とらいあんぐるハート3 ☆リリカル☆おもちゃ箱

 全5作品連続プレイによる「とらハ地獄」…これにて完結!(^-^;

1.メーカー名:JANIS/有限会社アイボリー
2.ジャンル:ミニシナリオ/クイズゲーム/アクセサリー集
3.ストーリー完成度:C
4.H度:E
5.オススメ度:「3」プレイヤーにはかなりのお奨めでA。これ単体だと(論外だろーが)D。
6.攻略難易度:総合でC
7.その他:事実上全16話にも及ぶミニシナリオは、ある意味本編以上の完成度かも?!


 (ミニシナリオストーリー:「魔法少女リリカルなのは」
 「3」から一年後…
 その後も高町家は、全員安息無事日々これ平和に生活を営んでいた。
 同家の最年少家族である高町なのはは、ある日突然“不思議な声”に呼びかけられる。
 それは、なのはにしか聞き取れない特殊なものらしい。
 声をたどって高台までやって来たなのはと久遠が見たものは、昼間忍が取り落としてしまった「赤い宝石」より発せられるものだった。
 その声の主は、異世界・ミッドチルダよりやって来た妖精(のような外見)・リンティだった。
 彼女は魔力を持つ宝石“レイジングハート”に感応したなのはにこれを託し、ある任務の協力を申し出る。
 それは、この世界に散らばってしまった「種」“イデアシード”と呼ばれるものの回収。
 「種」は人間に取り付き、潜伏期間を経てから宿主の記憶を触媒に成長する性質を持っている。
 これを放っておく事は、その人間の大切な記憶を消してしまう事に繋がる。
 リスティの予想をはるかに超える魔法の才能を秘めていたなのはは、久遠と共にイデアシード探求のための活躍を開始した!


 (クイズゲーム:海鳴横断ハイパークイズでPON!
 年一回、大規模なお祭りイベントとして海鳴町で開催されるクイズ大会に、「3」の各キャラクターがそれぞれの目標のもとに挑む!
 さあ、井上ななかが司会を演じるこの大イベントに、貴方は誰を選んで参加するか?!
 エンディングまで辿り着いたキャラクターを、デスクトップアクセサリーに反映させるパスワードが事実上の特典だよ♪

 
 ある日の午後…
後藤夕貴「いやあ、みっちんの『花の記憶わんつーすりー』は、鬼気迫るものがあったよね。なにせ強制だもんね!」
梨瀬成「そりゃあ、帰ってきたら商品が郵便受けに入っていた…なんてったら、普通驚くし拒絶もできんものなぁ」
後「どーでもいいが、自腹切って“とんでもないモノを置き去りにしていく”なんていけない遊びを覚えてしまったエルトリア、ありゃあなんとかならんかね(笑)」
梨「すでに“もっとも優秀な原稿依頼人”になりつつあるからねぇ」

 …ゴトン。

後「ありゃ? うちの郵便受けに何か届いたみたいだ」
梨「ははは、案外エルちゃんだったりしてな♪」
後「ぶわははは、まさか…」

…その数十秒後、郵便受けの前で硬直している後藤夕貴の姿があった

ピポパッパッパッパッパ♪ ピポパッパッパッパッパ♪ <携帯の着信音“キューピー3分クッキングのテーマ”

?「後藤さん、原稿頑張ってくださいね☆」
後「エ゛ル゛ドリ゛ア゛…き、きちゃま…俺を殺す気かーーーっ?!

 という経過で、過去最大の文章量となった「とらは3」評論アップ翌日から『リリカルおもちゃ箱』のプレイを強制されてしまった後藤夕貴でした。
 嗚呼、太陽がやけにまぶしいぜ…(T_T)      


