Phantom 〜PHANTOM
OF INFERNO〜
1.メーカー名:Nitro plus
2.ジャンル:ADV
3.ストーリー完成度:A
4.H度:Cぐらいかな
5.オススメ度:A
6.攻略難易度:C(チト、凶悪な分岐があるため)
7.その他:「シナリオ重視!」というあなた。
やらなきゃ嘘でしょ。やれ!
(ストーリー)
『……殺される……』
『……殺さなきゃ、殺される……』
悪夢から覚めた主人公を待っていたのは、またしても悪夢だった。
見覚えのない部屋。
目の前には二人の外人、そして夢の中で自分を襲ってきた少女。
訳のわからないままナイフを手渡され、少女との殺し合いを命じられる。
少女はナイフを慣れた手つきで操り、切りかかってくる。
まるでTVドラマの殺し屋のように。
絶体絶命の中、主人公は咄嗟の機転でこの場を切り抜ける事に成功するが、それは殺し屋としてのテストに合格した事を意味していた。
彼は、既に薬物投与と催眠暗示により記憶を奪われており、組織の殺し屋としてのみ、生きる道を与えられたのだった。
名前すら思い出せない主人公は、この無法な仕打ちに涙で訴える。
だが“アイン”と呼ばれる少女は、突き放すように答えるのだった。
「泣けるうちに泣いておくのね。それは、とても贅沢な事だから」
そして、望まずして生まれ変わる事を強制された主人公は…。
きっか:「う〜、最近の18禁ゲームって、“主人公が学生で舞台が学園で恋愛でラブラブで萌え〜!”なのばっかりやん」
後藤夕貴:「そりゃ仕方ないわな」
きっか:「つ〜か想像の世界ですら、ワシはもう学ランなぞ着ることは出来ぬ。特撮(どマイナー)ヒーローのコスチュームなら着れるけどね(おい)」
梨瀬成:「俺ッチは、特撮の格好の方が着れないと思うけど(笑)」
鷹風虎徹:「ありますよ、ご希望のジャンル作品。“ファントム”ですね」
きっか:「え? 主人公って学生じゃないの?」
柏木悠里:「殺し屋です」
きっか:「ぢつわ、ワシはファンタジーが苦手で…」
柏木:「舞台は現代ですよ」
きっか:「恋愛SLGはどうも…」
柏木:「ハードボイルドです」
きっか:「うを〜、マジデスカー?」
虎徹:「まだ手をつけてないですけど、巷では凄く評判が良いらしいですよ」
きっか:「ここは俺に任せるんだッッ! 俺に構わず行け、行くんだッッ!(意味不明)」
え〜、以上の様な経緯(フィクション?)で執筆する運びとなりました。
「学園モノはやりたくないです」なんて、18禁ゲームの現状を考えるまでもなく、実質的に半永久的休筆宣言してるのも同然な訳ですな(笑)。
そんなワシの惰眠を覚まさせてくれたのは、これまた18禁ゲーム業界に新風を巻き起こしたであろう「Phantom」でありました。
うわ〜、評論書くのは何年ぶりだろう(笑)。
で。
最初にお断りしておきたいのだけど、ここから先は出来ればこの作品をプレイした人にしか読んで欲しくない、というのが本音。
なぜかって、言うまでもなく「楽しみ」を奪ってしまうから。
粗製濫造作品群の中から、良く出来た作品を発掘するのは並み大抵の事ではないよね。
ワシは2000年度の18禁ゲームを語るんだったら、「Phantom」抜きに成り立たないんじゃないかと思っている。
我ながら大仰だとは思うけど、作品を楽しんだ人に「こんな感想を持つ奴がいるんだな」ってスタンスで読んでもらえたら一番嬉しいな。
では、そういう訳で参る!
