 そこで、ひよりの寿命の話を聞かされ、二人は激しく動揺する。
 気落ちする加賀美を殴りつけ、叱咤する天道は、あらためてネオゼクト殲滅を誓う。

 そして、そんな二人の様子を、影から見つめる北斗が居た。

 突如、状況が変わり始める。
 裏切り者として、北斗から拷問を受ける天道。
 だが織田は、裏切り者である可能性をあえて認知しながらも、天道という存在がもたらす変化に賭ける覚悟を決める。

 ビストロ・ラ・サルで結婚式を行う事にした加賀美とひよりだったが、その準備中、加賀美はZECTから呼び出される。
 「天空の梯子計画」は実行予定が繰り上げられ、さらに、加賀美が計画の実行責任者に任命されたのだ。

 それぞれの目的意識を持ち、ZECTの軌道エレベーターへ向かう天道達と加賀美。
 加賀美は、大和と共に軌道エレベーターに登り、宇宙ステーションへ向かう。
 天道は、織田と組んで各自のマシンで軌道エレベーター施設への突入を試みる。
 だが、先行で突入して陽動・かく乱活動を行っていた風間(ドレイク)は、なぜか、北斗率いるネオゼクトルーパー部隊の集中砲火を浴びて絶命した。
 北斗は、矢車の指令でネオゼクトに潜入し、内部崩壊を起こす役割を持っていたのだ。
 北斗の裏切りにより、計画奪取作戦が暗礁に乗りかける。
 織田は天道一人に突入を指示し、自分はヘラクスに変身して北斗部隊と矢車に挑む。
 天道は、カブトに変身。
 カブトエクステンダーをエクスモードに変型させ、軌道エレベーターに設置された巨大排水口から突入、猛スピードで最頂部を目指した。
 
 最頂部に到達した軌道エレベーターから降りた大和と加賀美は、ドアの向こうに停車しているカブトエクステンダーと天道の姿に驚愕する。
 軌道エレベーター内で対峙する、大和と天道。
 二人はライダーに変身し、激しい戦闘を開始するが、加賀美は宇宙ステーションへ移動し、計画通り「巨大クロックアップシステム」を作動させようとする。
 カブトクナイガンの一撃が外壁を破壊したため、宇宙空間へ吸い出されるカブトとケタロス。
 クロックアップで空気の大量流出の影響から逃れた二人は、宇宙ステーションの外側でバトルを続ける。
 一方、地上ではヘラクスのライダービート&ゼクトクナイガン・アックスモードの一撃を受け、ザビーが敗北していた。

 ガタックに変身した加賀美は、自分のクロックアップシステムと連動させた移送空間発生装置を起動させ、予定通り彗星を捕捉させる事に成功した。

 だが。
 彗星の向こう側から、それより何倍も巨大な隕石が姿を現した!
 予想外の事態に困惑するガタック。
 巨大隕石は、彗星を押し潰して徐々に地球へと迫る。
 彗星破壊の影響で、地表に落下してしまうケタロスとカブト。

 対峙するヘラクスと北斗の視界には、大気摩擦で燃えながら落下してくる、ケタロスの最期の姿が映っていた。

 北斗を追い、施設内を移動するヘラクスは、薔薇の花を手に持ち正座している金色のライダーの姿を見止める。
 これを例の噂のライダーと理解したヘラクスは戦闘を仕掛けようとするが、その瞬間に倒されてしまう。
 何が起こったかわからぬまま、崩れ落ちる織田。
 彼の死体の傍には、噂通り、青色の薔薇の花が添えられていた。

 ZECT最高幹部・加賀美陸は、さらなる巨大隕石の接近を告知。
 宇宙ステーションに搭載した「反物質兵器搭載ミサイル」を用い、これを破壊する計画を宣言する。

 正式にZECTに戻った北斗は、ZECT最高幹部・加賀美陸の下を訪れる。
 だがそこで、北斗は恐るべき事実を耳にしてしまう。
 彗星から大量の水を手に入れる計画も、第二隕石の破壊計画も実はすべて建前に過ぎず、彼らは、本当は第二隕石落下による自虐的地球殲滅を企んでいたのだ。
 隕石はさらなるワームの巨大プラントであり、その中には膨大なワームの卵が眠っている。
 加賀美と参謀・三島正人は、人類を滅ぼし(擬態した)ワームの中で生き長らえさせようとしていたのだ。

