Sakura〜雪月華〜
メーカー:サーカス&プリンセスソフト
◆
流竜馬 様
「D+VINE[LUV]
」(DC)や「
水夏
」(PS&DC)など、パソゲーのコンシューマー移植を行っている「
プリンセスソフト
」と、人気パソゲーメーカー「
サーカス
」の合作であるこの作品についてレビューしますね〜。
>ストーリー
時は現代の3月…
全寮制で厳しい校則に縛られた「上代学園」も長期休みの間だけは生徒に自由を与え、皆それぞれの自由を満喫するために帰省していた。
しかし、演劇部の面々だけは一ヶ月後の創立記念日までに、何か一つでも演目を作って演じなければ「やる気なし」と見なして部室を取り上げると学園側に宣告されたため、大わらわで新作発表に取り組んでいた。
…が、いい案も浮かばず苦労していた矢先に謎の転校生「出雲明日香」が演劇部の面々に一冊の古ぼけた本を差し出し、こう言った。
「
この本を、芝居にして欲しいの…
」 本の内容にひかれた脚本担当の主人公・草薙誠(変更不可)はその本を元にしてオムニバス形式の演劇を3本作り上げることになるのだが、これが全ての運命の歯車を動かすのであった…。
>キャラ紹介
○「現代編」
=本編でもあります。
・草薙誠(くさなぎ・まこと)
この物語の主人公で、曲者揃いの演劇部では唯一の常識人(核爆)。
普段は脚本担当であったが、人数の都合からこの劇の主役に抜擢された。
「触らぬ神に祟りなし」な事無かれ主義で、いささか行動力に欠けるところはあるものの、基本的に他人思いで優しく、バカをしでかす事も無い優等生キャラである。
・草薙小雪(くさなぎ・こゆき)
誠の従妹で、彼を「誠お兄ちゃん」と慕う典型的妹キャラクター。
また無類の可愛いもの好きで、転校生の円をこれでもかと言わんばかりに猫可愛がりしている。
ちなみに料理のスキルはマイナスの領域に達しており、その出来はあまりにも酷い(笑)。
・出雲明日香(いずも・あすか)
誠に今回の劇の原本「雪月華」(命名は誠)を託した謎の転校生。
本人は「ミステリアス少女」を気取っているようだが実際にはかなりの「天然ボケ&ドジっ娘」である(笑)。
この物語の最重要人物ではあるのだが、終盤までは基本的にはギャグキャラなのが面白い。
・深海優子(ふかみ・ゆうこ)
「破壊の権化」他多数の異名を持つ演劇部部長。
「毒舌」「傍若無人」「ものぐさ」「暴力的」「どこからともなく凶器(主に木刀)を取り出す特技」など、あまりにも強烈過ぎるスキルを兼ね備えており、血液の代わりにコールタールでも流れてるんじゃないかと思うほどひでえ人だが、部活動への取り組みにかけては真剣極まりなく、部長を努めるだけのことはあるなと納得させられるほどである。
・月島円(つきしま・まどか)
春休み中に転校してきた良家のお嬢様。
まるで「お人形さんのように可愛い」美少女なため転校当日は小雪と奈々にとにかく可愛がられまくったほどである(笑)。
かなりの器量良しで演劇の才能もあるものの、自己主張に乏しいのが難点である。
・九十九奈々(つくも・なな)
演劇部の裁縫や小道具作り担当である長身の少女。
とにかく豪快な性格で、コミュニケーションにプロレス技を用いる程だが、実は彼女のパワーは冗談抜きでプロレスラー級であるため被害が絶えない(本人に自覚は無し)。
しかし家事は料理以外こなせるし、恋愛に関しては登場人物で一番ウブだったりと結構可愛いところがある。
・酒桝十和子(さかます・とわこ)
結構有名なルポライターである天然ボケボケお姉さん。
大正時代から曾祖母が追っていた「十握剣」を追ってこの学園に潜入していたのだが食料泥棒がバレて捕まってしまい、その後色々あって演劇部の炊事を担当することになった(笑)。
・深海慎(ふかみ・まこと)
誠の親友であり幼馴染み。
黙っていれば美少年なのだが口を開けば驚くほどのギャグメーカーで、何故か関西弁を喋る。
姉である優子とは犬猿の仲なのだが、何故姉と一緒の高校に進学したかは優子シナリオで判明する。
・田原秀樹(たわら・ひでき)
演劇部顧問だが、やる気が無くいつも煙草を吹かしているグータラ教師である。
…が、その目は節穴ではなく、トラブルに関して敏感で、その行動力も凄まじい。
○「平安編」
・安倍晴明(あべの・せいめい)=演:草薙誠
平将門と葛葉(後述)の間に生まれた息子。
本名は平将国(たいらの・まさくに)。
母に教え込まれた父の仇・藤原秀郷を殺すべく陰陽道を極めていたが、偶然関わることになった雪姫や玉藻との交流や、仇であるはずの秀郷の人柄に触れることで己の行動や母の命令に疑問を持つようになってゆく。
・雪姫(ゆきひめ)=演:草薙小雪
安倍晴明が偶然助けることになった盲目&記憶喪失の少女。
その性格は極めて純粋かつ天真爛漫で、荒んでいた晴明の心を癒してゆく。