やってない人は買えよ!<えらそう
「スゲェ」。
これが「Phantom」に対するワシの感想であり、賛辞である。
徹底的なハードボイルド。こんな形で体験出来るとはね。
ジャンル的に自由度の高いはずの18禁ゲームなのだが、ここまで徹底した作品は初めてだろう。
いや、一般的なパソコンゲームやコンシューマゲームでも、そうそうお目にかかれない程の徹底ぶりだよ。
もちろん市場を考えれば、新規参入メーカーであるニトロプラスにしても、相当な冒険だったろうが、結果的にファントムの評価も日増しに高まっているようだね。
「Phantom」は、おそらく18禁ゲームで初めて銃・ミリタリー雑誌に広告を出した作品(笑)なんだけど、要するにガンマニアを対象にして、最低限のファン層を獲得を狙ったんだろうね。
こういった経緯からいけば、注釈も無しにめったやたらと専門用語を羅列して、ユーザー置いてけぼりで突っ走る作品になっていたとしても、少しもおかしくはなかった。
ところが「Phantom」では、銃に関して興味のない人や知らない人に対しても違和感なく入っていけるように配慮されている。
マニュアルを見るまでもなく、スタッフの銃に対する造詣・愛情は相当なものだが、そこをぐっと我慢して制作している。実に奥ゆかしい。
というか、プロだ。
これはプロの仕事だ。
ガンアクションが最大の売りである「Phantom」にとって、最も重要なアイテムは“銃”なのだが、あくまで“道具”のひとつといったクールな扱いだ。
そして“道具”ゆえに、マニアだからこそ知り得るエピソードをストーリーの重要な部分に関連付けており、他作品の追従を許さない。
これは、「銃に知識のないシナリオライターが、ストーリー上に武器を登場させようと資料を引っ掻き回す」といったスタンスではそうそう生まれ得ない。
アプローチが全く逆だからね。
だからこそ、スタッフの粋な悪戯が光っている。
「パッケージイラストにはセーラー姿の女子高生が銃を構えている。しかもその銃ときたら、実用にほど遠いオートマグ」、「また別の少女が、これまたアクション映画の世界でやたらと乱用気味なフィクションである水平撃ちで銃を構えている」といった感じ。
ガンマニアが見たら鼻で笑ってしまうシチュエーションのはずなのだけど、どちらもストーリー構成上に必然性があってやっている事で、「やられた!」と心の中で叫んだ人も多いんじゃないかな。ワシもその一人だったりして(笑)。
逆に言えば、第一印象から鼻で笑ったまま見向きもしないガンマニアもひとりやふたりじゃきかないはずだから、これはこれでメーカーの漢気を感じる。
さて、銃の次は登場人物に目を向けてみたい。
こちらも、信念抜きでは描きえぬ仕事となっている。
徹底している。
シナリオを書いていて、辛くならなかったんだろうか?(笑)。
恥ずかしながら、私も趣味でちょっぴりお話を書いてみた事があるんだけど、シリアスって、書いてて苦しくなってくるんだよね。
「ああ、ここで一発ギャグをかませば面白いな。でも、全てがブチ壊しだ、ギャ〜ス!」な感じか。
今まで出ていた18禁シリアス作品(主として探偵モノ(笑))の主人公だって、ギャグとシリアスの両面を使い分けてたしね。
あれは、読者サービスというよりはシナリオライターの“逃避”だったんじゃないかって思ってる。
それが悪いって訳じゃないけど、全部が全部そんな主人公だからねぇ。
「Phantom」に関して言えば、主人公の年齢がシナリオ開始時に14〜16歳のはずなので、人間性についてどうこういうのもちょっとアレだけれど、好感の持てるキャラだね。
この主人公は場面場面でかっちょいい台詞をいうので、流してプレイしていると誤魔化されてしまうんだけど、割と状況に流されてスタンスがどんどん変わっていくんだよね。
現状に甘んじてしまったり、歩んできた方向とは全く逆の道を選んだり。
それが、マイナス要素になっていないのがポイントだろう。
弱さを描く事で、逆説的に彼の本質的な強さに説得力を与えている。
ワシは、どうしようもなくなった事態にどう向き合えるかが重要なんだと思うんだよね。
