とびでばいん TOBI D+VINE〜
 
 飛べサクラ! ほうきにのって!
 飛べルーン! 敵に向かって!(大笑)
 
1.メーカー名:アボガドパワーズ
2.ジャンル:STG+ADV
3.ストーリー完成度:C
4.H度:C
5.オススメ度:A
6.攻略難易度:ノーマルまでならC、HELLははっきり言ってSです。
7.その他:どーせなら、D+VINE[LUV]が出たんだから、コレもDC移植しよーぜー(笑)。
 
 
(ストーリー)
 前回のアーヴィルの町での事件から半年後…
 王国の学術調査員パティの付き添い兼ボディガードをしていたハイドサクラは再び、このアーヴィルの町を訪れていた。
 久しぶりになじみの娘たちに会えると喜んでいたハイドだったが、ここ最近、アーヴィルの町は相次ぐ空賊団たちの襲撃で、人々が次々とさらわれるという事件に見舞われていた。
 さっそく、パティが用意してくれた魔法のほうきで空賊たちの迎撃を試みようとするサクラ。おまけにサクラを守るための宝珠にイタズラで宿屋の娘ルーンが乗ってしまい、彼女まで同行するハメに…
 こうして、何だか良く解らないウチに戦いに巻き込まれてしまうサクラたちなのであった。
 今回、ハイドは役立たず? そんな事はありません。彼には町で情報収集でもやってもらいましょ♪
 
 
 「とびでばいん」は大きくサクラを操るシューティング(以下、STG)パートと、ハイドによる情報収集のADVパートの2つにわかれている。
 
 まず、本命のSTGモードだが、とにかく難易度が手頃で、一回クリアしたステージなら何回でも攻略可能な上、EXPやバリアなど全て持ち越しが出来るのが非常に親切だ。
 この仕様ならば、STG初心者でも簡単なステージでライフやバリアを稼いでおいて、難しいステージにチャレンジするという事が可能なのだ。
 正直なトコロ、パソコンのSTG作品というのは全体的に難易度が高い傾向にある。これは同人でも言える事だし、あの名作STG「がんぶる」も例外ではない。
 ところが、この「とびでばいん」は、敵の攻撃で「こんなん何やっても無駄じゃい!」と思わせるような攻撃はほとんど存在しない。
 自機の当たり判定の小ささや、一見ムチャクチャな弾幕に見えて、実は道が見えるという、そのバランスどりは職人芸と言ってもいい。
 また、その弾幕一つとっても、かなりの工夫が凝らしてあり、最近のCAVE作品である「プロギアの嵐」をどことなく彷彿とさせる。
 と、言うかSTGの事を良く研究しているいい証拠だ。スタッフ内にかなりのSTG好きがいると見た!
 また、STGファンなら思わず「あっ」と思ってしまう敵の攻撃も見逃せない。
 ラスボス「ヴァイラス」などは、どう考えても「ダライアス外伝」のゾーンMのボス「タイタニックランス」のモジリだし、ステージ3の変形するボスはどことなく彩京の「STRIKERシリーズ」のボスに通ずるものがある。
 パクリという程ではないが、思わず「にやっ」としてしまう演出はなかなか。
 余談だが、PS版ToHeartのおまけSTG「お嬢様は魔女」の真のラスボスだった綾香は、その攻撃の殆どが色々な既存なSTGゲームのボスのパクリだったのには、かなり笑ったものだが、「とびでばいん」も、ちょっとそんな感覚を楽しめるのだ。
 しかし、このSTGパート最大の長所は、やはり爽快感この一言に尽きるだろう。
 とにかくスピーディーなゲーム展開と派手な演出、そして、得点アイテムである寿司画面中を覆い尽くすのは、やっていてかなり楽しい。
 軽快なBGMもこの爽快感にプラスして、盛り上げてくれる。こういう「感覚」を大切にしたゲームはそうはあるまい。
 独自のアイデアとしては、様々な要素を持つルーンの使い方が挙げられる。
 タメ撃ちのルーンショットは貫通力がある上、堅い敵に食らいつけば爆発を巻き起こし、寿司アイテム(大)を取りやすくなるし、ゲージが溜まればルーンボムを発射出来るし、しかもルーン自体が弾を吸収するしで、このゲームにおいて非常に重要な役割を持っている。
 だが、2〜3回もプレイすれば、意外と煩雑に思われるルーンの使い方もすぐに慣れる事が出来る。
 結局、これはルーンを使わなければ絶対抜けられない様な、難しいポイントが存在しないというヌルさにもつながっているが、反面、最初のアーヴィル上空ステージでルーンを使えば楽になる場面(ほどほど堅い敵の回りに耐久力1の敵編隊が飛んでたり、ボスなんかがそのいい例だ)というのを上手く設置したりする事で、フォローしている。
 こういう気の配り方は一級品だろう。
 反面、欠点としてはショットの切り替えの意味があまりない事が挙げられる。
 メインショットとも言えるファイアーのみでクリアすることは十分に可能なのだ。
 ウインドはショットパワーが低く、ホーミングの性能も完全に信頼出来ないし、サンダーはレベルがかなり上がらないと攻撃範囲が狭く、おまけにラスボスに対して完全無効というどうしようもない欠点を持っている。
 確かにウインドは2面などで切り替えを頻繁に行うと使える所もあるし、サンダーは5面のドクロ島の空賊船を沈めるのに絶大な威力を発揮するのだが、このゲーム、パワーアップにEXP制を導入しているため、ファイアーでごり押し出来るのならば、無理にEXPを他の武器に与える必要性がなくなってしまうのだ。
 また、爽快感としては申し分ないが、ステージ全体が後半に行くほどやや単調で少し飽きが来るのもマイナスポイントか。
 弾幕系STGである以上、下手に地形や地形効果などを入れてしまうと難易度が激変してしまうため、コレについてはしょうがなかったかもしれないが、もうちょっと「あっ」と思わせる仕掛けは欲しかったかな、と思う。まあ、コレに関してはゼイタク、という気もするが。
 