 さて、「とらいあんぐるハート」と名の付くものの中では完全に最終作品となる本作は、本来アクセサリー集としての位置付けにあるオプション、ファンディスクに過ぎない。
 しかし、なぜかディスク枚数が過去最大だったり(一枚は「3」のサントラだけどね)、ミニシナリオだというにはすさまじいプレイ時間に達する「リリカルなのは」があったり、ADV的な楽しみも大きいクイズゲームがあったりと、異様にサービス精神が旺盛だったりする。
 これは、前の「ラブラブおもちゃ箱」で唱えた不満点を覆す程のレベルだ。
 もちろん各所に突っ込むべき所はあるのだけど、商品としてはかなりハイレベルなものになったと言い切って良い。
 元々ファンディスクというものでターゲットが絞られているため、シナリオや各種設定がわからずに不満を唱えるプレイヤーもそういないと思われるので、ある意味理想的な完成度に達しているとも言えるかもしれない。
 まずは、各項目ごとに見てみよう。


【魔法少女リリカルなのは】評価C
 これについては、評論を書く前に一言書いておきたい事がある。
 基本的なコンセプトに、ものすごいジェネレーションギャップを感じてしまったのだ…。

 前回「とらハ3」の評論で“リリカルではなのはが攻略できる…なるほど、だから魔法少女になるのか?!”という、本シナリオ経験者にはまったく意味不明のコメントを書いていた。 
 実はそれまで、私の中では「魔女っ子物=小さい女の子が魔法で急成長して、事件を解決」という図式が完全定着していたのだ。
 これらは「魔法のプリンセス ミンキーモモ」から始まって、「魔法の天使クリーミィマミ」「魔法の妖精ペルシャ」「魔法のスター マジカルエミ」「二人のハートブレイクライブ」「魔法のステージ ファンシーララ」へと伝えられるシチュエーションであり、80年代初頭から後期にかけての時代を経過した人には、すでに常識となって久しい感覚だろう(多分…)。
 つまり、これによって成長する事により攻略対象(つまりHの相手)になる条件を満たすのだと思っていたという訳。
 もちろん“魔女っ子”といえば、もっと以前に「万能型」というのもあり、「魔法少女ララベル」までの旧世代物も存在はしている。
 しかし…今の世の中“魔女っ子モノ”というと『カードキャプターさくら』になってしまうのねぇ…なんか呆然。
 本シナリオも、よくよく見てみたらやってる事はそのまんま“CCさくら”なんだもの…
 実は私、これまで“CCさくら”を一切見たことがなく、今回資料として単行本を急遽取り寄せ、ようやく基本設定を再確認するに至ったのだが…
 う〜ん、いいのかな…これ、かなり深刻なパクりなのではないだろうか?
 クロウカードに対してイデアシード、普段小型形状化しているアイテムが呪文によって杖になるシチュエーション(一応マミもそうだけど)、「種」捕獲の時の詠唱、男の子のライバルキャラ登場(しかも私生活でも絡む)、事件は街のあちこちで起こる規模…その他細かい諸設定を比べても、あまりに共通点が多すぎる。
 最大級なのは「大切な人の記憶を忘れてしまう」という“災厄”が、最も重要な骨子として存在している点だろう。
 さすがにここまでやられると…ねぇ。
 せめて、もう少しアレンジしてほしかったという感があるのだ。
 …え、何? 今は原作のCLAMPも『プ●レス三四郎』をパクっているからお互い様だって?! 
 ま、それはおいといて…(^^;

 なんか“CCさくら”の展開でシナリオライターが「こうしてやりたかった」と思っていた事を、そっくりそのまま「とらハ」世界で提示したようにすら感じられる。
 だけど、その問題点を除けば意外と完成度は高く、かなり楽しめる内容になっているのはポイントが高い。

 とにかく、もうミニシナリオとはいえない規模の内容構成になっているだけで注目するべきだろう。
 本シナリオは1話から13話までで一つのストーリーとなっており、一部を除いてだいたい一話30分弱程度のプレイ時間を要する。
 そしてエンディング後に「14話」と「番外編(フィリス編)」があらたに登場し、番外編クリア後にはさらに「番外編その後」が出てくる。
 「14話」は成長後のなのはのHシーン、「番外編」はフィリス矢沢とのHシーンに至るだけのシナリオなので、さして本編と密接に関わっているわけではない(後述)。
 
