My Diary 〜君が僕の妹だったら…〜

1.メーカー名:POCKET
2.ジャンル:ADV
3.ストーリー完成度:DO+(ダメオシニオワッテル)
4.H度:C
5.オススメ度:D→×(ダレニモススメナイ…)
6.攻略難易度:C…ぐらいかな?
7.その他:本来なら、絶対評論対象にしない一品。
しかし、俺っち個人的にやらねばならない作品だったのよ(理由は後述)。
(ストーリー)
季節は夏。
主人公は幼なじみの千沙とともに、墓地を訪れていた。
主人公の親友・剛が交通事故で亡くなってから一年。
剛の事が好きだった、主人公の妹を含めた三人の女の子が、もうすぐやってくる。
果たして主人公には、彼女らに笑顔を取り戻させる事が出来るだろうか…
で、やってみてまず一言、つうか結論。
こいつは駄作です。
しかも、はっきり言って俺っちが今までやった全てのHゲームの中でもワースト5に入る切れ味。
やること自体が苦痛だったのって、本当に久しぶりだったわ。
まあ、まずは各キャラクターの寸評からいってみようか。
ちなみにこれは各キャラを妹にした時を基準に書いているので、了承の程を。
・櫻木巴絵シナリオ
一言で言うと、やおいシナリオ。
と言っても、同人世界一般で言う意味合い(うーん、微妙な表現だ)ではなく、この言葉の語源になった本来の「ヤマなし、オチなし、イミなし」という意の方。
まず、すごく気になったのが、彼女を妹に設定した場合の素地設定のあまりの甘さ。
主人公と巴絵は、確かに血のつながらない兄妹なのかもしれないが、この櫻木家での二人の扱いの隔たりは一体何なのか!?
巴絵が才色兼備、完璧なお嬢様に教育されているのに対し、主人公はちょっと気が弱い、勉強の出来ない普通のにーちゃんに過ぎない。
シナリオ内だと、巴絵はまだ幼い頃、孤児施設からもらわれてきたそうだ。
彼らの父親が女の子に恵まれず、娘欲しさにもらってきたというのなら、それはそれ、納得もするし、無茶な設定だとは思うけど目を瞑ろう。
だけど、そうなると実子であり長男でもある主人公の櫻木家での扱いって、相当おざなりな事になってるんだけど……だって、コイツ跡取り息子だろー!?
主人公と巴絵が逆の立場だっつうんなら、まだ分かるんだけどねー。
まあ、このゲームをやってみればスグわかる事なんだけど、この主人公相当に情けないヤツで、プレイヤーの感情移入を思いっきり阻害してくれる男なんだけど、ひょっとして、父親に見限られてるっていう事?
それとも、男の子は放任する主義の家なのかな?
どんな設定だろうが構わないが、そこらへんの土台が作品中で全く語られないのは、かなり頭の痛い大問題点だ。
大体この父親という人物からして、このシナリオ中に登場するのは何と一回こっきり!
どうやら、娘に対してかなり厳しい英才教育を施しているらしい……という事以外、全く見えてこないのだ。
これじゃあね……
だけど、そんな事はさしたる問題じゃあない。
結局、このシナリオは何を語りたかったのか?
それが見えてこない事の方がよっぽど問題なのだ。
上で、このシナリオを「やおい」だと評したが、ホントにヤマもオチもイミもない。
ヤマと言えば、後半から出てくる「援助交際」の下りなのだろうが、結局それはテレクラに手を出していました、っていうオチなんだけど、主人公よ「何だ、援助交際じゃなかったのか、良かった…巴絵はまだ清潔だ」ってアホかー!!!!??
何で、妹の事をもっと考えてやれない? 叱ってやれない?
あげくに、最後の叱る選択肢を選ぶとバッドエンドおおぉぉ!!!???
勘弁してくれよ。
そして、オチとイミなのだが、これもなってない。
この作品のテーマの一つに、死んでしまった主人公の親友である剛に思いを寄せていたヒロイン達を、どうやってその呪縛から解放してあげるか? というのがあると思う。
そして、巴絵は三人のヒロインの中で最もその設定を引きずっているキャラだ。
にも関わらずこの主人公、彼女のためになる事など何一つしていない。
ただ心配してあげるだけ。
最後、暴漢に襲われる彼女を助けるけど、だから何? という感じ。
妹が襲われていたら、兄貴だったら助けるのが当たり前でしょ?
