わーきんぐDAYS
 何でも屋を舞台に、小粒なストーリーが16個。
1.メーカー名:Blue Inpact
2.ジャンル:マルチシナリオADV
3.ストーリー完成度:B
4.H度:B
5.オススメ度:B
6.攻略難易度:B
7.その他:こういうリンクしたショートシナリオって、最近あんまりないような気がする。
 
(ストーリー)

 迷子の猫探しから幽霊退治まで、犯罪以外なら何でも引き受ける何でも屋「HELPS」。
 所員やアルバイト達4組のカップルが織りなすドタバタコメディ。


 このゲームは、4組のカップルそれぞれに4つずつのショートシナリオが用意されているが、当初はそれぞれ1つ目のシナリオしか出来ない。
 そのシナリオでHシーンを通ったエンディングを迎えることでクリアの扱いになって次のシナリオが開くのだが、ほかのカップルのシナリオの進行具合やそこでの分岐などによって選択肢の数が変わるため、一定の条件を満たさないといつまで経っても先に進めないことになる。
 とは言え、そんなに難しい条件ではない上に1つのシナリオで選択肢が出る回数は3回程度なので、メッセージスキップを使えば3分程度で1つのシナリオが終わり、やり直すことがさほど面倒でもないのが嬉しい。
 そして、1組毎に一貫したストーリーがあるので、物語としてもそれなりのレベルを持っている。
 それでは1組ずつ見ていこう。

(徹と颯音)
 今泉徹(いまいずみ・とおる)と葉賀颯音(はが・かざね)は、家が向かいの幼なじみ。
 一応周囲からは恋人同士と見られているが、いつもケンカばかりなので、そういった雰囲気はない。
 ある日、徹が透明人間になってしまった。
 製薬会社の新薬被験者やHELPSの由宇子の人体実験、果ては颯音の料理まで、心当たりが多すぎて何が理由なのか分からない。
 さすがに不安になった徹は颯音に相談し…。

 このゲームのメインとなるストーリーだ。
 2つ目のシナリオ『無敵の警護、行います』で分かることだが、徹が透明人間になったのは某製薬会社の消化剤(実は透明薬)の被験者になったからなのだが、「透明人間になったらどうするか」というたとえ話で真っ先に思いつきそうな「風呂覗き」「知り合いへの悪戯」というのをきっちり押さえているのが楽しい。
 また、こういう行動を選ぶとバッドエンドになってしまうというのもいい。
 だから、4つ目のシナリオ『透明人間やめますか?』で「まだ風呂覗きもやってないのに!」という徹の冗談が意味を持つのだ。
 徹と同時期に被験者になった人間は全員透明になっており、しかもそいつらとの絡みがシナリオの主体をなしているわけだが、彼らの多くが見えないことを利しての犯罪に走ったのに徹がそうしなかったことをちゃんと描いた上で「非常識な割にその辺は実にマトモだった」と言わしめているのもなかなか。

 また、颯音を訪ねた徹の「(元に戻れなかったら)透明人間として一生終えてやる」という言葉に、颯音が「じゃあ私も付き合ったげるわよ。どんな姿になっても所詮徹は徹でしょ。この颯音さんを見くびらないでほしいわね」というある種“クサい”告白シーンは、全編通して鷹羽が一番気に入っているシーンだったりする。
 これを受けて、徹が元に戻れる薬を飲むときに“颯音と一緒に堂々と街を歩けるようになるのが主な目的”だということに意味が出てくる。


(和宏と千彰)
 新入生一の美少女:涼谷詩織(すずみや・しおり)を口説こうとしたプレイボーイ:清水和宏は、女関係のだらしなさを理由に断られてしまった。
 それならばと、HELPSに依頼して偽彼女を作り、ほかの女性関係を清算して再トライしようとした和宏だったが、偽彼女役の小野坂千彰(おのさか・ちあき)に本気で惚れてしまい…。