 本シナリオは「3」の後日談の形式を取っているが、実際は“「3」シナリオの補完”という意味合いの方が大きい。
 「3」では一切語られていなかった部分に、“魔法の力”を使用して切り込んでいく事によって表現していく。
 これが、このシナリオの本来の目的だったのだろう。
 例えばイデアシードの犠牲者にレギュラーキャラを当てはめる事によって、そのキャラの側面的な部分・内面を描写できるのだ。
 美由希や忍が被害者となった時の、桃子やノエルとの出会いを巡るやりとりは特に興味深く、あるいは晶の場合は彼女自身ではなく、友人のみずほを被害者にする事によって変則的な描き方を試みたりもしている。
 ただ…やっぱり忍のノエルに対する扱いが不可解だったり(ダッチ的な使い方している場面もきっちりあるしねぇ)、根本的な間違いがあったり(士郎と結婚する前の桃子に対して“たかまちみゆき”と名乗ってる美由希とか)と、いつも通りの大ボケをかましてくれてもいる。
 美由希なんか“ふわみゆき”と名乗っている場面もあるから、もう言い逃れできないミスだね。

 また、いつもの“とらハ要素炸裂”として、本編では事実上敵として登場していた御神美沙斗が高町家にやってくるというものがある。
 彼女の登場シーンは非常に面白く、本編では絶対見られない可愛らしさ(!)も相まって見所が多い。
 あのまま消えてしまっても構わない筈の存在を、あえて再登場・共同生活に加えるというのはいかにも「とらハ的」な演出だ。
 本編初登場のクロノにしてもそうだが、どうも「とらハ3」は、最終的に高町家関係者として取り込まれて収束しなくてはならない法則があるようだ。
 とはいえ、今回の美沙斗は妙に見所が多い。
 自分の娘に会いに来たのに、恥ずかしがって家の周りを徘徊してしまう姿は、あのどシリアスな立ち回りからは想像も出来なかった可愛らしさだ。
 また対する美由希も美由希で、なかなかに楽しい場面を演出してくれている。「3」のプレイヤーならここは必見だ。
 よくよく考えると、美沙斗自身はほとんど活躍らしい活躍をしていないのだが、特別な活躍がなくてもまったく存在が無駄に感じられない描写があるのもシリーズの特徴だ。
 そういう部分に保護され、彼女はとても好感度の高い存在へと昇華してしまった。
 他にも、「3」に登場しながらもCGがなかった真雪やアイリーンにも立ちCGが作られ、さらには恭也やフィアッセの父・アルバートまで用意され、より親しみを感じやすくなった。
 ここまでやっていながらみずほにはなかったりとまだ完全ではないにせよ、よりアクセサリー的な部分も充実した事になる。
 こうなってくると、もはや立派な補完と言い切れるだろう。

 さて、全体的な構成はどうだろう。
 
 本シナリオは「3」の一年後という事になっているが、どうやら周辺の情報を統合する事により“美由希シナリオエンディング”から派生した流れである事がわかる。
 さらには「3」のおまけシナリオ「花咲くころにあいましょう」とも関連があり(前回指摘した不整合性は修正されているらしい)、アリサの存在もそれなりにうまく使われていたりする。
 先の通り根本的な骨子に問題があるものの、ストーリーとしては独自の展開をきちんと行っており、前半は非常にテンポよく進める事ができる。
 基本的に1本道で大きな脱線は起こり得ない構成になっているため、かなり自由に行動できる部分はさりげにポイントが高い。
 これまでただのマスコット的な存在にすぎなかったなのはの成長物語としては、充分な説得力がある物になっている。
 ただし、全13話構成という長丁場が裏目に出たのか、9話を過ぎた辺りから急激にテンションが下がり出す
 これまでに比べて異常に短い9話を経てから、なのは達は肝心の種探しを行わなくなる。
 いや、正確にはきちんとやっているのだが、そういう場面はすべて付加説明で済ませてしまい、全然描写してくれない。
 プレイヤーの不安をよそに、物語は“なのはとクロノの恋物語”へとシフトし始め、前半であれだけ強調していたイデアシードによる被害の深刻さは成りを潜めてしまう。
 ここが、まず一番ダレてしまうだろうポイントだ。
 
