Realize Me メーカー:ミンク
あるか 様
  ジャンル:ノベル
 発売日:2002 5/24  定価:8800円


ストーリー

 主人公一輝は、シナリオライターを目指し専門学校に通うごく普通のゲームマニア。
 ある日美少女ゲーム「夜行探偵2」の体験版をプレイしていると、ゲームのヒロイン和歌那が突然目の前に現れた。
 一輝は架空世界と現実世界との間にゲートを開く不思議な能力を持っていたのだ……

 「ミンク10周年」「原画INO氏」ということで期待していた人も多かったらしいこのゲーム。
 結果がどうだったか報告します。


原画・CG

 原画は「ぺろぺろCANDY2」などで人気の「INO」さんです。
 ポチャポチャした独自の柔らかさのある絵をかかれる方で、今回は意識してクセをとったらしく、一般受けするかわいさは前よりも増したかもしれません。
 塗りも絵の魅力を十分引き出していて、私自身「絵買い」と言っていい状況です。


初回特典

 書き下ろしテレカとイメージソングCDです。
 このゲームに限ったことではないのですが、ゲームのOP・EDや挿入歌として使われるわけでもないのにいつも付いている、ミンクの歌CDって存在意義が謎です(雑誌などのデモで使っているのを何度か見たかな)。
 まあ文字通りイメージソングなんでしょうけど。
 テレカの方は書き下ろしの台紙がなかなかいいです(裸のヒロインが胸にテレカを抱えているだけですが。
 私? ええ、もちろんテレカを外してみましたとも…自爆)。


システム

 このゲームにはセーブ機能が存在しません
 その代わりやめた場所から始められる「Continue」と「Story Map」と言うものがあります。
 「Story Map」は見たシーンのチャートが出来ていき、好きな場所に飛べるというもので、最近だと似たようなシステムに「百鬼のバックアップツリー」がありましたが、百鬼が各駅停車で好きな場所に一瞬に飛べるとすればRealize Meは特急停車駅か下手すると新幹線ぐらいの間隔なので「このシーンが見たい!」とか「このあたりに選択肢が増えるはず」と思っても1番近いところを選んでCtrlキーを押して何分も待つ必要があります。
 このシステム自体はあったら便利ですが、通常のセーブ機能が存在しないためプラスマイナスでなんだか使いにくいシステムという印象になってしまいました。

 もうひとつの特徴は、「このゲームにはルート分岐以外の選択肢が存在しない」ということがあります。
 しかもエンディングを見ると増えるシステムなので「読むだけ感」「読まされている感」は大変強いです。


シナリオ

 さてノベルで一番重要視されるであろうシナリオです。
 各ヒロインを攻略順に書いていきます。



******** 注意! 以下ネタバレあり ********
今回の感想はエンディングについて重大なネタバレをしています。
Realize Meをやるつもりがある方は読まないことをお勧めします。

もっとお勧めなのは買わな(以下略)
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サブルート1 【イーリー】

 ロボット育成SLG「clockwork Emotion」のヒロインで”無垢でドジな学習型”ロボット・イーリーをゲートで呼び出した主人公は、ゲームを進めながら現実世界でも彼女と仲良くなっていく。
 しかしゲーム中で何気なく装備させた「淑女端子」はバッドエンド・「イーリー分解処理」直行のアイテムだった……

 最初に絶対見ることになるエンディングです(スタートから選択肢無しで直行!)。
 とりあえずイーリーは可愛い。
 それはみとめます。
 ただ全然面白くありません!
 ゲーム内ゲーム「clockwork Emotion」の基本設定を説明して、ゲートでイーリーを呼び出したと思ったら、次のシーンではもう「一輝にとってイーリーは恋人のような、妹のような、娘のような、愛情と保護欲の対象になったのだった」と、プレイヤーがイーリーに思い入れする過程を完全にオミットしています。
 ラストも「ゲーム内ゲームで勝手に盛り上がって何の余韻もなく」終わります。


サブルート2 【明神 恵美梨】

 18禁ニセ恋愛SLG「学園マスカレード」の世界に入った一輝は、偶然からこのゲームのヒロイン恵美梨と仲良くなる。
 さらにゲームの主人公・修とも知り合った一輝は、昔修をいじめた恵美梨とその復讐のため恵美梨に近づいた修が、実はお互い好きあっている事に気づく。
 通常のゲームでは復讐を遂げるという形で終わってしまう二人を幸せにすることは出来るのか……

 奔放なお嬢様でこのゲームのHシーン担当キャラです(他のキャラが1回、メインヒロインが2回なのに対して恵美梨は3回。服着てるよりも裸の印象があります)。
 ラストは「ゲーム内ゲームで勝手に盛り上がって何の余韻もなく」終わります。


サブルート4 【門倉 沙夜】

 もう一度和歌那に会おうと「夜行探偵2」の製品版を買ってきた一輝、しかし同級生の沙夜が一輝がいない間にゲームをバッドエンドルートに進めてしまう。
 吸血鬼の手下達による陵辱シーンからゲートで一時的に和歌那を助けることは出来たが、ゲームの世界に帰ればその続きでしかない。
 そんな一輝と沙夜の前に「ゲートを閉じる者」と名乗る深水涼子が現れる。
 彼女にもらったゲートを閉じる期限は3日。和歌那を助ける方法は見つかるのか……

