天使のいない12月 メーカー:Leaf
オジンガーZ 様
 天下のLeaf(東京開発室)が放つ新作。
 今年2003年度中屈指の激戦日となった9/26発売の一本。
 おかげで財布の中身はスカスカに……
 個人的にもこの秋最も楽しみにしていた期待作だった事もあり、速攻で購入。
 ……果たして、その出来栄えは如何に?


(システム)
 オーソドックスなADV+ビジュアルノベル。
 主人公の回想などのシーンではノベル風の全画面文字表示に。


(絵)
 見た方ならお分かりかと思いますが、ヒロイン達の髪の色が全て茶色
 原色の髪が幅を利かせている昨今、これは素直に評価。
 絵柄も全体的に上品な雰囲気です。


(音楽)
 いつもながらLeafの作品の音楽のレベルは非常に高いです。
 ソロでのギターとピアノメインの寂しげなメロディー多し。
 ボーカル曲はOP、EDともに非常に出来が良いです。
 ED曲「ヒトリ」を歌うのは久々のAKKO様


(エロ)
 H行為する事そのものが、シナリオの根幹に関わっています。
 これまでの、みつみ美里様のキャラ絵のなかでもエロい部類に入るかと
 一応、両者合意の上での行為がメインではありますが、その場の勢いや、半ば投げやりになってお互いカラダを求め合うといった、成り行きで事に及ぶ類がメイン。
 「カラダつながっても心バラバラ」とはまさにこれ
 刹那的な現実逃避の色が濃いです。


(キャラクター&感想)
 どのヒロインも心の病…というより壊れてます。
 どいつもこいつもマイナス思考の塊です。

〇栗原 透子(くりはら とうこ)
 
主人公のクラスメイト。
 メインヒロイン。
 「主体性ナシ」「冴えない成績」「野暮ったい容姿」 「某こみパの桜井あ〇ひ並に口下手」
 クラス内では 「榊の金魚のフン」と陰口叩かれ、主人公には「トンマのトン子」と呼ばれたりしますが、実際に何をやらせてもダメダメ…etc。
 メインヒロインとしての要素を兼ね備えたスーパーヒロイン。

 本作品最大の被害者……
 主人公と既に肉体関係を持ってしまったがため、どのルートでも、関わってくる事になります。
 別ヒロインのルートでは、見るのが忍びないほど可哀想なシーン多々。
 それ故に、透子シナリオのラストは辛うじて救われる思いでした。

〇榊(さかき)しのぶ
 いや〜、この娘の後半の壊れっぷりは凄いです。
 全ヒロイン中、最も病的といってもいいでしょう。
 透子がしのぶに一方的に依存していたように見えて実は、しのぶも透子が欠けると、透子以上に脆い人間だったというお話し。
 …が、ラストでそれ以上に透子が「二度と立ち直れないのでは?」と思わされるほど、ズタズタになります
 挙句、透子はフォローもされずににED。
 「君望」でもそれなりのフォローはあったぞ!

〇麻生 明日菜(あそう あすな)
 序盤は面倒見のいいお姉さん。
 しかし、後半からのもう一つの一面が…歪んでいます
 気持ちは分からなくは無いですが…。
 個人的に一番お気に入りキャラ。
 ラストも何とか救われているのかな……?。
 …ちなみに透子は……ごめんよ〜(涙)。

〇須磨寺 雪緒(すまでら ゆきお)
 ひえ〜、電波娘。
 イカれた展開に、壊れた言動の数々。
 更にこのシナリオでは、主人公のヘタレにも一段とターボがかかっていて、辛いです。
 イライラさせられました。
 只、ラストだけは本作品の中で最も良かった
 (これから先のこの2人の前途は多難ですが…)

〇葉月 真帆(はづき まほ)
 「友人、功の彼女とH」という展開がある事自体が既に、ロクでもない方向に行ってしまうのを物語っています。
 主人公には友人から奪う意図などこれっぽっちも無かったのが、真帆と功の気持ちのすれ違いから溝ができてしまったところに巻き添えを食った形です。
 結果、一番傷付いたのは……透子だったりします。
 後味悪いです、このシナリオのED。

 あと主人公の妹、恵美梨がいい味出してます。
 主人公の事を「お兄ぃ〜」といって悪態をついてくるのが何とも。
 実は私の妹も、人の事をいつも「お兄ぃ〜」と呼ぶので思わず笑ってしまった。


(総評)
 暗い。
 退廃的。
 まあ「天使のいない…」なんてタイトルがついてる事からして、暗いのは予想がつきましたが……。
 多分、賛否両論に真っ向分かれるかと。
 萌え目当てや、ラブラブなハッピーエンド主義な方は問答無用で回避…
 数名ほど「これの何処がトゥルーエンドやねん?」と言いたくなるほどロクでもない結末が…
 盛り上がる場面などでも、本当に淡々と流れていきます。
 これが全編に退廃的かつ無常で灰色な雰囲気を出してます。
 作った側の意図的なものなら成功だと思いますが、受け付けない人からは徹底的に嫌われる危険性も非常に高いものです。
 まさに「地雷」と紙一重

 「鬱」ともまた少し違うというか、ライターが「紆余曲折があっても、最後はラブラブなハッピーエンド」という結末を敢えて否定しているのが顕著に見えているので、そういった個人の思想を押し付けられるのが嫌いな方には核地雷にもなりかねません…。
 ユーザーに媚びるような萌えに走らなかったこの心意気ともども、個人的には素直に好意的な評価をしてますが、「人様に薦められるか?」と言われると「うーん…」となります。
 上手く説明できませんが、今年最も評価に困った作品です。
 同社の「白アルバム」の如く、しばらく時が経ってから評価されるタイプの作品かも知れません


(個人的推奨攻略順)
 真帆→しのぶ→明日菜→雪緒→透子。
 雪緒のEDもいいですが、やはり締めくくりは透子しょう。


(PS)
 主人公が実にクソ。
 コイツがこの作品の評価をかなり落としてます。
 「修正してやる!!」(怒)。
戻りマース