めぐり、ひとひら。 メーカー:キャラメルBOX
オジンガーZ 様
刀和祥子 様
 元々このゲームは購入予定には無かったのですが、当初予定していた作品が延期しやがりましたので、代替で中身も吟味せず購入。
 パケ絵からはお手軽萌えゲーと思ったのですが………私が甘かった


(ストーリー)

 主人公、麻生智は人には見えない、神霊の類を普通に見る事ができる「浄眼」(じょうがん)と呼ばれる特異な眼力の持ち主。
 絵を描く度に、その「人には見えない存在」まで描いてしまう事で、変な意味で有名になっている売れない画家。
 彼が旅先で何かに導かれるように訪れた、田舎町「四季ヶ紫町」(しきがしちょう)。
 その山奥にある、今やすっかり寂れた「ゆかり神社」。

 かつては縁結びの神社として栄えたものの、今やほとんど参拝客も無く、神主すらいないそこには祭神である「結乃由姫命」が、一人寂しく参拝客の訪れるのを待っていた。
 そして主人公がゆかり神社を訪れ、その御堂に安置されていた神社の御神体の姿が、三年前に亡くなった義妹こまに瓜二つなのに驚く。
 その時突然、御神体が目を覚ます。
 それは姿、記憶とも正に、主人公の義妹のこまそのままだった。
 祭神の結乃由姫命さえも、何故かが分からない。
 その後、主人公を追って四季ヶ紫町にやってきた、許婚の「燕子花こりす」、この地に留まっている幽霊「春野千草」、謎の少女「鏡架」が加わり、人間、神様、幽霊、妖(あやかし)、そして御神体? の計5名による、ゆかり神社での奇妙な共同生活が始まった。


(システム)

 ノベル形式のADV(何やらエモーショナルノベルとか名乗ってますが…)。
 本作品は選択肢が少し変わっています。
 通常のゲームの選択肢は、主人公の視点で「〇〇する」「〇〇しない」などの行動選択が一般的ですが、本作品は先程までの文章に、続ける一文がそのまま選択肢になってます


(絵)

 キャラ絵は思いっきり萌え系のそれ。
 立ち絵では寒さを引き立てるのに、吐く息を白くしていたり、背景でも冬は雪、春は桜の花びらをさりげなく降らせたりと細かい面の演出に結構感心しました。


(音楽)

 予想以上に出来が良いです。
 ピアノ主体の穏やかな曲がメイン。
 そして怒涛のクライマックスは一転して和風怪談モノのノリに。
 ボーカル曲はOP、EDの2曲。
 曲単体では少し弱いですが、EDの余韻が残っている時に聴くと、なかなかインパクト大。


(音声)

 主人公以外は野郎キャラもふくめてフルボイス。
 声優さんの方は皆様上手く、問題は無し。
 ただCD-ROM1枚に強引に収めた弊害か、音質が少し……。


(キャラクター)

 攻略対象ヒロインは5人(メイン2人、サブ3人)。


〇麻生 こま
 メインヒロイン。
 三年前に亡くなった、主人公の義妹。


〇燕子花 こりす
 もう一人のメインヒロイン。
 主人公の幼馴染で許婚。
 画商かつ資産家の燕子花家のお嬢様。
 資産家の令嬢の彼女と、一般庶民の主人公が何故か両家の祖父母の意向で婚約。
 それには訳があり…(ネタバレ自粛)。


〇結乃由姫命(むすびのゆえのひめのみこと)
 ゆかり神社の祭神。
 通称『由(ゆえ)』。
 神様のくせに結構俗物化?している。


〇春野 千草

 主人公に取り憑いた幽霊。
 元お手伝いさん。
 主人公をかつての主と思い込んでいる。


〇咒吠君鏡架(じゅはいぎきょうか)
 
 妖刀の化身。
 無感情、無表情。
 いわゆる綾〇レイ(爆)。


〇翁 俊信(おきな としのぶ)

 四季ヶ紫町で唯一の医師。
 腕は確かで、信頼も厚い、町の有力者。
 主人公の良き相談相手となってくれる、ナイスなサブキャラ。


〇円 全一(つぶら ぜんいち)

 こりすの幼少時から彼女を見守る、専属のボディーガード。
 無口で滅多に人前に姿を見せない。
 武芸の達人。


〇?姫

 死んだはずの、こまをこの世に戻したお方。
 その目的、そして彼女の正体は実は……(ネタバレ自粛)。
 おそらく最重要キャラ。
 そして影のヒロイン。
 このお方あってこその本作品。
 何故に攻略できん?