結局、このシナリオを最後までやってみても、巴絵にとってのカルマ、それが何一つ解決していないのがマイナスなのだ。
死んだはずの剛と主人公を混同視する点、テレクラに手を出してしまう程追いつめられた精神、そして再婚した母親と彼女が実は本当の母娘だったという事…巴絵に課せられたカルマはあまりに多いはずなのに、一つも納得いく回答が得られない。
これでは、「やおい」呼ばわりもしょうがないだろう。
逆に、巴絵以外の娘を妹に選択した場合は、櫻木家の無茶な家庭の事情という設定を押しつけられなくて済む上、テレクラに手を出した理由も明記されるので、シナリオとしてはまだまとまりがある。
最後の展開から考えても、こっちの方が彼女にとってのメインシナリオかな、とさえ思えてしまう。
中盤までは、内容はほとんど変わらないんだけどね。
でもそれだったら、この作品のウリである妹選択システムの存在意義って一体……
・小森のぞみシナリオ
3ヒロインの中では、最もマトモな性格の持ち主。という事で、ある程度は安心して見ていられたのだが……コイツは逆に脳天気過ぎ。
うーむ、マトモなヒロインいないんか?
まず、最初に大きな疑問点。
のぞみって、本当に剛の事、好きだったんスか?
とにかく露骨過ぎる程、兄である主人公にラブラブビームという名の怪光線を発射しまくっているのだ。
しかもストーリーが進展すればする程、その度合いは強くなっていく。
その間、剛の事を思い出したりする描写等は一切なし!
冒頭の場面以外、剛に関する下りが全く出てこないのは、ちょっとねえ……。
最後まで盛り上がらないシナリオだなあ、と思っていたら、実は剛と、主人公やのぞみの姉である美雪は以前つきあっていた、という事が判明する。
この辺りは「お、なかなかの設定じゃん」とも思ったけど、そこで終わり……アレ!?
この設定を活かせば、それなりに面白いシナリオ(例えば、のぞみはその事を知っていた…とかね)になったかもしれないと考えると、ちょっと残念だね。
話のまとめ方としては……うーん、無難と言えば無難かなあ。
結論から言うと、このシナリオでは主人公とのぞみはHしない。
そりゃそうだ、本当の兄妹なんだからね。
そんなコトしたらソフ倫が黙っちゃあいない。
でも、変に「実は二人は血のつながらない兄妹でした」みたいな設定にして、ムリヤリHシーン入れるよりはよっぽどいい。
禁断の領域に達しようとしていた二人が姉の事故をきっかけに、仲の良い兄妹に戻ろうと決心する下りはなかなか。
あともう一つ文句。
このシナリオやっている時、やたらとバグというか不具合が発生しまくった。
祭りのイベントで、のぞみを誘う選択肢を選んでいるのに、次のメッセージが「巴絵を祭りに誘ったが、にべもなく断られた」みたいなメッセージが出た挙げ句、サブキャラの千沙と祭りを楽しんだり、剛との事を姉に問いつめるシーンが二日連チャンで続いたり、結構メチャクチャだったゾ(しかも、それでクリア出来ちゃうんだから)。
彼女を妹にしなかった場合は、上の設定を引きずったままで展開するので、最後にあっさりHして終了。
おいおい、剛の事はどうなったのー?
何かやたらとモーションかけてくるのぞみを見てると、単なる淫乱女としか思えないんだよなー。
それから、エンディングののぞみがアイドルになっちゃった、という下りも突拍子がないよ〜。
もー、減点1億!
・麻生リカシナリオ
あの〜……どないせいっちゅうの、コレ?
とにかく、コイツ、やたらめったらムカツく。
っていうか、俺っちだったらビンタの一発や二発じゃすまねえぞ、ホンマ。
気の強い娘をヒロインにするというのは、Hゲームの世界ではもはやお約束、と言うよりこういうマルチエンドタイプの作品なら、どういう風に描くかが命題になっている感すらあるジャンルだ。
徹底的にイヤな女を目指したというのなら、まあそれもよかろう。
だが、こんなのがヒロインの一人などというのは、もはや正気を疑うよ。
実際、攻略対象なのだからね。
正直、作品を完クリしないと評論しちゃダメという九拾八式鉄の掟さえなければ、コイツのシナリオは飛ばしただろうね、マジで。
事あるごとに主人公の事を馬鹿にし、気に入らないことがあればわがまま言いたい放題、自分が不利になれば「ステイツは〜」とダメ日本・アメリカ万歳を唱えはじめる。
要するに、自分のアイデンティティを保つために、他人を貶めなければ生きていけないヤツ。
俺っちが最も嫌悪する最低のタイプのクズ女だよ、コイツは(しっかし、実生活でもこういうタイプを知ってるよ…笑)。
ただ、正直言うと三人のヒロインの中では、最も剛が死んでしまっているという設定を活かしたシナリオではある。
剛との思い出の残る海水浴場に行きたがらなかったり、縁日での金魚すくいのイベントで拒否反応を示したりね。
何より、剛を好きになった理由がシナリオ内で提示されているのがいい。
ただねえ、リカシナリオに限らないんだけど、これらのイベントが凄く散発的にばらまかれているだけなんだよねえ。
伏線もなにもないから、面食らう……って言うよりは、「ふーん、そうだったんだー」みたいな、事の顛末を知った程度の感想しか得られないんだよな。
リカを妹に選択しなかった時のシナリオも、あまり変化なし。
「私の事、イヤな女だと思ってるでしょ?」みたいな事を、最後の方で言うのがポイント高いけど……そんだけ。
あ、完全なハッピーエンドにならないのも○かな。
・サブキャラのシナリオ
五十嵐千沙シナリオ
のぞみ以上にラブラブビームを発射しまくっているのが彼女。
イベントの数自体は少ないものの、登場回数が比較的多めのため、サブキャラの中では一番見られる部類には入る。
キャラクターとしても、3ヒロインよりキラリと光る好感度でイイ感じ。
だけど、Hシーンがねえ…強引過ぎやしないかな。
どうも「ヒロインを妹に出来る」というシステムが最大の仇になって、割を食ってしまったキャラという印象が拭えない。
ヒロインの素質を十分に持っているキャラなのにおまけ扱いで、CGも二枚ポッキリっつうのはなあ……
櫻木涼子シナリオ
えーと、何てコメントしたらいいんだろ?
