岡本みなみ/評価B

☆耕介が正式に管理人となった翌々日から、新しい入居者が入ってくる事になっていた。
 その一人であるみなみは、バスケに命をかける熱血スポーツ少女であった。
 150センチという低い身長をものともしない跳躍力と、大人が四人がかりで持ち運ぶピアノを一人で運べる程の
怪力を併せ持ち、さらに情熱を武器にして部活動に全力を注いでいる。
 だが夏の予選大会終了後、突然彼女の態度がおかしくなる。
 どうやら大会でかなり屈辱的な経験をしてしまったらしいのだが…

 当初「もしやこやつも物の怪では?!」と思ったものの、実際はトレーニングの賜物として授かった力でしたという予想外のオチを見せてくれたみなみ。
 熱血であり、同時にほにゃらなキャラクターだというアンバランスさも面白く、とても愛らしい存在だ。
 知佳と仲良くなる事で側面的な魅力の描写にも恵まれ、意外とそれ以外のキャラとの絡みでも映えるというかなりお得な位置付けにいる。
 特別なイベントが起きない時でも、ささいな会話や掛け合いを面白く鑑賞する事が出来る。
 最初の頃に主人公に見せた不慣れな態度もイメージを壊す事のないレベルで表現されており、よく考えるとかなりオイシイ存在となっている。
 本人が地味な性格をしているのに目立つというのは、なかなか趣深い。 

 シナリオにしても、徹底的にスポーツマン的な悩みの描写から始まり、そこからの発展に徹している。
 リスティーのような邪魔者も登場せず、あくまでみなみと同じ道に立つ存在しか関わってこないため、最後まで脱線する事がないのは秀逸だ。
 実は、ホントはこのシナリオは評価Aでもいいのかもしれない、とも考えた。
 極端な欠点が私には発見できなかったという事が、一番のポイントだったのだ。
 そういう訳で、人によってはさらに高い評価を得られる可能性を秘めているという前提で理解していただけると幸い。

 みなみは、独自のイベントにも注目箇所が多い。
 11月中盤に発生する「主人公とみなみ以外全員寮退出」は、爆笑必至の微笑ましいイベントだ。
 ゆうひと知佳、さらには十六夜までもが企みに混じって他の人間を外に連れ出すというものだが、これがすごく自然かつ抑揚たっぷりでやってくれるため、ホントに楽しい。
 さらには、年明けのゆうひと知佳がかますレストランでのボケなど見所が妙に多い。
 本当に肩の力を抜いて楽しめる良質のシナリオだ。
 
 だが、きちんと物語にメリハリをつけようとしている部分もある。
 試合で、身長をネタにハッパをかけられたみなみのトラウマ描写は異様な程の説得力がある。
 身長差をフォローするために、これまで積み重ねてきた修練の結果をすべて否定されたかのような扱いは、共感を覚える部分も多い。
 いつもはほえほえしているみなみが、この時だけ別人のような態度を見せるというのも、緊迫感とリアリティを高めている。
 ここをはじめとして、スポーツの道で己を磨こうとする者が必ず経験するだろうポイントを的確に描いており、感嘆させられる事も多いのだ。

 ちょっと恐れ入った。まさかここまでスキのない話だったとは。
 みなみはとにかく嫌味のなさが魅力であり、なんでも一生懸命な所が好感度を増す。
 バレンタインイベントなんかは、その最たるものではないだろうか。

 第三章に入ってから登場する、桂木さとみという“みなみの師匠”にあたる女性が出てくる辺りから、主人公とみなみの関係に陰りがさすという描写も面白い。
 みなみのスカウト問題と、それによる主人公との別れの可能性の示唆だ。
 これまでのみなみの頑張りがこちらにも伝わってくる事から、主人公ならずとも彼女の目指す道への精進を望んでしまうが、それは悲しい結末にも繋がる結果になる。
 この辺の微妙なやりとりは、とてもうまく表現されている。
 
 しかし、ここでなぜか大活躍したみなみのスカウトをさとみが蹴ってしまうが、これだけ妙にご都合主義を感じてしまう。
 スカウトではなく、戦ってみたくなった…というのは、言い訳にしてはちと説得力ないよ。
 そこまでして無理に結び付けなくても良いと思うんだけど…
 やっぱ、ここだけ妙なむちゃくちゃ感が拭えないなー。

 とはいえ、その結果が必ずしも長く続く幸せとは限らないというエンディングは良好。
 さざなみ寮の管理人として存在する主人公は、いずれそこからいなくなるみなみにとって“通過点”に過ぎない
 彼女の目指す道に、主人公がどこまで関わり続けられるか保証は全くないのだ。
 しかも、主人公はそれを自覚した上でみなみの傍にいるのだ。
 破局ではないのだが、やがて大きな変化が訪れる事を自覚しながらも、思いを貫き続けるというスタンスは大変評価したいと思っている。

 さて問題点だが、物語上に目立ったものがないかわりに、演出やCG面でいくらか難が見える。
 まず、緻密なバスケを巡る葛藤の場面なのだが、これらを伝える方法がすべてテキストだけというのはいただけない。
 本作は、全体のボリュームの割にCGが異様に少ないという欠点を持っているが、ここでもそれは目立っている。
 予選での屈辱的な展開は、CG付きだったらさらに伝わるものがあっただろうに残念だ。
 またメインの大会にしても、たった一枚きりのCGをもったいぶって提示されても困る。
 全体を見つめ直して、どこに何がどれくらい必要だったのか、再度考慮していただきたかったものだ。

 それと、恒例のツッコミ。
 前作の評論で私が「やめてくれ〜」と書いた処女喪失の瞬間の描写だが、またしてもなにかを破くような表現がされており、怖くて怖くてたまらない(^^)
 それはいいのだが、みなみ程の激しい運動をしている人間だったら未経験でも処女膜裂傷を起こしている可能性もあるのだけど、そういうのはいいのかな?

 それから、毎朝カルシウム牛乳1リットルを飲んでから登校するというのは、あまり健康的にお奨めいたしません。
 牛乳はそれだけでかなりの高カロリーで、あれだけ飲んだら色々な影響が…って、あ、みなみは元々歩くポリバケツみたいな奴だったっけ?
 じゃ、心配ないや♪

 えーっ、アレって異常ですかー?