ADAM THE DOUBLE FACTOR
 
 burst error事件から4年。もう若くない小次郎とまりなに、人生の転機が訪れる。
 
1.メーカー名:シーズウェア
2.ジャンル:マルチサイトADV
3.ストーリー完成度:D
4.H度:C
5.オススメ度:EEE(burst errorが好きなら、やっちゃダメ
6.攻略難易度:D
7.その他:小次郎とまりなが主人公な分、「Lost One」よりタチが悪い
 
(ストーリー)
 怪人アドニスの貯水池ウイルス混入作戦は、無敵の馬鹿エージェント:桐野杏子の必殺SNAKEダイナマイトの前に砕け散った。
 度重なる失敗に業を煮やしたエルディア情報部は、遂に不死身の最強怪人プリーチャーを送り出した。杏子に代わって再び日本の守りについた初代エージェント:法条まりなとプリーチャーの死闘が、今幕を開ける! 戦え、まりな! イクイクショットでエルディア情報部の野望をぶっつぶせ! …
 
(ある日の後藤氏との会話)
「ねえねえ飛鳥ちゃん、『ADAM』の原稿、書いてくんない?」
「えぇ〜? いや、ちょっと、ねぇ。ホラ、鷹羽ってば、『Lost One』で懲りてるしぃ…」
だからだよ! アレ、『Lost One』の続編らしくてさ、ウチで『Lost One』やったのって飛鳥ちゃんしかいないじゃない。原稿書ける人、他にいないんだよね。だから、是非!」
「いや、だからって、そんな、ま、確かにあのプレゼントはいいと思うけどさ、でも、そのためだけにウン千円払おうって気にはなれないって。誰かがプレゼントでもしてくれるってんなら考えるけどさぁ…」
 数日後…
 …だからって、本当に買ってよこすかね、普通?
 
(小次郎シナリオ)
 徹夜の浮気調査を終えて事務所に戻った小次郎に、安藤商事社長のボディーガードの仕事が舞い込んだ。何者かが、安藤が隠し持っている“何か”の在処を訊き出そうとしているらしい。夜の間だけ、安藤邸で警護につく小次郎。小次郎にも言えない“狙われている物”とは? 姿なき敵は、一体何者なのか?
 
(まりなシナリオ)
 4年ぶりに現場復帰したまりな。復帰初仕事は、連続猟奇殺人事件の捜査だ。死体は、拷問にでもかけられたかのように傷だらけだった。被害者は、コカインの密売人江崎と、普通の商事会社の社長藤井夫妻。一見感じられない彼らの接点は何なのか? 犯人の目的は? まりなは、藤井夫妻の一人娘ユカを護衛しつつ、犯人に挑む。
 
