トリノの聖骸布
 1353年、フランス・リレイのシャルニー家の秘蔵物として発見されたもので、現在はイタリア・トレノの聖ヨハネ大聖堂に保管されている436センチ×110センチ程の大きさの布。
 ちなみに一般公開には、1898年5月まで待たなくてはならなかった。

 その表面には男の前後の全身像がネガ状に浮き出ており、ポジ化或いは明暗反転を施す事によって、キリストと思われる人物の姿がはっきりと映し出されるようになっている
 いわば「天然写真」という訳だ。

 その像は福音書に記されているというキリストの姿とあまりに酷似しており、

1. 十字架に掛けられた時の傷跡が手首と足にある(一般には手のひらと言われているが、それだと磔時に自重を支えられないらしい)
2. キリストは鞭打ちの刑を受けた事になっているが、それと思われる傷跡が100以上も確認出来る
3. “いばらの冠”によって負傷したと思われる流血跡が、頭部に確認できる
4. “ロンギヌスの槍”で有名な串刺しによる止めの跡が、肋骨の辺りに確認できる
5. 古代ユダヤの習慣通り、目の上に硬貨が乗せられており、さらにその硬貨は当時本当に使用されていたものだと確認された
6. 当時ユダヤの埋葬では、死体に沈香と没薬を塗る習慣があったが、死体からの蒸気によってこれが変質を起こし、その結果変色したらしい事が推察された。
しかもこれは「人体から発する水分でも発生しうる現象」である事が実験によって解明され、それに要する時間が“30〜40時間”程度である事まで判明している。

 (注:キリストは金曜日の夕方に埋葬され、日曜日の早朝に復活したとされている事に注目)


 …等々、様々な研究結果によってその特徴が数多く挙げられてきた。
 同時に、これだけの情報が確認されるほど明確に写し出されている事に驚愕させられる。

 しかし、現在では“ニセモノ”とする説の方が有力になっている。
  
 1977年以降、アメリカなどで「聖骸布の試料片に絵の具の跡」がある事が発見されてから“否定派”傾向が強まり、炭素十四法による炭素崩壊測定が行われたが、それにより「1260〜1390頃に制作された物」である事が結論づけられた(1988年9月)。

 ただこれも、最終結論とするのは早計だ、という論もある。
 宗教上の関連問題から、これをニセモノとしたいローマ・カトリック教会の陰謀によるものだという説まで浮上する。
 聖骸布の“天然写真”を分析すると、キリストは刑執行後も傷を負いながらまだ生きていた事がかなり確実であるらしい(出血量など、色々条件があるらしい)。
 もしこれを本当と認めてしまうと、十字架上でのキリストの死と復活…というカトリックの根元信仰を大きく妨げる可能性にも繋がるためだ。

 事実はいまだ不明瞭だが、聖骸布という“謎の根元”が存在し、それの真贋に振り回される人々はこれからも多く出現するだろう事は明白である。
 「火焔聖母」ではこれそのものは題材として使用せず、また別の“聖骸布”が発見されたという前提で物語が構築されている。


 チャーシューメン、肉抜き…