手塚治虫の漫画版「サンダーマスク」

 73年5月、虫プロ発行の“虫コミックス(てんとう虫コミックス…にあらず!)”や、秋田書店サンデーコミックス版、講談社・手塚治虫漫画全集版が有名な、手塚治虫の作品。全1巻。
 オリジナル作品主義の手塚治虫が、たしか唯一行った“コミカライズ(すでにあるテレビ作品などの漫画化)”でもあり、本当の原作は72年10月から73年3月まで放映されていた特撮番組である(制作・ひろみプロ)。
 世の中では、いかにも手塚治虫が作り出したヒーロー物…という扱いをしているが、実は本人は嫌々ながら描いていたというのは有名な話。そのためか、テレビ版とは似ても似つかない全く別なストーリーになってしまった(氏は、自身のプロダクション制作のアニメの視聴率を圧迫した特撮番組が大嫌いだというのはわりかし有名で、特にウルトラマンを「自分の作品のアレンジ流用だ」と主張していたのも良く知られている。秋田書店サンデーコミックス版「マグマ大使」の作者紹介など参照の事)。

 ここで例に挙げているラストとは、原作版の最終回の事を指す。
 (本来の)主人公・命光一に取り付いている炭素生命体・サンダーと、遙か大昔から戦いを繰り広げてきたケイ素生命体・デカンダー(原作名称)…デカンダーは、人類を石化させるという行動を始め、一度破ったサンダーに倒されてしまう。
 しかし、太陽の光にも吹き飛ばされてしまう程軽い比重の存在だったデカンダーも人間に取り付いており、それは光一にサンダーを寄生させた博士の娘・まゆみだった。
 最終的には、サンダーによって倒されたデカンダーは宇宙に吹き飛ばされ、まゆみは死ななかったものの石化状態で残ってしまった

 エンディングは、博士の研究所に置かれたまゆみの石像の指が、5年間の間で少しだけ動いていた…という事を、この漫画の主人公である手塚治虫が語るというものになっている。
 まあ、本文中で言いたかったのはここの事だけなんですがね(^^;
 結構シュールな結末なので、ここだけ大好きなのだけど。


 (以下、雑談)
 で、本当のサンダーマスクはというと、昔の作品だからという部分を差し引いても、実にヒドイ出来の番組だった。
 等身大変身から巨大化という“二段変身”を売りにしていたのはいいけれど、アクションポーズは決まらない、とにかくすぐにピンチになる(シンナー中毒怪獣と脳味噌を交換されて暴れた事もある!)、怪獣が暴れていて大変な事態になってるのに、役者の背後ではごく普通に車が行き来しているとか、あげくには敵のデカンダに土下座までするわ…もう、この辺を語りだしたらキリがない。
 もちろんこの部分を指して楽しむというのも悪くはないんだけど…
 最終回は死んでしまうのだけど、盛り上がらない事と言ったらそれはもう…

 もしも手塚治虫がこれを観た上でコミカライズの仕事を引き受けたのなら、あんなに原型止めなくした上に自身を主人公にしてまで展開を変えてしまうというのも納得できるというもの。
 
 本作はそんな事からカルト作品化しているが、現在の版権所有がやの付くお仕事の方らしく、使用料をめちゃくちゃふっかけて来たためにいつまでたってもソフト化出来ないという背景があるようだ。
 


戦えサンダー、今こそサンダー! GoGo行くぞ、二段変身ー!!