Campus 〜桜の舞う中で〜
2年ぶりに妹と一緒に暮らす春、待ち受ける様々な出会い。
1.メーカー名:エーテル
2.ジャンル:ADV
3.ストーリー完成度:B’
4.H度:C
5.オススメ度:A
6.攻略難易度:A
7.その他:初回特典にキャンパスノートってのは、いいシャレだと思う。
(ストーリー)
13歳で両親を亡くし、田舎の叔父の元に引き取られていた高坂隆景は、2年前に大学生活のため1人で東京に戻ってきた。
継母の連れ子である妹・舞子が自分に対して向ける、兄弟愛を超えた想いから逃げるようにして。
そして今、隆景を追うように、舞子が同じ大学に入学してきた…。
結構きっちりと作ってあるゲームだ。
どのシナリオでも全キャラが登場するから、関係を深める深めないにかかわらず、キャラクター相関というものが存在する。例えば、奈穂のトゥルーエンドに行くには、麻由美と一緒に奈穂のホームパーティーに行かなければならないし、熱を出した舞子を置いて奈穂の出るコンクールに行かねばならない。
また、麻由美攻略には、智里の恋についての相談役として、自分と麻由美の“幼なじみ”という関係について思いを致さなければならない。と言うより、智里というキャラ自体が麻由美の変装というとんでもない真実が待っているのだが。
元々どちらもツリ目キャラだし、似たような顔のキャラなんぞ、この手のゲームには掃いて捨てるほどいるので、声が同じことにすら気付かなかった。ちょっとショック。
また、麻由美以外のキャラには、複数のエンディングがあるが、その際、ストーリー展開自体に違いがある。
エンディングが複数ある場合、普通はラストの選択肢でエンディングが変わるとか、途中の選択肢の選び方で最後に違いが出るとかいうことになるのに、割と序盤の選択によってルートが決まり、次のイベントそのものが違うものになるのだ。
従って、攻略したいキャラの出てくる選択肢ばかり選んでいても、トゥルーエンドに行けるとは限らない。
前述の奈穂の例で言えば、奈穂が食事に誘ってきた時、2人だけで行って遊びに誘えば、ホームパーティーを経て奈穂とドライブ、H、ショパンコンクールでエンディングとなるが、麻由美も一緒に連れて行く、あるいは2人だけで行っても遊びに誘わないと、隆景だけのためのリサイタル、H、エンディングとなる。
ちなみに、ホームパーティーで麻由美が酔い潰れてしまうイベントがあるが、このイベントでは麻由美と奈穂双方の好感度が上がることになる。
複数のキャラにまたがったイベント配置なんて、大したものだと思う。…が、一方でこれが足を引っ張っている面も否めない。
イベントの振り分けが細かすぎたせいか、シナリオ上の混乱が見られるのだ。麻由美のシナリオで、“奈穂の兄が、麻由美を見初めて交友関係などを調べるうちに、麻由美の父の会社が倒産の危機にあるのを知り、自分の会社SONEGAに吸収合併して助けてくれた上、麻由美に交際を申し込んでくる”というのがある。
シナリオ展開上とても重要なイベントなのだが、よく考えてみると、矛盾の固まりのような話だ。
まず、奈穂の兄が麻由美を見初めるのはホームパーティーの時なのだが、下手にホームパーティーに行くと、奈穂のシナリオが進行してしまい、麻由美のシナリオに行きにくくなる。
また、奈穂のシナリオ中で、兄が2人いて、上の兄は料理人の修行中でSONEGAとは関係なく、下の兄は奈穂の友達のエッちゃんとラブラブであるということが語られる。
つまり、奈穂には、麻由美に交際を申し込みつつ、父の会社を助けてくれる兄など存在しないのだ。
ついでに言うと、前述の理由から、麻由美のシナリオではホームパーティーには行っていないことすらある。実際、鷹羽の1回目の時はそうだったし。
…さて、困った。どうやって麻由美を助けてやろうか…。
重箱の隅をつつくような話で悪いけど、鷹羽はこういうの、気になる方なんだよね。
あと気になると言えば、グラフィックの使い回しだろうか。
立ちキャラのシーンでの背景は、道端だろうが大学構内だろうが全て使い回しで、ピアノ室も学食も校舎前になってしまう。この辺はもうちょい頑張って欲しかった。
しかしまあ、全体として出来がいいのは本当だし、鷹羽はこのゲームをかなり気に入ってる。
血の繋がらない妹との愛という、この手のゲームでは結構使い古された感のある設定をストーリーのメインに据えることで、恋愛に対して妙に臆病な隆景の性格というものを際立たせているし。
舞子から女としての愛情を感じ、それに対して応えたいが、亡き父との“兄として舞子を守る”という約束に縛られて応えられなかった隆景は、告白してきてくれた美冬と付き合うことで現実逃避し、そのため落ち込んでいく舞子を見たくないから東京の大学に進んだ。
要するに隆景は、自分が好意を持っている相手に対しても、何らかのエクスキューズがないとアプローチできない臆病者なのだ。
そのことを隆景自身理解しているし、コンプレックスを感じてもいる。かといってそれを何とかしようという積極性はない。
いざという時になってジタバタして、『どうしてもっと早く何とかしなかったんだ』という後悔にまみれるという、割とどこにでもいるタイプだ。
美形だからそれなりにモテるようだが、不器用で相手の気持ちの分からないタイプであることははっきりしている。
もっとも、それだっていい方に解釈すれば、裏表のない正直な人と言うこともできるし、そういう人を好きになる娘も結構いるんだよね。あんまり長続きしないことが多いけど。
そういう意味では、奈穂のように単純で素直なタイプや、優香のように後ろめたさを持っているタイプ(いくら何でも、美冬の腹違いの妹って設定には無理があると思うが)には、かなりアピールする要素ではある。
そういう意味では、結構納得できる恋愛なんだよね。
もう少し舞子のことに触れてみよう。
舞子の病気は、多分に精神的な要素が強いようだ。隆景との関係による精神的なハリのようなものが、舞子の具合にかなり影響している。
隆景が美冬と付き合い始めた途端に病弱になったり、隆景が東京の大学に行ってしまうと半病人状態になってしまう。
受験の時に身体の調子が良かったのは、奇跡でも何でもない。合格しないと隆景と一緒にいられないという想いから、一時的に治ってしまったのだ。
どのシナリオでも必ず出てくる『金色の少年』の話、“金色の少年を見た者は若死にする”というのは、恐らく他の娘と上手くいった場合、舞子はいずれ死んでしまうということなのだろう。
実際、舞子とのトゥルーエンドでは金色の少年が去って行くし、舞子との仲が叔母さんにバレて引き離されると、舞子は死んでしまう。この辺りに答えの一端があると思う。
まあ、もともと隆景自身、舞子に“女”を感じていたのだから、よく考えるまでもなく危ない話だよな〜。
(鷹羽飛鳥)