TOON 〜トゥーン〜

 今、コンシューマで話題の「トゥーンレンダリング」を用いた作品だが…
 オープニングムービーで力尽きてる!?


1.メーカー名:TEATIME・A-SIDE
2.ジャンル:ADV
3.ストーリー完成度:久々のEです。コイツはヒドい…
4.H度:C
5.オススメ度:E
6.攻略難易度:D
7.その他:村上水軍さんのファンならオススメ度に+1?


(ストーリー)
 主人公・望月祐(もちづきゆう)は普通の高校生。
 だが、せっかくの夏休みも、交通事故に巻き込まれ入院していたために受けられなかった『期末テストのツケの補習』という形で潰してしまっている。
 補習中は退屈だけど、幼なじみの星川千夏とその親友・瀬野まなえ、夏休みに入ってしまった担任の先生に代わって補習を担当してくれる保険医・薬師寺葉子などと会えるため、学校に来ること自体はそれほどイヤでなかった。
 そして、その夏休み、祐は思いもかけない恋物語を経験することになる…


 何から語ればよいのやら…
 事の起こりは、俺っちが久しぶりに3DCGの作品でもやりたいなあ…と思い立ったため、Mr.Boo氏に紹介してもらった作品の一つが、この「TOON」だった。
 今話題のトゥーンレンダリングという技術を取り入れた作品だということもあって、話のタネに購入してみたのだが…

 正直、ここまで問題がある作品も珍しい。
 ホント、久々の大物地雷ソフトに認定である。

 まず一番頭が痛かったのが、シナリオも含むあまりに大雑把なゲーム構成だ。
 この「TOON」は大きく分けて二部構成となっており、主人公が登校してきた時にヒロイン達と交流するAパートと、補習終了後にヒロインの告白を受け(先生だけ例外)、そこからHシーンに流れるBパートとに分かれている。
 問題は、Aパートにも選択肢があるにもかかわらず、その結果がBパートに全く反映されていない事なのだ。

 実はこの作品、攻略するヒロインの順番が決まっている。
 順番にまなみ→千夏→葉子となるわけだが、Bパートにこれらに流れる選択肢は最初から登場はする。
 だが、例えばまなみルートにしか進めない状況の場合、他のヒロインに進む選択肢が「?????」と表示されてしまい、そこから先に進めなくなってしまうのだ。
 こんな露骨に分かりやすい分岐も十分に俺っちを呆れさせたが、更にその呆れに拍車をかけてくれたのが他のヒロインのルートに進む条件だ。
 ここでAパートの選択肢が重要になってくる…なんて話は一切なく、なんと分岐条件は「ルートヒロインのCGとアニメシーンをいくつか見る事」でしかない!

 この「TOON」、実はやたらとHシーンが多い。
 Hシーンの体位のCGは言うに及ばず、どの体位でフィニッシュしたかでもイロイロCGを用意してあるし、最大のウリであるトゥーンレンダリングを使用したHアニメーションは3つもの視点切り替えが可能なため、全部のCGを埋めるためには結構な手間となる。
 これらをHシーン時に用意されたポイントを上手に利用して回収しなくてはならないため、次のヒロインのルートに進むために何回もロードを繰り返すハメになるのだ。
 それならそれで、Hシーンの見方によって様々なEDが楽しめでもすればまだ良かったのだが、基本的に各ヒロインには2〜4個程度の結末しか用意されていないため、しばらくプレイしていると、Bパートに入る→ロードを繰り返す→メッセージスキップしまくる、という極めて単調な作業を強要されてしまうのだ。

 ちなみにこの作品、EDに行くたびに「ここまでの話をセーブしますか?」と訊いてくる。
 ここで回収したCGやアニメをおまけモードにセーブして条件を満たしていくわけだが、俺っちは最初のヒロイン・まなみから次の千夏の選択肢が出るようになるまで、まなみのHシーンを何と8回見るハメになった。
 更に千夏のCG&アニメを100%化するために7回、その後葉子ルートに入れなかったため、見ていなかったまなみのHイベントの回収に5回、葉子ルートに入って100%化に7回、そしてまなみの残りを最後に回収・100%化するために4回のプレイを以てようやくコンプリートと相成ったのである。
 いくらプレイ時間が短いとはいえ、はっきり言って、こんなのは苦痛以外の何ものでもない。
 救いはBパートに入った直後にセーブしさえすれば、面倒な手間が省けることぐらいだろうか。

 また、手抜きと言うほかないシナリオだが、ここまでヒドいともはや“ぐう”の音も出ない。
 この作品を先にプレイしていたエルトリア君(アンタ、やってたのネ…)は「え? アレ、製品版と間違えて体験版が入っていたんでしょう?」と朗らかに(苦笑)のたまっていたが、成程これは言い得て妙な表現だ。
 Aパートの補習期間が一週間、その間はうだうだと選択肢を選んでいくハメになる訳だが、その間これといった面白いイベントがあるわけでもなく、ましてや前述した通りBパートにも影響が一切ない。
 まさか、ありふれた夏休みの日常を、補習及びまなみ・千夏とともにプールに入るイベント一回だけで描ききったつもりだろうか?
 まなみの主人公に対してとるおどおどした態度の原因を告白してくれる場面なんかイベントでもなんでもない気がするし…
 もしこの程度で、後の重要イベントであるBパートの「告白イベント」への布石が完全に置かれているなどと本気でシナリオライターが思っているのならば、認識不足としか言いようがないだろう。

