Please teach! My Angel メーカー:ぷちぱじゃま
ワークス 様
 というわけで時期外れもいいところですが、夏の財布が危なかった時期にプレイしたこの作品をレビューしたいと思います。
 近頃流行の「低価格ソフト」でしたが、なかなかどうして、しっかりした作りの一本でした。

 『翼が無くとも、共に進む未来があるから』


<商品概要>

 PCゲームメーカーの大手、ぱじゃまソフトが「低価格・高品質」を目指して立ち上げた姉妹ブランド・ぷちぱじゃまの初作品の一つ(ちなみに、もう一つは「ぷにつま」)。

 登場人物やシナリオを絞り込みながらも、ポイントはきっちり抑えた「もえっちアドベンチャー」ソフトです。
 3980円と低価格ソフトとしては高めに感じる価格でしたが、初回DVD版・サントラCD付での価格ですからこれでも採算はあってないような気がします。


<ストーリー>

 梅雨が明け、初夏の風が吹く街。
 主人公、翼の通う天野ヶ原学園に一人の新米教師がやって来る。
 その教師、天川聖玲奈は実は天使であり、天界の学園の教師になろうとしている教育実習生だという。
 天使であることを知られてはならないのだが、偶然から彼女の本当の姿を知った翼の家に同居することに。
 翼と妹・野々香はこの変わった同居人と共に一夏を過ごすこととなる。
 新たな生活への不安・期待を胸に、3人にとって忘れられない夏が始まった…


<システム・演出>

1.基幹システム・プレイ概要

 主人公、翼とその妹・野々香、ドジ天使・セレナ(聖玲奈)の3人が過ごす7〜9月までの物語を主としたADVです。
 登場人物の少なさもあいまって、シナリオも聖玲奈一人分だけでさくさく進むかと思っていましたが、序盤のシナリオが丁寧に作られている為に期間のわりにプレイ時間は長かった方でした。

 ゲームシステムとしては選択肢分岐型のオーソドックスなADVでしたが、本作はイメージカラーとして「青」が使われているらしく、メッセージウインドーの色からボーカル曲の歌詞、画面などに多く「青」を取り込んでいるように思えます。
 大したことじゃないんですが、作品の世界観を統一する為の工夫なら、上手にまとまっていると思います。
 惜しむべきはゲームとしてのボリュームで、メインヒロインの聖玲奈シナリオに重きを置いた為、もう一人のヒロイン野々香の専用シナリオは皆無と言っても過言ありません。
 ストーリー上、重要なキーパーソンであり魅力的なキャラではあるのですが、それは今日に至る為の布石だったのかもしれません。
 詳しくは最後に。


2.グラフィックと音楽


 キャラクターデザインはブランド立ち上げ人、大野哲也氏。
 大きな瞳の描き方が特徴的な、PCゲームユーザーで知らない人は多分いないであろう絵描きさんです。
 グラフィックの出来も文句無し。
 絵柄はロリ系と言ってしまえばその通りですが、新作でキャラデザをする度に少しづつ作風が変化している気がします。

 音楽はボーカル曲を含め全13曲。
 特筆すべきはボーカル曲「空への路」
 もともと、ぱじゃまソフトはボーカル曲のレベルの高さに定評のあるメーカーでしたが、楽曲へのこだわりはぷちぱじゃまブランドでも同じだったようです。
 佐藤裕美氏が歌い上げるこの楽曲のフルコーラスverがEDで流れた時は、「おお〜」と聴き入ってしまいました。


3.シナリオと演出


 演出面に関しては、ディフォルメキャラのカットインや音楽面など、相当に力が入っていたものだと思います。
 シナリオも、実質、聖玲奈一本のものでしたが、丁寧に作りこまれたものでした。
 翼と聖玲奈が惹かれあっていく経緯から、翼の過去のトラウマ、結ばれる2人と野々香を含めたその後の3人の物語。
 終盤、やや唐突かなと思う部分はありましたが、序盤と相殺してこれ位が妥当かと。
 そつがない分、面白みに欠けると感じる方もいるかと思うのですが、プレイして間違いはない内容であると思います。
 無論、良い意味で。


