忘れな草


 柿にかぼちゃはかんなかな♪ ←『花摘みの歌』が違うよ…(ベタネタはやめい!)

1.メーカー名:Project-μ 
2.ジャンル:ノベル型ADV
3.ストーリー完成度:AになりえたC+。大変惜しい!
4.H度:D
5.オススメ度:C
6.攻略難易度:D
7.その他:以前も書いたけど「あとはプレイヤーの皆様のご想像におまかせ♪」っていうのは、やりすぎるとただの意味不明。このゲームは微妙な所。

(ストーリー)
 主人公・ソラは大学を出た後フリーターをしていたが、何となく今の自分から逃げ出したい気分になっていた。
 そんな折り、差出人不明の同窓会案内が届く。
 昔住んでいた上鷺村の分校は、自分が転校してすぐ廃校になった。
 その校舎がもうすぐ再開発で無くなってしまうので、その前に最後の生徒で集まろうという内容だった。
 同窓会のためと言い訳しながら「逃げる」ために上鷺村へ出かけたソラだったが、結局、田舎でも居心地の悪い思いをする。
 「10数年ぶりだから」という理由にしては不自然な程の居心地の悪さ…実はそれは、封印してしまった過去の記憶に起因していた…。


 いい雰囲気を持った作品。
 特に音楽が古き良き映画という感じがしてとてもいいし、文字が動き回ったり拡大縮小したりと表示が工夫されていて、登場人物の心理描写に一役買っているのも面白い。
 この文字エフェクトはたまにうるさく感じる事もありましたが、許容範囲でした。
 その他システムもメッセージスキップ等、ノベル型ADVに必要と思われる機能は一通り装備?しているし、適度な長さ(短さか?)で、あまりストレスは溜まらないと思います。
 さて肝心のシナリオは、ヒロインのルートによって過去にあった出来事も変わってしまう完全独立型
 つまり鷹羽氏にはオススメできません(笑)。
 でも、一度そのヒロインのEDを見ると次からヒロインごとの“しおり”が作成され、無駄に同じキャラの話をぐるぐるやらなくて済むところが親切です。
 また「このしおりとこのしおりは別の話です」という感じがするので、独立型のシナリオに違和感を感じさせない工夫としても良いと思います。
 ただ、せっかくそういう風に“ゲームならでは”の良さを感じさせる作りなのに、主人公・ソラの心理描写ばかりが深く追求されすぎ、周囲の人の心理や状況描写がわかりにくいという、下手な私小説の様な欠点も持っています。
 特に少々ペザントリィで純文学風の文章が、「ここで主人公は何を考えていたのか100字以内で書きなさい」などの国語の問題を彷彿させます…。
 第一、プレイヤーの分身たる主人公・ソラがとにかく卑屈で卑屈でツライし、かなり独特…と言うか何と言うか…(汗)なCGと相俟って、けっこう好き嫌いが分かれてしまいそうです。
 もっともソラがこんな風に追い込まれているのも伏線の一つなので、その辺は上手いと思うのですが…。
 個人的にはけっこう気に入ったのですが、まあ評価はなるべく客観性を…と思い、オススメ度はCとなってしまいました。

 以下、各ヒロインごとに少し。
 多少のネタバレを含みますので、その点ご了承の上読み進んで下さい。


 セナ:評価B
 ゲームを始めると最初は必ず彼女のシナリオになります。
 古典的名作になりつつあるリーフ『痕』の場合も、最初は選択肢が限られていて後から増えるパターンですが、このゲームの場合、この最初のシナリオでは明かされる情報がとんでもなく少ない超々ダイジェスト版みたいなシロモノを見させられます。
 おかげで最初は何が何だかサッパリですし、ソラの卑屈大魔王ぶりに「オマエ、何考えてんの?」と思ってしまいました。
 もっともトゥルーEDまでやれば、その理由も明らかになるのですが…。
 が、そのトゥルーEDまでの他のEDでは過去のトラウマはほとんど明らかにならないし、4つもあるくせに展開はあまり変わらないというイマイチぶり。
 唯一見るべき所と言えば、主人公がセナを犯そうとするが、生理中と気付いて未遂に終わる点でしょうか ←こんなトコ注目してどうする!
 以前コラム『徒然ビュー』で「生理はあって当然なんだから、上手い使い方がある気がする」と書きましたが、これなんかは中々の好例かもしれません。
 ただ、そこまで引っ張ってから明かされるトゥルーEDのインパクトは素晴らしいです。
 ソフ倫との闘い(笑)の敗北っぷりで、描写が曖昧すぎるのが残念ですが、何とか想像はつきます。
 まあ…“カイトとセナの間に何があったか?”はもう少し描いて欲しかったですが…。
 それでもかなり考えさせられるEDで「私」と「僕」の使い分けの理由など見事な物があります。
 これでもっと他のEDで上手く設定が小出しにされていれば評価Aなのですが…(苦笑)。


 カエデシナリオ:C
 他の評論サイトではこのシナリオはけっこう評価が高い様ですが、私としては「?」なストーリーでした。
 少なくとも自分的には、セナ・ナズナシナリオ以上に想像力で話を補わなければならない感じが強いので。
 決して「あとはプレイヤーの皆様のご想像におまかせ♪」が嫌いな訳では無いのですが、もう少し状況を描き込んでくれた方が、話に深みが出たのでは?
 そうそう、ナズナルートで出てくる“カミササギ村”という単語は、こっちで明かして欲しかったかな。
 あとは他のシナリオに比べて、主人公が明るい感じがするのが救いでしょうか。