 だが、さすがに12話になると盛り返しを図ってくる。
 被害者を桃子にし、故障して暴走し始めたイデアシードを回収するため、クロノとなのはが協力して彼女の記憶を辿るという展開だが、これまでのエアポケットから脱却するのに充分な面白さに満ちている。
 どうやら賛否両論あるようだが、ここでクロノが行った“すでに死んでいる士郎の視点とシンクロして、記憶の世界を辿る”は、一応正解だったとは思う。
 桃子の記憶内の筈なのに彼女が絶対知らないだろう部分の描写があったりと、かなり問題が多い事は否めないが、本来のこのシナリオの目的“「3」世界の補完”という側面で見れば、やはり士郎の存在強調は避けて通れないものなのだ。
 「3」 本編では“すでに故人になって久しい者”としてしか扱われず、あまり感情移入できる存在ではなかったものの、ここでは(たった1話限りの存在とは思えないくらいに)存在感をフルに活用しきっている。
 いまいち感情移入しきれなかった恭也以上に主人公向けの性格をしているというのも見逃せない。
 また、そんな彼が二度と戻らなかった…という説明に受けるインパクトは、「3」の時とほとんど変わりない場面なのにも関わらず、数倍に上昇している事に気付く。
 多少の問題点を“魔法”という不確定要素で補ってしまえば、それほど重大な問題とも感じられないシーンだと私は思う。
 また、士郎が出てきた事にはもう一つの意味「高町桃子の攻略」がある。
 これは『リリカルおもちゃ箱』の最大のウリの一つ(?!)、“なのは・桃子・フィリスが攻略可能”の条件を満たすものであり、変化球であるものの一番納得できる形に整えられたものだ。
 新しいキャラクターを挿入して、現在の桃子を攻略するよりもよほど気分がいいしね。
 こういう部分も含めて、私はこの辺りの展開を絶賛している。
 もちろん、士郎視点によってこれまでまったくわからなかった人間関係の繋がりが表面化するのも注目点だ。
 美緒の父・啓吾と対戦したという過去もさる事ながら、一番衝撃だったのは“恭也の母・夏織は死んだのではなく逃げていた”という事実の判明だろう。
 まあ…士郎にとっての二人目の妻・桃子の存在を正当化させるための方便なのは言うまでもないだろうが、ちょっとした“辛味”として効いているのは間違いない。
 また、啓吾がこの時期まだ“さざなみ寮”の管理人をやっている事もわかるのも楽しい。
 アルバートの存在も注目すべき所だ。
 これまではただ文章上でしか「士郎とは個人的な間柄も友好」としか記されていなかった訳だが、それを裏付ける重要な場面がいくつもある。
 こういう所を番外編としてきっちり描くのは、決して無駄な事ではない。
 
