D.C 〜ダ・カーポ〜 メーカー:サーカス
アーク 様
 WIN98、Me、2000、XP
 ジャンル こそばゆい学園ADV
 発売日&価格 2002年6月28日 8800円
 購入日&価格 2002年6月28日 7780円(初回限定テレカ付)
 入手難易度 DVD版 易 CD-ROM版 やや難
 
<ストーリー>
 桜が一年中咲き乱れる不思議な島、初音島。そこに住む朝倉純一は他人の見た夢を見る力と何もないところから和菓子を生み出せるという、妙な能力を持っていた。
  義妹の音夢と悪友の杉並と平凡ながら楽しい生活を過ごしていた学園卒業まじかの2月末、アメリカへ引っ越していた従妹の芳乃さくらが転入してきたことで純一の周囲はいっそう賑やかになるのだった。


<システム関連等>
 このゲーム、システムと環境は相当使い勝手がいいです。
 セーブも50個あり、ゲーム内の日付やアイコンを選択できることで誰を攻略しているかがすぐに判りますし、既読スキップやバックログ、CG,音楽鑑賞も完備しています。
 またシーン回想もHシーンだけでなく全シナリオを回想できるので、シナリオの見直しにとても便利でした。
 ただ、お遊び的な「ガヤシステム」の台詞がもう少しバリエーションが多くてもよかったと思います。
 それといくらなんでもガヤとはいえ学園内で「あははははー」と馬鹿笑いさせるのはどうかと…正直怖くて聞いてられませんでした(笑)。

 システムとは関係ありませんがOPムービー、とらは3のOPに匹敵して相当画質が悪いです。
 特に音夢の口がつぶれているのには閉口しました。
 ゲームの初めなのだからこういう所はきちっとしめておいて欲しかったです。
 
<ストーリー>
 タイトル通り、各ヒロインのシナリオもD.C(はじまりに戻る)という言葉にもとづいたつくりになっています。
 ただ、このゲームシナリオライターが4人もいることからそれぞれが受け持ったヒロインによってもろ出来不出来がはっきりしています。
 
朝倉音夢 
 主人公と生年月日が同じの義妹。とにかく世話焼きで、かつ主人公が他の女の子と親しくしていると不機嫌になる等ステレオタイプのヒロイン。
 最初に攻略したヒロインですが、はっきり言ってストーリー完成度は低いです。
 元々寄せていた好意が募って相思相愛になるという所まではいいんですが、序々に衰弱していく理由がなんだかとってつけたような設定ですし、ハッピーエンドもバッドエンドの音夢が消滅する手前に書いた手紙を読むシーンにただ付け足しただけで何故音夢が復活したのかが示されてない等、非常に中途半端な感がしました。
 
芳乃さくら
 6年ぶりに帰国し、主人公の学園へ転入して来た従妹。
 しかしその姿は6年前のままで…。
 
 一応このシナリオでこのシナリオでこの島の秘密や純一の能力の正体等が判明して重要な位置付けなんですが、あまり印象に残らなかったですね。
 物語終盤で起こる事件も以前の伏線から予測可能ですし個人的にどうしても普通という評価しか下せませんでした。
 音夢とさくらのシナリオは同じ人が書いたのですがどうもこの人のシナリオ、あんまりパッとしませんでしたね。
 
白河ことり
 学園のアイドルながらも気さくに周囲に接する事が出来る女の子で純一はヒョンなことから彼女の卒業コンサートのマネージャーを務めることに…
 サブヒロインながらストーリー完成度は非常に高いです。
 ことりと後述の水越萌のシナリオの特徴は「本来持ちうるはずの無い力を持つ事に慣れてしまった人間がその力を失い普通に戻ったとたんもろく崩れてしまう」というもので、ことりが桜の木から与えられた能力は即ち他人の心が読めるというものでした。
 そもそも人間関係というものは、他人の心が分からない故に「もしかしたら裏切られるかもしれない」という心情を元に細い信頼の糸でつながっています。
 無論普通の人間はあまりそういう事を意識せず暮らしているものですが、心が読める、つまり相手が「自分にどのような感情をもっているか」という「答え」をあらかじめ知る事によってできた人間関係に頼っていたことりにとって、普通に戻った後の周囲の人間は何を考えているか分からない恐怖の対象でした。
 2回目にプレイすると良く分かりますが、ことりが電話による会話や手紙を嫌っていたり、純粋に好意を寄せる純一と短期間で親しくなる等いかにことりが「能力」に頼っていたかが良く分かります。
 
 そしてラストの「ものを好きになるには相応の理由がなければならない」と声楽への情熱を失いかけたことりに純一が「ものごとを好きになるのに理由等ない」と諭すシーンはゲーム中屈指の名場面でした。
 「力」に頼り切っていた彼女が普通に戻り、人間としての力で全てのものを見つめなおす…
 ダ、カーポという言葉に良く合ったシナリオだと感じました。
 
水越萌
 いつも眠そうにしている純一の先輩で眞子の姉、交通事故にあいそうになった萌の身代わりになった純一が怪我をしたことで2人の仲は急速に接近し…
 萌が桜の木から与えられた能力は「夢の中で昔好きだった事故死した幼馴染と会える」
 というもので、当初自分は萌の事をただのボケキャラだと思ってましたが、眠そうなのも事あるごとに木琴を叩いているのにもきちんと理由付けされていたのが良かったです。
 ただこういった伏線や素材はいいのにシナリオはというと彼女の不可解な行動と態度で惹かれるものがありませんでした。
 
