PLAYSTATION セガサターン ファイヤーウーマン纏組 メーカー:徳間書店
流竜馬 様
 この世にはどんなに出来が良くても宣伝が殆ど無かったり、大ヒット作品の影に埋もれて日の目を見られなかった良作、傑作は多数存在します。

 「サーカディア」「星の丘学園物語 学園祭」「プリズムコート」  そして、今回紹介するこの作品もあの「ファーストkiss☆物語」同様、PC-FXで好評だったためにPS移植が実現した作品だったのですが、これといった宣伝も無かったためマイナーソフトで終わってしまいました(泣)。
でも、このまま時代の波に消し去るのはあまりにも惜し過ぎるので全力をもってレビューしますね〜!!


>ストーリー
 「自主独立」の精神を尊ぶ「白鷺学園(しらさぎがくえん)」には、その学校の自由と平和を守る少女と少年達がいた。
 その名も「纏組(まといぐみ)」である。
 学園で起きる様々なトラブルの炎を消していく、いなせでキュートな少女達に転校早々助けられ、纏組に入ることになった主人公(名前変更可能)の運命は如何に!?


>キャラ紹介 (主人公以外&ネタバレ有り)

・酒井 涼子(さかい・りょうこ)
 「火消しのお涼」と呼ばれる纏組「一番纏」。
 普段はクールだが事件が起これば誰よりも熱くなる姉御。
 纏組最強の戦闘力を誇るだけでなく、ボーイッシュな外見に秘めた優しさも併せ持っている。
 はっきり言って彼女に勝てるくらいの実力がなければバトル絡みのイベントの完全制覇は厳しいです。

・桂木 さやか(かつらぎ・さやか)
 白鷺学園長の孫娘で、纏組「二番纏」。
 祖母譲りの合気道の腕前は相当なものである。
 細かい事は考えず、トラブル解決に向けて一直線な猪突猛進・熱血直情少女だが、普段はキュートでお茶目でミステリー小説好きな普通の女の子である。

・瀬田 ひろみ(せた・ひろみ)
 「瀬田財閥」のおっとりお嬢様だが、こう見えても纏組「三番纏」。
 涼子やさやかに比べ体術の腕は劣るが、武器の扱いにかけてはプロ軍人も真っ青である(笑)。
 また、厳格な祖父に育てられたため、精神面では纏組で一番しっかりしている。

・美山 玲子(みやま・れいこ)
 白鷺学園の生徒会で風紀委員をつとめる2年生。
 学園の揉め事は生徒会が解決するという考え方から纏組(特に桂木さやか)とは犬猿の仲である。
 纏組の新米である主人公のことも快くは思ってなかったのだが、不良に襲われてピンチの所を彼に救ってもらってからは好意を寄せるようになる(しかし纏組嫌いは相変わらず)。
 普段はお邪魔キャラの印象が強いですが、終盤ではそのイメージを完全に払拭する活躍を見せたので結構気に入ってます。

・荒木 美加(あらき・みか)

 元生徒会長で、現在は弓道部にて後輩の指導を行っている才女。
 優しく聡明で、主人公(プレイヤー)にとっても憧れの女性といえる人だが、実は物語終盤で纏組を疎ましく思っており、纏組潰しの黒幕であったことが判明し、2月の試験後に彼女達との最終決戦を迎えることになる。
 …とは言っても、主人公への好感度が高ければ信念と恋の板挟みで相当悩むことになります。

・柊 由宇(ひいらぎ・ゆう)

 プロ作家として既に3本の幻想娯楽小説を発表した売れっ子小説家だが、決しておごらない真面目で勤勉な3年生。

・此花 穂乃果(このはな・ほのか)

 おやつクラブ部長をつとめる2年生。
 内気で弱気な性格だったものの、紅慎輝郎(後述)の毒牙から守ってもらった一件以来、主人公に好意を寄せるようになる。

・岡田 花奈(おかだ・かな)

 オカルト研究会会長である2年生。
 かなり正確な占いの腕前を持つが、時にはどぎつい事も平気で言ってしまうため、客とケンカになる事もしばしば。

・新藤 まどか(しんどう・まどか)

 菜園部所属の1年生。
 料理好きなため料理上手の此花穂乃果先輩に憧れている。
 そんな彼女の料理の腕前は「ド下手」だが、主人公相手の練習を重ねる毎に上達していく。
 それでも失敗の可能性はあり、ひどい時は主人公の体力をごっそり奪われます。

・佐倉 美幸(さくら・みゆき)