 以上のように、「3」の補足事項的な部分についての描写や演出は、結構なものに仕上がっている。
 ところが、本編独自の設定…イデアシードを中心としたミッドチルダ関連の描写には、かなり粗が多くて閉口させられる
 まず、なのはに力を与えるきっかけとなった“レイジングハート”と“リンディ・ハラオウン”だ。
 なのはの世界に発生している異常事態を説明するサポーターとなる筈のリンディは、クロノ登場と前後してほとんど活躍しなくなり、あまつさえろくなセリフもないままに中盤を流してしまう。
 もちろん本当は「種」を見つけるセンサーを開発していた訳だからかなりの功績をあげている筈なのだが、なのはと会話するとすぐに疲れて眠ってしまったり、何かに戸惑って言いよどんだりと、本来の役目を果たしているようには到底感じられない。
 イデアシードやクロノとの関係、または久遠の夢移しによるリンディ自身の過去の記憶でなんとなく情報はつながるのだけど、決定的な情報は最後まで伝えられない
 そもそもイデアシードは、リンディ側の意向としては回収しなくてはならないものだけど、クロノ側の意向としてはある程度この世界で活用させるべきものだった筈。
 それが、クロノとなのはの距離が近づいて行くたびにどんどん希薄となり、最終的には二人の目的が同一化してしまうためか完全に不明瞭になってしまう。
 リンディが記憶の一部を封印されていたクロノの母親だったとか、そんなことを後から説明されても「だから何?」にしかならない。
 こういう所だけ「ラブラブおもちゃ箱」の雪みたいにしてしまって、どうするというのか…?
 結局レイジングハートそのものにしても、存在の意味はよく分からないままだった。
 「種」の回収ポッドという位置づけも後付けによって付加された性能だし、なのはの力を増強させたのはいいけれど、それはあくまで副産的な結果でしかない。
 どうやらミッドチルダの技術は魔法と科学技術の融合によって成り立っているような印象を受けるが、クロノやリンディの技術的な話題を統合すると、どうやら魔法はさして重要な要素ではないらしい。技術を稼働させるための媒体的な扱いに留まっている印象を受ける。
 どうしても、レイジングハートの本来の目的意識が見えてこないのだ。
 それともリンディは、なのはみたいな人間が必ずいるだろう事を見越してレイジングハート導入を計画し、結果死にかけたとでもいうのだろうか?
 なんか、この辺設定の統一性を感じないのだ…
 最終的な驚異の筈の“ヒドゥン”の恐ろしさが全然伝わってこないという、致命的な問題もある。
 “時を壊す災厄”なんて肩書きはいいが、それがどうしてミッドチルダ以外の世界にも影響を及ぼすのか理屈が説明されないし、ただ漠然と「文化が破壊されたり」「時間が止まったり」と言われても全然意味不明のままだ。
 結構早いうちから出てくる名称なのにも関わらず、最後の最後にちろっと説明するだけでは、プレイヤーは理解はおろか補完する事すらままならない。
 ましてや肝心のラストバトルが、真っ白と真っ黒の画面を交互に映すだけで終わりでは…ねぇ。

 また、本編終了後の“14話”および番外編にまで目を向けると、かなり頭痛のタネが増す
 14話は成長後のなのはと、最終話で再び戻ってきたクロノが結ばれるだけのお話。
 これはもう…無理無茶無謀の寄せ集めみたいなもので、本編ラストをしめやかに飾り…切れていない(泣)。
 数年後という事になるのはいいが、突然立ちCGがなくなって声だけの存在になってしまう他のキャラクターやなのは自身には、かなり閉口させられてしまう。
 売り文句を果たすという義務感は確かに大切なんだが、そのためにラストの余韻を大々的に破壊していいという訳ではない
 個人的にはクロノが帰ってきてしまうというのにも難色を示したいものだが、あのまま13話までで終わらせていれば、かなり綺麗な締めになったというのに…惜しい。
 番外編はもっとむちゃくちゃだ
 なによりも、恭也に攻略させようという事に無茶がある
 本来もっとも攻略が難しい位置づけにいるフィリスを無理矢理攻略させるため、医師の夜勤に(担当患者とはいえ)一般人が付き添ったり、美由希ルート延長上の筈なのに美由希との恋愛絡みがない事を理由にしてフィリスに迫ったりと、もうやりたい放題だ。
 あれだけ硬派な恭也が、今回に限ってフィリスとのHを自ら求めるというすごく不自然な展開は勘弁してほしい。
 なんか目的の「Hシーン」にたどり着けさえすればいいという、やっつけ仕事のように感じられてしょうがない。
 リスティが彼女の実年齢を明かしたせいかしらないが、LCシリーズの身辺事情を恭也に説明する所なんかは、なかなか面白かったんだけどね。
 フィリス自身は、医師としての道を選択した理由などからも性格面の完成をみているのだけど、 その分唐突な攻略には違和感しか感じないのだね。
 「3」本編くらいの時間をかけて、ようやくなんぼのレベルだと思うんだけど。


 総合的にはかなり面白いし、「3」プレイヤーには是非ともやってもらいたいものではある。
 しかし、もはや解決されない問題点を抱えたまま勝手に昇華してしまった感が拭えないため、プレイ後の印象は人によって様々なのではないだろうか。
 とりあえず感動はしないけど見所は多い、やっぱりオムニバス的な魅力に溢れている作品と言ったところだろうか。
 う〜ん、「3」のCMスポットみたいな展開も面白そうだったんだけどね♪ <無茶だってば
 