・玉藻(たまも)=演:出雲明日香
狐を媒介とした葛葉の式神で、少々ドジなところがある。
当初は雪姫の命を狙っていたが、彼女や晴明との共同生活がきっかけとなって自我に目覚め、命令よりも「雪姫達との暮らし」を優先するようになる。
・式(しき)=演:月島円
葛葉が送り込んだ第二の式神で、怜悧冷徹に命令を実行する。
・藤原秀郷(ふじわらの・ひでさと)=演:田原秀樹
晴明の父・将門の仇である武将で、俵藤太(たわらの・とうた)とも呼ばれた豪傑。
かなりの大物であり、自分を狙う晴明相手にも臆せず真っ向から接し、全ての真実を伝えた。
・葛葉(くずは)
将門の妻で、晴明(将国)以上の陰陽道の使い手。
夫を討たれたことで彼の復讐に狂い、実の息子を殺し屋同然に育てただけでなく、命令に従わなくなった途端に殺しにかかるような悪魔と化している。
その狂いっぷりは半端ではなく、秀郷の語った全ての真実や晴明と雪姫の懸命の呼びかけさえ通じなかった。
○「鎌倉編」
・木曽義高(きそ・よしたか)=演:草薙誠
木曽義仲の息子で、源頼朝の娘・大姫との政略結婚のために鎌倉に来た。
当初は鎌倉の連中の態度の酷さに憤慨し、大姫との仲も最悪だったものの、美繰や八重の献身のおかげで仲直りしてからは真剣に彼女を愛するようになる。
・大姫(おおひめ)=演:草薙小雪
源頼朝の娘で、義高との政略結婚を命じられた幼き姫。
当初はカンシャクを起こして義高を相当嫌っていたものの、彼の優しさに触れてからは心底から愛するようになる。
・美繰(みくり)=演:出雲明日香
義高の女房(世話役)その1で、一見クールに見えるが優しく礼儀正しい。
大姫の幸せを第一に考えており、そのためにはあらゆる尽力を惜しまないほどである。
・八重(やえ)=演:九十九奈々
義高の女房その2で、美繰とは逆に底抜けに明るい性格の持ち主。
実は木曽義仲に派遣された間者(スパイ)で、義高を密かに慕っている身でもあるのだが彼の幸せを第一に考えているため、彼と大姫には幸せになって欲しいと思っている。
・信求(しんきゅう)=演:田原秀樹
謎の坊主で、藤原秀郷に瓜二つの容姿である。
義高の愛刀「十握剣(とつかのつるぎ)」(平安編で葛葉が晴明に渡した呪い刀)を見て彼にそれを捨てるよう警告する。
・北条政子(ほうじょう・まさこ)
源頼朝の妻で、大姫の母。
大姫にも義高にも優しいが、言葉の端々に何やら裏があると臭わせる。
○「大正編」
・仲本誠二(なかもと・せいじ)=演:深海慎
父の遺した売れない骨董屋を営む青年で、麻生雪美を慕っている。
兄・慎一との仲は良いのだが、彼女との仲に関してだけはうまくいってない。
・仲本慎一(なかもと・しんいち)=演:草薙誠
誠二の仲の良い兄で、彼と瓜二つの容姿の持ち主である売れない小説家。
彼も雪美が好きであるため、そのことに関してだけはお互い譲り合えない。
・麻生雪美(あそう・ゆきみ)=演:草薙小雪
結核にかかっており、誠二達の住むアパートの離れで暮らしている美少女。
病にもめげずに懸命に生きており、慎一や誠二の心の拠り所となっている。
・久世飛鳥(くぜ・あすか)=演:出雲明日香
「女性の社会進出」を目指す編集者で、慎一の小説を担当している。
一見クールビューティーに見えるがかなりのドジっ娘でトラブルメーカー(笑)。
とある理由で雪美の病気はうつらないため、彼女と唯一面と向かって接することができる。
・俵藤一郎(たわら・とういちろう)=演:田原秀樹
麻生雪美の主治医で、慎一・誠二・飛鳥らと同じアパートに住んでいる。
このアパートの近くにある「封印塚」に封じてある「十握剣」を掘り起こされないよう見張っている。
・室戸小町(むろと・こまち)=演:深海優子
誠二の骨董屋で働く毒舌看板娘で、彼の頭痛のタネ。
実は誠二が好きなのだが、素直になれない性格と友達である雪美に対する遠慮から言い出せない。
・諸星三都子(もろほし・みつこ)=演:酒桝十和子
飛鳥の勤める出版社の編集長の姪っ子で、飛鳥と慎一を慕っている。
好奇心のカタマリといえる少女だが、彼女のその好奇心が災いしてこの時代に隠されていた「十握剣」は発見されてしまった…。
>内容評価
(システム)
石田彰・子安武人・置鮎龍太郎・堀江由衣・田村ゆかり・野川さくら・水樹奈々
など、現在大人気の有名声優起用のフルボイス(何と主人公まで!!)を初めとして、システムは基本(スキップ・バックログ・クイックセーブ&ロード)をキッチリ押さえており、おまけ機能(全キャラによるシステムボイス、選択肢による好感度チェックなど)もそつがないため、まさに「文句無し」の領域。
それに、「
ファーストKiss☆物語U
」(DC)と同様、キャラ別にED曲があるのは大きかったです。
(ストーリー)
=(注:ここから先はネタバレの嵐です!!)