 さて、もう一つのキモ、ハイドのADVパートだが、正直これは…どうでもいい出来にとどまっている。
 要するにHシーン用のパートと言っても良く、STGパートをクリアしていくごとにハイドが数人の女の子とHして、次のステージのフラグが立つという構成。
 ここでも、ハイドの節操のなさが炸裂しまくっているが、まあ、今回はそんな事には目を瞑ろう。別にストーリーを楽しむための作品ではないのだし。
 しかし、問題はこのADVパートが挿入されることによって、STGパートの流れを完全に断ち切られることにある。
 とにかくコマンド総当たりADVのごとく、ほとんどすべてのポイントに移動しないとHシーンが見れないため、STGパートの次のステージのフラグが立つのに時間がかかりすぎるのだ。
 せっかくの爽快なゲームが、このADVパートがあるために台無しになってしまっているのは、大問題点だろう。
 もちろん、こういう概念があるからこそ、同じステージを繰り返し出来る仕様になっている訳だが、このパートはもう少し短くても良かったかな、と思う。
 しかし、たった一つだけ、このADVモード、興味深い点があった。
 それは、今作のミスト、そして前作のユウラが古代文明により作られた存在「ディバイン」である事が正式に判明する事だ。
 この「ディバイン」の設定に関しては、前作の「D+VINE[LUV]」では語られていなかった。ユウラが古代文明時代に造られた、強力な精霊を封印するための存在だという事は語られていても、「ディバイン」という単語は一回も登場してこなかったのだ。ゲームのタイトル名になっているにも関わらず
 ハナから設定にあった上で出し惜しみをしたのか、今回から新たに付け加えた設定なのかは分からないが、今回はゲーム内容がSTGだという事もあって、番外編だろうという事でシナリオに対してはそれ程期待していなかっただけに、こんな話が出てきたのにはビックリ仰天だった。
 これは、まさか…「D+VINE[LUV]2」への伏線!? とか考えてしまったよ。
 実際、ハイドはこれで2回もディバインと関わってしまった訳で、以降、2の様な内容が出来ても不思議はないと思う。
 これについては今後に期待だろうか。
 
 
(総評)
 常に何か新しい事にチャレンジするあぼぱがまたまたやってくれた、というのが最初の正直な感想だ。
 Hゲームの世界においてSTGと言えば、まるっきりない訳ではなかったのだが、やはり98年にSTUDIO B-ROOMから発売された「がんぶる」がその代表作であろう。
 そして、主人公の女の子がほうきに乗って敵を倒す横スクロールSTGという段階で、両作品は非常に似ていると言えるし、実際共通点も多い。
 パワーアップの種類と切り替え方法、EXPでのパワーアップ概念、どんどん出てくる得点アイテム(がんぶるではお金)など、それこそ数え上げたらきりがない。
 未確認だが、「がんぶる」のスタッフが実際何人かいるのでは? と思えるほどだ。
 だが「がんぶる」が、どちらかと言えば精密なパターンを組んで攻略していかなければならない(特にボス戦)タイプのSTGだったのに対し、今回の「とびでばいん」はコンボによる得点や、当たり判定の小さい自機での弾幕避けの方に方針が傾いている、いわゆる「弾幕系」STGであるという、方針の違いがある。
 つまり、「がんぶる」と見た目は似ているが、中身は完全な別物なのである。
 
 程良い難易度に職人芸のような作り込み。何より、初心者にも安心してオススメ出来る、最近ではある意味珍しいSTGがこのHゲーム世界に出てきたのは、一シューターである俺っちとしてはウレシイ限りだ。
 
 
(梨瀬成)

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