君が望む永遠

 蘇る過去の想いと、綴ってきた今の想い…。どちらを捨てるのがより悲しいのか。

1.メーカー名:Age
2.ジャンル:マルチシナリオADV
3.ストーリー完成度:B
4.H度:C
5.オススメ度:A
6.攻略難易度:D
7.その他:苦しいのは自分だけじゃないって言葉を主人公に贈ろう。
 
(ストーリー)

 主人公:鳴海孝之は白稜大学付属柊高校3年生。
 親友:平慎二と、水泳で実業団入り確実と言われる速瀬水月との仲良し3人組だが、ある日、水月の親友である涼宮遙から告白され、断れずに付き合うことになった。
 やがて本気で遙を好きになり、孝之は遙と同じ白稜大を受けるべく、猛勉強を始めた。
 1か月ほど経った8月27日、遙とのデートに出掛けた孝之は、遙が欲しがっていた絵本『マヤウルのおくりもの』を見付けた。
 そして、たまたま出会った水月が欲しがった誕生日プレゼントの指輪を買ってやったため、デートの待ち合わせに遅れてしまう。
 待ち合わせ場所に到着した孝之が見たのは、ついさっき突っ込んできた車に轢かれた遙を運ぶ救急車だった。
 命は取り留めたものの、遙の意識は戻らなかった。
 孝之は、自分が遅刻したせいで遙が事故に遭ったという責任感に押し潰され、ヌケガラのようになって毎日遙を見舞う生活を続けた。
 大学受験も放り出して日々病院に通うそのあまりの痛々しさに、遙の父は、もう病院に来ないでくれと伝える。
 そしてやることを失った孝之は、やがて立ち直り、支えてくれた水月と付き合うようになった。
 2人は、遙が目覚めたら、自分達が付き合っていることを伝えようと約束していた。
 そして遙の事故から3年が過ぎようとするころ、突然遙の意識が戻った。
 だが、遙は3年経ったことを認識できない…。


 リアルな痛みを伴うゲームだ。
 このゲームの中で描かれているものは、一言で言えば“昔の彼女と今の彼女のどちらかを選ぶ”もしくは“どちらも選ばず他の人と付き合う”という選択でしかない。
 普通ならほとんど悩む必要のない選択だが、そこに“3年間植物人間状態だった昔の彼女が目を覚ました”“事故に遭ったのは自分が遅刻したせい”という要素が加わることによって二股状態が発生する。
 そして、決断を迫られるこの状況に、主人公孝之が優柔不断ぶりを最大限に発揮して事態をややこしくする
 はっきり言って孝之には感情移入しにくいのだが、むしろ周囲の女の子達に感情移入できてしまうので、とても面白い。