 ナズナシナリオ:A
 このルートはサスペンス仕立てなので、一番解りやすく、かつ矛盾がほとんど無いルートです。
 しかも、おまけシナリオで「ヤバ過ぎて相当描写を削った」とされている割には、大体何があったのか、またカズキが母親に性的虐待(溺愛かな?)を受けているらしい事も何となく伝わってきます。
 しかしこのシナリオ、マジ恐かった…。
 特に最後にカズキが振り向くヤツ…。


 スズネシナリオ:B
 話そのものはファンタジー仕立てで中々良いのですが、伏線の張り方に疑問を感じるシナリオです。
 スズネルートはセナルートから派生するのですが、このシナリオのキーワードである白鷺姫のもう一つの言い伝えはカエデルートで語られているし、さらに重要な風土病についてはナズナシナリオで思い出すので、かなりの違和感があります。
 まあ“白鷺姫のもう一つの言い伝え”がカエデルートで出てくるのは不自然ではないのですが、ナズナルートで唐突に“風土病”のネタが出てくるのはどうかと…。
 どうもナズナのEDにもスズネのCGがあるので、もしかしたらこっちからの派生にするつもりだったのかもしれませんが…。
 最初私は、カズキが風土病にからんでるんだと思ってました(苦笑)。
 ただ、本編で主人公がその“白鷺姫のもう一つの言い伝え”&“カミササギ村特有の風土病”に思い至っていないのに、キャラクター紹介で「風土病にかかっている」と書いてしまうのは大きなマイナスポイントですね
 それはキャラ紹介でなく、当然ゲーム中に描写しておくべき事では?
 もちろん、これも「ああ、もしかしたらアレかな?」とプレイヤーは思い当たるのですが、少しでもソラが気付いた描写が無いと、ねぇ…(あれでは微妙スギ…)。
 また、ヒロインごとに話が独立しているスタイルなのに、こういう風に他のシナリオから伏線を拾わされると『痕』の柳川シナリオの様な「全部のヒロインの話がまとまるシナリオ」があるのかと考えてしまいました。
 でも…さすがに小学生時代にお化け屋敷そばで皆と仲良く遊び、セナを犯し(推測)、カズキをよってたかって池に投げ込んで殺し、あげくに自分が死んで復活してるのは無茶すぎるので、やはり繋がっていない方が自然でしょうね。


 忘れなQ&おまけシナリオ:いらないと思う<コラ!
 正直こんなおまけでお茶を濁す位なら、本編で描いて欲しかった所が多過ぎます。
 先述の通り設定はキチンと作られている風なのに、ゲーム本編中で語られていない点が多々有るのはもったいないです。
 一応、クイズの『忘れなQ』はCGも増えるし、そこそこ面白いと思いますが、とにかく最後のおまけシナリオは蛇足以外の何者でも無いと思います。
 だって、ただの言い訳なんだもの。


(総評)
 しおりはピンクになった。
 CGは100%+おまけCGも開いている。
 おまけシナリオでも「長い本編におつきあいありがとう」って出てた…。
 でも私、この作品、本当に完クリしたんだろうか…????

 そんな疑問を抱き、このゲーム、実は2回プレイしました。
 幸いそんなに長い時間のかかるゲームでは無い(むしろ18禁としては妥当な長さかも)ので、さほど苦にはなりませんでしたが。
 実際他の評論系サイトでは、評価が高い所でも低い所でも“難解”“わかりにくい”としている様です。
 ただ設定はカッチリしているようで、あまり矛盾は感じません。
 どうもキャラクター紹介や用語解説を読むと「設定がいい加減で難解」なのでも「設定そのものが難解」なのでも無く、「設定はあるのに本編中に出て来ない為、難解に見える」という感じがします。
 唯一気になるのは、なぜかつての同級生の死がソラに知らされていなかったか…ですが、これもまた、セナの場合は話そのものが「夢」ですし、ナズナルートのカズキの場合他の人達も「無かった事」にしてしまっていますから、あまり問題にはならない気もします。
 とにかく設定部分を小出しにし過ぎ、隠し過ぎているだけのようです。
 ある程度はソフ倫との兼ね合い上隠さざるを得ない所はあったと思いますが、そこさえ上手く描写されていればもっと高評価を得られたソフトなのに、本当に惜しいです。

 とは言え良い点もたくさんある作品なので、まさに次回作に期待…という所でしょうか。

 おお、すでに新作の歌曲が紹介されていますね。
 今回の『花摘みの歌』並の名曲となるか?
 これはやりたいです!

 …え…?
 次回作、携帯電話とリンクシステム?
 …私、携帯持ってないんですけど…。

 PS.
 大分前になりますが、このゲームは激情赤城山掲示板で教えて頂いた物です。
 と言う訳で、昨年11月発売と少々古いのですが取り上げさせていただきました。
 情報ありがとうございました♪
 またオススメ&評論対象にして欲しいソフトが有りましたら、よろしくお願い致します(ぺこり)。

(柏木悠里)

戻りマース