椎名ゆうひ/評価A

☆岡本みなみと同じ日にさざなみ寮に入った新しい住人・ゆうひは、関西から音楽系の大学に通うためにやってきた。
 その美しい歌声とルックスはすべての人を惹き込むのだが、本人は根っからの大阪気質。人情と笑いには人一倍のこだわりを持っていた。
 そんなにぎやかな住人を加え、さらに明るくなっていく寮内。
 耕介と同年代のゆうひは、やがて少しずつ彼に惹かれ始める…


 全体を通して、ヘタしたら最高の完成度に達しているかもしれないシナリオと判断!
 ほとんど問題らしき部分が見当たらないというのだから凄い。
 恒例のラブラブ展開に突入したとしても、最後に必ず何かしらのオチが付くというスタイルが笑いを誘ってくれる。
 ゆうひは、自身のシナリオでも別のシナリオでもふんだんにその存在をアピールし、かつ純粋に楽しい展開を用意してくれるという嬉しい存在だ。
 まったくの万能キャラであり、描き込みも凄い。
 ひょっとしたらシナリオライターの愛を一心に受けている存在なのかもしれない、とも邪推してしまう。

 主人公に対して最高のラブラブメガブラスターを照射するゆうひだが、どういう訳か彼女だけHシーンの画像にバリエーションが多い。
 それも単純に枚数の大小ではなく、細かな仕草の違いを表現したバリエーションなのだ。
 1枚目のHCGから気合いが違う。こんなに優遇されたキャラクターは、他に存在していない。
 ましてや、初登場の時のCGの書き込みや2枚絵の重ねで表現する効果は、あからさまなえこひいきだ(笑)。
 専用BGMだって、なんと2種類用意されているのだ!
 まさに、ゆうひ恐るべしなのである。

 ゆうひのイベントには、かなり確信犯的なものが多いのも特徴だ。
 海でゆうひにひたすら声を掛ける男を主人公が追い払ったら、それは主人公の落としたサイフを返そうとした人だったという物や、 アルバイトを始めてクリスマスには帰ってこれなくなったゆうひが、仕事の休憩時間を利用してまで行う“サンタのコスプレ”等、他キャラでも一応見られるイベントにひねりが加えられている。
 ほとんど「そこまでやるか」なのだが、いかんせんそれがゆうひというキャラクターとうまく合っているため、違和感云々以前に納得してしまうのだ。
 ここには、整合性や常識観を唱える隙を与えない説得力が生きている。
 こういうのを武器に出来るだけで、ゆうひは強い存在になれるのだ。
 このゲームをクリアした後で、ゆうひだけは最後まで忘れられる事はないのではなかろうか?

 第三章に至って、物語の締めへと続く大型のイベントがスタートする。
 ゆうひが声楽の修行のために留学を奨められるというものだが、その道へ進みたいという気持ちを無理矢理押さえ込んでまで主人公の側にいたがる彼女の姿には、悲壮感すら漂い始める。
 つまり、前半のベタベタ甘々なやりとりをムダにしない展開だ。
 ただ無意味にゆうひを甘えさせていたのではなく、主人公との気持ちの繋がりを強めている表現の伏線にまで昇華させたのだ。
 これは実に見事な手法。
 そのため、あれだけ声楽に強い関心を示していたゆうひが駄々をこねても、違和感が発生しないのだ。それどころか、そのために自らの夢すらも捨てようとさえする覚悟を見せる。
 ここからラストの展開までは感情論のやりとりとなってしまうが、決してそれは平坦でない。
 主人公の、ゆうひの夢を叶えるための心ある説得や、その上で自分の想いを語る場面は熱いテイストが満ちあふれている。
 こういう部分にも、主人公の人格の厚さが伺いしれるのだ。
 Hシーンでも、ゆうひの喉の事を気に掛けて奉仕を止めさせる気配りをしてしまう主人公だ。
 ゆうひとの別離を決意する場面では、その悲痛さをプレイヤーも共感する事が出来るだろう。

 エンディングの流れも良い。
 当初予告していた帰還予定を一年以上も上回り、なおかつ音信不通にさせる事で興味を引きまくり、ついには単独コンサートの会場で、演者という形で再会を果たすゆうひ…実にお見事としか言いようのない牽引力だ。
 異常に気合いの入ったラストへの流れは、このゲームをプレイしたなら絶対必須のポイントなのは間違いない。
 まさしく理想的なハッピーエンドと言い切ってかまわないだろう!

 問題点をあえて提示するならば、やはりスカウトマンなどの関係者のCGがないためイマイチ詰めの甘さが感じられる所や、イベント間のつながりが希薄になる部分が目立つ事もあるくらいか。
 だが、これらはすべて他のシナリオでも同様の事が言えるし、決してゆうひシナリオ単体の問題ではない。
 ある程度の細かな問題点に目をつぶる覚悟があるならば、ほぼ満点を提示できるのではなかろうか。
 
 ただし、逆をいえばゆうひは第二章からの登場で正解だった。
 第一章から出ていたのなら、各イベントはかなり間延びしてしまった可能性がある。
 とはいえ、それでもなんとか各イベントをうまくまとめて形にしてしまうんだろーなぁ。
 そう想わせるだけで、もはやゆうひの勝ちなのである。

 ちなみに、プレイするなら本シナリオ以外でのゆうひの姿も、是非拾っていただきたい。
 ななか編もさる事ながら、愛編でもかなりのボケをかましている。
 やや関西ノリを極端にデフォルメしてはいるが、これはキャラとしては充分なレベルだ。
 
 これで、声優がもっと歌がうまかったら文句ナシなのだが…
 せめて演歌の独特の歌い方をマスターしてからアフレコしてね。森でのシーンは結構寒かったから… <それ欠点ちゃう? 

おぅ、どんとこいや!