センチメンタル・グラフィティ

 
 憶えているよ、あの約束…憶えているよ、君たち素敵な女の子の事…
 たとえ、夜空の星になったとしても…
 その夏、全国にやたらとプレイボーイな幽霊の噂が広がるのであった。
 
1.メーカー名:NECインターチャネル
2.ジャンル:恋愛SLG
3.ストーリー完成:C
4.H度:…?
5.お薦め度:…ゲーム性重視派:D、絵が好きな人:B、勘のいい人:E、不思議な言葉が好きな人:A
6.攻略難易度:D(あることを目指すのなら、限りなくA)
7.その他:一週間であれほど値崩れしたソフトは見た事ない
 
(ストーリー)
 …いまさら私から言い直してもしょうがないでしょ? なので簡単に。
 小・中学校時代に転校しまくっていた主人公が、昔の約束を守るのと恋人探しのために、全国に荒修行に出かけるお話。
 
 
 私はその日を待ち望んでいた。

 忘れもしない1998年1月22日。
 朝早く、秋葉原の地へと行ってみると、そこには手にゲームショップの袋とメガバズーカランチャー(やたらでっかい販促用ポスターね)を持った者達が待ち構えていたのであった。
 何でいまさら、こんな古い作品を取り上げたかというと…

・理由壱:『2』発売記念
・理由弐:九拾八式で、取り上げられていなかった
・理由参:私は大ファンである


 
と、まあ以上の点を踏まえた上で、後藤夕貴氏に依頼を受けたからなのですが…
 『2』をやる前に、あえてもう一度この作品を見なおしてみようと書いております。

 で、本格的に書く前に一言書いておきます。
 「私はこのセンチの絵(もちろん原画ですよ)を思いっきり気に入って、あの絵は、ある1ジャンルにおける完成形だと思っています。しかも、ゲームも気に入っているので、多少差っ引いて見て下さい」…
「誰だ! 絵が『同窓会』や『フレンズ』と一緒って言った奴は!」
 
 純粋にゲームだけで判断するので、発売前の原画集やら歌やらファンクラブやらの一大ブームのことはここでは書かないことにします(1stウィンドウと小説はちょっと触れるけど)。
 
 はっきり言いましょう、ゲーム性は二流です。
 バランスが悪いですね。
 なんてたって主人公、一日に5000円も稼げるバイトやっておきながら携帯電話持ってないんだもん
 これだけでどれほど時間的に余裕が生まれてくるんだろうか。いや、余った時間をどれほど上手く使えるんだろうか。
 いちいち自宅帰って、電話して約束しようと思ったら
「ぎゃー、留守電が溜まっとるー、1件1時間もかかるなー。そんな女は要らん」
『うみゅうぅぅ、ダーリ〜ン。会いたいよ〜』………ブチッ
「公衆電話からで良いから、約束しろよ」
 悟っていただければ幸いです。
 そして、次にだめなのが乗り物の時間が設定できないことでした。
 毎日決まった時間…飛行機だったら6時、12時、18時だったかな…そうじゃないと乗れませんでした
 特にその飛行機は何度となく泣かされましたね。
「今の時間で乗れれば、北海道(長崎)のデートに間に合うんだよー」と「学校に遅れてしまう」の二点がかなり印象に残っています。
 これらを含めて、一連のデートの流れがテンポ悪かったですけどね。

 さらに、こんだけ前準備をして会いに行ったら普通のデートイベントで、行動力が増えなくてがっくり来る時もあります。
 “行動力”という、あの足かせ以外何物でもないパラメーターのせいで何回デートにも学校にも遅刻したことか。
 しかも、学校に遅れたりしたらペナルティーで減っちゃうし。
 あとあれですね、今現在、女の子がどれだけ逢いたいのか分かる「せつなさマップ」。
 ほっとけばほっとくほどハートが赤くなって騒ぎ出すやつです。
 ある程度ためて(じらして)会いに行くと好感度大幅アップみたいなんですが、このゲームの攻略ってどんなに頻繁に会っていても、行動力がたまる特種イベントを起こしたモン勝ちなんですよね。
 よって、大して役に立たないパラメーターでした。
 やっぱりこの関係で一番印象に残っていたのは、あれです、