 
【海鳴横断ハイパークイズでPON!】 評価A
 只のクイズゲームと思っていたらさにあらず、非常に楽しめるゲームだったのに驚き!
 本編完全遊離状態のシナリオで、キャラクター総出演のクイズゲーム、スタート時に誰を選ぶかによって独自の展開をしていくのが楽しい。
 ADV的に移動して、出会った相手とクイズバトルという形式で進むのだけど、その間の会話は必見のものが多い。
 また、出会った相手によってクイズのジャンルが定められているためか、相手を選んで苦手なルートを避けつつ決勝まで進む、という作戦を立てる楽しみもある。
 キャラ別にランク設定があるけれど、フリーコンティニューがあるためにやっていれば、いつかは必ずクリア出来るようになっている。
 ましてや問題は選択肢型だから、出題内容がわからず適当に答えていくつもりならランクは事実上関係なくなるのだ。
 「リリカルなのは」本編でさらに可愛らしさを増した久遠が、もっと調子に乗っている他、フィアッセの母親・ティオレまで参戦してきたりと単純な楽しみが多い。
 クイズが苦手なプレイヤーでも、挑戦してみる価値は高いと思われる。実際私もそうだったのに、クリアは充分可能だったからね☆

 ただし、こういうのにつきものの“解釈を間違えている問題”は勘弁してほしい。
 アインシュタインはドイツ人じゃなくて、ユダヤ人血統だからね♪
 他にもいろいろあったけど、忘れてしまった…
 とにかく、とても完成度が高いゲームなのは間違いなしって事で!

 全員でクリアすると、司会のなのはを相手に「脱がし系クイズ」が始まるが、まあそれなりのおまけという事で。
 でも、クイズの問題が表示されずに答えだけ提示されるバグは勘弁して欲しかった…

 ちなみに私にとっての強敵はドイツ&電脳系「ノエル」と、アメリカ知識系「アイリーン」の両者。
 彼女達のために何回こんちにゅ〜したか計り知れない…(^^;


【晶のダイナマイトハンマー】 評価…?!?!
 いわゆる“特打系”アクションゲーム…らしい。
 しかし、実はとんでもない事に…私はこれは未プレイだったりする!

 だーってぇ、動かないんですものぉ(号泣)

 という訳で、本来完全クリアしなきゃ書けない筈の評論なんだけど、ここだけ例外的にパスさせていただいた。
 なにせ2001年7月29日現在、修正ファイルすら出ていないんですから。 もうどうしようもないという事で…


(総評)
 ここまでに書いてきた事の復唱になるかもしれないが、とにかく「ラブちゃ」とは比較にならない程の完成度に達しており、安心して購入するに至れるソフトだと確信する。
 ホントは、時間軸設定にいくつか無茶な部分をみつけたりもしたのだけど、前回の忍シナリオ評論みたいにしつこくなりそうなので割愛させていただいた。
 3枚目のディスクは「とらハ3のサウンドトラック」となっているものの、リリカルなのはの主題歌も入っているのでお得感が強い。
 また、デスクトップアクセサリーもかなり見るべきものがあって楽しかったりする。
 特に、設定集にあるフィアッセの別デザイン(笑)は、必見の価値があるだろう!(爆)
 とらハシリーズの最後を締めくくるには、そんなに悪くないかな、という感想を抱いていたりする私だった。

 あ、でもちょっとだけつまらない突っ込み入れさせてクレー。
 「カレーチーズ」はものすごくうまいぞ! 一度ハマると病みつきになる人だっているくらいポピュラーで、決して異常な味覚ではない筈なんだけど。
 それから、晶とレンがなのはに教えていた昆布の出汁取りは「引き」あるいは「引き出し昆布」といわれる手法で、もっぱら高級料亭で使われる技法なんだけど。
 家庭用でやるなら、先に昆布に刻みをいれたり煮時間を多くしたりして、ちょいと濃いめに出汁を取った方がおいしいんだよ。
 沸騰させすぎないようにするのは正解だけど、もう少し家庭料理的なノウハウを教えませう(^^)。



