地雷警報! PLAYSTATION EVE〜The Lost One〜 メーカー:シーズウェア
ファイン 様
鷹羽飛鳥
 めちゃめちゃ今更な作品の上に最後というにはあまりにもアレな作品ですが、最後だからこそ全力で叩っ斬りたいと思います。


<基本ストーリー>

 なんだか説明する気力もおきません
 ビル爆破事件が最初にあって、その犯人と内閣調査室って所の新人捜査官が三日間色々やった後、人類が滅亡するかもしんないって話になります(投げやり)。


<システム>

 まあ、最新作と比べるのは酷というものかもしれませんが…。

 二人の主人公の視点を切り替えるために一々セーブ&ロードしてディスク交換しなけりゃならないというのは、仕方ないと思ってもやはり相当ストレスが溜まります。
 ですが視点を切り替えるべきところはすぐにわかります。
 というのは、このゲーム選択できるコマンド数も移動できる場所も少なく、さらにゲームの進行はほとんど一本道で視点切り替えの場面以外は何処に行くべきかがすぐ分かるようになってます。

 これをゲームの進行がスムーズになったと言えば、聞こえがいいですが…。

 ここまで単調な感じになっていると、コマンドの選択がゲームを進行させるだけ作業という感じがするのです。
 具体的に書くとゲームを進行のパターンの八割近くが、
 
 移動する→どこかでキャラクターに出くわす
 話す→話す→同じ会話の繰り返しになる→考える→話す→話す…

 ほとんどこの繰り返しだけでゲームが進みます。

 ちなみに、この他に選択できるコマンドは相手を見るぐらいしかありません。
 前作のような遊びの多いコマンドを沢山用意しろというのは酷かもしれませんが、せめてもう少しプレーヤーが色々選べるようなコマンドを増やしたり、進行に悩ようなものを用意しても良かったのではないでしょうか?


<音楽>

 これに関してもフォローの入れようがないなあ…。
 単にプレステの音源が悪いせいかもしれませんが、なんだか電子音のピーピーという感じがやたら鼻につくし、なんだか人が死んだりピンチの状態の時に、やけにのほほんとした音楽が流れてくるし…
 とにかく悪い印象しか残ってないです(汗)。


<グラフィック&声>

 このゲームで誉めるとしたらとりあえずこれですね。
 CGやアニメーションは非常に綺麗でした。
 OPのアニメーションは結構期待を持たせてくれる出来でしたよ、ええ
 その分きっちし裏切られますが。

 絵柄も私は結構好きです。
 声に関しても赤い彗星の人とか素晴らしい人たちを集めてくれてます。
 文句があるとすれば、彼らが演じるキャラクター自体に魅力がない事ぐらいですね。
 

<シナリオ>

 さてと…。
 何処から文句を言えばいいものでしょうか。

 十分に一回突っ込みどころが入る、それがこのゲームをプレイして抱いた感想です。
 とりあえず伏線の張り方がなってないとか、キャラクターの使い方や絡ませ方が下手すぎて謎解きとかもなにもあったもんじゃないとか、聞いてもないのにいきなり自分が殺人犯だと打ち明ける人とか、ストーリー構成上の欠陥についてまで言い出すとキリがない。
 この程度の問題は、他の作品にも多少は見られるのでグッと目をつぶります(涙で前が見えなくなったとも言いますが)。

 しかし、まずこのゲームでクラクラさせられるのはプレーヤーの分身たる主人公の駄目さ加減でしょうか。
 まずバカ捜査官、杏子。
 彼女は研修を終えたばかりの「優柔な」新人捜査官という設定ですが、いきなり冒頭で自分が明日から何処の組織に勤めるのかを忘れたりしてます。
 これは事故に巻き込まれているという状況もあったので、単にタチの悪い冗談かと思いましたが、冗談でなくこういうキャラだということがすぐに分かります。
 具体例を列挙しますと、

自分が何処に行くのかも分からず捜査開始。
道行く一般人に、いきなり自分が捜査官だと打ち明ける。
ハッキングが犯罪だとも良く分からない。
自分の握った捜査機密をべらべら他人に喋りだす事を得意技とする。

 …とりあえず、あと千年研修をやり直せといいたいです。
 そういえばパッケージで彼女は捜査官らしく銃を握ったりしてましたが、本編では一度もそんなかっこいいシーンはなく、それどころか怪我をしてる一般人に相当距離があるところからいきなり羽交い絞めにされて人質に取られてたりしてました。
 誰だ、こいつに捜査官の指導したの。
 
 一方でもう一人の主人公の方はというと、こちらは最初、正体が分からないとう設定で、性格などがつかみずらい以外はまあまともかと思った私が甘かったです。
 こいつは最初に「ムシャクシャしてたから」と爆弾をしかけ、それが原因で脅迫されるんですが、こいつがゲーム中で犯す犯罪はその脅迫と関係なく、いきなり訳が分からなくなったとか言って、持ち歩いていた爆弾で周囲を吹っ飛ばしたり、銃をパンパン乱射するなどとんでもない馬鹿悪党ぶり見せます。