1.何故純一の事が好きになったのか明確に描かれていない。
 一応身代わりに事故にあった純一を、昔の幼馴染の啓一と重ね合わせたという理由付けがなされているが、その後も睡眠薬を飲んでまで啓一と会おうとしていたし、力を失ってからは狼狽したあげく純一を拒絶する始末だった。
 要するに、萌は啓一への想いを捨て切れないまま純一と恋人になり、あげくには積極的に性交渉を迫って来たりするので、プレイヤーから見ればただセックスがしたいだけの女と映り非常に印象が悪かったです。
 
2.ラストのまずさ、普通恋人である純一の前で啓一の木琴をたたくでしょうかね?
 純一は「思い出は大切にしなきゃ」と笑って済ませているが、「思い出」の度を過ぎているぞ?
 大切な思い出、特に昔の想い人のものは心にしまっとくものであり少なくとも人にしかも今の恋人に見せるようなようなものではないはずだ。
 自分の身に置き換えてみても恋人が昔の恋人の品を愛しそうに見ていたらいい気はしないでしょう。
 
 1.2を通して思ったことは、萌がはっきりと啓一の事を心の中で決着をつけない限り恋愛をする資格は無いということでした。
 
水越眞子
 萌の妹で純一の喧嘩友達。卒業式が迫ったある日彼女に屋上に呼び出された純一は女の子からの告白をやり過ごすために仮面恋人になって欲しいと頼まれるのだが…
 オー、オー青春しとるのー(オヤジ化)このシナリオをクリアした感想です(爆)。
 これぞ「こそばゆい学園ADV」にふさわしいものですね。期間の都合どうしても話が短くなってますが綺麗に纏まってますし、仮面恋人が本物の恋人になってやり直すという展開がダ、カーポを表す事に成功していました。
 
天枷「美春」
 音夢の親友かつ後輩で純一の事を慕っている元気いっぱいの女の子。
 ある日彼女の教室で、美春が木から落ちて死亡した事を聞いて呆然となる純一と音夢だったが、そこに何変わらぬ美春が現れて…
 一番度肝を抜かれ、かつ好きなシナリオです。
 もろネタバレですが、このシナリオでは事故で意識不明となった美春に代わってやってきた生体アンドロイドの「美春」が攻略対象となっています。
 最初のうちは何もアンドロイドなぞ出さなくてもいいのに、と思ってましたが美春の性格から考えてこういう展開にでもしないとただの甘々学園物になってしまう事が容易に予想できるのでこれはこれでよかったと思います。
 シナリオの方も単純なロボットものではなく、本物の美春ではないと音夢に避けられた「美春」が少しでも本物に近づこうと美春の記憶を取り戻す為に健気に頑張る姿が描かれています。
 記憶を取り戻す行為が「美春」の体に負荷をかけ、寿命を縮めると分かっていても一瞬の輝きの為に奮闘し、最後で大切な記憶を取り戻し思い出のオルゴールを聞きながら安らかに眠りにつくシーンは本当に感動しました。
 
 それと心配していた事なんですが、回復した美春が「美春」の記憶を受け継いだとかいう三文感動物のおちにならなくて良かったです。
 新学期、何も事情を知らないまま笑顔で駆け寄ってくる美春と、複雑な笑顔でそれを迎える純一。
 一見ホロ苦いEDですが、ダ・カーポという言葉通りなら純一は「美春」との思い出を糧に、美春は元々ある純一への思慕を元に最初からやり直すのでしょうね。
 
鷺澤頼子(美咲)
 ある日純一はいつものように他人の夢を見せられていた。
 その夢は、少女が頼子と名付けられた飼い猫に、片思いの相手の気持ちを自分に招いてとお願いしているものだった。
 あまりの少女の消極的な姿勢に地団駄踏む純一だったが、他人の夢なのでどうする事もできない。
 そして翌日の放課後ヒョンなことからメイド姿の少女と出会う。何とその少女には猫耳がありしかも「頼子」と名乗るのだった。
 
 いわゆる隠しキャラです。
 しかしシナリオ完成度は美春と並んで非常に高く、別に隠しシナリオにしなくても、と思いました。
 詳しい事は書きませんが猫耳メイドという一見マニアックかつツボをついた設定にも納得出来る理由が用意されているので安心してプレイできました。
 ただ、欲をいえば美咲の厳格な父親も少しは登場させて欲しかったですね。
 
<総評>
 前述しましたが、シナリオ担当が4人いらっしゃるのでシナリオ完成度の落差がすごいです。
 それと、主人公の純一が何かにつけて「かったるいかったるい」と言うのがとても不快でした。
 最近こういうやる気の無い主人公がはやっているみたいですが、個人的にあまり歓迎できることではありません。
 後、他サイトで知った事ですが、各ヒロインとの出会いを描いたシナリオが前作「アルキメデスの忘れ物」に収録されているそうです。
 無論それ無しでも本作をプレイするには問題ないのですが、杉並やことりとの会話に出てくるクリスマスパーティーの話題等はプレイしていない自分としては置いてきぼりをくった感がしました。
 こういう事は普通おまけディスクにするなり何なりして本作と一緒に添付して販売するのが筋ではないかと。
 
 せっかくの良作なのに長所を短所で消すようなことはやめてくれと言いたいです。 
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