 テニス部所属の1年生。
 控え目なところがあるものの腕は優秀である。

・水矢 摩子(みずや・まこ)

 モテモテの1年生女子。
 可愛い外見をしているが性格はまさに小悪魔。
 彼女を巡っての男子の喧嘩は校内で一年中発生し、しかも当人はその状況を完全に楽しんでいるという困ったちゃんである。

・スカッシュガールズ

 校内の人気チアガールグループ。
 通称が「レモン」「オレンジ」「メロン」の3人組(本名不明)。
 一見遊び好きの女の子に見えるが、実は武術をたしなんでいるため、そこいらの不良よりは強い。

・青山 愛子(あおやま・あいこ)

 主人公の担任である英語教師。
 纏組の司令官的存在…と言うより無縫先生の監視役(笑)。
 厳しい物言いが多いが、それも主人公達を思いやっての愛の鞭である。

・典医 無縫(てんい・むほう)

 纏組の本部である保健室の主。
 物語のナレーションもつとめる(笑)。
 医師としての腕は確かなのだが、とにかくスケベで覗き趣味がある困り者。

・藤川 わたる(ふじかわ・わたる)

 纏組メンバーで、桂木さやかのボディガードを自称する2年生。
 典型的熱血正義漢で、やる気も充分なのだが実力は伴っておらず、頭脳労働担当の京介にすら勝てないありさまである(泣)。

・津島 京介(つしま・きょうすけ)

 「纏組の頭脳」とも言えるメカの天才。
 彼の開発する武器の扱いを得意とする瀬田ひろみとはいいパートナーである…が、恋愛感情までは持たれていないようだ(さらに泣)。

・住吉 丈児(すみよし・じょうじ)

 自ら「ギャル・インフォメーションのジョー」と名乗る新聞部部員(2年)。
 言ってしまえば「ときメモ」の「早乙女好雄」である(笑)。
 性格は本当に「生涯の友としたいくらいイイ奴」で、新藤まどか嬢のハートを射止める事を可能にしたのは間違い無く彼のおかげです。

・紅 慎輝郎(くれない・しんきろう)

 大金持ちの御曹司で、抜群のルックスと多くの女子生徒ファンを持つ。
 しかし、性根はとことん腐りきっており、自分以外の男を「虫ケラ」呼ばわりするわ、自分のアプローチになびかない女の子は部下の不良や黒服ども(時には武器携帯)に襲わせるわ、その件で纏組にやられても懲りるどころか逆恨みするわetc…と、とにかく鬼畜エロゲーの世界でも充分に通用するほど暴挙にいとまが無い。
 しかも、既に彼の本性を知っている女子からは凄まじく忌み嫌われているにも関わらず、1ミクロンもわからずに傍若無人に迫り、白鷺学園にトラブルの種をバラ蒔きまくる「正真正銘の人間のクズ(純度100%。死んだら確実に地獄行き)」な下衆野郎である。
 そして物語終盤に、纏組への恨みを荒木美加嬢に利用されて主人公達に真っ向勝負を挑むことになるのだが、腕っぷしなどこれっぽっちもないヘッポコであるため撃退は呆れるほど簡単である(笑)。
 余談ではあるが、岡田花奈嬢の占いによれば彼の未来は『お先真っ暗』らしい。
 いい気味である。

・式岐 宗久(しき・むねひさ)
 物語中盤に登場する謎の転校生(2年)。
 「無口&無愛想なとっつきにくい奴」ではあるものの、悪を決して許さず、困っている人のピンチに颯爽と駆けつけ、瞬く間に蹴散らすナイスガイ(何と戦闘力は纏組最強の涼子さん以上です)。
 本人は語ってはくれないが、この物語のラスボスともいえる荒木美加嬢とは過去に何かあったらしく、2月の最終決戦では彼女の代理として纏組の前に立ちふさがってくる。
 また意外と押しに弱い性格らしく、ゴーイングマイウェイな摩子ちゃんや、いつも強気の玲子嬢に対してはてんで頭が上がらなかった(笑)。


>内容紹介

 この作品内でやるべき事は「5月〜3月5日(卒業式)」までの間に己を鍛え、学園内のトラブルを解決するだけでなく、目当ての女の子との恋愛を成就させることです。
 まぁ言ってしまえば「ときメモ」と「ガンパレ(学園部分)」の融合型ですが、この作品では以下の3つのポイントが重要です。

(1)学園内の不良を蹴散らせ! 喧嘩バトル!!
 学園内のトラブルの大半は「喧嘩」ですので、まずこれを切り抜けられねば話になりません。
 主人公は喧嘩に備えて各部活やイベントで技を習得することになるのですが、いざ喧嘩になるとそのシステムにビックリします。
 何とこの作品では「入力フェイズの時間内に習得した技を順番に”4つ”入力し、後はオートバトル」なのです(要するに「格ゲーの観戦」です)。
 この時見せる技は、格ゲーのように相性やコンボシステムがありますし、組み合わせによっては驚くべき効果を発揮しますよ!!