 どうしよう? 「EVE〜burst error〜」を知らなきゃ、ちっともわかんないよ、これ。
 3年以上前の作品だよ? のっけからこんなに敷居の高いゲーム作っていいの? 
 と言っても、知らない人は買わないか。
 一応、「Lost One」の1年後という設定なのだけど、実際のところ「burst error」の続編と言った方がしっくりくる。何しろ、「Lost One」では風呂敷を広げすぎて、ちょっと収拾がつかなくなったからだ。
 あの状態から世界が助かるには、砂漠に旅立った杏子と雄二は、1日でワクチンを完成させて街に帰り着かなければならない。
 そしてワクチンを増殖させまくり、まだ無事なアメリカ国防省(彼らは感染源を知っていたから、やばい物は口にしてないはずだ)の飛行機で日本に帰り、注射しまくらなければならない。
 勿論他の国にも、アメリカ国防省の連中に行かせるのだ。なんてこった。杏子は英雄じゃないか。しかし、そんなことあるんかいな。
 あ、そうか! ウイルスが蔓延した時と同様、インターネットでワクチンを世界中に流したのか。なあんだ、簡単じゃないか(「九拾八式降臨」内『EVEThe Lost One』参照)。
 まあ、「ADAM」の世界では、Lost One事件は大したこともなく解決したことになっているので、気にしてはいけないらしい。
 ただ、一連の不祥事で、内調は大幅に縮小されて人材不足になっているとか、氷室がまりなに、前回は死にかけたのに、結局ただ働きだったと恨み言を言ったりとか、一応、ほんのちょっとは事件の爪痕が残っているようだ。
 さて、肝心の内容だが、主人公2人のストーリーを少しずつ見せていくことによる効果は、相変わらず冴えている。
 今回は、最初から双方が同じ事件を扱っていることが判るので、少々面白味に欠けるが、その分集中しやすい。
 まりなは犯人を、小次郎は犯人が狙う物を追い求めていくわけだが、そのせいか小次郎中心のストーリー展開となっている。
 小次郎は、まりなが氷室の元に持ち込んだファイルの暗号をあっという間に解読したり、『SANU』の表記が『SAND(S.安藤の略)』の書き間違いだと気付いたりと、要所で勘の良さを発揮する。
 この際、あの暗号方式だと、『U』は15、『D』は24となるから間違えようがない、なんてことは気にしちゃいけない
 小次郎に依頼が来た経緯が、桂木探偵事務所では手に負えないと判断した弥生からの紹介だったりすることで、間接的に小次郎の優秀さを説明しているのだから。
 ラストでまりなを助けに行く時も、相手がナイフ使いなのを知っていて、右の二の腕に盾代わりにスパナを数本くくりつけていたのもなかなかいいアイデアだった。
 何で利き手の右手かなって気もするけど、愛用のグロックは、左手のホルスターだったからね。
 対してまりなは、どうも見せ場が少ない。
 殺人犯を追うという都合上、全てにおいて後手に回らざるを得ない役回りの悪さもさることながら、いかにも怪しい平井(JCIAの捜査官だが、実は敵側の手先)に疑問も抱かなかったり、藤井の机の引き出しの鍵のことをユカに聞くのを忘れたりと、なんだか調子が悪い。
 良かったのは、例の暗号ファイルを見付けたことくらいだろう。それにしたって、暗号を解読したのは小次郎だったし。
 大体、ジョーンズが殺された時、シロウトのユカに尾行されているのにも気付かないなど、プロ失格だ。
 しかもこの時は、命を狙われているかもしれないユカを1人でマンションに残して行ってしまった。
 致命的なのは、小次郎との別れに落ち込んでいる弥生にかまけてユカを迎えに行くのを忘れ、プリーチャーにさらわれてしまったことだろう。公私混同のしすぎ。
 杏子じゃないんだからさ、そんなに無能じゃ困るんだってば。
 オマケにまたユカが、かなりマイペースで頭が軽く、足手まといなぶっ殺したろかい、おんどりゃなキャラなだけに、なおさらもどかしい。言っとくけど、無邪気と馬鹿は違うんだからね。
 例によって穴だらけの構成も健在だ。
 ラストに、プリーチャーが“24人目のEVE”らしき少年を連れて逃げ出そうとする男(安藤の仲間)の車に仕掛けをして爆破するというシーンがある。
 エンジンを掛けると爆発するようにしていたのだが、あの時、少年は、たまたま車に乗るのが遅れたのであって、普通にいけば、少年も乗り込んでからエンジンを掛けたハズなのだ。…少年も一緒に吹き飛ぶけど、いいの?
 更に、小次郎がプリーチャーを撃ち殺したのに、何のお咎めもなく自分の事務所にいたのもかなり問題だ。
 小次郎は、一介の民間人だ。当然、彼がグロックなど持っているのはイリーガルだ。
 プリーチャーを撃ち殺したこと自体は正当防衛としても、銃刀法違反は免れない。
 にもかかわらず、作中誰もそのことを突っ込まないのだ。例えば甲野本部長がもみ消したってんなら、納得するんだけど。
 もう1つ凄いのは、プリーチャーの生き返り方だろう。
 至近距離からグロックの弾を3発も食らって、あれだけ出血して死んでたくせに、いけしゃあしゃあと、死体袋をナイフで破いて出て来てしまった。
 何でも、プリーチャー君はボディアーマーを着込んでいて、心臓を自分の意思で止めて死んだフリしてたそうだが…お前は空条Q太郎か?!(ヲラヲラ)
 それを警察側は、瞳孔反応も見ないで死体と認定したらしい。しかも、ロクに身体検査もしないで袋に放り込んでそのままって…。
 