 では、例によってクリア順に見ていこう。

(速瀬水月シナリオ) 評価A
 メインのエンディング、というよりベストエンド的位置づけになっている。
 現在の彼女であり、遙を失ってボロボロになった孝之を支え続けてきた存在でもあることから、水月を選ぶのが当然といった感覚もある。
 一方、水月の側では、高校時代、遙のために近付いたはずの孝之を好きになってしまって苦悩していたという過去があり、しかも水月が指輪をねだったために孝之がデートに遅刻し、そのせいで遙が事故にあったという負い目もある。
 水泳という自分の道を結果的に捨てざるを得ないところまで追い詰められていた水月は、周りが見えていた分だけ、孝之よりもむしろ辛い立場だったはずだ。
 この辺りが孝之の自己完結する欠点の表れなのだが、このシナリオ中ではあまり嫌悪感を抱かずに済んでいる。
 散々悩んだ末に、水月を選んだ孝之は、以後、茜の告白にも動じることなく、遙よりも水月を大事にするという方向性をはっきりと示している。
 孝之の苦悩の1つとして大きいのは“仲良し4人組でいられなくなる”という不安だ。
 それが、このエンドでは、遙が抜けることで結局壊れてしまった。
 それを認識した上で、それが遙にとっても水月にとってもいいことだと判断できた点では、孝之を褒めてやってもいいと思う。
 また、茜の想いにようやく気付いた後も、きちんと断っている。
 そして、何よりも嬉しいのは、数年後であるEDの時点で遙の姓が「村上」になっていることだ。
 これは、『ほんとうのたからもの』の作者が遙で本名で出版しているという前提でのみ成り立つ話なのだが、遙は結局、この痛手を乗り越えて新しい恋をし、結婚しているということになる。
 人は、どんな失恋をしてもやはりまた誰かを好きになると鷹羽は信じている。
 遙が誰かと結婚し、水月や孝之、慎二と一緒に過ごした日々を宝物だと振り返れるようになったことが嬉しい。
 連絡を取ろうと思えば、遙は水月の実家を通していつでも連絡を取れる。
 それを敢えてせずに、思い出の『マヤウルのたからもの』と似たタイトルで、絵本という形でメッセージを伝えたことが遙なりの気遣いだったと思う。
 つまり、孝之達に絵本を見て気付くだけの余裕ができたとき、きっと想いが伝わると信じてのやり方だったと。
 遙を投影しているであろう“おこじょのハル”は、みんなでお昼寝したあの丘でずっと待っているというメッセージを送っている。
 このゲームでは、ED曲『君が望む永遠』が流れるのはメインの2人と茜のエンドだけだ。
 水月エンドでは、EDに被るのは遙による『ほんとうのたからもの』前半の朗読で、ED後は水月による続きの朗読だ。
 恐らくこの時点で、遙と水月の再会は果たされているだろう。
 バックに流れる『ほんとうのたからもの』では、4人の再会が果たされたかどうかまでは描写されない。
 だが、物語が終わったページに書いてあるであろう挿し絵には、ケンカ別れした4人のおこじょがふたたび丘で出会い、ハルが涙ぐんでいるシーンが描かれている。
 ED曲の「季節は流れ、心は解けて、あの日の痛みを受け入れてく」「みんなで微笑む明日信じて」「誰もがみんな涙堪え歩いていく あなたに会えた丘の上、星が降る」という歌詞には、このエンドが象徴されている気がしてならない。


(涼宮遙シナリオ)評価A’
 水月エンドと双璧をなすもう1つのメインルートだが、過去の恋人への想いが再燃してしまった逆転劇が描かれるこのエンドでは、途中から孝之の行動に疑問がつきまとうため、一歩劣っているように感じる。
 結果的に水月が身を引く形で終わってしまうことも、孝之の主体性が希薄だと感じる原因だ。
 ただ、苦悩する水月の苦しみはよく描けており、“誰でもいいから優しくしてほしい”と慎二に抱かれて後悔する経緯は、好き嫌いはともかく共感できた。
 それでも慎二との友情を失わず、あの状態の水月を放っておけなかったのは仕方ないのかもしれないと考えた孝之は、ちょっと偉かったかも。
 それが水月を見限る理由にならなかったことも高く評価できる。
 この態度が常に前面に出ていれば、孝之に対する鷹羽の評価はもっと高かっただろう。
 ラストで、孝之と遙を見る辛さに耐えられないからと去っていった水月がいつか帰ってくることを信じる3人と、ED後が再会した4人の写真だけで終わることも、余韻を引いて良かった。
 この写真の中では、水月は孝之が買ってやった指輪をしていない。
 去っていく水月が「もう少し持っていさせて」と言っていた孝之への想いの象徴である指輪は外された。
 そして、ED中に表示されるグラフィックが、ほかのシナリオではモノクロで本編中に使用されているのに、このエンドだけはその後の水月と慎二がカラーで描かれている。
 同じ職場で働いているのか、それとも別の職場なのかは知らないが、ED後の写真を見ると、この2人はうまくいったのかな、とも思える。
 水月にとっての救いであり、高校時代から水月を見つめていた慎二の恋が叶ったと考えれば、ある意味八方丸く収まったとも言える。
 一応、茜にとっては、姉の恋人(最終的には夫)ということで納得できる展開だろう。