 カブトエクステンダーで無事帰還に成功した天道は、ネオゼクト壊滅の報と、さらなる緊急事態を知る。
 そして、ひよりの命があと僅かになっているという現実も…。
 加賀美と共に、病院へ駆けつける二人。
 加賀美とひよりは、天道を牧師にして病室の中で結婚式を挙げる。
 結婚式の最中、ベッドの中で静かにこと切れるひより。

 ひよりは加賀美の想い人であると同時に、実は天道の生き別れの妹でもあったのだ。

 悲しみの中、天道の携帯に、北斗からの連絡が入る。
 瀕死の北斗は、自分もZECTに騙されていた事と、ZECTがワームと手を組んだ事を告げる。
 激しい怒りに震える天道は、ひよりの病室から一人戦いに赴こうとする。
 だが、加賀美は自分も共に行くと宣言した。

 ライダーに変身し、ワームの大群に守られた軌道エレベーター施設へ突入する二人。
 クロックアップで一気に軌道エレベーターを駆け上るカブトとガタックだったが、宇宙ステーション内部で、白い服をまとった大男に止められてしまう。
 白い服の男・黒崎一誠は、青色の薔薇を翳し――金色のライダー・コーカサスに変身した。
 クロックアップをも遥かに上回る超高速攻撃により、カブトとガタックは、なす術もなく倒れる。
 コーカサスは左腰に装備した「ハイパーゼクター」によって、他のライダーとは異なるハイパークロックアップを使用していた。
 「戦う前から負けている」という噂は、この能力を示すものだったのだ。
 そして天道の真の目的は、このハイパーゼクターを手に入れる事だった。
 起き上がれないカブトに、とどめのマキシマムライダーパワー・ライダーキックを放つコーカサス。
 だがそれは、ガタックが身を張って止めた。
 その隙を突いて、コーカサスからハイパーゼクターを奪ったカブトは、コーカサスを船外へ放り出す。
 ライダーキックを止めたため瀕死の重傷を負ったガタック・加賀美を、脱出用ポッドへ移すカブト。
 カブトはハイパーゼクターを装備し、カブト・ハイパーフォームへと進化した。

 加賀美を乗せたまま、地球へ向かうポッド。
 だがそこには、先程放り出されたコーカサスが取り付いていた。
 パンチで隔壁を破壊し、加賀美を殺すコーカサス。
 その時、駆けつけたカブトは、「ハイパークロックアップ」を発動させる。

 時間が逆転し、コーカサスが隔壁を破壊する直前まで戻る。
 腕を振り上げた(所まで戻った)コーカサスを引き剥がし、ハイパー・ライダーキックを叩き込むカブト。
 コーカサスは、反物質兵器搭載ミサイルに激突し、爆砕した。

 ポッドから離脱し、飛来する隕石に向かうカブト。
 天道は、ハイパークロックアップで隕石を丸ごと過去の世界へ移動させるつもりだった。
 カブトのタイムワープ開始と共に、どこからともなく雪が降り始める。
 宇宙空間にも、地上にも、雪が降り注ぐ。
 加賀美も、ZECT本部内の田所や岬も、雪にかき消されるように消滅していった。

 隕石ごと七年前まで遡ったカブトは、最初に地球に激突した隕石に向かって、運んできた(未来の)隕石をぶつける。
 両方の隕石は粉々に砕け、その破片が地球各所に飛来する。
 被害規模は本来よりも軽減されたが、それでも破片の一部は渋谷に落下し、局所的に深刻な被害を与える。
 隕石衝突の影響で地表に落ちたカブトは、天使の羽のような光をまといながら、七年前の天道とひよりの前に降り立った。

 瓦礫の下敷きになっている過去の自分に、ライダーベルトを託して消滅する天道。
 ベルトを受け継いだ七年前の天道は、自力で瓦礫の下からの脱出に成功、ひよりを助け出す。

 かくして、地球は隕石による致命的なダメージを避けられた。
 そしてひよりも、持病を持たない健康な少女に成長した。

 もう一つの、新しい未来が始まった。

 そして、その世界では――