この作品はPC−98最後の大作と言われた「ラブエスカレーター」という作品のリメイクだそうですが、実は私、この作品はプレイしてません。
ですが、同メーカーの前作である「GUREEN 〜秋空のスクリーン〜」が中々の出来だったので、これもプレイしてみようかなと思ったのですが、私が買おうと思う前から二年に渡って行われていたという発売延期、延期、延期の連続にすっかり購入意欲も失せ、いざ発売される時になってみても、まあ、店頭にあれば買おうかな程度の認識で、実際店に行ってみると当日は既に売り切れでした。
が、後日訪れると山積みにされてあった予約取り消し分の群れに落涙して購入を決意。
果たしてその出来や如何!?
<基本ストーリー>
主人公黒崎 崇は三年になったばかりのある日、親友の脇谷 徹に同級生の河合理恵の事が好きだと告白された。
理恵は、崇が中学の時の同級生でお互いに好意を持っていたが、そのきっかけとなったサッカーへの情熱が崇から無くなったことから、疎遠になっていた相手だった。
だが、脇谷に理恵との仲を取り持つ事を頼まれ、再び理恵と触れ合ううちに崇は理恵への気持ちを思い出して告白し、理恵もそれを受け入れて学園での二人の関係は始まった。
だが、崇はその事を脇谷には言い出せず、脇谷は彼に相談しながら理恵と気を引こうと様々な行動に出るのだが…。
<システム>
既読スキップ、ゲーム中のミニゲームまで含めた回想モードなど必要な物は揃っています。
ただ四枚組なので、インストールは多少手間取ります。
それから修正パッチは必須。
アンインストールしても何故かHDに容量が残るという恐ろしいシステムが。
ちなみにこのゲーム、元々三枚組の予定が急遽四枚組になったらしく、マニュアル書の正誤表が全てこれ関連になってる所に悠久の歴史を感じさせます。
当然、これも延期の一因になってるんですねー。
<音楽>
うーん、何だか印象に残ってません。
音楽で盛り上がるような場面が少なかったかもしれませんが。
あ、でも何度もやらされたミニゲームの音楽だけは無理やり耳に残った(苦笑)。
<グラフィック関連>
このゲームからこれを取って何が残るうっ!!
と、言わんばかりにこのゲームの「顔」はグラフィックですね。
基本のCG絵も結構綺麗で、Hシーン無しのキャラもこっちの方では良い絵が若干あります。
そしてHシーンはフルアニメーション。
圧巻はやはり初体験のシーンでしょう。
最初見たときは思わず、「この恋人達凄いよぉー!! 流石、緑のお兄さーん!!」と唸ってしまいました。
とても綺麗で、体の各パーツをしっかり書き込み、表情もとても艶かしく描かれ、これの為に延期しまくったというのは伊達じゃないぜ!! と確かに思わされました。
が、調子にのれたのはここまで。
このゲームでは初体験の後には、ヒロインと色々とHな事ができる調教パートがあります。
ところが、そのシーンのクオリティは明らかに大幅にパワーダウン…というより、顔も体も初体験の時とは別人になっていると言っていいです。
しかもどういうわけか、他にもアニメーションが用意されたキャラがいるのですが、何故かそっちの方が全般的にはクオリティが高いという…といっても彼女達たちのも質的にはほとんど前作止まりでしたが。
決して調教パートのアニメーションの出来も悪くはありませんでしたが、一番初めにハイクオリティなものを見せつけて、その後明らかに手を抜かれてるものを見せては感情移入するほうが無理というものでしょう。
なんでもこれらはリメイク前のものの使いまわしだそうです。
後にも延べますが、正直調教パートや他の女性キャラは、このゲームにとって余分なものとしか言いようが無かったので、こんな事ならもっと別な事に容量使って欲しかったです。
<シナリオ>
非常に問題点が多い…。
このゲーム、大筋ははっきりいって王道的な学園ラブコメもの…
期間は一年間で、主人公の崇とヒロインの理恵との関係が中心です。
ところが一方で、ヒロインを毎週デートに誘う際に、互いの家やラブホテル(今じゃブティックホテルと言うけど)へ行くと、ヒロインにあんな事やそんな事を教え込む調教パートがあるのです。
そのため、表のストーリーで「理恵、君が他の男とどうこう〜」とか、「あなたの気持ちがよくわからないの〜」とかやられても既に何度も逢瀬を楽しんどる男女が何を!? と思ってしまうのですが、これは私がヒネタ人間だからでしょうか?
