こみっくパーティー
同人誌即売会を舞台に、繰り広げられるパラメーター上げの日々。「こみっくパーティーへようこそ!!」
1.メーカー名:リーフ
2.ジャンル:自己育成型恋愛SLG
3.ストーリー完成度:C
4.H度:D
5.オススメ度:C’
6.攻略難易度:A
7.その他:いや〜、相変わらず絵はキレイだな〜っと。…え? 相変わらず?
悪くない。悪くないんだけど、どこか中途半端な感じのするゲームだ。
それは1つには、育成型とイベント型の中間的な構成になっていることから生じているのだろう。
このゲームは、特定の行動によってイベントが起きるイベント型と、パラメータの上がり具合によって自動的にイベントが起きる育成系の部分が同居している。
ところがキャラによって、完全に育成重視のものと、どちらかというとイベント重視のものとに二分されてしまっている。
このあたり、もしかしてシナリオライターが違うんだろうか?
それはともかく、瑞希、詠美、由宇のような、メインで絡んでくるキャラが総じて育成メインというのは、ちょっといただけなかった。
育成型のイベントは、例えば、“作家レベルが、7月のこみパまでに、やり手同人作家になっていること”などという条件で起きるから、一心不乱に作家レベルを上げなければ、この3人は落とせない。
特に、瑞希のイベントは全て自動イベントだ。
反対に、彩、玲子、あさひのような、こちらから何らかの行動を起こさないとイベントが起きないキャラは、パラメータ上げの方は適当にやっていてもどうにかなる。
確かに、マンガ嫌いな瑞希を納得させるにはマンガでそれ相当の実力を見せなければならないのは判る。
しかし理に適ってはいるが、棲み分けが厳し過ぎやしないかい? もう少しバランスは取れんかったんかな。
もう1つの問題点として、育成ゲームなのに、育てる意味が希薄であるということが挙げられる。
折角5つあるパラメータが、結局のところその統合パラメータである“作家レベル”という形でしか評価されないということがその原因だ。
それはまあ、そうだろう。話は面白いけど絵が下手とか、絵は巧いけどベタがはみ出てたりじゃ、あんまり売れそうな気はしない。
確かに、作家レベルが上がるにつれて本の売れ行きが良くなり、部数が増え、カラーになっていくのは見ていて楽しい。しかし、9人もいるヒロインを攻略する度に、同じパラメータ上げをしなければならないとなると結構辛い。
最終的に問題になるのが作家レベルである以上、例えば『ときメモ』のように、偏ったパラメータ上げをするわけにはいかないし、しても意味がないのだ。
このことがゲームをえらく単調にしている。せっかくアニメ、ゲーム、創作の3系統に、それぞれ8種類のジャンルがあるのに、それが生かされてない。
一応、創作系の彩と知り合うためには、5月のこみパで創作系の同人誌を作ってサークルを隣にしなければならないし(パンピーにゃこんな技思いつかんわな)、格ゲー系の玲子を攻略するなら、8月のこみパで格ゲー系の本を作らなければならない、というように、巧い使い方もあるにはある。
そして、毎回のこみパでの売れ線のジャンルというものもある。
だが、売れるジャンルがランダムなので、こういったジャンル分けは、実のところほとんど役に立っていないのだ。
そうなると、1年間に11回も本を作るのに、ほとんどのキャラでは作る本自体には意味がないということになる。
しかも、ならば、本を作るという行為それ自体が、パラメータ上げの方便に過ぎない。これって寂しすぎない?
各シナリオについて言えば、まあそれなりに良いネタを使っていると思う。
同人知らずのパンピー瑞希、売れていることに慢心してテキトーな本作りをしている詠美、目立つことに主眼を置いてキャラへの愛というものを忘れそうになった玲子など、同人誌即売会という一種の異空間で起こりうる物語を描いている。
特に、コスプレイヤーやカメラ小僧の非常識さ故に存続が危ぶまれるコスプレなんてのは、実際にありそうな話だ。
ただ残念なことに、ちょっとディフォルメし過ぎな上に、描写が薄っぺらい。
アイドルを引退して駆け落ちしてしまうあさひ、必要以上に自分を役立たず扱いする瑞希、初心に戻ったついでに絵まで下手になってしまった詠美など、ちょっと極端の見本市になってしまった。
異空間でのちょっと常軌を逸した普通の人々(なんか矛盾してるけど)の恋愛を、もっと普通に描けなかったものかな?
特に玲子はひどい。彼女の場合、コスプレイヤーやカメラ小僧に常識やマナーを守るよう働きかけておきながら、なんとコスプレのまま、こみパ会場の屋上でHしてしまうという、今までのお前の活動は何だったのか言ってみろ的なとんでもないことをやっている。説得力のカケラもない。
もう1つ言うと、由宇のシナリオのテーマって何だったわけ? オチも意味も何もないじゃん。
勢いだけで話を引っ張っていけるほど生きたキャラだったとも思えないし。
由宇には、詠美ほどの才能がない万年中堅作家という設定がちゃんとあるんだから、自分の力に見切りをつけている由宇の苦悩なんかを正面から描いた方が良かったんじゃない? もっと詠美と絡めてさ。
そうじゃないと、11月のこみパでの編集長との会話が、イマイチ生きてこないよ。
かすれ気味の声でボソボソしゃべる彩とどもり症のあさひ、小学生な千紗とお子様な詠美と、似かよったタイプが混在することも、ちょっとマイナスだ。
総じて、結構良いはずなのに詰めが甘いというか、どこか底の浅い作りになっているのが残念だよ、ホント。
ただ底が浅いなりに、エンディングと、エピローグで描かれるその後というのは、結構いいものもある。
情熱を取り戻した詠美と、切磋琢磨しながら互いにプロになって、恐らく最後にプロポーズを賭けたであろう詠美との勝負は、その発表の直前で終わる。
欲を言えば、もう少し余韻を持たせた画面切替が欲しいところだが、なかなかいい感じの終わり方だ。
それに、通い同棲が面倒になって同居しちゃう瑞希のエピローグなんて、すごく俗っぽくていい。
そんな中で一番良かったのは、彩のシナリオかな。「自分の本来のスタイルを曲げてでも売れるものを作るのか、売れなくてもいいから自分の作りたいものを作るべきなのか」という、創作者兼売り手としての悩み(ちょうど今、リーフはこういう時期なんじゃない?)を扱っている。
結論的には、自分の持ち味を生かしつつ徐々に売れ線のものを作れるようになっていこうという優等生な回答に落ち着いてしまったが、このシナリオが一番安心して見ていられた。
ただ難を言えば、彩って必要以上に引っ込み思案なんだよね〜。
あと、あの絵柄で絵本作家というのは、余程の大改造をしたんだね。
う〜ん…。あんまり褒めてないなあ。結局、決してつまらないとは言わないけど、手放しで褒められるようなシナリオがないってことなんだよね。
こっちの共感を呼ぶような、奥の深さを感じさせてくれる程のイベントが少ないってのが問題なんだな。
育成型でイベントが少ないってのは、理由にはならない。
だって、イベントの数が同じ程度だった『WHITE
ALBUM』は、とっても共感できたもん。
(鷹羽飛鳥)