「Phantom」は、人間の無力さを描いた作品。
主人公は“正義”という大義名分の看板を背負っている訳じゃないし、“復讐”といった単刀直入かつ単純な理由で生きている訳じゃない。
生きるために生きているのだ。
もっとも主人公にしてみれば、特に強く意識してはいないんだろうけど。
「愛煙家が煙草を止めたいと思っているが、なんとなく今日も吸っている」といった感じかな。
第3章に至っては、この少年に「長く生き過ぎた」なんて台詞を言わせているが、嫌味にも驕りにも聞こえない。
とても重みのある言葉だ。
とにかく主人公の生き様をさて置いても、「Phantom」は背徳に満ちあふれた世界の作品であり、登場人物も筋金入りのワルばかり。にもかかわらず、憎めないキャラばかりなんだよね。
ワルはワルなりに何かと多忙で、なんだか見ていて微笑ましくなってしまう(笑)。 特にクロウディアなんて、裏切りに裏切りを重ねる人物で、本来ならば絶対に許されない存在なのだが、「我が道を行けっ!」って応援したくなるから不思議だ。
これはそういったラストに辿りつくまでに、クロウディアという人物像を描ききっているからこそ。
鳥が飛ぶように、魚が泳ぐように、彼女が進むべき道を進んでいるだけで、そこには悪意というものが感じられないんだよね。
脱線するけど、ワシは最近になってやっと自動車の教習所に通い始めたのだ。
初めて路上に出て、しかも助手席の指導員が女性だったりして、これでクルマがF-40だったらモロに「Phantom」だよな〜って。
それはそれとして、クルマの運転ってのは下手な啓蒙書なんか読むよりも、人生にとっての勉強になるね(そ〜ですかぁ?:免許持ちの鷹羽・鷹風・後藤)。
うんうん、この世で一番怖いのは「子供」と「老人」だねぇ。
行動が予測出来ないから。おっとっと。
何が言いたいかって言うと、つま「Phantom」りってキャラクターの立て方が抜きん出ているって事。
この人物がこんな台詞を言う訳がない、こんな行動を取る訳がないってビジョンをまずプレイヤーに与えておいてからアクションが起きる訳ですわ。
だから、どんな結果が待っていようとも納得できる訳ね。
脈絡もなく「いきなりそりゃね〜だろ!」って展開は、計算された冒頭だけだもんね。
何であれ、まず不信感なり焦燥感なり予兆がある訳ですわ。
ありがちな「作者が何にも考えていないのに、思わせぶりな展開」とか「とりあえず意味もなくプレイヤーの不意を突くだけの展開」とは縁遠い作品という事ですな。
あと絶賛したいのは、秀逸なサブキャラクターが多数登場する事だよね。
ただ殺されるためにワンシーン登場するだけの人物であったとしても、何かしらの印象を残すだけの存在感を持っている。
自分的には、サブキャラクターで最も秀逸なのは「リズィ」だね。
キャラクターの描写といえば、サイス・マスターが全部の汚れ役を引っ被っている所がある訳だけど、ちょっとキャラ的に弱いところがあるね。
己が信ずる理論&美学の実証の為に生きている人物だけに、被験体の成果こそが彼にとっての全てなのだから。
アインに殺される時に「素晴らしい、素晴らしいぞ〜!」(笑)とか言って死ぬぐらいに技術屋としての、ある意味偏執的なバタ臭いキャラにしても良かったんじゃないかな。
主人公達のデータをフィードバックして結成した量産型チームが全滅コイた時にも、己の身の安全より戦闘の結果に心を奪われてる人物なのだから、その辺がちょっと弱いかなぁと思うんだよね。
まぁ、この人がルガー片手に狼狽しているグラフィックって、結構お茶目でワシは好きなんだけどね(笑)。
ところで「Phantom」の最大の特徴は、トゥルーエンドが存在しない事ではないかな。
つまりは、プレイヤーによってどれが最良のエンディングかが変わってくると言う事。
ワシの最良エンドは「アインに射殺される」やつだな(笑)。
それはそれとして、どのエンディングにも死の匂いが漂っている。
手放しにハッピーエンドと呼べるものは、ひとつとしてない。
アインエンディングは割と前途が明るそうだけど、生涯追跡者の影に脅えながら生きていく事を強いられており、より破滅的な状況を描いているドライエンディングと比べても、なんら大差はない。