「せつなさ炸裂」。

 合言葉にもなっていたやつです。

 逢いたい気持ちが溜まり溜まって爆発するんですが、『ときメモ』みたいに誘爆するわけではないので、狙っている女の子以外は、まあ多少ほっといていいかと…。私も、最初の方のプレー時は、
「時間の管理、むずかし。こやつをこの時間まで進めないと、ザッピングできないじゃないか」
「炸裂した、炸裂。渋谷の街が炸裂じゃー」などなど。

 『街』はすごく面白いですね。
 ゲームとしては、同じ日に発売された『センチメンタル・グラフティ』より遥かに面白かったです。…!?

 話がそれた気がしますが、システムが力不足、テンポが悪い、絵が原画とかけ離れているなどの理由により一人攻略するだけで、かなりの根気を必要とするダルさになっておりました。
 これが12人分あるんだもんね。

 しかし、ただ一つこのゲームをスリリング、且つやる気を誘う素晴らしい方法があります。
 実際やった方はいる事でしょう。

 それは“12人同時攻略”
 しかも“遅刻・欠席・炸裂・デートのすっぽかし”一切なしでやることです。
 簡単に言うとジゴロプレーですね。
 私の周りでは、一人ずつの攻略で力尽きてしまった人ばかりなので実際の難易度は把握できないんですが、私の感想はやたら難しかったです。
 毎週末セーブ&ロードの嵐で、それでも駄目な場合は、デートの約束なしにゲリラ的に街まで行って、偶然の出会いに期待する。
 そこで、特種イベントが出るまでさらに粘り、帰りはヒッチハイクで帰ってくる。
 そこでもセーブ&ロードの嵐が待ち受けている。
 そんなことをやっていたら、月の休日の6〜7割くらいイベント画で埋まっていましたね。
 夏休みなんか、地方行って女の子と逢ってバイト料のいい長崎と北海道でバイトしまくって、また日本横断をするとかやってたら2〜3日しか自宅に戻れませんでした、ほぼ寝るためだけに。
 そんなことやっていたら、最後には行動力が210を突破していましたよ
 なんか金も、一人ずつの攻略時の3倍くらい余りました

(総評)
 発売前、盛り上がっていた分、ゲーム的な失敗は必要以上に目立ってしまうのはしょうがありません。
 また、NECインターチャネルお得意の焦らし作戦も、かなり有効に働きましたからね。
 結局、1年くらい延びたんだっけ? まあ、否が応でも期待は高まりますな。

 ームをダルくしているのは前述した要因もあるんですが、やっぱり想い出話を特種イベントのたびにちょっとずつしか話さないヒロインと、申し合わせたように思い出していく主人公たちの態度にあるような気がします。
 だって、小説で読むと(多少の非現実さは目を瞑るとしても)いいお話だと思うのに…
 あとあれか、評価を下げてるのはオープニング!
 暗黒空間の中で女の子たちが、泣いたり、泳いだり、かまえたりするあれ
 この存在もかなりいただけなかったですね、見てくれ悪いもん。
 けど決して、センチメンタル・グラフティ本編は、恐ろしいほどのクソゲーでもなかったし、一連のグッズの中でも失敗作ではなかったと思います。
 失敗作って言うのは、PSソフト『センチメンタル・ジャーニー』にこそ与えられる称号だと思います。

 それと、どうしてもゲームに遊びが感じられなかったんですよね
 なんかキツキツした感じがあります。
 ここはどかっと、もっとも無理&無駄であろう東京・金沢間のフェリーでも作って欲しかったですね。
 しかしこの主人公は12人もの可愛い女の子と、普通に生きていたのでは絶対にない想い出を持っていながら、東京に13人目の彼女がいたりします。
 気付いた人いるかな?

 まっ、こんな所が今から思えるセンチメンタル・グラフティの感想でしょうか。
 では最後に、この恵まれた設定と、職業不詳の親を持つ主人公に一分間の黙祷をささげたいと思います

「黙祷だりゅん!」


(エルトリア)

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