 女と見れば見境のない軽薄男がなぜか1人の女に惚れ込むというタイプのラブコメ。
 千彰がおっとりとしたお嬢様タイプだったりするため、非常にオーソドックスな作りになっており、終始まともなストーリーが進む。
 プロポーズし、結婚式で終わるのがこのシナリオだけなのもオーソドックスな印象に一役買っている。

 ちなみにこのプロポーズ、和宏は恵が変装した千彰を相手のリハーサルのつもりが、途中で千彰と恵が入れ替わっていたというオチ(4話『プロポーズのリハーサル行いますか?』)なのだが、ラストシーンで、そもそも1話『偽彼女請け負います』の冒頭で和宏が口説いた詩織も恵の変装だったことが分かる。
 結局、恵に振り回されてなるようになってしまった(結果に満足はしているものの)和宏の怒りで終わる辺りも結構王道かも。


(拓海と恵と詩織)
 胡桃沢拓海(くるみざわ・たくみ)は、ふとしたことから従妹の白河恵(しらかわ・けい)に理想の女性像の話をする。
 その直後に、理想の女性像そのものの少女に出会った拓海は、変装名人の恵が自分をからかっているものと思い込み、少女とデートの約束をしてしまう。
 だが、実はその少女は恵の親友の涼谷詩織だった。
 しかも、男性恐怖症の詩織は、普段恵から話を聞いていた拓海には免疫があり、しかもかねてから好意を抱いていたのだ。
 詩織とデートした拓海は、告白してきた詩織に、恵への想いを語って断り、その夜恵と結ばれた。
 だが、その後…。

 パターンと言えばパターンだが、三角関係に決着が付かないので、好き嫌いが別れそうなシナリオだ。
 鷹羽は嫌い。
 2話『忘れ物はないですか?』で、酒を飲み過ぎて鬼畜モードになってしまった拓海が、恵と詩織を同時に抱いてしまう(3P)という展開から、3話『男嫌いを治しましょう』での恵と詩織のレズ、4話『お見合い破談、引き受けます』での3人が合法的に結婚する方法の模索に至るまで、鷹羽的にはこめかみピクピクものだった。
 特に、どうにも恵が好きになれなかったのがマイナス印象に拍車を掛けている。
 1話で拓海が理想像そのものの詩織をフッてまで恵を抱いたのが納得いかないんだよなぁ…。
 恵がもうちょいまともな性格なら納得したんだけど…。


(大輔と由宇子)
 HELPS発足当時、所長である船島大輔は、夜中にやって来た女性に、あるものの修理を依頼された。
 それは、裏山に落下した宇宙船の修理で、その女性:倉品由宇子(くらしな・ゆうこ)は宇宙人だったのだ。
 めでたく修理が完了したものの、2人の間には恋が芽生えてしまい…。

 大輔が人間とは思いたくない。
 1トン近い荷物を持ち上げ、「道理で重いと思った」とか、高圧電流を散々浴びて「普通の人間なら3回くらい死んでたな」などと平然と言うこの人は、異常なまでに頑丈だ。
 除霊用のお札作りからミサイル等のアングラ物件入手まで正しく便利キャラな大輔あってのシナリオが展開されている。
 ついでに言うと、この人、ほかのシナリオも含めてほとんど口を利かないのだが、セリフはほぼ全部モノローグで処理されている。
 これで会話できる由宇子は、きっとテレパシーで会話しているんだろう。

 由宇子は、墜落時に地球のコンピュータネットワークに流れてしまった宇宙船のコンピュータからのデータを回収するために地球に残ったわけだが、徹が透明人間になった大元が、実はこの時流れたデータから作られた薬だったというオチが付いている。
 本星の方から地球に住む許可を受けた由宇子は、恐らく大輔の手腕によって戸籍を偽造して地球に居着くことができるだろう。

 頑丈人間と宇宙人という一番とんでもないカップルなのに、性格的にはこの2人が一番まともというのが意外だ。
 ただ、由宇子は猫耳宇宙人という設定であり、耳隠しの帽子を常に被っているというのに、遂にその耳は一度も出てこなかった。
 猫耳を見せない猫耳キャラなんて初めて見た。


