セガサターン 水夏 メーカー:プリンセスソフト
流竜馬 様
 PSでは「WATER SUMMER」のタイトルで出ています。


ストーリー

 日本のどこかにある、海と山に囲まれた「常盤村」ではいつものように寂れた夏が訪れていた。
 扇風機とうちわ、蝉の声とテレビの野球中継、線香花火と海開き、打ち水と夕暮れを告げる鐘の音…。
 そんな夏、人語を解する謎のぬいぐるみを抱く「名無しの少女」が村を訪れたことで、不可思議な物語の幕が開かれた…。

1章
 しばらくの間暮らしていた常盤村に戻ってきた浪人生・風間彰は、そこでかつて仲の良かった少女・水瀬伊月と再会した。
 再会を機に急接近を始めた二人の恋の結末は如何に!?

2章
 何でもそつなくこなす少年・上代蒼司は、天才画家・白河律のもとで絵を学びながら、律の娘さやかの唯一の理解者として穏やかな日々を送っていたが、次第に微妙な変化が見られ始める。
二人の運命は如何に!?

3章
 大学生・柾木良和は恋人・京谷透子と義妹・茜と共に平和な日々を過ごしていたが、彼は茜を一人の女性として意識してしまう自分に不安を感じていた。
これは一体何を意味するのか!?

4章
 父の危篤を知って帰郷した青年・稲葉宏は、村で出会った名無しの少女と共に奇妙な同居生活をするようになっていく。
やがて自分達にも関わる少女の秘密を知った彼の運命は如何に!?


キャラ紹介

風間彰(かざま あきら)
 1章主人公で、やや自堕落気味でイタズラ好きの浪人生。

水瀬伊月(みなせ いつき)
 彰の昔馴染みで、常盤村の神社で巫女さんをしている少々ヲタク気味の少女。
 昔は内気だったが、彰のおかげで明るくなった過去を持つ。

上代蒼司(かみしろ そうじ)
2章主人公で、絵に描いたような真面目な優等生タイプの少年。
…だが、その内面にはかなり欝屈した感情が秘められている。

上代萌(かみしろ もえ)
 蒼司の妹で、かなりの器量良しだが、超が付くほどのブラコンで、さやかや美絵を敵視している。
 2章(特に美絵シナリオ)では結構存在感のある脇役で、特典ドラマCDにも登場しているにも関わらず、「一切CG無し」という不遇な少女である(爆)。

白河さやか(しらかわ さやか)
 「死」をテーマに絵を描く父を持つために村では孤立しているが、持ち前の明るさと蒼司の優しさのおかげで毎日元気に過ごしている。

若林鏡太郎(わかばやし きょうたろう)
 3章主人公・柾木良和の親友兼カウンセラーで、いつもニコニコ笑みを浮かべている。
 家族や親しくなった者には心底優しいものの、それ以外の人間に対してはまるで「爬虫類」(by柾木茜)のように陰湿な面を持つ。

若林美絵(わかばやし みえ)
 鏡太郎の妹で、さやかや蒼司の後輩。
 蒼司にベタ惚れ中で、さやかをライバル視している。

柾木良和(まさき よしかず)
 3章主人公で、活発な義妹・茜とおっとりした恋人・透子の狭間で悩む大学生。
 一見普通の青年だが、内面はややネガティブである。

柾木茜(まさき あかね)
 良和の義妹で、明るく元気で世話焼きな水泳少女。
 良和と透子の恋のキューピッドをつとめた経験があるものの、思慕の念はまだあるようだ。

京谷透子(きょうや とうこ)
 良和の恋人で、いついかなる時でも良和のことを第一に考えている。
 しかし、その愛情は「独占欲」に近いものがある。

稲葉宏(いなば ひろし)
 4章主人公で、真・主人公と言っていいポジションの持ち主。
 彼と名無しの少女との出会いが全ての始まりであった…

稲葉ちとせ(いなば ちとせ)
 宏の妹で、生まれながらに重度の心臓病で苦しんでいるが、周囲に迷惑をかけまいと、いつも健気に笑っている。

名無しの少女
 この物語の最重要人物で、通称は「お嬢」。
 ネタバレ防止のため、詳細は秘密です(笑)。

千夏(ちなつ)
 全ての章に現れる謎の女性。
 神出鬼没で、名無しの少女に匹敵する重要人物である。

アルキメデス
 名無しの少女(お嬢)が抱く猫のぬいぐるみだが、人語を解し、しゃべる事ができる謎の存在である。


ストーリー評価

1章
 詳細は伏せておきますが、「萌え」だけ狙いの方なら確実にKOされるであろうシナリオです。
 「些細なすれ違い」の積み重ねが生み出した衝撃の結末にはとにかく絶句あるのみでしたね…。

2章
 「人の優しさと暗黒面を交互に見ることになる」シナリオで、最後はハッピーエンドで締められるものの、とにかく最後まで気の抜けない展開でした。
 何せ、主人公の蒼司にすら「闇」があったのですからね…

3章
 このシナリオでは「一途に恋する女の怖さ」というものが拝めます。
 ハッピーエンドの場合、取り返しのつかない悲劇が起こったわけでもないのに「ハッピーエンドを迎えても素直に喜べない」結末には驚かされましたね。

4章
 ラストエピソードで、名無しの少女やちとせ達との交流が織りなす、微笑まくて、楽しくて、悲しくて、それでいて癒される物語です。
 1〜3章までで、多かれ少なかれ重い気持ちにさせられていた自分の心が癒されるハッピーエンド(2つあり)には心底救われました。
 2つのハッピーエンドを見た後、エピローグが拝めます。

「若林美絵」シナリオ(2章)
 DC版で追加された分岐ストーリーで、美絵ちゃんとのギャグあり、シリアスあり、泣きありの展開が楽しめる良質のシナリオなのですが…
 惜しむらくは、ここでも「蒼司の暗黒面」を少しとはいえ出してしまったことですね。
 せっかくの「泣けるいい話」なのに、これがあったおかげで「カレーにあんこを入れられた」り「アイスに唐辛子を混ぜられた」ような感じにさせられましたよ(無念!)。


内容評価

 萌えキャラや美しいBGMに惹かれがちな作品ですが、ストーリー自体は「良質ではあるが、萌え狙いの方は要注意」なものでした。
 とにかくこの物語では「死」や「人の2面性」が浮き彫りになることが多く、萌えゲーとは全く異なる出来に仕上がっているのです。

 しかし「重さ」と「癒し」…この見事な取り合わせこそがこの作品の最大の持ち味だと思います。
 「各章で所々ツッコミどころあり」な事や「区切りがあって、あまり文章を巻き戻せない」事や「主役脇役問わず男性陣は全員声無し」な事などの欠点はあるものの、十分に楽しめたので「買う価値はあったなぁ」と思える良作でしたね。
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