てんたま

注:これは“しずく”を育てるゲーム! ではありません。

1.メーカー名:Kindle Imagine Develop(KID)
2.ジャンル:ADV
3.ストーリー完成度:B
4.H度:E(『夢のつばさ』同様、天使と二人暮らし)
5.お薦め度:B
6.攻略難易度:C
7.その他:もう天使なんて嫌い


(ストーリー)
 柊咲高校の入学式の日、主人公・早瀬川椎名(はせがわしいな、変更不可)は、渡瀬双葉に再び出会う。
 初めての出会いは、双葉が引っ越してきた当日、車に轢かれそうになったペットのラキシスを椎名が助けたときであった。
 その時、ろくにお礼を言えなかったので、双葉は勇気を出して椎名に話かける。そして、双葉は椎名とその幼なじみの・篠崎千夏、相沢貴史たちと仲良くなっていった。
 やがて、椎名と双葉はお互いに惹かれあい、付き合うこととなる。
 そして二人は沢山の思い出を作っていくのだが、その年のクリスマスイヴの日が運命の日となるのだった。

 それから約一年後…椎名の前に、天使の少女・花梨が舞い降りてくる。
 椎名を幸せにするために…



 とある春先の一日、後藤氏の家での出来事…

エルトリア「あっ、梨瀬さんお久しぶりです」
梨瀬成「やー、エルちゃん、お久しぶり」
 すでに、この時点でニヤニヤなされた顔でした。
梨「エルちゃ〜ん、君にピッタリの面白そうなゲームがあるんだけどやってみない?」
エ「どっ、どうしたんでか、いきなり。というか、その面白そうな顔は…」
梨「いやね、あまりにもピッタリのゲームなものでね」
エ「……………?」
梨「しかもそれは評価が厳しい“ファ○通”のクロスレビューで、あの『T○ Heart』を抜かしてALL7点という高得点を頂いていたのだよ」
エ「そ、そうなんですか?」
梨「そうなのだよ。これは面白いと思わない?」
エ「まあ、確かに…。ところで、そのゲームって何なんですか?」
梨「良くぞ聞いてくれました! 君の大好きな“KID”の『てんたま』だよ」
 もう、満面の笑み。
エ「…え゛っ」
梨「そうかそうか、喜んでくれたか。おいらも見つけてきた“かい”があったよ」
エ「あう?」
梨「いや〜、ゲーム選びはいつも苦労するからねー。今度の評論は期待しているよ!」
エ「なんですとっ? すでに決定事項ですか?」
梨「そう。“KID専属ライター”としては、と・う・ぜ・んでしょ」
エ「ちょっとお待ちください。そのイヤ〜な座右の銘はいったい…」
梨「なに言ってるの? 『夢のつばさ』であれほどお世話になったじゃない」
エ「あのー、私そんな記憶はいっさい無いんですが…」
梨「そんなこと言わないの。という事で、がんばってね」
エ「ぅぎゃ〜、これは…」
 そこで、「はっ」と気付きました。
エ「これは、呪いだ。『主人公を助けるために、飛行機に押し潰されて“圧死”なされた天使さま』の呪いだぁ〜」
 数日後、どうしようもない精神状態でゲームショップのレジに並ぶ自分を発見するのでした。

 というわけで、早速プレーしてみる(もう、やけくそ)。
「おや? 双葉の視点でゲームが始まったぞ」
「ふむ、主人公は椎名って言う名前か…」
「おぉ、双葉ちゃん可愛いね、やはりメインヒロインは一味違うね」
 とまあ、始めてから10分位での感想はこのような物でした。
 しかし、もう暫くやっていくと…
「おや? 恋愛ゲームのハズなのに、まだ『双葉』と『千夏』しか出てこないぞ?」
「ふむ、椎名は双葉と付き合うことになってしまったぞ」
「おぉ、選択肢が出てこなくなった」
 数十分やっても天使なんかぜんぜん出て来やしない。
「いくら何でもおかしい…」
 ここでようやく、説明書を取り出してみると。
「キャラクター紹介には他の女の子も書いてある、天使もきちんと書いてあるな…?」
 まぁそれでも、双葉は気に入ったキャラクターだったので、もう暫くはやってみることにする。そうしたら…

 双葉が薬を飲む。
「?」
 双葉が発作で倒れる。
「??」
 双葉の母、「現代医学では直せない病気」と語る。
「!」
 この瞬間にすべてを悟りました。
「双葉って死んでしまうのね…」