 ということで、総合評価にいってみよう。
 このゲームは、先にも書いたとおり、ほかのカップルのシナリオである条件を満たさないと次のシナリオが開けなかったり、そのシナリオをクリアできないという形になっている。
 これは、単に情報量と時系列の問題からのものもあれば、条件型の張られるワールドの場合もある。
 前者の代表は、徹と颯音シナリオの3話『不法住居者退去させます』で、当初徹と颯音だけで来たときには、ビルに潜む悪霊(実は透明人間)の妨害によって失敗してしまう。
 そのため、体勢を立て直すべく一旦戻るわけだが、ここで大輔と由宇子シナリオの3話『家に閉じ込められたらまず一報』をクリアすると、ほかの仕事に関わっていた拓海が合流でき、再トライできるようになる。
 ちなみに、この場合3話の冒頭に戻ってしまうが、徹のセリフに「前に来たとき」というようなのがあるから、状況はほぼ同じでも以前に失敗した続きであることが分かる。

 これに対して、パラレルワールド型の展開もある。
 例えば和宏と千彰シナリオの4話の最初の状態では、千彰と交代した恵がこっそりと様子を見ようとしているのを和宏が発見したために失敗に終わるが、大輔と由宇子シナリオ4話『お子様、お預かりします』で、大輔が戻ろうとする恵を止めることで成功するバージョンに変わる。
 これは、同じ事件の成功例と失敗例であり、時間的な繋がりはない。
 まぁ、この手のマルチエンド型ゲームは元々パラレルワールドの集合体なので、そんなことを言っても仕方ないし意味もないのだが。
 ただ、それでも1つだけ言いたい。
 『お子様、お預かりします』で未来からやってきた大輔と良子の間の子供:良子が持っていた指輪は、婚約指輪として由宇子に贈られ、その後良子の手で過去に戻るという無限ループに乗っており、最初の入手経路が存在していない。
 これによりタイムパラドックスを起こしているため、“何百年間もの想いが込められたアイテム”という条件に?マークがついてしまうのだ。
 これさえなければ、ドタバタコメディのレベルで整合性の取れた世界だったのに…。


(総評)
 少々ボリュームに欠けるが、十分及第点だと思う。
 多分にデジコミ的だが、少ない選択肢で結構分岐するし、それぞれのシナリオの相互干渉によって新しい選択肢や展開が生まれるというのもいい。
 スキップも早いから、試行錯誤しながらクリアしていく上で鬱陶しさがほとんど感じられないのも美点だ。
 むしろそのためにボリュームが少な目なのだと考えれば納得できるレベルのものになっている。
 16個のシナリオそれぞれにHシーンがあるが、カップルが違うからマンネリ化していないし、巫女装束やメイド服などのコスプレ的なパターンまでちゃんとシチュエーションを作った上で用意されている。

 あと、鷹羽としては、OPテーマ『See through Be true』がかなりお気に入りだ。
 このゲームのメインが徹と颯音シナリオだと書いたのは、このテーマ曲が2人のための歌としか思えないからだ。
 サビの
  一切合切 この際 さらけ出しなさい
  全部私が受け止めるから
  透明な心で夢を掴んで
  
any way any time I'm on your side

は、颯音と徹の告白シーンのイメージだし
  形あるものより 確かな2人の絆 大切にしたい
  目に見えなくても触れ合う心 感じているから

も、2人の付き合い方そのものだろう。
 曲名は、『誠実であり続けて(あなたらしいままでいて)』と『真実を見抜いて』というダブルミーニングだと思われる。
 そして、「See through」はシースルー、つまり「透明」にも引っ掛けてある。
 また、実はこの歌、韻を踏んでいる部分が多い。
 曲名からして
  i: θru:  bi: tru:
であり、「i:」「u:」の韻を踏んでいる。
 また、上記の
   いっさいがっさい このさい さらけだしなさい
も、これでもかってくらいの押韻だ。
 鷹羽、こういう拘った歌が好きなのよね〜。


(鷹羽飛鳥)

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