これは主人公にとって、シナリオライターにとってのケジメの付け方なのだろうね。
己が犯した罪を忘却したり、簡単に清算などできないと。
ドライエンディングに関しては、アメリカ映画「俺達に明日はない」を連想したね。
この作品は、主人公とヒロインが面白おかしく犯罪を重ね、やがて自分達がしでかした罪の重さに打ちひしがれ、最後には蜂の巣にされてエンド。
「自分の望むまま、自分の好きなように生きたらいいじゃない」ってのが根底にある、自分勝手で無責任な近年のアニメやら小説やらには、忘れ去られた世界がファントムには描かれている。
自分的には、第2章のキャルと逃亡するストーリーも欲しいな、なんて思ったんだけど、CG達成グラフィックでキャルと主人公がキスしてる画があるんだよね。
これが、キャルの問いかけである「帰ってくるよね? 約束だよね?」の回答なのかなって気もする。
なんだか評論を書いてるのか推薦文を書いてるのか分からなくなってきたので(こら)、欠点についていくつか。
まずはシステム上の欠陥について。
一番ビビらせてもらったのが、セーブデータの日付が勝手に“NO DATA”に書き換えられてしまう症例だった。
これは、データの方はちゃんと残ってくれてるのでプレイする分には問題はないのだが、初見の際には心臓にそれなりのダメージを与えてくれる。
また、一度読んだ文章をスキップすると、まれに文章が表示されなくなる事がある。
あとは定番だが、誤字脱字が散見される点。
これは文章量の多い作品の宿命だろうが、できるだけ軽減してもらいたい。
発見した瞬間、現実に引き戻されちゃうからね。
あ、そうそうシナリオライターのこだわりか、徹底的に文章が漢字化されているんだよね。
まれに読めない単語とかが出たりして。
これはプレイヤーの学力に依存する問題だろうけど、日常的に使わないような字まで無理して漢字にしないで欲しい(笑)。
ところで、梨瀬成氏と話していて確信を持ったんだけど、この作品、ある意味では「ONE」や「KANON」の対極にある作品なのかもしれない。
しかも、プレイヤーを選ぶというおまけ付きで(笑)。
同じアドベンチャーゲームなのに、世界観からすれば、お互いの作品キャラクターにとって「想像すら出来ぬ絵空事の世界」。
にも関らず、良く出来た作品は「ストーリーがいいよ。シナリオが秀逸だよ」との決まり文句で一括りできてしまうんだから、困ったもんだ。
いやはや、お気に入りの作品を周りに紹介しまくりたい。
そんな気持ちが良くわかりましたよ、本当に。
紹介しまくられてしまった人には申し訳なく思ってるけど(ごめんね柏木さん)、それだけ価値のある作品だって、胸を張って言えるっていうのも嬉しいね。
全く、萌える日常の合間に漢泣きしてみるのも一興だわ。
ワシは泣かせて頂きました。
ゲームで泣いたのは「地球戦士ライーザ」以来だったかもね。
(音楽について)
BGMを聴いてみて、はたと(ファントム的表現(笑))思い浮かぶのは、殺し屋と少女の純愛を描く映画「レオン」かな。
ネタ的にも関連が無いとは思えないしね。
試しにサントラ(日本盤の方には海外盤には無いボーナストラックが収録されているので、購入するなら前者がオススメ)と聴き比べてみると、雰囲気とかなんとなくそんな気がする。
「Phantom」の音楽担当は外注みたい(?)なので、「レオンみたいな感じで作って下さいな」とかやりとりがあったんだろうか。
とにかく、ギターやピアノが本当にイイ感じなのだ。
あ、ワシの音才はというと楽譜すら読めないレベルなんだけど、とにかくイイんですわ。
個人的には“requiem”と“tema”が気に入っている。
素晴らしいファントム・ミュージックの数々なんだけど、音楽鑑賞モードが無いのが残念。
演奏ツール“Winamp”を用いてBGMデータを鳴らす事が出来るのがせめてもの救いかなぁ。
とかなんとかエラそうな事を言っちゃってるけど、やっぱり音楽に関してはダメダメな感性しか持ち合わせていないので、虎徹さんフォローよろしく。<こら
(教えて〜!)