 また、いきなり途中で死者の霊や幻覚らしきものも見出すのですが、この理由は最後までわかりませんでした。
 もしかして精神分裂症なんでしょうか?
 おまけに正体をボかすためなのか(その正体はちょっと考えればすぐにわかる)行動が飛び飛びで、急に別の場所に移ったりするのでもう状況のつかみづらいこと。
 そしてゲームの途中でいきなり、こちら側に向かって
 「おい、あんた。俺はもうあんたには従わない」などと言い出す始末。
 あの、言ってる意味が分かりかねます…

 私は単にゲームを楽しみたい目的でプレイしているわけであって、別にあなたを従わせたいわけではありません。
 プレーヤーに従わない? 従ってくれるならとっくに警察に自主させてるっつうの!!
 ところで彼はゲーム中でSNAKEという呼称をもってますが、これを劇中で呼ぶのはこれを名づけた脅迫者だけという物語中では何の意味もない設定でした。
 ここまで全力で感情移入されることを拒絶していった主人公達はちょっと経験がありません。
 
 さらに所々に見られる常識を超える展開の数々。
 推理小説のトリックを考える際には良く常識を捨てて考えろなどと言われますが、このゲームをプレイする際には別の意味で常識を捨てなければなりません
 例えばゲームの山場の一つに事件を目撃したイルカの超音波を高校生がコンピューターで解析して犯人を割り出そうという展開があります。
 これをやった高校生の科学力は一体どういうレベルなんでしょう?
 百歩譲ってそれを認めるとしても、イルカに対して一体どう問いかけるのかと思ったら、
 
 「ねえ、マーブル(イルカの名前)。あなたの入った水槽を銃で撃った犯人を見た?」
 「キュー、キュー、キュー。(犯人を伝えているらしい)」
 
 あの、えっと、イルカくんがどうして銃とか撃つとかいう物騒な日本語を識別できるのでしょうか?

 どうもこの世界は動物だろうと人間だろうと言語の壁というものが存在せぬようで、物語途中で主人公達が訪れるエルディアという中東の小国では、ただの宿屋の女将さんやら、道行く子供やらの一般人とも平気で会話が成立します。
 ちなみに主人公達はアラビア語は分からないと別なところで打ち明けてました。
 どうも電話口で英語を使っているシーンがあったので、彼らは英語を話しているよう、エルディアというのはよっぽど国民に教育の行き届いたすばらしい国なんでしょうね。
 前作ではエルディア人の半数以上が読み書きすらできないという設定がありましたが。
 
 さらに、このエルディアという国はどういう警備体制をしいているのか、王宮の中でほとんど部外者であるはずの主人公たちが出入り自由なのはおろか、内部で失踪やら殺人やら重大な事件が起こっても全然騒ぎにならず、主人公たちが現場に駆けつけないと何もわかりません
 しかもろくに武器も持たず、周囲の信頼も失ってるという大司教(イスラム系国家なのに、大司教ってのに突っ込んではいけないらしい)がたった一人で女王を殺しに来るっていうんで、私の一番好きだった前作でのキャラが身代わりになって首を絞めて殺されました(号泣)。

 え、なに、なんで?
 女王様、ボディーガードの一人もいないの?
 それで私は身を隠しますって、そんなことしてもいたずらに国を騒がせるだけじゃないの?
 どういう理屈でこんな展開になるんだよ〜。
 
 もう一事が万事こんな調子なので、ラストの方で人が一人はいった棺を平気で抱えて逃げ回ってる物凄い体力の持ち主とか、超高層ビルから落下してもピンピンしとる不死身の超人とか、まったく別々の場所を歩いていた関係者達が砂漠のど真ん中で偶然遭遇とかいう理不尽な展開にも全然驚かずにすんなり受け入れられますね。

 もう、どうでもいいじゃん。
 滅べよこんな世界って感じで…アハハ。


<総評> 

 ええい、このクソッタレ!!
 プレイする前に悪評は結構聞いてましたが、実際に聞くとやるのとでは大違いでした。
 これは地雷なんてもんじゃありません。
 核地雷というのも少し違います。
 例えるなら、前作「burst error」との間で物質反物質作用を引き起こし、全てを好き飛ばしてします謎の反物質Xといったところでしょうか。
 前作の続編でなければよかったという話もよく聞きますが、しかしこれは前作の影響なくして作るのは無理な作品だったと思います。
 そしてそれゆえに、無理な背伸びをして内部に大きな破綻をきたすきっかけとなったというのはちょっとかばいすぎでしょうか。