 その後の展開はと言いますと、
 酷くなる双葉の病状。
 それを見ている椎名は、けして自暴自棄にならず双葉と思い出を作っていくことにする。
 そして、その年のクリスマスイヴ、家族ですごしていた双葉は、今までとは明らかに違う発作に襲われるのであった。
 双葉最後の言葉、

「私、もう…逝くね。今度は大気になって椎名を見守っていくから」
…結局、予想通りに死んでしまった。

 その後、急に楽しそうな音楽が流れたと同時に“てんたま”というタイトルが表示される。
 さらに間の抜ける音楽とともに、のん気そうな天使が現れる。
「ほわっつはっぷん?」

…いままでの雰囲気が、すでに過去のものになってしまった事を感じる。
 私の『てんたま』プレイ時間、プロローグの一時間半にて終了…

 という訳には逝かないので一応プレイを再開したのですが、はたしてこの一時間半を取り戻せるだけの内容かどうか、ものすごく不安になりながらの再スタートでした。
 本編の方では椎名たちが2年生になっており、ゲーム期間はその年の11月1日から、クリスマスまでのおおよそ二ヶ月間です。
 いまだ双葉の死から立ち直れていない椎名のもとに天使の卵である少女・花梨が卒業試験のために天使界から舞い降りてきます。
 試験内容は「期限内に試験対象者を幸せにすること」となっています。
 さて、ここで改めて説明書を開き、花梨を始め他の女の子のプロフィールを見てみると、当然ながら個人データが記載されているわけで…その中の血液型を見てびっくり
「…花梨…15歳…O型…ん?
 とても不思議です。天使って血液型があったのですね。

「てめぇらの血は、何色だぁーっ」

 『てんたま』に学ぶ、天使と人間の見分け方。
 背中の後ろの方に白くてフヨフヨした羽が二つ存在していたら、間違い無く天使です。
 もし街中で見かけても、けして騒がずに、静かに卒業試験を見守ってあげましょう。
 ただし、見える見えないは個人の霊感によるところが大きいので注意しましょう。

 やばい、あきらかに話をそらし始めてる。修正、修正。

 といったかんじ(?)で、花梨は椎名の前に現れ、ゲームはスタートします。
 攻略対象は全部で6人、
 椎名を幸せにするために舞い降りた天使の「花梨
 幼なじみで、もう一人の幼なじみ・貴史に思いを寄せている「篠崎千夏
 昔、貴史の兄に告白をしたが玉砕し、そっくりな貴史にナンパされてたじたじな「七瀬結花
 中学のころから椎名に思いを寄せていたお団子頭の後輩「榎理香子」
 同じく中学のころか椎名に思いを寄せていて、今はお嬢様学校に行っている元気少女「小高真央
 真央と同じラクロス部の先輩で、雰囲気が双葉にそっくりな「吉沢初音」です。

 ゲーム本編になれば、あとは露骨に怪しそう選択肢を選んでいけばエンディングへいけると思います。
 参考までに、とある放課後の選択肢などは
「○○と一緒に帰る」
「商店街に行けば○○さんが…いるわけないか」
「○○は今ごろどうしているかな」
「…帰ろ」
などとまあ、思い切り親切な選択肢が出てきますよ。

 えぇ、後は最後の方で各ヒロインの選択肢さえ間違わなければ、
 椎名は双葉への思いを「想い出」に昇華させ、新たな幸せをつかんだ。
「この人とめぐり合わせてくれて、ありがとう双葉、ありがとう花梨」となり、ハッピーエンドです。

 バットエンドの場合はほぼ共通で
「椎名に彼女を作ってあげられなくてごめんなさい」といって、花梨が天使界へと帰っていきます。
 では、椎名にとって各ヒロインは、いかようにして双葉に変わる存在になっていくのでしょうか?

(小高真央)
 貴史にそそのかされて、柊咲高校のそばにある聖沙女子校の文化祭に連れて行かれ、はぐれた貴史を探していると、偶然にも再会をはたす、という登場の仕方です。
 中学のときは千夏がいたため、告白出来なかったから
「今度こそは!」といったものがコンセプトで、それが感じられたのは良かったです。
 運良く再会を果たしたあとは、椎名にアタックしていく訳ですが、告白するまでの勇気はもてず、気の合う友達くらいの関係が続きます。
 しかし、そんな状態を脱出するために初音に相談し、いよいよ告白するのですが、いつしか初音も椎名に惹かれていきます。
 そして、思いを押さえつけられなくなった初音は、真央と椎名の態度に絶えられなくなり、三人の関係は崩れていくのでした。