◆=総合評論“とらいあんぐるハートシリーズ全5作”=◆
 せっかく最後なので、これまでのシリーズ全体を通しての総評をまとめてみたいと思う。

 かなりブームに乗り遅れてプレイに至った本シリーズだが、全体を通して考えてみると、確かに人気が高いというのは理解が出来た。
 実際それぞれの作品内に、一つや二つ強烈に心に残るものがあり、これがなんとなく本作を捨てきれない感傷へと成長してしまうのだ。
 こういう余韻を残すのはうまいのだが、残念ながらこれらはすべて計算されたものではなく偶発的な結果によるものである事は明白である。
 多方面の評価を分析してみると、実にいろいろなパターンで個々のキャラにファンが付いている。
 あきらかに破綻を来しているシナリオを持つヒロインであっても、人気が高かったりするのだから面白い。
 また同時に、このエピソードが素晴らしかったからこのヒロインが好き、という評価を意外と聞かないという特徴もある。
 良い言い方をするなら、シナリオの盛り上がりやHシーンの濃厚なラブラブ度よりも、日常生活描写上での何気ないやりとりにも個々の魅力が溢れているという事なのだろう。
 だが悪い言い方をするなら、シナリオの出来に関係なく、外面的な要素やイメージだけの人気に支えられているとも言える。
 この辺のバランスの悪さが、とらハ全体が抱え続けてきた“危うさ”なのだ。
 私もシリーズごと、あるいはシナリオごとに高評・酷評を唱えてきたが、その差があまりに開きすぎている事には納得していただける諸氏も多いと思われる。
 考えてみれば、これはキャラクターデザインなども担当している都築真紀氏お一人の手による膨大な仕事量の結果なのだ。
 ここまでたった一人の人間によって生み出されたのだから、ある程度似通ったものが出来たり、善し悪しが偏ったり、全体的な意向が統一されすぎていたりという不具合はどうしても出て来てしまう。
 私も企画やシナリオ執筆の経験があるため、その労力がとんでもないレベルに至っている事はわかっていたが、それでもあえて酷評させてもらった事も多々あった。
 ワンマン制作による不具合を、「仕方ない」と取るか「それとこれとは別」として受け止めるかによっても、このシリーズの評価は大きく変化してしまうのだ。

 で、とらハシリーズの完成度は最終的にどんなレベルだったのか…というと、“低い”という答えになるのは避けられない。
 ここの評論でA評価を出したシナリオにしても、他のメーカーの作品各種と比較してもなお「A」でいられるかははなはだ疑問である。
 やはり良い部分とまずい部分が混在するという事は、それだけで膨大なマイナスなのだ。
 
 また、ライター統一の弊害として“ライターの主観が世界を統べている”という臭いが強くなってしまったというのも無視できない。
 実際私は「3」冒頭でかなり難色を示してしまったのだが、連発してそれに耐えうるだけのバリエーションが生み出せる主観とは言い難いのだ。
 例えば格闘技”についての概念。シナリオライターはかなり格闘方面の知識が豊富のように見受けられる。
 また御神流のように、既存の知識を応用・結合させる事によって架空の流派を違和感なく登場・存在させる程である。
 これらはどれも非常に面白く描かれてはいるが、同時に「最低限ライターと同じくらい格闘について興味がなければ楽しめない」危険が含まれているという事にもなる。
 格闘要素は「1」からずっと伝わっているものだが、なぜかこれが前面に出たシナリオには独特の“クセ”が出てしまう。
 瞳×2・ななか・晶・美由希などに感じられる“クセ”は、実は格闘技系物語が嫌いな人間にとっては耐え難いものがあるのだ。
 実際私も恋愛ゲームにおける格闘技系のシナリオは大嫌いなのだが、とらハはこういう印象を抱く人間の可能性を完全に度外視している(というか、気付いてさえいない)。
 もちろんシナリオの方面にはそれ意外の好き嫌いの可能性はあるのだが、とらハはその作品の第一印象やイメージに反して、格闘系要素が無駄に多い。
 はじめから「格闘恋愛系ADV」と銘打っても良いくらいだ。
 その集大成である、「3」の主人公・高町恭也の存在は、シナリオから遊離を始めていただけでなく、肝心な所で活躍の場面を与えられなかったという事で“手持ちの設定に余計な要素が多すぎた”事を証明してしまった。
 「1」の真一郎の空手が“単なる過去”に留まり、「2」 の耕介にはそういう付加が一切ないというスタイルだったが、彼ら自身がシナリオ内で無駄に思えた事はあまりない。
 それは彼らが居場所をちゃんと確保し、その中で現在の力(料理の腕や高い倫理観)を生かし尽くしていたからだ。
 それができなかった「3」は、シナリオライターがやりたかった要素が不要になりつつある事を証明したようなものなのだ。
 これは、決して過言ではない。 同時にそれは、本シリーズが「格闘系恋愛ADV」にはなりきれない事にもつながる。
 この辺の差異が、全体のバランスを乱して常に揺さぶりをかけていた原因となっていたのではなかろうか? 
 私は、そう思えてならないのだ。