この「
Sakura〜雪月華〜
」は
輪廻転生の恋愛物で、台本の内容も(ゲーム中の)実話であります
。
メインキャラは、平安時代からの悲劇(結ばれても葛葉のために非業の死を遂げる結末)を重ねて、最終的にこの現代まで転生してしまい、それでも挫けずに葛葉の怨念に勝利し、悲劇の連鎖を断ち切るという展開なのですが、実はこのゲーム、
ファーストプレイではメインシナリオといえる「小雪シナリオ」と「明日香シナリオ」しか攻略できず、どちらかでハッピーエンドを見た後に他のヒロインシナリオを攻略できる
という作りになっております。
そして…全てのキャラによる側面から見ることでシナリオの全貌が掴めますので、
プレイするならぜひとも完クリすべきですね(断言)
。
<各シナリオ評価>
(草薙小雪シナリオ)
彼女は平安編から何度も転生を繰り返し、その度に葛葉によって悲劇の死を迎えた少女・雪姫の転生体です。
メインヒロインだけあってシナリオは流石に充実しており、現代パートでの恋愛ドラマを初めとして、平安編&鎌倉編&大正編の濃密なドラマ、カタルシス全開の葛葉とのラストバトルが楽しめます。
特に、亡き将門への愛に狂い、どのシナリオでも救いようのない存在だった葛葉ですら、今までの悲劇の連鎖から解き放たれ、救済された
ハッピーエンドは間違いなく作中ベストエンド
でしたよ!!
(出雲明日香シナリオ)
彼女の正体は元・葛葉の式神であり、後に安倍晴明(誠の前世)の式神として生まれ変わった「玉藻」です。
彼女は他のヒロインのように「転生」を繰り返したわけではなく、名と姿を変えて1000年の時を生き、晴明との約束(葛葉の怨霊から雪姫の転生体を守る)を果たそうとします。
その結末は3つの劇でも示される通り失敗(しかも大正編では葛葉に利用されてしまいました)に終わってしまい、彼女は我々の想像もつかないほどの挫折と絶望を味わってきました。
しかし、それでも負けずに健気に頑張る彼女と、前世からの宿命に囚われることなく彼女を愛した誠との恋愛ドラマはかなり見応えがあり、彼女を「小雪と双璧を成すメインヒロイン」に据えるのに相応しいシナリオといえました。
ただ惜しむらくは、このシナリオでの誠は「俺は晴明でも義高でもない」と言って
前世のことをズバッと切り捨てておきながら、最後でヤバくなった明日香を助ける時に「(前世の自分達に)力を貸してくれ!」と前言が台無しな台詞を言う
始末でした(汗)。
このシーンさえなければもっと評価が高くなっただけに…残念です。
(深海優子シナリオ)
彼女は大正編で仲本誠二(兄の慎一と同じ前世(晴明と義高)の記憶を持つ者)に恋心を抱いたものの、性格が災いして最後まで想いを伝えられなかった悲運の毒舌少女・室戸小町の転生体です。
このシナリオでは記憶がロクに覚醒してない頃に葛葉と戦う羽目になったため、前世からの因縁を伝える語り部的存在の明日香(玉藻)と田原先生(秀郷)が完全に空回りしてしまい、
一歩間違えばギャグになりかねない展開
になったのが痛かったです。
明日香シナリオ終了後に、これに手をつける事だけは絶対オススメできません…
。
でも、現代の自分達に重点を置いた恋愛ドラマは良くできており、それは素直に評価したいですね。
ちなみにこのシナリオでは、
優子の弟
・慎も攻略可能です。
(月島円シナリオ)
彼女は平安編で葛葉が人形を媒介にした式神の転生体で、折角人間に生まれ変わってもまるで操り人形のように周囲の言いなりになって生きてきました。
そんな彼女が誠の影響で次第に自分の意志で行動するようになり、最終的には葛葉相手にも「私は(葛葉の)人形なんかじゃない」と言い切れるようになるまで
成長した姿には感動さえ覚えました
ね。
「ちっちゃくて可愛い子萌え」なだけのシナリオにならなかった所にスタッフの頑張りを感じますよ。