(2)女の子の危機を見逃すな! GPSシステム作動!!
 「GPS」とは学園内で知り合った女の子の位置と状態を知らせてくれる機械で、この機械によって女の子達の危機を察知し、トラブル解決に向かいます…が、中にはこれで察知できない事件(イベント)がありますし、あんまりチンタラやってると涼子さん達に先に解決され、女の子達の好感度が激減するので要注意です。

(3)戦いだけじゃなく、学園生活を楽しもう。
 1年間の間に「何のトラブルも無い日」は存在するので、その間に学園生活を楽しむことがこの作品のミソです。
 まず最初に設定できる「学年」によってイベントは変化しますし、他にも図書室で勉強しておけば試験で好成績が残せますし、菜園部で働けば従来以上の成長が望めますし、帰りを誘ってみれば好感度UPなだけでなく、CGイベントが発動することもあります。
 喧嘩三昧な日々に彩りを添えれば、EDまでの展開が楽しくなることは確実ですね。

 これらの3点さえきちんと守れば確実に誰かとのハッピーエンドを見られます。
 EDはPC-FX最大の武器・アニメーションムービーです。

 特典として「ドラマCDが2枚(!)」あるというコストパフォーマンスの面からも、当時(1998年)の作品でこれだけ良質のものは稀有だと思いましたが、悲しいかな、見逃せぬ欠点がこの作品にもありました。
 それは…「1対多数のケンカ(フクロ状態)は地獄」だということです。
 場合によっては、主人公は1対多数(最大4人)で戦うことになるのですが、この状態では「複数(特に前後方向)を攻撃可能な技」が無ければまず勝てません。
 何故って? バトルを格ゲーに例えたら、どうガードを固めようと複数の相手に上段・下段・投げ・飛び道具の同時攻撃をされたらまず防ぎきれないからです。
 まぁ敵の攻撃に連携がとれてなければ勝つ事もできますが、基本的に敗色濃厚なので最低限1つでも対複数技は欲しいですね(例:真空投げ、旋風脚など)。

 また、僕がもう一つ難色を示したのは……
 「この学園、治安悪すぎ!!」な事です!!(大汗)
 まるで日常茶飯事のように喧嘩、恐喝、婦女暴行などの事件が発生するだけでも洒落にならないのに、対応策が纏組しかないのはどういうわけだ!?
 生徒会派の荒木美加嬢や美山玲子嬢には気の毒ですが、生徒会は式岐君が転校してくるまで何の役にも立ってませんでした。
 しかも、普通なら刑務所送りになってもおかしくない腐れ外道・紅慎輝郎に至っては退学はおろか停学処分すら下されてません
 学園側は一体何を考えているのか?
 ハッキリ言って、いくら「自由を尊ぶ学園」「生徒の揉め事は生徒で解決する方針」でもこれは酷すぎですよ…(呆れ)
 コミカルなノリの作品とはいえ、こういう所は何とかして欲しかったですね。


>最終評価
 上記の難点こそあったものの、ゲームとしての出来は「この作品に足りなかったのは宣伝と注目度だけだ」と言い切れる良い作品でした。
 マイナー作品ゆえの入手の難しさはあると思いますが、もし発見されたならぜひともプレイをお勧めしたいですね。

(PS)
 毎回キャラ&メッセージの変わるタイトル画面。
 多くのイベントに使用されるアニメーションムービー(EDまで!)…
 どこかで見たことがある作りだと思ったら、EDでのスペシャルサンクスには「ファーストkiss☆物語」のhunexスタッフ陣(かなり大勢)が!!!
 なるほど…こりゃあハマるわけだよ…(核爆)。

(PS2)
 ちなみにこの作品も(ドラマCDも含めて)超豪華声優陣です。
 林原めぐみ、三石琴乃、天野由梨、山田美穂、橘ひかり、宮村優子、倉田雅世、半場友恵、小西寛子、高木礼子、手塚ちはる、吉田古奈美、南央美、根谷美智子、水沢潤、荒木香恵、保志総一郎、檜山修之、高木渉、西村知道、沢木郁也、二又一成、徳丸完、etc…
 この頃の作品は本当に凄いッスね。
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