To Heart PS版 総論
 
1.メーカー名:アクアプラス
2.ジャンル:サウンドノベル型恋愛ADV
3.ストーリー完成度:B
4.H度:−
5.オススメ度:B’
6.攻略難易度:C’
7.その他:これは、パソコン版との比較記事的構成になっています。従って、この文章を読む前に、鷹羽のパソコン版の評論(『九拾八式別冊東鳩』)の方も読むことをお奨めします。
 
 まず最初に言っておくと、パソコン版とは別物と思った方がいい。
 OP、EDが変わったこともそうだけど、シナリオや細かい設定が結構変わっているので、パソコン版に深い愛着があったりすると、そのこだわりのために素直に楽しめない恐れがある。  実際、鷹羽はその辺に引っ掛かるタチなので、素直に喜べない部分が多かった。
 その点、パソコン版を知らない方が楽しめる構成になっているとも言えるだろう。
 そもそも、18才以上推奨レーベルのあるサターンでなく、年齢制限のないプレステで発売した理由が、18禁だとオミットされてしまう層を購買層に取り込もうという戦略だったことを考えれば、正しいやり方だったのかもしれない。
 最初から、似て非なるものを作ろうとしていたのだから、違うのが当たり前なのだ。
 しゃべるようになったことも手伝って、鷹羽の感覚では、原作付きアニメを見ている気分だった。声のイメージが合わないとかね。
 気に入ったのは、芹香・綾香の岩男潤子と、智子の久川綾、理緒の大谷育江くらいかな。
 ところでパソコン版のToHeartは、18禁ならではという秀逸なシナリオが多かった。
 鷹羽は『東鳩』に書いたとおり、あかり、智子、志保、レミィのシナリオは、H抜きに成立しないと思っている。
 だが一方で、Hの不必要なシナリオが多かったことも否めない。
 琴音や葵のように、Hシーンが蛇足でしかなかったキャラ、芹香やマルチのような、Hシーンがむしろ邪魔になるキャラがいるなど、二面性があったことも確かだ。
 また時間がなかったのか、キャラ相関が上手くいっていない部分もあった。
 芹香と葵、双方のシナリオに登場する綾香が、どちらのシナリオでも、浩之に対して初対面のような応対をするため、鷹羽は『東鳩』で、「どっちが本命なの?」くらいは言って欲しかったと書いていたのだが、同じ意見の人が多かったのか、はたまた制作者側も同じことを思っていたのか、今回のPS版で、そのものズバリの台詞があったので、嬉しくなってしまった。
 PS版になっての主な変更点と言えば、声がついたことと、Hシーンを削ったことだが、Hシーンの削り方には、大きく分けて3種類ある。
 
1.Hシーンを丸ごとすっ飛ばす(智子、葵)
2.Hシーンの部分の代わりに新しいイベントを作る(あかり、マルチ、芹香)
3.シナリオ全体を変更する(志保、レミィ、琴音、理緒)
だ。
 
 結局のところ1.2.については、おおよそHシーンの要否がそのまま反映されたようだ。
 意外だったのが智子で、それまでに盛り上げまくっているおかげで、Hシーンを丸ごとすっ飛ばしたにもかかわらず、“何か問題が起きた(笑)はずだ”ということを匂わせることに成功している。
 鷹羽は、智子のシナリオもHシーン抜きに成立しないと信じているが、PS版は、そこに至るシチュエーションを大事にしたから、割と問題なくいけちゃったワケね。
 オマケに声による演出の効果も大きかった。う〜、久川綾で良かった。
 そんなわけで、1.2.のタイプには、あまり強烈な問題は起きず、全体的に見てそこそこのレベルをキープしているんだけど、特に芹香は良くなった。
 ホレ薬を作ると言ったこと自体が、彼女なりの告白なのだと気付いている浩之、ホレ薬のせいなんかじゃなく、好きになって欲しかったという浩之に応える芹香の告白、そして、2人の愛が祝福される魔法の儀式。
 “信じる力が魔法なんだ”という、降雨の儀式からの流れに沿った展開。未だ結ばれざるエンディング。いや〜、いいねえ。
 欲を言えば、聞き取れないほどの声で、ちゃんと全ての台詞をしゃべって欲しかったな。アニメ版みたいにね。
 一方、大問題と言うほどではないが、やっぱり納得できなかったのがあかりのシナリオだ。
 これについては、パソコン版で鷹羽のイチオシキャラがあかりだったこともあって長くなるので、あかりシナリオ(鷹羽)のコーナーを読んでね。
 さて、PS版の目玉はやはり3.の“シナリオごと変更”パターンだろう。
 これについては、評価がエラくばらけてしまった。
 良かった方から志保、理緒、レミィ、琴音ってとこか。まぁ理緒の場合、あれ以上悪くなりようがなかったという話もあるんだけど。
 志保については志保シナリオ(鷹羽)、レミィについてはレミィシナリオ(鷹羽)で。
 そのほか目立ったのが、細かい設定の変更かな。
 例えば智子。
 智子は、パソコン版では男女3人組の親友に、恋愛に発展しない友情が存在すると信じていた。あとの2人がくっついて、信念が崩れたことで、智子はショックを受け、浩之の元へやってきたのだ。
 このこと自体が、浩之とあかり、志保の三角関係を暗示しているようで、鷹羽はとても好きだった。
 お陰で、手放しでPS版の智子シナリオを受け入れられないんだよね。ウリの話もなかったし。
 あと、マルチのエンディングも結構変わったんで、『東鳩』でマルチについて書いたことについて更に触れてみたいので、マルチシナリオ(鷹羽)を書いてみました。
 はっきり言うと、鷹羽はあの変更は気に入らなかった。
 ちなみに琴音に至っては、念動力者に設定を変えた意味がよく分からなかったし。予知能力もあるような中途半端な描き方だったから、なんか問題外って感じ。
 まったく違う物語になったのはいいとして、それがまた未消化な話では意味がない。
 ただ琴音はともかく、他のキャラに関しては、ストーリーを変えたのは、狙ってやっているのだろう。
 だってパソコン版とまったく同じ内容なら、わざわざ解像度の低いプレステでやる必要ないもんね。
 『輝く季節へ』をやって、つくづくそう思った。
 最初に言ったとおり、PS版は原作付きアニメみたいなもんなんだ。
 どんなに忠実に作ったって、声がついた時点で、余程イメージが合っていない限り、原作(パソコン版)ファンは文句を言うことになってんの。
 だったら、敢えて別物にしちゃった方が、逆に素直に楽しめるかもしれない。
 実際、パソコン版をやっていない友人Gは、楽しんでいたようだし。まぁ、彼はまだ、琴音とレミィをやってないけど。
 それに最初からH抜きという前提で作られた綾香のシナリオは、ほのぼのしていて、そこそこの出来だ。
 浩之が綾香に勝っちゃうのも、綾香が浩之の気持ちを知った上で、相当手を抜いていたと考えれば一応辻褄が合うし。
 「結構本気」とか言ってるけど、どう考えても無茶苦茶手抜きで戦ってる。それ自体が、綾香の気持ちが浩之に傾き始めていることの現れでもある。
 全体的には、決して出来の悪いゲームではない。
 パソコン版を知っている人も知らない人も、多分それなりに楽しめるだけのものではあるはず。
 『Heart by Heart』がパッドでできるようになったとか、見るべきところはあるし、まぁ、買って損はなかったと思うよ。

   
(鷹羽飛鳥)
 
 
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