甚だまずい事に、この調教パートはいくらやっても本編に全く影響しません。
ようするに、この調教パートはそれだけで完全に独立しているわけで、ぶっちゃけエロシーンを見せるためのものと割り切られてます。
しかし、この調教パートのアニメーションが質的に劣っているのはグラフィックの所で説明した通りですが、さらに問題なのはその仕組み。
これは、十数個の性行為の種類から何をやるかを選択し、その行為の短いアニメーションを見るというのを数回やるだけで、いわば流れというものがまるで無く、なんともシチュエーション的に入り込めません。
おまけにそのうちのほとんどは、何回も同じ事をしないと次のアニメーションが見られないと言うレベルアップ方式。
アニメーション回収のためにスキップボタンを押しながら、同じプレイを延々と繰り返すたくましい若い男女を眺めていると、人生についてのなんたるかを考える素晴らしい時間を戴けます。
しかも、やれる行為の数を増やしたりするのに、何故かいくつものミニゲームに挑戦する必要があります。
このミニゲームがまたつまらん…というか、他でもできるような単調なものばかりなのに難度だけは無駄に高かったりして、また何度も挑戦しなければなりません
(ようするに、いらない)。
はっきりいってアニメーションの回収は地獄の作業でしたね。
頑張って最後までやればもう一度だけ質の高いアニメーションが見れるのかと必死に回収しましたが、はかない夢と終わりました(泣)。
そして、個人的に大きく文句を言いたいのが、このゲームにおけるサブヒロインの存在。
このゲームには、理恵以外にもアニメーションが用意されたキャラが二人います。
一人はモデルの仕事をしている、いわゆる「年上キャラ」の山本のりこ。
もう一人は、我が侭な幼児体型の「お嬢様キャラ」大沢ひなこ。
しかし、キャラ的にもストーリー的にも正直言って薄っぺらく、語るべきところは無いのですが、何より問題なのはこの両名、序盤でちょこっと主人公と知り合うシーンがあるだけで、普通に進めるとストーリーに全く絡まない事です。
なら、どうすればイベントが起きるのかというと、何と週末にデートに誘い出す事。
あのう、ちょっと待ってくだせい。
既に理恵という付き合ってる人がいる状態で、週末にしょっちゅう他の女性と仲良く町を歩く事を世間の人はどういう目でみるでしょうか。
さらに、この二人と具体的な関係になるのは、理恵との関係が破綻した後だったりします。
好きな彼女と付き合いをを楽しみながら、たまに他の女性とも電話で呼び出して楽しみ、さらに彼女との関係が駄目になったりするとといきなり「君の事が本当は好きなんだ!」とか言い出す主人公。
いやー、素晴らしいですね…ってオイ。
流石に、そこまではっきりと自分がそんなダメな考えをしてると主人公が言ってるわけではないですが、そうとしか取れないのはやはり問題です。
ようするにこの二人は「ヒロインが一人だけではゲームとして弱いし、アニメのバリエーションも薄くなるから」と付け足されたキャラとしか見れないわけですね。
私はこういうのが凄く嫌なもので。
ヒロインを増やしたなら増やしたで、多少無理やりでもいいから、せめてもう少しストーリーに関わる必然的なものを見せて欲しかったです。
おまけにのり子はともかく、ひなこの方は我が侭放題なキャラで周りに迷惑をかけてばかりいるのは何らかの理由があるのかと思いきや、本当に我が侭放題なだけだった、という「回し蹴り入れたろかい、おんどりゃあ!」という奴だったりした事もあって、私のこのゲームの評価を大きく下げました。
つらつらと文句を書き連ねてしまいましたけど、実は純粋にシナリオ本体の方を見ると、出来は決して悪くないです。
上に少し書きましたが、展開はヒロインとの恋愛中心の学園生活をじっくりと描いており私はこういうのは決して嫌いではありません。
巧みに演出が光る部分もあって、特に冒頭の理恵への告白シーンは初体験のアニメーションに匹敵する出来でした。
また、体育祭でサッカーで勝負するシーンが何故かフルCGとなっていたりして、私は同じ無駄と思えるようなものでも、こういうバカに力が注がれているのは好感が持てます。
サブキャラも結構魅力的で、実質もう一人のメインキャラである脇谷をはじめ男キャラにもいい奴が多く、また理恵のクラスの女友達なども良い感じです(ああ、こっちの娘達とエロシーンあれば…(笑))。
ちなみに全員フルボイス。
一方で、問題は主人公の凄まじい駄目男ぶり。
過去の敗北をいつまでもずるずると引きずり、さらにそこから特に大きく前進することなく、理恵にすがりつく形で付き合うようになっただけの上に、親友の脇谷の気持ちを知りながらいつまでもそれを棚上げしたりで、全ての事に「その内何とかなりゃいいやーい」となっているこの男の姿は、このゲーム最大のガン細胞です。
色々やる気を出す事もありましたが、この男の心根は最後までこんな感じでしたね。
まあ、それもこのゲームの味と見れば良い部分となります。
終盤で全ての事が発覚してこいつがボコボコになるシーンではこのゲーム最大のカタルシスを味わえますし (爆)。
それと、一年と言うスパンはやっぱり長すぎて、やっぱり後半ダレるのも減点ですね。
もう少しコンパクトに絞った方が良いと思いました。
<総評>
随所に光る部分は多いものの、その他のダメな部分との格差に落胆せざるを得ない作品でした。
思うに下手に大作ぶって色々なものを詰め込んだ結果、ゲームに入れたあらゆる要素が遊離していって、方向性があいまいになってしまったのではないかと思います。
ただ、この作品の元は十年近く前に作られたものなんですよね。
聞いた話では、そこからシナリオやシステム面の方ではあまり大きな変化はないとか。
ゆえに、ここで挙げた問題点はそんなに目くじらを立てるほどのものではないのかな、という気もします。
ですが、二年以上に渡る延期で開発期間を得ておきながら、元の作品からほとんど進歩していないというのはやはり問題でしょう。
なにかと延期のせいで、話題だけが先行した作品の感じがありましたが、待たせただけのものがあったのかどうかは疑問。
結局のところ「手間を掛けて綺麗なHアニメーションを見れるソフト」という以上のものが、大して得られなかったのは非常に残念でした。
ですが、このメーカーがこの作品で見せてくれたものは、後への期待が充分に持てるものではあります。
何十年後になるかはわかりませんが、今作で得た反省点を十二分に生かして、次回作の制作へと取りかかってもらいたいです。
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