捕らわれた硝子の心
某月某日、くろべーと共に秋葉原に出る。
くろべーは東京圏に出て来てから初めての休日らしい休日だったため、とても楽しそうだった。
そんな時は故事に曰く“小人閑居して…”てなもんで、余計なモノを見つけてしまうのが常っ!
例に洩れず…
く:「みっちんっ! みっちんっ!!」
み:「ん?」
く:「コレ、コレっ! コレ怪しいですよっ! ポリゴンなのにキャラが“萌え系”っ!」
み:「おぉっ! ポリゴンもここまで来たかっ! すごいなぁっ!」
く:「女の子が随分と可愛く描けてますよ、これは次の原稿でしょうっ!」
み:「うーん、なんかなー」
く:「ん? なんです?」
み:「いや、なんかね…ポリゴンだし、キレイだし、いいと思うんだけど…」
く:「“らしく”ないですねぇ、やってみないと解らないじゃないですか。それに、締め切りが近いんですよっ!」
み:「うーん…」
く:「じゃぁ、他のにしましょうか?」
み:「うーん…」
その後1時間かけて店内を物色、結局コレに決定…
く:「結局コレじゃないですか」
み:「すまん…」
店員のにーちゃんが妙に嬉しそうにレジを打っていたのが気になる…
おいらの“食指”が動かなかったのが気になりますが、ま、PLAYといきましょう
1.メーカー名:TEATIME
2.ジャンル:ADV
3.ストーリー:C
4.H度:C
5.オススメ度:C
6.攻略難易度:D
7.その他:ポリゴン技術を見よっ!
(ストーリー)
資産家だった父が死に、遺産相続も一段落したころ。
僕宛の遺言状“みたいなもの”をみつけた。
「館の管理を続けて欲しい…」…そう、書いてあった。
群がる親族の目につかないように、色々と工夫して隠していたのだ。
管理人を雇い、15年もの間維持してきたらしい…あまり好きではなかった“父”…愛人をつくったり、隠れ投資なんかもしていた“父”…
ただ一つ言えることは、“父”はこの館をとても大事にしていたということだ。
この館が何なのか知るために、自分の目で見るために、僕はここに来たんだ…
パッケージを見る限りでは女の子も以前のデコボコではなく、実に滑らかに表現されている!
ス、スゴイっ! というのがおいらの素直な第一印象です。
“こりゃすごいっ!”と思いつつもおいらの食指が動かなかったのが気になります。
ま、取りあえずやってみることにします。
と、ここでゲームを始める前に一つの不安がありました。
その不安とは単純にマシンスペックのこと。
実はおいら、以前に評論の対象として『ブルーティッシュマイン』という“イリュージョン”のポリゴンゲームをプレイしようとしたのですが、マシンスペックが間に合わず、諦めざるを得なかったという過去があります。
しかし、CPUは以前と同じ Pentium 2の400Mz
とはいえ、メモリーは以前の64MBから352MBに増設!
グラフィックボードも、ミレニアムG200(4MB)からエルトリアのお古・メモリー16MBのよーわからんボードに変更っ!
多分、パワーアップしているっ!
結果、サクサク動くこのソフトっ! ちょっと嬉しいみっちんでした。
さて、本題っ!
サクッとインストールを終了してスタートすると、オープニングが始まります。
最近の18禁ゲームではよくありがちなんで、驚きもしない、むしろデキが悪い方が多いので……んっ? なんか曲イイな…なんかガンバッテいるな…なんかいいな…イイぢゃんっ! みっちん“もうちょっと”嬉しかった。
スタートしてスグ、メイドさん現れる。
…“メイドさんだぁ!”とか“やっぱ、この手か…”なんてコトよりもポリゴンの綺麗さにビックリっ! ホント綺麗っ!
良くあるじゃん、ポリゴンと思いきや“ムービー”だったりポリゴンで無理矢理Hシーンをやって、デコボコな女の子を見る羽目になったり、その努力は解るんだけど…やっぱつらい、てなヤツ。
少なくともこの『捕らわれた硝子の心』がそんなレベルを既に脱却しているのは、この最初のキャラクターを見ただけで解りました。うーん、侮れん。
メイド二人に時を同じくしてこの館を訪れた3人の女性……なんかありがち…早くもみっちんの不安メーターが上昇…イヤ、ほら、出だしダケ良くて、ってヤツもありますからね、その逆も有るさ!
そして、導入が終わるとみっちんが一番恐れていた“ポリゴン移動”が出現っ!
説明しようっ!
“ポリゴン移動”とは、せっかく造ったポリゴンを無駄にしないよう、ポリゴン世界…ちょいと前だとヴァーチャル世界を“歩きまわらせよう”という実に迷惑なシステムである!
メーカー側の独善がかなり押し付けられる。
最初は“おぉ、キレイキレイ…”なんて言いながらやっているが、そのうち飽きてきてかなりイヤになる。これホント…。
いやー、ゲーム始めて1時間位で、それなりにプレイヤーのことは考えてくれているのが解ってきます。
まず、先にも言った“ポリゴン移動”だけど、指定した場所にスグ着いちゃう“MAP機能”なんてモノがありましてちょいと便利です。
でもですね、それと同時に“悪いトコ”も解っちゃうもんなんです。
まず、DOS時代のADVと大して変わらないゲーム進行はいただけない…
説明しようっ!
“DOSゲー進行”とは、DOSゲーム時代のADVでかなり多く使用されたゲームの進行方法なのだのだのだのだっ!