 “いかにも”と感じる三角関係でしょう。「あちらを立てればこちらが立たず」が当てはまります。
 三人ともすごく悩みます。
 椎名は初音と真央たちの友情について、真央と初音は友情と恋の板ばさみに悩んでいきます。
 結論としては、真央と付き合っていくことになる。…だけではなく、真央が綺麗に身を引き、初音と付き合う展開も出てくるので、これはこれで面白かったです。
 見事にしてやられましたよ(完クリまでの時間を長くした要因)。
 どちらと付き合うことになっても、納得できる展開であったのは。ストーリーがしっかりしていたからでしょう。
 まっ、崩れたままで、三人がバラバラにならないのは、せめてもの良心でしょう。


(吉沢初音)
 上の真央と同じく聖沙女子校の娘でラクロス部のエースです。
椎名は、初音を見た瞬間に「雰囲気が双葉と同じ」と感じ、動揺するのですが、その時もプレーしている最中でも
「似ていると言えば似てるなー」位にしか感じませんでした。

 さて、ストーリー展開なのですが、前述した真央と逆です。
 タイミングと悩みの内容が同じで、立場が入れ替わります。
 初音が真央に「椎名を好きになったがどうしたらいい?」と相談し、真央の応援で二人は付き合うことになる。しかし、真央は中学からの思いを捨てられずに、初音に嫉妬し椎名に告白する。で、三人の関係は崩れていく…。
 あとは真央の時と大体同じような内容です。
 もちろん、初音が身を引き、椎名と真央が付き合う展開も用意されています。真央主体のストーリーのときと、さほど変わらない印象・感想です。
 ただ両ストーリーとも、扱いやすいネタを、型通りに調理したと言えなくもないです。


(榎理香子)
 椎名の一年後輩で、真央と一緒で椎名の事を思っていた娘です。
 代々神主の家系で、そのせいで霊感があり、昔からあっちの世界の物が見えていたそうです。
 おかげで「お化け」が嫌いになり、花梨を見た瞬間に背中の羽に気づき、猛ダッシュで逃げていってくれます。

 性格はどうかと言うと、
…えーえと「うぜぇ」…では無くて、椎名のことを慕っているかわいい後輩です(焦)。

 話を簡単に書くと、理香子の元気さのおかげで双葉のことを乗り越えられるというのでしょうか。
 とりあえず押し切られます。
 椎名にしてみても、元気で可愛い後輩がなついていて、前から好きだったっと気づいたらやっぱりうれしいよね、ってなところでしょう。
 しかし実家が神社であり、攻略時に、本当は理香子のもとを訪れるはずだった病弱天使・絵里が出てきて、
「小さいころは、みんなに見えないものが見えていて、虐められていた」
「だから、本当は寂しがり屋な子なんです」と語るなど、
「霊感が強い」という設定は判るし、納得もするのですが、花梨を見て逃げ出すくらいにしかストーリー上で役に立っていないのは、もったいないと思います。
 ひょっとして「実家が神社」って設定も、単に“巫女装束”を着せたかっただけかもしれないなー


(七瀬結花)
 貴史と街中を歩いていると、いつのまにか貴史が消えている。
 辺りを見回してみると、貴史に言い寄られている女性が固まっているのを発見します。

 一見、年上の優しそうな普通の女性に見えますが、本作品に登場するだけのナニかはちゃんと持っています。
 それも、二重人格のようにも思える独り言
 しかも制御可能、上京によって使い分けも出来ます。
 これは後からわかってくる設定なのですが、判るまでは二重人格と見分けがつきません。
 「なんて安易な設定なんだか…」と思うこと請け合いです。
 攻略途中では、ゲームだから仕方ないですけど、二重人格と思わせるような事ばかり起こるので、
 「そうなってしまった原因を取り除けばよいわけだ。原因は追々わかるであろう」などと考えていたら、結花の症状は違えど、結局最終的にやることはほとんど変わらなかったので残念でした。 


(篠崎千夏)
 まあ、登場キャラクターの中で比較的まともな方だと思う、幼なじみの女の子です。
 ちょっと話はずれますが、この『てんたま』然り、『夢のつばさ』然り主人公の男友達っていい奴がそろってますな。
 貴史と千夏…お互いに意識はしているけれど、幼なじみの関係が崩れそうであと一歩が踏み出せない…と、そこらかしこで使われている設定です。
 しかも、千夏は気の強い姉御肌、貴史はかわいい子を見つけると声をかけるナンパ師なので見事な漫才コンビが出来あがっています。
 話の流れは、椎名がお互い不器用な二人のために、幼なじみとして出来うることをしていくという内容。
 「椎名・初音・真央」の時と同様、三人がバラバラになることはないのですが、結構シビアに進んでいきます。
 三人全員が各々の事を思いやり、そこに双葉が三人に当てた言葉…
「貴史と千夏は仲良くね」と「椎名のことよろしくね」がいい起爆剤となっていて…もとい、椎名のあやふやな態度・優しさも起爆剤となっていました。
 椎名の優しさ、貴史の甘さ、千夏の気の強さが三つ巴になり、悪い方へ流し、その上で納得できる形に収めたのは、シナリオライターさんの文章力と花梨の存在がうまく活きていたからだと思います。
 どのくらい良いのかと言いますと、千夏のストーリーだけで『夢のつばさ』を楽々と抜くくらいです