(総評)
 「アダムだからリンゴをプレゼント」ってのは、シャレが利いてて良かったね。このゲームで、ほとんど唯一の美点じゃない?
 言っちゃなんだけど、かなり問題があるよ、このゲーム。
 まず第一に、設定の不徹底。
 「Lost One」の時もそうだったけど、まりなの“任務達成率99%”の変な解釈をするのはやめて欲しい。
 1%の失敗ってのは、真弥子を守り切れなかったことじゃないんだってば。「burst error」の時点で、既に99%だったんだよ。
 男絡みで任務に失敗した過去が「burst error」の時に語られてたでしょ? 続編作るんなら、そういうの忘れちゃ駄目だよ。
 ついでに言うと、シリーズ途中で声優変えるのもやめてね。いくら18禁だからって、毛嫌いすることはないじゃない。
 どうせHシーンの時はプレイヤーキャラの声出ないんだから、まりなも小次郎も、ましてや本部長なんか声優変えなくてもいいじゃん。弥生くらいじゃないの? 問題あるのって。
 第二に演出が中途半端。小次郎が悩むのが唐突で中途半端なんだよね。
 要するに弥生に「いつまでも夢を追い続けられるわけじゃない」と言われたことで、天城探偵事務所の実態を考えて、自分の将来について不必要に悩み込んでしまったわけだ。
 しかしそれで落ち込んで、じゃあ何をするかというと、亜美に身体で慰めて貰っちゃったりと、真面目に悩んでいるようには感じられない。
 結局小次郎は、弥生も氷室も亜美も欲しくて、そのくせ誰か1人に縛られるのは嫌だって我が儘を言ってるだけなんだよね。
 ちなみに、小次郎の年齢には一切触れていない。色々な設定をひっくり返してみると、「Lost One」当時で小次郎は30代、まりなと弥生はそれより2歳上、氷室は更に年上らしい
 その氷室ならともかく一番年下の小次郎が、周りも見ずに悩んでみてもねえ。
 真面目に悩ませるつもりがないのなら、こんな話を持ち出すべきじゃないよ。
 氷室も言ってるように、いつも自信たっぷりに行動するのが小次郎の持ち味なんだからさ。
 ちなみに氷室の年齢は「悦楽の学園」時代で27〜29歳、「burst error」はその約3年後らしいから、現在34〜36歳らしい
 第三に、シナリオが中途半端。今回のキーパーソン“真弥子以外のEVE”であるかの如く扱われていた美佳と美紀は、結局失敗作だったらしく、あっさりプリーチャーに殺されてしまった。
 そして、“24人目のEVE(らしき少年)”がプリーチャーに追い詰められたところで、唐突にエンディングテロップが流れてしまう
 まるで後編に続くと言わんばかりのエンディングだ。
 敵であるエルディア情報部残党が狙っている24人目のEVEに秘められた謎も、“将軍”と呼ばれる敵の黒幕も、まったく明かされないままだった。
 かといって、『後編に続く』かと言うと、氷室は事務所を辞め、弥生は小次郎と完全に破局し、亜美、安藤、平井といった主要な新キャラは全員死に、まりなは右手の神経を切られて恐らく再起不能…と、続編の作りようがないほどのダメージを受けている。
 まあ、まりなの場合、銃を使うことはあまりないから、ある程度右手が動くようになれば捜査官としての再起は可能だろうけど、少なくとも向こう半年くらいはリハビリとかで身動き取れない状態が続く。
 しかもこの時点で、敵は既に“24人目のEVE”を手中に収めようとしているのだ。そんなにじっとしてはいられない。
 小次郎1人を主人公にしようってんならまだしも、小次郎とまりなのマルチサイトという形での続編は、常識で考える限りありえないのだ。
 とは言っても、あの「Lost One」の続編作っちゃうようなスタッフなんだよな〜。
 んで、例によって考えるけど、タイトルの意味って何だろう?
 「ADAM」は、“24番目のEVE”が男だからってことなんだろうけど、「THE DOUBLE FACTOR」って何だろう?
 2つの要因? とか思ってたら、“FACTOR”には、“遺伝子”という意味もあった。
 とすると、もしかしたら、真弥子の細胞に前王の遺伝子をプラスして作ったのが“24人目のEVE”だとすると、1人だけ男だったことも理解できる。
 それなら結構いいタイトルだと言えるんだけど。
 ただ、それをちゃんと続編か何かで説明する気あるのかしら?
 結論を言うと、ラストの小次郎のモノローグにあった「ひとつの事件が終わった。多くの人間が、多くのものを失って……。終わりと言うには、妙に納得出来ないいくつかの謎が残った」っていうのが、このゲームを象徴してるね。
 まさかとは思うけど、続編出なかった場合、この一言でオチをつけようってんじゃあるまいな。
      
(鷹羽飛鳥)

 
PS 後藤氏へ:のし付けて返す
 
 

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