4.Hシーンと操作性

 本作が「もえっち」ADVと称される理由がここにあるのですが、シーンは聖玲奈が6、野々香が1(ただし翼の夢想)の計7回。
 一人当たり…聖玲奈がメインヒロインですから当然ですが、かなり多い部類です。
 内容も色々で、充実した中身です。
 結ばれた後のシーンなので会話は大甘(笑)。

 操作性は良く、CG・シーン・音楽ギャラリー、メッセージ速度調整からスキップ、バッグログ、SE・音声ボリューム調整機能もついて快適でした。
 バグ関連も無し。
 欲を言えば、メッセージスキップの反応が悪い。
 飛ばそうと思ってもなかなか思うように行かなかったことが数回あったので、改善してもらいたい部分です。


<キャラ紹介>

○蒼乃翼(あおの・つばさ)
 私立天野ヶ原学園に通う本作の主人公。
 いい加減でぶっきらぼうだが、大切な人達の為には抜群の行動力を見せる。
 妹を常に気遣い、聖玲奈に思いを伝える為、昼夜を問わずプレゼント代の捻出にバイトに勤しむ一本気なところも。
 航空力学の教養が深く、自分の部屋にも飛行機の模型が飾られているが、時折口にする「空が嫌い」と言う言葉には、彼が幼い頃体験した暗い影が色濃く残っている。


○天川聖玲奈(あまかわ・せれな)
 本作のメインヒロイン。
 天野ヶ原学園の新米教師だが、その正体は天界の教育実習によって人間界にやって来た天使・セレナ。
 教師になる夢を叶える為、翼たちと同居することとなる。
 優しく、おおらかな性格だが、生来の天然ボケの為周囲のトラブルメーカーになることもしばしば。
 音楽教師なのに音痴だとか、手作り弁当の中から異様なモノが飛び出してくるとか種々のウワサがあるが、生徒の受けは良い。
 ちなみに、筋金入りの泣き虫。


○蒼乃野々香(あおの・ののか)
 本作の影のヒロインにして、主人公・翼の妹。
 素直で従順な性格に加えて、文武両道・家事得意など良く出来た子。
 兄である翼に兄妹以上の思いを持っているが、「自分は妹だから」とその気持ちを表に出さずに今まで過ごしてきた。
 突然の聖玲奈の登場によって、今まで隠してきた翼への気持ちが揺れ動き始めてきている。


<総括>

 こじんまりとした印象を受けましたが、全体としてバランス良く仕上がっている一本です。
 地雷を踏み続けて「もう、やめよう…」と考えている方や、これから初めてPCゲームをしようとする方にはいいかもしれません
 ちなみに、本タイトルは発売後ドラマCDなどの展開も進めており、11月に本作で人気を得た野々香をメインヒロインにした「プリいも」なるタイトルを発表しました。
 一つのソフトで全てを賄うのではなく、一つの目的の為一つの作品を手ごろな価格で提供するのはPCソフトの販売方法としては今までにはなかったような気がします。

 プレイ中ちょっと思ったのですが、PCゲーム業界にも多くのメーカーがあり色々な作品を発表しているわけですが、その中には1万円近くもの地雷ソフトも多々あるわけで、そんなことを考えながら本作をプレイするとPCゲームというジャンルの特殊さを強く感じました。
 当然、プレイする為の端末のスペックがコンシューマーのように統一されていないのもそうですが、端末の基準がない故に、ソフトのクオリティーに基準となるものがないのがその大きな理由のような気がします。

 玉石混合のソフト群の中からこれだと思うものを僕達はプレイしていくわけですけど、作り手の人達がこれからどんな形でゲームを提供していくのか、そういった「流れ」のようなものを追いかけながらゲームをしていくのもまた一つの楽しみ方なのかもしれません
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