人体発火現象
 生きている人間が、突然高熱の炎を吹き出して燃え上がってしまうという超常現象で、現実に発生した事件の中でも、

1951年7月2日、アメリカ・フロリダ州セントピーターズバーグで起こったメアリー・リーザー事件
1958年1月29日、イギリス・ピムリコで起こったエディス・ミドルトン事件
1964年11月8日、アメリカ・ペンシルベニア州で起こったヘレン・コンウェイ事件
1966年12月5日、アメリカ・ペンシルバニア州で起こったジョン・アービング・ベントレー医師事件

 …等はかなり有名のようだ。

 欧米では古くからこういう現象があったらしい事が伺え、消防署等では「Spontaneous Human Combustion(SHC)」と称されている(これはゲーム本編でも使用されている単語)。
 
 事件(現象)の特徴としては、以下のようなものが挙げられる。

1. 何の火の気もない所で発火している。
2. 肉体はおろか、骨すらも残らないほど完璧に燃え尽きるか、たまに頭蓋骨が握り拳大まで収縮している場合がある。
ただし肉体の一部で全く燃えずに残る部分もあり、一番多い例が“膝から下”の残留だ。
3. 燃えるのは極めて局所的で、人間の身体や身に付けていた衣服までしか燃えない。
被害者が座っていた椅子やソファーには、跡が残るものの引火するケースはない。
4. むわっとした暖気が現場に漂い、甘ったるい臭いが充満しているケースが多い(これは屋内発生の件)
 
 とにかく、本来発生しない筈の事態が突然起こるというものに変わりはないようだ。
 人間の肉体は70%以上が水分であり、また骨も燃えにくい物質で構成されているせいか、もし意図的に人間を完全に焼き尽そうとしても、摂氏3,000度の高熱で12時間以上かけたって不可能なのだ。
 ましてその温度が現場に発生していたとしたら、人間だけの被害では決して済まない。なにせ太陽の表面温度以上なのだから…

 被害者には「肥満体質の女性が多い」「室内発生のケースが多い」などの共通点が見られるものの、当然例外ケースもあるためにまったく原因が究明出来ないのだ。
 現在でも、仮説をいくつか並べる事しかできない状態だ。
 非常に特殊な自然現象と言わざるを得ない…


 現在挙げられている説の代表例としては…

A.脂肪引火説:
 ゲーム本編内でも触れているが、“ヒューマンキャンドル現象”という説で、密閉された室内で衣服などから引火、じっくり時間をかけて肉体を焼く…というもの。
 当然被害者は、引火しているにも関わらず動けないという状況が必要な上、とにかく時間がかかる。
 ましてや屋外での事件も報告されているし、肉体の一部が残る説明がつかなくなる。


B.地磁気異常・レイライン説:
 レイラインについてはゲーム本編中にも登場するが、第八章終盤の説明と同様の説だ。
 日時が特定できた事件はいずれも地磁気異常が観測された日であった事や、遺跡や寺院などを繋ぐ「レイライン」上で発生している事に注目している。
(「レイライン」とは、風水で言う“竜脈”。大地のエネルギーが流れる道筋と考えられている)
 ただしこれも、“何が人体を発火・燃焼させるきっかけとなり得たか”までは追求出来ていない。
 「火焔聖母」ではこちらの説をベースとして、独自の発火現象のメカニズムを構築している。
 流れているエネルギーとされているのが、未確認エネルギー“EIO”だったという顛末だった。


C.球電発生説: 
 あまり知られていないが、雷・稲妻は空から地上に降り注ぐだけではなく、球状になって一定時間滞空する場合もある。
 これを“球電”と言い、数千度にも達するエネルギーが、地上を数十秒から数分間間もフラフラするというケースも起こりうるという。落雷のすべてのエネルギーの凝縮体であり、2億8000万ジュールもの膨大なエネルギーを持つものも報告されている
 これらの研究が盛んなロシアでは、ボイラー内の7000リットルもの水が、一つの球電によってたった10分程で完全蒸発させられてしまったという事故も報告されているという。
 “球電”は壁をすり抜ける上に、水や金属・肉体などに引き寄せられるという性質も持っている
 もしもこれが触れてしまった場合発生しうるのは「燃焼」ではなく“蒸発”だ。
 これは「プラズマボール」とも呼称され、本編内でも真奈瀬が自説として唱えている。


D.大気プラズマ説:
 凄まじいエネルギーを発生するプラズマだが、これはかなり不可解な特性を持っているため、これの影響によるものでは…という説。
 漠然としているかもしれないが、これは「発生理由があまりに多岐に渡る」ためである。
 電磁波から雷まで、プラズマ発生の原因となる高エネルギーの出所はいくらでも考えられる。
 大槻教授が何でも「プラズマだ!」と唱えるのも、決して適当やいい加減ではないのである。
 実は、「雷」のメカニズムというものは現代科学でもほとんど判明していない
 先の球電にしても、事象が確認されているだけでその理屈はまだ完全に解明はされていないのだ。
 この説は、「球電は主に雨の日などに発生する」という理由から説明ができない件(晴れた日に起きた、とか)に対して唱えられるもののようだ。

 …などがある。
 これからの研究で、さらに謎が解明…されるかどうかは不明だが、さらに色々な説が登場するだろう事は想像に難くない。
 
 ちなみに、なぜかテレビなどの特番でこれらの事件が説明される場合、「ヒューマンキャンドル現象」が一番例として取り上げられる傾向があるようだ。


へへっ…、燃えたろ?