 このシナリオでは、遙の退院がエンディングの山場として描かれるが、このシナリオでだけ天川が病院からいなくなったことが明言される。
 星乃が言った「人間、生きてりゃ何だってできるよねぇ」という言葉から、天川が死んだんだろうなということが予想されるのだが、本当の重みは、天川シナリオをクリアして初めて分かるのだ。


(涼宮茜シナリオ)評価B
 メインの2人のエンド以外で『君が望む永遠』が流れるのはこのシナリオだけだということが、茜というキャラの重要性を物語っている。
 茜や水月が当初から孝之を好きなことは、ゲームを進めていけば分かることだ。
 慎二も気付いているわけだし、気付いていないのは鈍い孝之だけだ。
 水月シナリオで語られることだが、茜はかなり複雑な立場にある。
 茜は、遙が事故にあって以来、遙を心配し続ける孝之を見てきた。
 そんな孝之を見て、遙に嫉妬する自分に苦しんできた茜にとって、遙の妹であるということは大きな枷だった。
 遙が意識を取り戻したときのことを考えれば、孝之に告白することはできない。
 だが、やがて孝之は来なくなり、その後水月と付き合い始めてしまう。
 水月エンドでの茜の慟哭「悔しい…どうして私黙って見てたんだろう。どうして、あの人が鳴海さんの心に食い込んでいくの、ただ黙って見てたんだろう!! それを許すくらいなら…どうして私…自分で…」というのが、茜の立場をよく表している。
 茜エンドでの「姉さんを傷つけてでも…私…」という茜の決意は、そういう部分を乗り越えるほどにのめり込んでしまった茜の本心だ。

 だが、水月に対する反発はもっと難しい。
 水月は、いざとなれば遙と距離を取ることで“親友の恋人を奪った”という負い目から逃げられる。
 そう考えたとき、茜は“逃げられるなら孝之と付き合える可能性がある”ことを知り、そう考えること自体、遙に対する裏切りになると思い知らされるのだ。
 この時点で、茜にとって水月ははっきりと恋敵になっているわけだが、それをストレートに言えない微妙な立場が、孝之に対する反発と水月に対する敵愾心にならざるを得ない。
 だから、水月が遙の事故に責任を感じて記録を落とし始めたことへの対抗意識から、自分は何としても記録を伸ばし続けようと努力した。
 そういった葛藤の描写は、このシナリオ中では若干希薄だ。
 主に遙との関係に重点が置かれているため、水月に対する複雑な心境はほとんど触れられていないように感じるのだ。
 一人称であるため、孝之自身が気付かないことは描写されないわけで、水月のように元々近くにいれば、態度で色々出てくるわけだが、茜のようにあまり接点のないキャラが相手だと、表面に出ない本心などは分かりにくいのだ。
 その分、過去での茜は好き好き光線出しまくりで、ラストでいきなり「実は昔から好きでした」と告白されてもまったく違和感が出てこない。

 もっとも、鷹羽としては、ハッピーエンドである茜エンドより、遙と孝之の間に出来た子供を、再び意識不明になった遙に代わって茜と孝之で育てるという茜妊娠エンドの方が重くて好みだったりする。


(大空寺あゆシナリオ)評価C
 大富豪のお嬢さんという、よくあるパターンながら最も現実離れした設定のあゆのシナリオは、“遙が目覚めた後、唯一それまでの日常を残す世界”であるバイト先のファミレスに逃げた孝之の物語となる。
 結局、孝之は、「遙を選ぶのか、水月を選ぶのか、早く決めろ」と言ってこない相手を選んだだけのことであって、逃げたに過ぎない。
 ただ、現実問題として、全て捨てて逃げるという選択肢は当然ありうるので、それについて文句を言うのは正しくないかもしれない。
 それでも、遙に別れを告げに行き、しかもそれを遙の父に宣言までしておいて、はるかにせがまれてキスして帰ってくる孝之は、全編通して最も情けなかった。