(エロ)

 キャラ絵、内容から薄いだろうとは予想してましたが…
 ……予想を遥かに超える激薄(汗)。
 ぶっちゃけ本作にエロは不要! 無くても成り立つ。
 あるヒロインとは、生きるか死ぬかの緊迫した状況の中で、唐突にやり出す始末。
 しかし何より、「?姫」様との本番が何故に無い?
 未遂で終わる彼女とのシーンが一番エロいというのは一体…
 この時主人公が寝取られていたら、もう少しエロさも増したでしょうに…。


(総評)

 ……長い。
 とにかく長い。
 ひたすら長い。

 べらぼうな選択肢の多さ(100個を超えてる)。
 おかげでフラグの分かりにくい事…
 1回目のEDまでに要した時間、約14時間。
 文章を熟読する人ならば1stプレイに、15時間以上の長丁場になるかと…
 お手軽どころか、相当気合いを入れてかからないといけないボリューム。
 これだけのボリュームがよくCD-ROM1枚で収まったものだと、別の意味でも驚きです。
 ただ本作品、8〜9割が共通ルート(その分メチャ長いですが…)
 基本的にはどのルートも同じで、終盤にほんの少し分岐するだけ。
 よって、ほぼ全貌が明かされてしまってからの2周目以降のプレイは、ひたすら既読スキップで、アッという間に終わります

 最初の共通ルートで詰め込み過ぎました。
 シナリオ自体は決して悪くはなく、むしろ良質の部類です。
 終盤の、「?姫」様登場後の、怒涛の急展開&どんでん返しは意表を突かれた驚きの連続でしたし、この手の伝奇モノにありがちな『設定のツッコミどころの多さ』も目立ちません。
 ラストも綺麗にまとめています。
 小粒ながらも丁寧に作られた良作といってもいいかと。

 やはり9・26みたいな、空前の激戦日に出したのは辛かった。
 このキャラメルBOXというメーカー、本作が2作目らしいですが(1作目「BLUE」は未プレイ)今後注目してみたいと思います。


[お気に入りヒロイン]

  燕子花 こりす……いつまでも妹離れできないヘタレ主人公には、こんな一途で健気な娘勿体無さすぎ。
  ?姫様……このお方、色々と凄すぎ…何故攻略出来んのだ!(←しつこい)


(PS)

 本作品の主人公、相当苛立たせてくれるヘタレです。
 最近のエロゲの主人公って、こんな奴がやたら多いのには困り者です。
 スタッフルームでは、私は意味もなく、しばらくあの双六で遊んでました。
 この時もらえるアイテム群の意味って?(爆)。
 逃げても逃げても、いつの間にか「御前様〜」といって冷笑しながら、追いついてくる紫姫が素敵すぎ(笑)
 ただこの人(…ではないか)、こまルートのラストだけは他のルートと印象が大きく変わりました。
 
 私は主人公が「コイツは元々からへたれ」という気が(笑)して、何度も苛立たせてくれました。
 そのため、こまに「こまに逃げないで」とピシャリと言われた時と「自分一人が悲しんでるなんて思わないで下さい」と千草に図星を突かれたシーンなどは、思わず拍手したくなりましたよ(笑)。

 間違いなく良作と言っていいです。
 本当に丁寧な作りです。
 正直もっと評価されてもいいと思えるのですが。


(オジンガーZ 様)
ジャンル エモーショナルADV
発売日 2003年9月26日
難易度 C(選択肢に癖があり最初とまどうことも)
備考 燕子花こりす最強
   「黒と黒と黒の祭壇(C's ware)」(以下「黒黒黒」と表記)をプレイするとまた違う切り口で本作品を楽しめます。


<ストーリー>

 主人公麻生智(変更可)は、生まれつき見えないものが見える「浄眼」の持ち主。
 周囲から疎まれながらも、画家として暮らす彼は写生の為何かに導かれるよう四季ヶ紫町を訪れる。
 寂れたゆかり神社、そこには3年前に死んだ義妹こまにそっくりな御神体が安置されていた。
 「ただいま、帰ってきたよお兄ちゃん」
 驚愕する主人公に御神体=こまは微笑んだ。


<システム関連>

 音楽、CG,シーン鑑賞、既読スキップや前の選択肢に戻るといった、基本的なものから便利なものまで完備されています。
 サウンドはピアノ曲中心で、雪国特有の明るい中に物悲しい雰囲気がよく込められていたと思います。
 また、寒い中白い息を吐いたり、雪がふるエフェクトがきちんと窓の外だけに表示されていたりとCD1枚によく収めたと感心しました。
 それと、何と言ってもスタッフルーム! これはもう見てみないと凄さはわからんです。
 特にめらりVerのOPは、こまとこりすが釘バットでしばき合いをしたり、雪原で主人公が裸に剥かれて放置されたりと爆笑ものです。