 ですが、感じたのはやっぱりマルチサイトというのはADVとして面白く感じる効果があるという事です。
 全く別々なところにいる二人を動かしていくというのはやはりシチュエーションとしては中々の優れもので、ストーリーを引き立たせる効果を持つのは事実ですね。
 この作品の場合はそれでもひたすら駄目になってましたが、料理人が悪くても素材がよければ何とやら〜、って感じでしょうか。
 後は、まあ多少は演出が良かったり、キャラクターの心情描写などにも声優さんの演技と相まって見るべき点があったかなとは思ったんですよ。

 ですが、そんな少しの良点を吹っ飛ばすほどに駄目な点が多すぎて多すぎて。

 とにかく、前作に感動したとか前作に思い入れが深いという人はその思いをメタメタに打ち砕かれ、踏み荒らされ、異空間へばら撒かれたかのような心境に陥ってしまうことでしょう。
 前作をプレイしていなくても絶対にお勧めはできない少なくともこの作品からはプレイしてほしくない、非常に残念ですがそんな作品でしたね。

 私がPS版を手に取った理由は単純で「burst error plus」をプレイした人間が間違って手にするなら同じハ−ドのこれだろうという理由からなんですけどね。

 後になって知ったのですが、この「lost one」はSS版→PC版→PS版という流れで発売されてるのですが、このPS版は悪評高いSS版の完全なベタ移植だったそうです。
 タチの悪い事にPSでは「lost one」発売当時は肝心の前作「buurst error」自体が発売されていなかったというオマケ付。
 今にして思えば、それで同一ハードのPS2で一作目のリメイクという事に相成ったのですね。
 なんでも途中に出たPC版にだけに、何故かED部分の修正と追加要素が加わってるそうな。
 PSユーザーを馬鹿にしているとしか思えません。
 これの続編に手を出そうなんて「果てしない闇の向こうに oh oh 手を伸ばそう〜」っって感じでしょう。

 流石に「ADAM」をプレイする気にはなれませんが、これは上記の「lost one」のパターンとは逆にPS移植版の「EVE TFA」では多少はマシになる修正が加えられているそうな…。

 まあ、某雅人氏の言葉を借りるなら「おまえがどう変わろうと、お前の罪は許されない!!」って感じですね。


(ファイン 様)

 えー、5年ほど前に、サターン版をプレイしてレビューを書いた鷹羽です。
 レビューはここには入ってませんが、九拾八式工房がまだ同人誌だった頃に掲載されました。
(※編注:現在はCD-ROM「真・九拾八式工房」内に収録されています)

 どうやら、PS版もサターン版と特に変更はなかったようで、ご同情いたします
 「lost one」のひどさときたら、そりゃあもう、言語に尽くしがたいものがありますからね
 地上数十階から落下しても死なない男や、イルカと会話ができる上、特に設備のないところでワクチンを作ってしまう超絶高校生ネットで爆弾の作り方を見付けて作っちゃう内調のエージェント電源が切れたパソコンを勝手に立ち上げてしまうメール自分だけ安全圏に逃げ込んだプリシアなどなど、勘弁して欲しい演出が目白押しでした。

 特に、全世界一斉に上水道にウイルスを混入させるというゲルショッカーも真っ青の大作戦をたった1人で遂行してしまった彼には、頭が痛くてたまりません

 レビューにも書いたんですけど、あのクリックした途端にウイルス蔓延というネタは、『パトレイバー』のHOSのイメージだったと思われ、スタッフがコンピュータウイルスと病原菌の区別が付かなかったことを教えてくれます。
 あの後、パソコン版が出たときに、どうしてあんなものがと頭を抱えたものですがそうですか、PSにまで

 ちなみに、続編である「ADAM」もかなりの地雷ですが、その辺については、こちらにレビューが載ってますので、ご覧ください。
 冒頭の元締との会話は、本当にあったものです。

 なお、「ADAM」の作中でわかることですが、杏子は高校生君と華燭の典で寿退社だそうです。
 てことは、多分この事件きりで仕事辞めちゃったんですね

 頭痛い…。


(鷹羽飛鳥)
>  レビューにも書いたんですけど、あのクリックした途端にウイルス蔓延というネタは、『パトレイバー』のHOSのイメージだったと思われ、スタッフがコンピュータウイルスと病原菌の区別が付かなかったことを教えてくれます。

 ああ、あれ元ネタありだったんですか…。

 「感染源は水だ」と言っているのに、ゲーム中ではどう見てもコンピューターネットワークでウイルスが広がっている描写しかでてこないのには本当にちんぷんかんぷんでしたよ。

 流石にここに来るまでにはこのゲームに合理性などを求めてはいけないと悟ってましたが、それでもこれは何らかの説明は入るだろう、もしかしてインターネットで全世界の同志に世界中の水道にウイルスばら撒くように指令飛ばしてるのか? なんて(それでも、かなり無理のある話ですが)考えてたんですが、ラストに彼が出て一言、
 
「全部俺一人でやったんだ! ボタン一つでウイルスは世界中に広がってったんだよ!」
 
 …もう「ああ、ほうかい」としか。


(ファイン 様)
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