 そして、あゆが水月に言った「私はこんなに頑張りました。だから褒めてくださいってわけ?」というセリフは、あゆ自身がクリアしていない問題なのだから、説得力のカケラもない。
 第一、本当に自分の人生を孝之への想い故に変えてしまった水月に対しては、本来なら破壊力などないはずの攻撃だった。
 水月は、孝之の態度にイライラして、しかも大事な話の最中に別の女の電話に呼び出されて出掛けていく孝之を信じられなくなったために、あゆに対抗するほどの気力がなかったのだと思う。
 大空寺の息のかかった世界では生きていけなくなった2人は、水月を傷つけたことに見合う対価を払いながら生きていくのだろうか。

 それはそれとして、ラストシーンのあゆのくしゃみwith精液は、久方ぶりに吐き気を催すに十分な破壊力だった。


(天川 蛍シナリオ)評価B
 看護婦の1人である蛍のシナリオは、メインのキャラでもないのに、結構デキがいい。
 何がいいって、孝之がちゃんと前向きに生きるようになって終わる。
 水月の方から別れ話を切り出してくれることも相まって、事態はあまりこじれずに進み、入院した蛍との文通の描写に移る。
 このシナリオをプレイしている人のほとんどは遙エンドをクリアしているはずなので、星乃がデートに行くと言った段階で蛍の死が読めてしまうのだが、蛍の死を孝之が知っていく過程は、やはり痛い。
 ほかのシナリオではイケイケ姉ちゃんの星乃が、このシナリオでだけ優しく友人思いな素顔を垣間見せる。
 そして孝之は、遙との友人関係を維持しつつ、医者を目指して目標を持った人生を送るようになる。
 そして、星乃も蛍の遺志を継いで小児科の看護婦になり、頑張っている。
 遙エンドでの「生きてりゃ何だってできるよねぇ」とか、「そうだねぇ、天川にも教えに行くよ」というセリフが、『自分は生きているんだから天川の遺志を継いで夢を叶えてやろう』『天川の墓に報告に行くよ』という星乃の決意の表れだったことが分かる。
 また、毎年蛍の命日にだけ星乃と再会するというつかず離れずの展開も、蛍が結んだ縁のような気がしてなんだか嬉しい。
 メイン以外のヒロインで、蛍だけが逃げ道としてでなく純粋に素敵な人として好きになっていくのが、嫌悪感を抱かせない理由かもしれない。

 でも、心臓が悪いからってあそこまで発育不良になるもんかね?


(玉野まゆシナリオ)評価D
 完全に逃げに入ったシナリオだと思う。
 それでなくても、バイト先のウエイトレスという逃げ場で見付けた相手だ。
 ほっとけないから面倒を見るということが、露骨に自分が必要とされているという実感を得るための言い訳になっていて、しかもそれを孝之自身がある程度自覚している。
 だからこそ、まゆを必要以上に壊れ物扱いしているのだ。
 だけど、まゆがちょっと色物なまでにドジなキャラクターとして描かれてしまったために、話に締まりがなくなってしまった。
 妹扱いから抜け出そうとして努力して色々な仕事を覚えようとするのはいいが、それはまず1つの仕事をある程度こなせるようになってからだと思う。
 孝之がまゆに難しい仕事を任せないのは実際には過保護だっただけだが、印象としては、上司なら当然の配慮なのだ。
 何しろ、皿を割らない日が珍しいほどの問題児だ。
 クビにならないだけでも凄いことだ。
 まゆの場合、まず「歩いていて柱にぶつからない」「皿を割らない」というウエイトレスとして基本的にしてできて当然の技能を身に付けるのが先だろう。
 そういう面が鼻について、孝之の過保護に不自然さが少なかったのがこのシナリオの欠点だ。


