Present for you 〜私をあげる〜 メーカー:Nail
アーク 様
王児 様
Mr.BOO
 難易度 やや易(ただ、中盤以降1個でも選択肢を間違うとバッド直行なので要注意)
 備考 エロ中心の軽めADVかと思いきや…


<ストーリー>

 主人公、真田俊輔は文化祭での美術部の作品として、幼い頃一度だけ会った少女の愛くるしい笑顔を心に刻み付けるように、自分と同じ年齢であろう彼女の絵を完成させた。
 文化祭が迫ったある日、離れて暮らしている母親から「お姉さんをプレゼントしてあげる」との電話が掛かってくる。
 どうせ冗談だろうと相手にしない俊輔だったが、文化祭が終了し家に帰る途中出会ったのは紛れも無く自分の記憶にあるあの少女だった。
 立花千春と名乗った彼女の素性を問いただすと、幼い頃に両親が決めた許婚であり俊輔の学校の教育実習生でもあると言う。
 突然の事に混乱する俊輔だが、なし崩し的に彼女と同居することになってしまう。


<システム>
 既読スキップや鑑賞モード等の基本的なものはそろっています。
 が、細かい所で不満点があり、OPやEDがスキップ出来なかったり、場面が切り替わるシーンでのクリックのレスポンスが悪かったり、効果音の使いまわしが多くて一人で拍手してるのに多人数で拍手しているように聞こえたり、強調を表すルビを多用し過ぎて逆にうッとしく感じられたり、まだまだだと感じさせる所が多々ありました。
 又サウンドは自分は良く知らないんですが「blue」というメンバーが担当しており、綺麗系や透明感のある曲から賑やかな曲まで上手くまとまっていたと思います。

 良くも悪くも裏切られた作品です。
 パッケ裏には「勉強頑張った子にはご褒美をあげる」云々のキャッチと共にコスプレした千春が全面に散りばめられてたり、OHPやパソパラには「おうちに帰ってきたら汚い所はきれいにしないと駄目だよ?  ほら、早くきたないところを出して。お口できれいにしてあげるから 」といった文章が恥かしげもなく載ってたり、どうみてもエロを全面に出した作品なんですが…いや、もうこれは確信犯ですな。
 自分は、ちょっとエッチなお姉さんとエッチな日々を過ごしながら周囲の女の子との軽い修羅場を期待してたんですが、蓋を開けてビックリ、無茶苦茶シリアスな純愛ものでした。
 しかもシナリオが結構丁寧に作られていて、何故2人が好きになったかを良く描けていたと思います。
 それと本作、シェイクスピアの作品(マクベスやリア王)のネタが数多く取り上げられており、別に読まなくても支障は無いものの、知識としてあれば物語がすんなり理解できるのではないかと。

 進行としては文化祭の準備から始まり、キャラの顔見せ→文化祭終了後千春がやって来て、本格的にスタート→全員で遊園地に行きそれまでの好感度で各キャラ分岐という風になってます(ちなみに千春は3人攻略後にルートが開ける)。
 で、前半部分でのキモとも言える「おねだりシステム」ですが…ぜんぜん意味ねー!
 これ、早く家に帰る千春にリクエストを出すとコスプレで出迎えてくれるという代物なんですが、要するに出迎えるだけでHなし!「そりゃ無いよー!」と何度モニターの前で慟哭したことか。
 一応フェラしてくれるものの、何故か(言わずもがなCG使いまわし)コスプレを脱いで全裸なので全然満足できず
 正直いりませんでしたね、このシステム。


<シナリオ>
源本留美
 演劇部に精を出す俊輔の幼馴染。
 このシナリオのテーマは「幼馴染の関係のまま恋愛は可能か」で、2人のアンチテーゼ? として学生部長とそれを慕う上杉が登場します。
 自分的に、留美は冗談がすぎるのであまり好きでは無いのですが、シナリオ完成度は結構高いです。
 「幼馴染の関係から惰性で付き合ったとしてもそれは本当に恋愛と言えるのか?」と悩むシーンは結構リアルでした。

藤原まどか
 天才バイオリニストであり学園一の美少女で俊輔も憧れを抱いている。
 テーマは「才能という名の孤独」で、天才的な才能を持ったが故に周囲から浮いてしまっている彼女を俊輔が支えるという流れになっており、最終的に俊輔が彼女にバイオリンの腕が人々に幸せをもたらす事を気付かせるという流れは良かったです。
 ただ作中では指摘されませんでしたが、まどかは「バイオリンの才能のせいで自分は友達が出来なかった」と嘆いていますが、これは友達が出来ないというよりまどかが作ろうとしなかっただけなのではと感じました。
 その証拠に、最初俊輔も彼女から一歩引いて女神様扱いしていたものの、親しく話し掛けるようになってからはいい友達になってましたし、理沙もすぐに打ち解けていたので才能云々というより彼女が壁を作って甘えていただけとも感じました。