<キャラクター>

○麻生こま
 三年前に死んだ主人公の義妹でゆかり神社の御神体に魂を宿らし蘇える。
 メインヒロイン。

○燕子花こりす
 富豪の娘で主人公の許婚、主人公とこまとは幼馴染で四季ヶ紫町まで主人公を追いかけてくるパーフェクトお嬢様。
 メインヒロインその2。
 主人公を心から愛しているものの、こまに遠慮して言い出せないでいる。
 エロゲの主人公を羨ましく感じたのはこれが初めてです、ハイ。

○千草

 女中さん幽霊。
 主人公をご主人様と思い込み憑りつく。

○咒吠君鏡架

 妖刀の化身で無表情。
 当初、主人公に刀を突きつけたり、こまを付け狙っている素振りを見せ、敵役と思いきや実は……

○由
 本名、結乃由姫命。
 ゆかり神社の祭神で外見はどうみても幼稚園児。
 子供っぽい性格をしている。

○紫姫

 全ての元凶。
 味方だと思ったら実はラスボスでしたという基本的な方。
 4章の最後で、自分の企みを頼んでもいないのにぺらぺら喋る様を見て、なんて基本に忠実な方なんだと苦笑しました。
 バッドED直行でもいいから、彼女とのHシーンは欲しかったです。
 だって一番艶っぽいんだもん(爆)。


<シナリオ>


 長いです。
 さすがは3M、伊達ではありません。
 1プレイで大体10時間軽くかかるので、休日等にどっしり構えてプレイする事をお勧めします
 ただ共通ルートが多すぎて、2週目以降は既読スキップと次の選択肢へ進むを使うと1時間かからず終わっちゃいます。
 1週目で全ての謎が解明されるので、2週目からはCG回収目的になっちゃうのがちと悲しいです。
 構成としては序章、1〜4章、終章の6章仕立てとなっており、前半はヒロイン達とのゆかり神社での共同生活とこまとこりすの主人公に対する想いやお互いの葛藤が描かれ、後半では鏡架が何故こまを付け狙っていたのか、何故紫姫がこまを蘇えらせたのかといった物語の謎が解明されていきます。
 人物の心情の描写がとてもよく描けており、特にこりすの主人公を想う様は、見てて何度も涙が出てきました。

 ただ欠点としては、主人公の視点だけで物語が進むのではなく、時にはヒロインの視点で物語が進みます。
 特に、こまとこりすの掛け合い等が主人公そっちのけで進んでしまい、主人公が気がついたらえらい事になっており「主人公右往左往→主人公へたれ」という事がしばしば見受けられました。
 この物語は、こまとこりすがメインヒロインとして全面に出まくっているので千草、鏡架、由の影の薄いこと薄い事。
 Hシーンも、なんだかとって付けた様な感じでしたし、正直いらなかったかも
 でも無かったら無かったらでファンが怒り出すんでしょうね(爆


 さて、本作だけをプレイされた方は、こまがメインヒロインで主人公が彼女の死を、こりすと共にゆっくりであるが乗り越えていくという印象を受けると思うのですが……
 この作品のシナリオは朱門優という方が担当されているのですが、氏が「めぐり〜」の前に手がけた中に「黒と黒と黒の祭壇」(C's ware)という作品があり、スタッフルームや物語中の何気ない会話を見ていると、こりすが「黒黒黒」のヒロイン・チッセの転生体である事が分かります。
 何故こりすがああまで主人公につくすのか…
 何故こりすは全一にウロボロスという渾名をつけたのか……。
 これは「黒黒黒のチッセトゥルーEDを見れば全て氷解します。
 ネタバレになるので書きませんが、これ見て私は滂沱の涙! こりすに轟沈してしまいました(爆

 スタッフルームで氏が仰ってるように、お遊びで入れたカラクリなので、普通はきづかないと思います。
 こりすが、チッセやウロボロスに言及するのも、こりすの好感度を相当上げなければ見れない隠し要素ですし。
 私も最初、おまけの内容がさっぱり分からず、某巨大掲示板で初めて知って慌てて「黒黒黒」を買いに走った口ですから(笑)。


<まとめ>

 間違いなく良作の部類に入ると思います。
 そこかしこに、スタッフの本気で作っているぞという気迫が感じられ、とても好感が持てました。
 何より好感が持てたのは、他のエロゲが無駄にデカイ箱で包装してるにも拘らず、このソフトだけがコンパクトな小さいプラケースだったので、持って帰るのが楽だったのはここだけの話です(笑


(刀和祥子 様)
戻りマース