具体的には、移動→廊下→教室→移動→廊下→二階→教務室→(女の子発見)→話す→…てな具合、大抵はその場に出ているコマンドを“総当たり”で“あたり”のコマンドを探す羽目になる…
ま、技術的にワリと簡単で同時に安定したゲーム環境を提供できるといったところがウリです。
でもですね、今やそんなモンで褒めてくれる人なんかいないわけです。
今でも素知らぬ顔して“新作”と銘打ちながらも、このまんーまなゲームも有るのが現実…
さすがにコマンドとはいかないまでも、館中の部屋という部屋を“シラミ潰し”でゲームを進行さしているのは言い訳できないね。
まぁ好意的に考えるのなら、ゲームに集中できるように…との配慮と考えよう。
…そして、もうひとつの問題点…“女体クリック”っ!
あっ! イタイ…イタイ、痛いけど説明しようっ!
“女体クリック”とは読んで字の如く、女の子とのHシーンでマウスのカーソルでもって体をクリックしていくものでして、いちいち面倒くさい。
制作サイドは“Hシーンの自由度”を提唱しているつもりだろうが、こちとらメイワクだ、というのが正直な感想。
以前(かなり前)に「九拾八式・改」「続・九拾八式」にて行われた“座談会”なるモノで議題となっていた。
メイワクな理由として“話の腰を折る”ないし“話を止める”や“義務感の発生”“時間的印象の消失”“ウザイ”“タルイ”“リザレクト”が挙げられる。
まったく困ったものである。
それで、女の子を“イカす”ためにゲージを上げていくんだけど…もう、なんてーか勘弁して貰いたい。
なにせHできる女の子が3人いて、それぞれ3回ずつ、計9回も“女体クリック”しないといけないのだ!
たしかにキャラクターによって体型が変わっているようなのですが、よく見ないと分からないし、いろいろと“女体クリック”からの脱却は図られているんだけど、結局フレームパターンの分しかバリエーションが無いわけで、どの女の子も同じパターンになってしまってます。
「女の子の顔が違う」程度の印象しかないのが残念。
ひとつ良かった点をあげると、ちょっとマニアックな意見になってしまうんだけど一人だけ“全裸”にならない女の子がいて、それがポリゴンだとなかなかの存在感があります。
他の登場キャラクター達も意外と“立ち姿”の方が存在感をアピールできていたと思います。
“衣服”という基本的なアイテムを3Dだとより強く存在を確認できるということです。
特にメイド二人にはHシーンが無いんだけど、そのコスチュームが普段の“CG”とは違い、とても印象的でした。
はい、おいらこのゲームをクリアしました。
そこで、これ又色々と言いたいことが有るんだなコレが…
まず、主人公っ!
この主人公のアホたれ具合には腹が立つ!
おかげでプレイヤーに感応するところが無く、ゲームに集中できなかったよ!
それに頭の悪い登場人物達に“山”も“谷”もイマイチなシナリオと、もう…アカンとですよ…。
確かに“メイド二人”に手を付けなかったり、主人公に警戒されないように“体張った”りする女の子がいたりと、そりゃもう色々とやろうとしているみたいなんだけど、悲しいかな“お粗末”と言わざるを得ない。
なんか会話が“変”っ! 責任者出てこいっ! なんだよあの“父の愛人”っ!
もーなんてーか“あきゃ”、おまえシナリオライター失格、と言われても仕方がないよ。
やっぱやるんなら、最後は館に“火”付けて燃やす位の勢いは欲しいわけ。
淡々とやるんならもっとしっかりヤレよっ!
いくらシステムが“ウリ”で“ストーリー”が副次的なモノだとしても“より良い商品”を開発する義務がソフトメーカーには常にあると思うよ。
完全に“やれる”コトを“やってない”んだよ。
うぅぅ、おいらのトーンじゃない…
(総評)
直球勝負に来たことは素晴らしいと思います。
しかし表現に限界を感じたのならば、さらに別な努力をするべきだと思います。
それが例え目的の範疇ではなくても、です。
だからこそ、シナリオの稚拙さやゲームの進行方法、文章表現に不満を表すのです。
悲しいかな、これで“がんばった”キャラクターデザインやBGMは帳消しです。
後に残るのは“ポリゴンがキレイだった”だけなんですっ!
せっかくここまで造ったのにっ! 中途半端はいけないんですっ!
もっと良いモノになったと思う分、苦言を言わしてて貰います。
おいらが以前からポリゴンの“Hゲーム”に注目していたことは、何人かの人が知っています。
人間表現の新しい技術だと感じていました。
注目し始めた頃は、その表現力はまだまだ“発展段階”としか言いようが無く、とても鑑賞に堪えるモノではありませんでした。
なにせ時代は“ヴァーチャファイター”のころでしたから……。
しかし、ここ何年かでその表現力は格段の進歩を遂げていきました。
印象に残っている作品は『デスブラッド2』や『EDEN2』があります。
特に現在“ポリゴン”に求められている表現は“人間”でして、その点“Hゲーム業界”には稚拙なモノは通用しない、最も“ポリゴン”にとって過酷な競争世界なのであります。
だけど、それと同時にこの世界でポリゴンの地位を確保すれば、あらゆる分野への転用が、それもカナリの高レベルで可能だと思います。
そんな期待をおいらは持っています。
“H”さえ有ればあとは何やってもイイ、という環境は他では全くありません。
コンシューマのゲーム業界と比べて見ても格段に小回りが効き、実験作品も大手を振って販売されています。
しかし『捕らわれた硝子の心』は、そんな“実験”からは1ランクアップしたモノを感じます。
例えば“SFX”という映画の撮影技術は誰もが知っていると思いますが、その“特殊技術”が初めて、何の“特殊場面”でもない所で“演出効果”として使用された、映画『タイタニック』の意義に通じるモノがあるとおもいます。
結果として悪い評価を与えることになりましたが、おいらとしては今後が楽しみな作品です。
(みっちん)