 Bパートにしても、どうしても唐突な感が拭えないが、それは至極当然だ。
 今、上で語ったようにゲーム時間的にはまだそれなりの長さを持っているAパートですら、ろくすっぽうシナリオやヒロインの性格を描ききっていないのに、Bパートに入った瞬間、ハイ告白ですじゃ正直感慨もクソもない。
 んで、告白タイム終了と同時にHしまくりじゃ、正直「何じゃ、こりゃ?」だ。

 例を挙げてみよう。

 最後に出来る葉子シナリオのBパートの流れが…

葉子「きゃ、セミが保健室に入ってきたわ。私、虫嫌いだから、祐君追っ払って」
祐「ええ、いいですよ…って、うわあ!」
 蝉を捕まえようとしてバランスを崩して葉子に覆い被さってしまう祐。
祐「先生、ボク、もう我慢できません!」がばぁ!!
 その後、マッハのごときスピードでHシーン!
 そして、終了後−
葉子「もう、先生初めてだったのよ…だから続きは家で、ね(はあと)」
祐「先生って初めてだったんだ…」
 その後ED曲もスタッフロールもなく「ここまでの話をセーブしますか?」でセーブするとタイトル画面に戻る…


 ハイ、今ので葉子シナリオBパートの95%は語りました。
 イヤ、本当に冗談抜きで。
 他のシナリオも一事が万事こんな調子で展開し、オチも付かないまま「ここまでの話をセーブしますか?」メッセージが出てきて終わるというポンチ丸出しな展開にはマジで遺憾の意を表したい。
 今まで、クソゲーだ、地雷だと言われたソフトはそれこそ数限りなくやってきた俺っちだが、こんなオチを完全に放棄したゲームを見たのは初めてだ。

 もちろん、この作品の根幹はシナリオでない事は俺っちも百も承知だ。
 この作品のウリは、これまで数々の3DCG作品を手がけたTEATIMEが、コナミの「ときめきメモリアル3」で一躍注目を浴びた技術、「トゥーンレンダリング」を採用した事による、高品質3D表現とアニメーションだ。
 言うなればアニメ技術が見所のVIPERシリーズなどにコンセプトとしては近いわけだが、実はここでもこの作品は手痛い失敗をしている。
 それはHシーンしかアニメがない事だ。
 厳密にはAパートとBパートの間に挿入されるアニメーションとOPムービーもあるが、それ以外は全てHシーン。
 メーカーのOHPで知ったことなのだが、この「TOON」、アニメーションではない通常会話シーン等の立ち絵も全てこのトゥーンレンダリングで描いているそうなのだが、実際のトコロは「ふーん、だから?」の世界である。

 この「トゥーンレンダリング」という技術、3D表現でありながら丸みを帯びた立体を構成することが可能であり、一度3Dで描いたものを2D風に演出(レンダリング)する技術だ。
 通常では考えられないアニメのセル画の様なキャラクターを表現する事が出来る。
 つまり、アニメチックに描かれたキャラを自在に視点の変更・拡大縮小が可能になるわけだが、陰影の付け方などに特殊な技術が必要らしく、平たく言ってしまえば非常にコストがかかる技術なのだそうだ。
 これに果敢に取り組んだチャレンジ精神は買ってあげたいのだが、正直アニメ絵と大して変わらないトゥーンレンダリングの止め絵を見せられても、プレイヤーからしてみればなんの感慨もわかない。
 せめて口パク・目パチでもしてくれればだいぶ印象は変わったはずなのだが。
 また、肝心のBパートアニメシーンも入った瞬間BGMが完全になくなってしまう、というどうしようもない欠点がある。
 ここで「Eternal Love」(To HeartのHシーンなどで使用される曲)ばりの曲を持ってこい、などと言う気は更々ないが、ただでさえ単調でつまらないBGMがブツッと切られるのはとてつもない違和感だ。
 それに加え、時間にして3〜4秒前後の喘ぎ声ヴォイスをそのアニメ中延々とループで聴かされたって萎えるだけだって。

 「ときめきメモリアル3」は通常会話シーンもフルアニメーションしてくれたが故にトゥーンレンダリングが注目されたのであり、企業力の違いこそあるものの、丁寧な仕事を見せてくれたからこそ、話題になったのだ(え? 結局、話題だけだった、って? それは言いっこなし!)。
 例え、新技術に力を注いでしまったとしても、丁寧に作らねばならないところは丁寧に作る。
 作品づくりの基本を忘れているのはいかんともしがたい。


(総評)
 とにかく色んな意味でツラかった。
 はっきり言って、このレビューを書き上げたらさっさとアンインストールしてしまおうと腹の底から思った作品だ。
 あえて美点を挙げるのならば、時間が少ない人にとっては、短い時間でクリアは出来るの事ぐらいかな。
 ちょっと無理矢理だけど。
 
 またトゥーンレンダリング技術に興味ある人間は一見の価値はあるとは思うが、この作品に「ゲーム」を求めている人間には核地雷ソフトなので十分注意せよ!

(梨瀬成)


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