(穂村愛美シナリオ評価D
 都合のいい女どころかストーカー大爆発な愛美。
 うっかり手を出したが運の尽きという、どうやって合い鍵作ったの的な展開が揚げ足を取る暇もなく押し寄せてくる力業にはやられた。
 孝之の足を折って監禁し、逃げようとするとおしおきというミザリーなストーリーかと思ったら、孝之がそれに順応してしまい、倒錯愛の劇場になってしまった。
 部屋の中で動き回れるようになったとき、真っ先に警察に電話をしなかったというのが、このシナリオ最大のアラだと思う。
 また、高校時代のお気に入りの場所に孝之がいたから孝之が好き、という思考パターンは常人には付いていけないと思われるので、もうちょっと噛み砕いた説明が欲しかった。
 結局のところは、愛美は孝之というお気に入りの人形で遊んでいる精神的に未発達な(というか病んでる)キャラだと思うので、それに合わせて感覚が狂ってしまった孝之が“怖い”けれども“気持ち悪くはなかった”のがすごく嫌。


 水月を性欲のはけ口のように扱う水月妊娠エンドは、一発必中シュトルムカイザーしてしまった茜妊娠エンド(実際に妊娠するのは遙:でもこれはバッドじゃない)を見ると、「だから生でやっちゃ駄目だってば!」という柏木参謀長の声が聞こえてくるようだ。
 また、ちょっとした勢いで星乃に手を出したら、遙や茜に嫌われるわ、水月には泣かれて信用なくすわという痛い目を見るバッドエンドなど、女の子とは真面目に付き合わないと駄目だよと言われているようで、結構いいんじゃないかと思う。
 ちょっと怖いのは、茜シナリオのバッドエンド1『遙隠れ妻』だ。
 ここでの遙は、“側にいてくれるだけでいい、1人占めしたいとは思わない”と言って孝之と密会を続ける。
 確かにED段階では茜にバラしていないし、もしかしたら本当にずっと隠れて関係し続けるのかもしれない。
 だが、いつかきっと欲が出て1人占めしたくなるんじゃないかという恐怖がある。
 よしんばそうならなかったとしても、水月妊娠エンドのように遙が妊娠してしまう可能性は十分にある。

 この辺が孝之の嫌なところで、辛いことを後回しにして逃げる癖があるため、事態をややこしくしてしまう。
 確かに辛いが単純な問題をここまでの話にしているのは、「相手を傷つけたくない」という言葉の陰に隠れた「『相手を傷つけた』という傷を負いたくない」という身勝手さだ。

 茜エンドで水月に別れを告げるとき、孝之は「水月の人生を台無しにしたことを背負って一緒に生きていけない」と言っている。
 だが、ちょっと考えれば、既に水月の人生は台無しになった後なのだから、ここで孝之という“人生を台無しにしてでも一緒にいたかった相手”まで失ったら水月は立つ瀬がない。
 孝之の言葉は、“自分のせいで人生を台無しにしたという負い目を感じる相手を側に置いておきたくない”という自分勝手なセリフでしかないのだ。
 水月エンドでは、“人生を台無しにしてまで自分を支えてくれた水月と一緒に生きていきたい”という正反対なセリフを吐いていたのだが、実際、孝之は状況に流されて自分の痛くない状況に逃げるというパターンの方が多い。

 だから孝之は嫌いだ。
 でも、ヒロイン達の想いには共感できる。
 だから、このゲームは、ヒロイン達の悲しさ・辛さを味わいながら、ハッピーエンドで幸せに浸るゲームなのだ。
 孝之が中途半端に逃げた結果があゆ・まゆのバッドエンドであり、特に水月・遙を失い、あゆもいなくなってしまうあゆのバッドエンドは孝之ざまーみろって感じで良かった。