平良理沙
 美術部の後輩で無邪気に俊輔を慕っている。
 テーマは…うーん「恩を仇で返すという事」でしょうか。
 このシナリオ、つかみは本当にいいんですがねー、最後がどうしても納得できません。
 文化祭で、出典した彼女の絵が偶然脚光を浴びた事で、俊輔は思わず嫉妬にかられ理沙に「恩を仇で返すような事をしやがって」と罵倒してしまい、これが原因で彼女は絵が描けなくなってしまう。
 俊輔は激しく後悔すると共に彼女の心の奥底にあるトラウマの存在に気付く。
 原因は、彼女が小さい時両親が別居するにあたって父親を選んだ為に、母親から俊輔と同じ台詞で罵られた事が元となっており、これが彼女の中で傷となる一方母親を異常に恐れています。
 両親が復縁するにあたって、当然理沙も共に暮らすことになり、俊輔と千春は3人と話し合いの場を設けるものの、相変わらず理沙は母親を恐れ母親はエゴを丸出しにする…とまあこれが概要なんですが、結局千春が母親に手を上げようとするのを理沙がかばい、お互いの愛を確認して一件落着なんですが…
  確かに理沙は母を恐れているものの好きなのでいいんですが、母親の方は俊輔と千春の説得に全然納得してませんでしたから、何故それで大円団なのかがいまいちピンといませんでした。

 ところでこのシナリオで一番印象に残った台詞は千春の母親は誰にでもなれます。性器が発達して性交して子を産めば。でもそれだけでは『お母さん』にはなれません。あなた(理沙の母)は母親であっても『お母さん』ではありません。」ですね。
 今のヤンママに聞かせてやりたいです。

立花千春
 メインヒロインで上の3人を攻略しないとルートが開けない、いわゆる謎解明編ですね。
 千春やたびたび出てきた『道化』の正体から、千春がなぜ主人公につくしてくれるのかといった事まで全てが解決します。
 いやー衝撃的でしたよ。
 プレイした当初、千春のことを脳の足りないエッチなお姉ちゃんキャラとばかり思ってたのですが…正直最後に攻略できるようにして正解でした。
 このルートプレイするととてもじゃありませんがおねだりシステムなんて後味悪くてでやってられませんからね。
 それまでにおねだり関連のCG全部集めといて良かったですホント。
 激しくネタバレしてしまうと、千春は幼い頃白血病でまだ赤子だった俊輔の臍帯血移植で命を救われた。
 俊輔が千春の笑顔を憶えていたのは、そのお礼を回復した千春が言いに来たからだった。
 しかし、長い入院生活による医療費の負担により千春の家庭は困窮を極め、千春が大学に通うようになって母親が倒れてしまう。
 自分のために母親が不幸になってしまった、そう考えた千春は死を望み母親の回復と入れ替わるように倒れてしまう。
 いつ死んでもおかしくない状態まで衰弱した千春だったが、せっかく俊輔に助けてもらった命を粗末にする結果になったことが彼女の心残りだった。
 そこで、彼女の魂を回収しにきた『道化』=天使と契約し人々の記憶を改竄、自分が俊輔の許婚で、教育実習生であるという設定を生み出し、せめてもの償いとして俊輔を幸せにするという決意で俊輔の前に降りたつのだった。
 書いてるだけで鬱になってくる設定ですね。
 別に千春はエッチでもなんでもなく、ただ俊輔に幸せになって欲しい為に必死だった訳です。
 あーこんなの見せられたら2回目プレイなんて出来ないよ(泣)。


<総評>
 純愛ストーリーが好きな人は買って損はないでしょう。
 ただ欠点もあります。
 まず街のゴーストタウン現象、ホントにこれどうにかならんのかいねー。
 2つ目はサブキャラに名前が付いてない事。
 留美編の学生部長や理沙編の平良父と母、千春編の千春母といった脇役ながらも重要なファクターをもってるキャラが、尽く名無しというのはいかがなものかと。
 特に、超重要キャラで見せ場の多い千春の母などは、表記が「立花母」だったりと、もうちょい演出に力を入れて欲しかったです。
 このNailというブランドは同人活動から商業化したそうで、本作見た限り未熟ながら結構ノウハウとか蓄えてそうですし、これから期待していいかもしれません。

(アーク 様) 
 感想は皆同じような感じですね。
 見事に騙された感じです
 ゲームとしては良作なんですが…作りがちゃちい。
 デモやテキスト表記画面を見たとき、今時同人ゲームでももっと見栄えがするぞと、そう思ってました。
 タイトルのロゴ以外の文字が全部ゴシック体だったのも信じられなかったですし。
 もっと信じられなかったのは、製作スタッフの少なさですけど…
 最後スタッフロールで出てきたNailのメンバー、10人くらいだった気がします。
 大健闘だとは思うけど、これで8800円はちょっといただけないですね。

(王児 様)

 エッチな方向性での紹介は、最初からまじめな方をアピールするより意外性を得られる面で、プレイヤーへの印象はばっちりでしょう。
 メーカーの知名度の低さをフォローするのも兼ねているとも考えられますね。
 ただ気になるのが、雑誌ではシリアスに関する記事が無かったように思えるけど、記事にしなかったのか、出版社に渡したデータが最初の部分しかなかったのかどちらなんでしょう?
 それも作戦なんだとしたら、紹介してもらう場所さえ欺くというえらく危険な綱渡りをやっているような…
 メーカーの「つかみ」と思われるだけに、とりあえず「見せればよし」的な感覚でゲームに組み込めていればよかったのでしょうね。
 まあ、コスプレのままエッチすると原画・CGワーク共に地獄を見るから力を入れたくても入れられなかったのかもしれませんが。

 学園生活を横軸に、千春を縦軸に組み合わせるのはなかなかうならされる所です。
 真実が重いだけに、前半とのギャップを感じさせないようにしてあるなら大したものです。

(Mr.BOO)
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