あ、そうそう。
「Phantom」には“コルトガバメント”が登場するんだけれど、装弾数が8+1発になってる。
誤写かなって思ったんだけど、マニュアルの解説にも8+1発。
スタッフがスタッフだけに銃に関してポカミスはあり得ないとは思うんだけど、正確には7+1発じゃないかなぁ。
長い歴史があって、星の数ほどカスタムのある銃なんだけど、これはスタンダードモデルみたいだし。
なにか理由があるのかな。
詳しい人、情報下さ〜い。気になって仕方がないの。
(総評)
「Phantom」はハードボイルドだす。
ハードボイルドとは、アーネスト・ヘミングウェイに端を発する男の世界だす。
偉大なる負け犬の世界だす。
男の金玉だす。
18禁ゲームでこれに類するものといえば、アボガドパワーズの“黒の断章シリーズ”(続編、まだかや?)、アイデスの“ハードカバーシリーズ”ぐらいかな。
もっとも後者は、完全に方向性を捉え違えてたけれど。
いずれも、古き良きDOSゲー全盛期の作品でありました。
一昔前は18禁ゲームといえど、ジャンルはそれまた多様で、色々な試みがなされたはず。
現状は…、言うまでもなくタイトルの画一化、悪くいえば停滞。
それを打開するのは、失敗できない老舗ではなく、新しい血を注ぎ込む新規参入メーカーの活躍によるところなんだろうけど、どれこれも右へ習えだね。
まぁ、ソフトを買う側は普通倒産しないので、言いたい放題なんだけど(笑)。
そんな中、我が道を突き進むメーカーさんの登場には拍手を送りたい。
当然、デビュー作でこれほどの作品を送り出してしまった以上、次回作が気になるところ。
現在、ニトロプラスでは「オヤジの描き分けが出来てクリーチャーの描ける」イラストレーターを募集しているし、アンケートハガキの次回作の要望項目に「銃が出るなら買う」なんてあるし(笑)、安心して待っていられそうな感じかな。
なんにせよ、「Phantom」が業界にどんな影響を与えるのか、本当に楽しみにしているよ。
ゲームを売ってんだか特典やらキャラを売ってんだか、よく分かんない現状に一石を投じる事が出来るか否か。
おそらく、二匹目のドジョウを狙ったエセ・ハードボイルドもどきも出てくるだろう。
でも、上辺だけで真似したところで辿りつけないし、届かない。
なぜなら、シナリオライターの中にどれだけの蓄積があるのかという事が重要だから。財産と言ったっていい。
最近のアニメ作品を観るまでもなく、使われているお約束ネタの殆どは、パクリのパクリのパクリのパクリ(本当はもっと重ねなくてはいけないね)に過ぎない。
コピーを繰り返せば品質は劣化する。
だからこそ、原点をしっかりと押さえた上で、組み立てていかなくてはならない。
創作とは、ネタの本質をどれだけ掴んでいるかが重要な問題だからね。
「Phantom」の場合は、その拠り所の殆どをアクション映画作品から得ている。
映画ファンならば、元ネタが分かっているので「ニヤリ」とできるし、そうでない人も新鮮な感動を得られるだろう。
元ネタ映画を観て見たい、と思う人もいるかもしれない。
ところで、単に作品へ映画ネタを取り入れただけじゃないかと思うなかれ。