 そして、健さん、慎二といったバイプレーヤーが実にいい味を出している。
 特に慎二の“高校時代から水月を好きだったが、水月の気持ちを知っているために一歩引いていた”という設定は、水月を励まし、孝之に水月を選ぶよう勧め、捨て鉢になった水月を抱いたりと、場面ごとにアクセントを加えてくれた。
 なんか、孝之の親友やってるのが不思議なくらいいい男だね。
 反対にモトコ先生は大嫌い。
 ほとんどの場合、孝之を混乱させるようなことしか言わず、事態を悪化させる方向に動いている。
 この人がいいことするのって、水月エンドで遙のリハビリを見せたときくらいじゃないか?

 このゲームは、リアルな痛みを描いている割に、3年寝太郎大富豪の娘オリンピッククラスの水泳選手2人、心臓病の看護婦ストーカー看護婦と、実はとんでもないキャラばっかりだったりする。
 普通の人なのは、“両親と兄を亡くした”というバックボーンを持つまゆだけだ。
 あとの連中は、そういった“普通じゃない部分”を核に話が進む。
 それなのにマトモに話が進んでいくのは、やはりメインに据えているテーマが三角関係という非常にオーソドックスなものだからだろう。
 あれだけ妙なキャラ達をほとんど妙に感じさせることがないというのは、ある意味凄いと思う。



(総評)
 一応、『君がいた季節』と同じ世界を舞台にしているのだが、実質、もう2年くらい前の作品なので、ほとんど覚えていない。
 まぁ、舞台が一緒というだけで、実質話が繋がっているわけではない。
 『君がいた季節』は鷹羽もやったが、みちると美術館に行くイベントが2回起きるというバグがあり、当時まだインターネットをやってなかった鷹羽は、修正ファイルの存在も知らず、放り出してしまったので完クリはできなかった。
 この『君が望む永遠』も、インストールするのに修正ファイルが必要というとんでもないシロモノで、必要スペックが結構高めなことから、鷹羽はびくびくしながらスタートしたものだった。
 ま、あゆエンド以外では特に止まりまくるということもなかったので、よしとすべきだろう。
 あゆエンドでは、あれを顔にぶっかけられて悲鳴を上げたところで止まってしまい、もう1クッションあるのかアレで終わりなのかはっきりしないという消化不良になってしまった。

 重いテーマを扱っているが、ぶっ殺したろかいキャラがモトコ先生以外にいなかったのが救いだろうか。
 声優も結構上手い人が多く、あゆのしゃべりがやや平板なのと、まゆのしゃべりがのろいこと以外はあまり気にならなかった。
 また、「………」という無言の部分を、「あ、いや…」とか、「…ちょ…(ちょっと待って)」などと発音してくれる人が多く、しゃべってるなという感触を与えてくれる。
 この点では水月は常に「…あぁ…」とワンパターンだったのが残念だった。

 また、セーブポイントが最大千個も取れるという冗談みたいな機能も凄かった。
 鷹羽は60個で終わった。
 ただ、Hシーンの回想機能はあるのに、エンディングの回想がないのはどうにかしてほしい。
 普通は一番重要な部分じゃないかい?

 で、ED曲『君が望む永遠』は、上でも書いたとおり、ゲームを象徴するいい曲だと思う。
 このゲームのヒロイン達は、みんな何かしらの心の傷を持っている。
 それがたとえ自分のせいで付いた傷だったとしても、痛みに耐えて毎日を過ごしている。
 まったく孝之に考えさせたいところだ。

 このゲーム、世間的にも評価は高いらしく、今年1番という声も聞く。
 鷹羽的には、あゆ・まゆ・愛美エンドの分だけ評価が下がっちゃって、今年1番は今のとこ『21』かな。


(鷹羽飛鳥)

 
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