 とはいえ、成功要素には確かに素晴らしいものがある。
 なによりも特筆すべきは、「倫理観に溢れた主人公」達の存在だろう。
 なんでもかんでも欲望を丸出しにして、相手の身体的都合も考慮せず“中出し”ばかりのエロシーンに閉口していたのだが、本シリーズをプレイしていて目から鱗だった。
 最近どうにも“連帯感も共感も持ちたくない腐った主人公”が増えてきた気がするのだが、とらハはこういう風潮に真っ向から抗うが如きダンディズム(?)を発揮し続けてくれた。
 避妊具の使用や、相手の都合・肉体の変調まで考慮してしまうというのは、生真面目すぎて滑稽に写るかもしれないが、重要な事だ。
 細かい所を引き締められない者が、どんなに正論を吐いていても説得力に欠けてしまうという事もある。
 この主人公達は、いずれもやや固めではあるものの、引き締める部分は徹底的に引き締めてかかろうとする几帳面さが感じられ、それが同時に高い好感度となっている。
 “親しみの持てるまじめな奴”というスタイルなのだ。
 これまでにも色々“理想的な主人公”というものは何か問われてきたものだが、とらハシリーズの主人公はその候補となるばかりでなく、間違いなく上位に食い込むだろうものがある。
 
 さらに、世界観の共通設定
 いろいろと不整合点はあるものの、すべてのシリーズを繋げ、それぞれのシリーズのキャラクター達に関わりを設定する事で“海鳴町”という舞台に繰り広げられる物語を彩ったのは特筆に値する。
 実際、こんな街に住んでみたい…と、少しでも思ったファンの方々は多いと思われる。
 そうプレイヤーに思わせられるだけで、素晴らしいベーシックを構築した証拠になるのだ。
 これについては、細かい事を書き連ねても意味はないだろう。

 
 完成度の高さはそれほどではなく、かなり危なっかしいバランスの元に作られた「とらいあんぐるハート」シリーズは、様々なポイントに思い入れを抱いたファンからの人気に支えられ、これだけ続く事が出来たという、ある意味希有な存在なのかもしれない。
 私自身も、色々文句をいいつつも捨てがたいポイントがあり、お気に入りのキャラクターも多いのだ(七瀬といい十六夜といい、久遠といい…♪)。
 結局、そこまで持っていった段階で「とらハ」の勝ちなのだ。
 
 これは「3」評論部でも書いた事だが、「とらハ」が本作『リリカルおもちゃ箱』で完結するという事を残念がる声が多いらしいが、私はそれで良いと思う。
 だけど、シリーズそのものが絶えるべき、というのではなく、しばらくの時間を置いてから、再び復活してくれたら理想だな…と考えるのだ。
 そうする事によって、より新鮮な雰囲気をもった新作が登場する事だろうしね。
 
 そんなささやかな夢を抱いて、「とらいあんぐるハート」の評論を締めさせていただく…


 (後藤夕貴)

戻りマース