それが良い結果になっており、ユーザーが楽しんでいるという事は、いかにシナリオライター稼業の人間が映画を観ていないかという事だよ。
吸収してもいないものを放出するなんて出来っこない。
上っ面を取り繕うのがせいぜいだ。
ゲームやアニメから得たネタだけで再構築された世界なんて、惨めなもんでしょ。
最近は「ゲームに映画的表現を取り入れる」なんて耳にタコだが、肝心の映画業界そのものに元気が無い有り様だ。
興行的に苦しいだけでなく、ネタに困っちゃってる訳ね。
そんな現状の中、低迷してるはずの映画の手法を取り入れた作品がもてはやされるのは、いったいどういう了見よ?って事だよね。
余談だが、今ある日本のマンガは手塚治虫が映画の手法を取り入れた事がターニングポイントになっている。
「Phantom」がユーザーに新鮮な感動を与えたのならば、当然より強く影響を受けなければならない人達がいる。
パロディをオリジナルと勘違いして消費している顧客達を抱える、有象無象のシナリオライターその人だ。
同業者として、戦慄を覚えるかもしれない。
そして、己の作品の題材により多くのものを取り込む様になるのかもしれない。
ほんの少しだったとしても、業界が変わるかもしれない。良い事だよね。
このまま行ったって、先は見えているんだから。
そりゃ18禁ゲームの客層は多様だし、決して主流にはなり得ないジャンルだろうが、望みは出来たね。
で、最後にちょっと反省のコーナー。
「Phantom」スタート直後、オープニングで意味ありげな文章の洪水、銃とマスケラを手にした「綾波」をイメージさせる少女。
なんとなくエバンゲリヲンを連想してしまった。
こりゃ駄目っぽいな、と勝手に落胆してしまった。
すまぬ。
「あやなみ」呼ばわりしてすまぬ、アイン(仮名)。
私の中で過去最高のアドベンチャーゲームは「スナッチャー」、二番目は「メリーゴーランド(誰も知らないってば)」だったけれど、現在のNo.1は「Phantom」なのだ。
ええ、ええ「Phantom」を今年度の最高傑作として挙げる人達も少なくないだろうけど、私にしてみれば、少なくとも5年に一度の傑作です。
だって、「同人誌をつくるゼ!」なんて決意させてくれた作品に巡り合ったのは実に5年ぶりだからね(笑)。
PS:「Phantom」を買うなら、やっぱメーカー通販じゃよ〜。
オマケにポスターが付いてくるのじゃよ〜。
絵柄はマスケラとオートマグを手にしたアインなのじゃよ〜。
そのバックには3DCGで描かれた銃器、銃器、銃器なのじゃよ〜。
どっちかというと、アインの方が添え物なのかもしれんのじゃよ〜。
とてもじゃないが、18禁ゲームとは思えないような代物なのじゃよ〜。
ただ、荷物扱いに悪名の高い佐○急便を使うのは止めて欲しいのじゃよ〜。
グバッと包装に大ダメージを食らっていたのじゃよ〜。
その痕跡たるや、大事なポスターにまで及んでいたのじゃよ〜。
できれば、他の運輸メーカーで送って欲しいのじゃよ〜(泣)。
(注:現在ではポスターの通販サービスは終了しています)
それはそれとして、ゲームのシナリオ性についてどうこう言う人で「Phantom」やってないなら、とにかくやってみ。
やらなきゃ嘘だって。
(いい加減しつこいぞ)
(きっか)