とりあえず、この人は淫乱でした。終わり。
小森美雪シナリオ
これも、何だかな〜。
このシナリオ自体がのぞみシナリオからの派生(正し、のぞみを妹に選択するとダメ)なので、彼女が昔、剛とつきあっていたという設定は残ってはいるみたい。
だけど、それを匂わせるセリフはあるものの、明記は一切されない。
また頭痛かったのが、Hする当日に「一日だけ俺の恋人になってくれ」とか言うクセに、その後何のイベントも起きないままエンディングで美雪とデートしているって、どういう事スか?
…………
なめんななめんななめんななめんななめんななめんななめんなおー!
パメラシナリオ
何スか? コレ!?
何と、彼女がらみのイベントがエンディングを含めて3つしかない!
しかも、あのエンディング…バッドエンドじゃないスか!?
いくらサブキャラのシナリオとはいえ、ここまであからさまな手抜きを見たのは本ッッッッッッッッッッ当に久しぶり。
これならパソコン版「To Heart」の理緒シナリオの方が、数億倍マシ。
をいをい。
(総評)
とにかく、全ての点において激アマ。
これが、この「My Diary」という作品の全てだ。
まず、何をやりたかったのか、全く見えてこない。
妹との恋愛を描きたかったのか、死んでしまった剛とヒロインとのしがらみを語りかったのか、はたまた単なる学園モノがやりたかったのか。
「おにいちゃん属性」(ばーいきっか)を刺激するには、あまりにもお粗末な各ヒロインの設定とシナリオ展開、全然効果を発揮しない剛の設定、突出したものを持っているとは到底思えない学園生活。
特に剛の設定がまるっきり活きていないのは、もはや致命傷としか言いようがない。
また後から知った事なのだが、この作品のキャラデザイン、アニメーションとストーリーの両立で話題になった「GREEN」と同じ人なんだって?
なーんかね、このゲームを見てると
「“To Heart”かなんかで、のぼせ上がっちゃったスタッフが、とりあえず有名な原画マンに絵を描かせて、学園モノ作って、ついでに小遣い稼ぎも兼ねちゃえ。大丈夫、そこそこ売れるさ」
みたいな感じがひしひしと伝わるんだけどね。
少なくとも、次回作があったとしても、俺っちはもう手を出さないだろう。
つまり、そこまで信用をなくすほどに破壊力のあった作品だった、という事で結論にしようと思う。
(総評その2)
かつて、今から10年以上も前、東京にある某編集者養成専門学校の有志数人が「おねがい! やきとり丼」という随分ふざけたネーミングの小説同人誌を発行していた。
そして、そのメンバーの中には梨世成…現在の梨瀬成の他に、数人のライターが執筆しており……って全然話が見えないって?
うーん、結論から言っちゃうとここのシナリオライターさん、俺っちと知り合いなんだよね。
もちろん、今は音信不通なんだが。
そして、俺っちに同人世界という悪い世界(笑)を教えた張本人でもある。
それと同時に、俺っちの文章の師匠…とまで言わなくても、多大な影響を与えたヤツでもある。
だから、期待してたのよ。
偶然、彼がこの作品のシナリオライターだという事を知って、是非やらねばなるまいと思った。
ヤツの文章力は、俺っち自身が一番良く知っていたからね。
そしたら、結果は上記参照……
はっきり言ってショックだった。
彼ほどの技量(文章力)をもってしても、ゲームという舞台に上がればこのていたらくなのだと考えると、ゲームの世界というものが、いかに大変なトコロなのかというのを痛感させられた。
彼がこの文章に目を通す事は恐らくないだろうが、もし読んでいたのなら、かつての盟友だった俺っちからの、だからこその苦言だと思って聞いてほしいのである。
(梨瀬成)