(花梨)
 で、こいつが一番の謎である存在、寝ている椎名の真上に落ちてくる天然ボケ天使です。
 父親は海外、母親はすでにいない椎名にとっては、一緒に住む事だけで心がなごむ存在となります。
 さらに料理・洗濯などの家事一般もでき、相談にも親身に乗ってくれて、幸せにもしてくれる。
 最近の天使って便利になりました。一昔前(前作)からは、考えられません! 

 椎名にとって花梨とは、降って湧いた「家族」のような存在であって、初めのうちは大したイベントは起きません。
 しかし後半、居る事が当たり前になっていた彼女の存在を再確認することで、花梨への思いに気づくというのが大まかな流れです。
 基本的には、お話を笑いで盛り上げる存在でした。
 反面、「天使と人間」ということを考えギリギリまで想いを伝えなかったり、悩みを相談しても的確なアドバイスしてくれるし、ほかの登場人物を凌ぐ物も持っています。
 花梨曰く「天使のカンは外れない」らしいのですが…。
 全体を見ると、前半でチマチマと準備をしていって、最後に花開くという展開なのは「花梨の目的や立場」を踏まえたシナリオでしょう。

 このようなものですかね。
 大まかな区分わけは、後輩二人は元気なノリ、千夏と初音は双葉の思い出からの脱出、花梨と結花は家族と共に過ごす大切さに重きがおかれていると思います。
 三角関係のようなどこにでもありそうな物を、なかなか上手に料理していたのではないかと感じました。



(総評)
 正直あまり期待していなかったのですが、予想を遥かに超えた出来でした。
 難しいことは要求されませんし、シナリオが良かったのが大きかったです。
 長くて悲しいプロローグで突き放されたと感じたのも、十分取り戻せる内容でした。
 これだけの物であったら買ったことを後悔しないですみそうです。

 ただし、当然悪いと感じる部分もあります。
 一番に感じたのは声、詳しく触れると声優さんのレベルの差が激しいんですよ
 片方で有名な人を使って、もう片方でそうでない人を使うと、下手なほうのキャラに移ったときに違和感を感じてしまいました。

 それと、これはある段階を超えなければ非常に良いことなのですが…。
 この『てんたま』は、主人公の椎名の視点だけで物語が進むだけでなく、状況に応じて各ヒロインの視点に切り替わります
 イメージ的には、強制的なザッピングと思っていただければいいと思います。
 これはひとつの話を多方面から見ることになるので、とてもいい試みであり、いい結果を出したと思います。
 視点が変わる時も、変わるキャラの声で「てんたま」と叫んで、画面の上を何かが横切っていくので分かりやすいです。
 でもね、告白している時は数秒とたたないで場面を変化させるので、すごーく雰囲気ぶち壊しです。
 違うキャラのときには「てんたま」とは叫ばずに視点だけが変わるときもあったりと、せっかくの良い効果が空回りしている時があったのは残念です。

 ほかの点では、誰か一人をクリアするとCGモードといっしょに「URATAMA(うらたま)」なる物が出てきます。
 とあるサブキャラメインの話と理香子の話の裏設定なのですが、見つけた瞬間は愕然となったのを覚えています。
 理香子の裏設定の方は、本編の補足をしているので問題ないのですが、もう一つはいまいち本編とリンクしきっていないのでもうひと頑張りして欲しかったです。

 全体を通してみても、致命的なものはなかったので安心して遊べる出来だと思います。
 このくらいの荒も「KIDだしね」で笑って済ませてあげましょう。
 さり気に音楽も気に入ったものが多かったので、儲け物だったと思います。


 ついでに笑い話を…
 4月最後の日曜日、とあるイベントがあったのでビックサイトに出かける。
 そのイベントのKIDブースの売り物、二十数種類
 『メモリーズ・オフ』沢山
 『てんたま』『インフィニティー』各二種類ずつ
 以上

「………あれ? 『夢のつばさ』は?」

 まぎれもない事実です。

(エルトリア)

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