 主人公が思いを寄せる同級生で、沙夜も主人公のことを意識しています。
 陵辱を避ける方法を探して、「夜行探偵2」の製作会社でバイトをしている友達に会いに行ったりするんですが方法は見つからず、それでも前向きに帰っていく和歌那を見て一輝と沙夜はお互いの思いをちゃんと伝える。
 という話ですが、これも「イマイチ盛り上がらず余韻もなく」終わります。


メインルート 【芝原 和歌那】(1)

 和歌那を助ける方法は見つからないまま期限が来ようとしていた、一輝と和歌那はせめてもの思い出作りにとデートをすることにする。
 心と体を重ねた二人だが……

 このゲームのメインヒロイン和歌那ルートは前出した通り「陵辱されるのが分かっている和歌那をどう救うか」で話が進んでいきます。
 このルートでも方法は見つからず和歌那は帰り、主人公は彼女の残したペンダントと言葉で夢をかなえるため前向きになる、と言う話です。
 この話も「なんだか盛り上がらず余韻もなく」終わります。


サブルート3 【深水 涼子】

 一輝の前に現れたゲートを閉じる者・深水涼子。
 彼女から逃げるため入ったゲームの世界で2人ともその世界の魔王に捕まってしまう。
 そこから逃げ出し元の世界に戻るため開いたままのゲートに向かう途中知った、彼女がゲートを閉じる理由、それは彼女自身も小さいときに絵本から呼び出され、ゲートの危険性とそれがもたらす悲劇を誰よりも知っていたからだった……

 他のルートでも登場していた「ゲートを閉じる者」深水涼子のルートです。
 彼女を絵本から呼び出したのが、子供の頃の自分だった事を主人公が思い出し、一度は「本当は離れたくないけどゲートを閉じる使命を持つ自分がルールを破るわけには行かないから」と帰るんですが、主人公がもう一度絵本を詠んだときに「自分の絵本のテーマは、友達を増やすためにはドアを開けなくちゃいけない、人を愛するためには自分が決断しなくちゃいけない。だから」と主人公のもとに帰ってくる。
 という話です。
 このルートが一番出来がいいと思います。
 他のルートだと「主人公は事態に流されるだけ、プレイヤー置いてけぼり」
 このルートは「主人公一応ちゃんと行動している、プレイヤー一応読んでられる」
 ……他のルートがひどいだけかも


メインルート 【芝原 和歌那】(2)

 他のエンディングをすべて見ると現われるメインルートの続き、最後のルートです。
 このルートは吸血鬼の手下達による和歌那の陵辱シーンから始まります。
 ……つまり結局どのルートに行こうと「陵辱イベントは回避出来ない」ということです。
 これは話の展開的にはありでも、心情的には「なんだかなー」と思う人が多いんじゃないかと。
 で、そのシーンが終わってノコノコ現われた主人公と和歌那は
 「バッドエンドでは陵辱されつくした和歌那さんは心を壊されて、吸血鬼の花嫁になるはずだったんだけど」
 「私は一輝くんとの思い出があったからあきらめなかった。どんな酷いことをされても耐えられたんだわ」
 とヘンに盛り上がります。説明ゼリフで。

 これには「説明ゼリフだけで人は感動できない」「主人公はゲーム内ゲームの事をよく知っていてもプレイヤーは知らないし実感も出来ない」とあきれてツッコんじゃいました(このゲーム全体にこれは言えます)。
 
 その後主人公が持ってきた「夜行探偵2」のハッピーエンドルートで手に入る和歌那の力を覚醒させる短剣を手に吸血鬼との戦いになるんですが、「そんなものが手に入るなら早くしておけ、というかゲーム界には吸血鬼程度どうにかなるアイテムや人材はゴロゴロしてるだろう」と思うのは私だけでしょうか?
 まあ話の展開上キャラが馬鹿になるのはよくあることですが(某ネコ型ロボットの劇場版とかで「あの道具使えば話が終わっちゃう」ってことよくありますよね? 「スモ○ルライトの解除光線が…っていつもビッ○ライトじゃないか!」とか、某SFTVシリーズで「なんでいつも壊れてる転送装置!」とか)。

 ラストは「愛し合いながらも同じ世界では生きてゆけない二人の前向きな別れ」という大変おいしいシチュエーションですが、これも「イマイチ盛り上がらず余韻もなく」終わります。


総プレイ時間

 私の場合約3時間、のんびり音声を聞いてゆっくり文章を読んでだとしてもせいぜい倍程度の規模。


最終評価

 プレイヤーの介入を完全に失くした文字通り読むだけのシステム、プレイヤーの思い入れを拒む説明と説明ゼリフだけで進行するシナリオ

 「絵はいいのに! キャラ自体はいいのにっ!! あらすじまでは悪くないのにぃっ!!! ダメなゲームってこういうのを言うんだな……」
 というところです(本当にもったいないよ、絵とキャラが……)。


おまけ

 
ちょっと興味があって立ち読み斜め読みした「Realize Me(860円+税)」のノベライズの方がゲームよりは面白いかもしれません
 ゲームでは物足りなかったりヘンだなと思った所が、理由が説明されていたり変えてあったりします。
 大きい所ではゲーム本編ではゲームキャラ同士の横のつながりは皆無ですが、なぜか最後の吸血鬼との戦いでイーリーが助けに現れたりしますが「このルートじゃイーリーなんて出てなかっただろ!」とツッコミたくなるだけで燃えません。
 ノベルのほうでは完全に1本道であることを生かして最後の戦いにちゃんと各ゲームのキャラや涼子が助けに来たりします。
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