(九十九奈々シナリオ)
彼女は鎌倉編で義高への想いを胸に秘め、最後まで彼の幸せのために尽くした女房・八重の転生体で、彼女も優子部長(小町)同様、過去の因縁より現代の恋愛が重視されてますが、こちらはそれでも完成度が高かったですね。
現代で築き上げてきた想いの力で葛葉を破る展開だけでなく、お互い(誠と奈々)が照れあいながらも次第に好きになっていく展開が、これでもかと言わんばかりに描かれていたので、ハッピーエンドを見終わった頃には完全にKOされてましたね(顔真っ赤!!)。
(酒桝十和子シナリオ)
彼女は大正編で全ての悲劇のキッカケ(十握剣の発動)を生んでしまい、事件終了後も全ての謎を追っていたルポライター(の卵)・諸星三都子の転生体(曾孫)で、前世の記憶もあってか田原先生の制止にもめげず、どんなに傷ついても謎の解明を目指しました。
そのためシナリオ的には「彼女が起こしたトラブルの尻ぬぐい(汗)」と言えるものでしたが、彼女が傷つきながらも、前世からの心残りに終止符を打てたハッピーエンドには正直言ってホッとしましたね…。
>最終評価
この作品は笑い・泣き・萌えや燃え(笑)などを本当にキッチリ押さえており、システム面も本っ当に良くできていた「良作」でした。
ただ、「名作」と評するにはあまりにもデカい欠点があったので、それだけは述べさせてもらいますね。
(1)あまりにも酷いラスボス・葛葉!(怒100%)
どの物語でもラスボス役である葛葉(くずは)は、将門への愛情に狂った復讐鬼と化していたのですが、その所行はあまりにも酷すぎました。
・
殺し屋同然に育てた実の息子(晴明)より遥かに強いにも関わらず自ら出向かなかった。
・
息子が自分の命令に少々難色を示しただけで彼を殺しにかかった(自分が秀郷抹殺に出向けば済んだ話だった)。
・
「将門様が私を残して無念を残さず死んだはずはない」など何でも自己中の解釈しかせず、既に判明している「真実」にこれっぽっちも耳を貸さなかった。
・
どの時代でも狙うのは「晴明&雪姫の転生体」で、
「憎っくき仇」であるはずの「藤原秀郷」の事を完全に無視していた
(おい!!)。
ハッキリ言ってこいつの最低&駄目っぷりは「
ゲートキーパーズ
」(PS)のラスボス「影山零士」(
八つ当たりで人類を滅ぼそうとした駄目人間
)に匹敵します!!(どキッパリ)
しかも、シナリオによっては「
ネオラゴーン(by高速戦隊ターボレンジャー)
」の如くあっさり倒されますし…
ああ…
こんなラスボスは嫌過ぎだ〜〜〜!!!(血涙)
。
(2)今まで何やってたんだ将門!!(怒200%)
しかも葛葉の怨霊を倒したのは田原先生(秀郷)が誠に託した神剣・草薙剣に宿っていた平将門の霊の力のおかげ(詳しくは小雪シナリオで判明)なのですが、この剣が出てきたのはなんと「平安編」(しかも葛葉との決戦時)からなのです……。
……ちょっと待て。
この時に将門の霊が出ていれば誰も死なずに済んだんじゃないのか!?
1000年も経って、しかも数多くの犠牲者を出してから登場なんて、
遅過ぎにも程があるぞ!
ウガー!!
(現在、流の顔は「阿修羅面怒り」になっております)
(3)貴方は耐えられるか!? 「驚異のエセ関西弁」にッ!?
主人公の親友兼幼馴染みであり、劇中では
子安武人
さんの声でプレイヤーを魅了してくれた「深海慎」君は作中屈指のギャグメーカーでもあり、常に関西弁を駆使して笑いを提供してくれましたが……
彼の「関西弁」だけは関西に暮らす者としては拒否反応を起こしたくなるほど酷いものでした(汗)。
ああ…どうしてアニメやゲームではこうもエセ関西弁が多いのでしょうか?
教えてくれ雷電!!
(爆)。
…これらの欠点さえなければ何のためらいもなく「名作」と言えただけに惜しかったです。
でも、質の高さは確かなのでぜひともオススメしたいですね。