リスティー・シンクレア・クロフォード/評価E

☆新しい年を迎えた頃、ふとした事から知佳の通う病院に向かう事になる耕介。
 そこで彼らが出会ったのは、知佳と同様の能力を持つ少女・エルシーだった。
 しかし彼女は知佳と違い、深く自分の心を閉ざしている。自分に干渉しようとする者の心を読み、電撃で攻撃を仕掛けるのだ。
 エルシーによってせっかくの手作りおやつを台無しにされた耕介は、怒りと意地を掛けて、彼女と仲良くなってみせると誓う。
 だが、エルシーの背後には、なにやら妖しげな陰謀が渦巻いていた。
 管理者・佐波田が呼称する名称“エルシー”に反して、彼女は自らをこう語る。
 「ボクの名前は…リスティー」

 微妙に一部の展開が違うだけで、ほとんどの流れは知佳編第三章以降と同様。
 そのため、知佳編から続けてプレイするとかなりダレてしまう難点がある。
 しかし、それを差し引いてもその完成度と受ける印象は最悪だ。
 
 まず、明らかに登場が遅過ぎる
 すでにエンディングに向けて日数ジャンプにも加速が加わった時期から参入させるのは、明らかに間違いだった。
 同様に遅れて登場する瞳やななかもいるにはいるが、リスティは他の住人達を拒絶する唯一の存在であるため、それが打ち解けていくまでに描かなければならない事は、もっともっと沢山あった筈なのだ。
 しかし本編中では、耕介やゆうひ達に思いきり反発する場面ばかりを強調して、リスティが心を開く行程を豪快にオミットしている。
 いや正確には、気持ちが動くイベントそのものは確かにあるのだ。
 しかし、なにせ考えている事がすべて筒抜けになってしまう相手である上に、性格的な難も多いのだ。
 他キャラのように一度や二度の感傷的イベントで気持ちが通じるなんて、違和感を感じさせるだけに過ぎない。
 結果、ある日突然リスティの心境が180度変換してしまったとしか思えない奇妙な後味が残ってしまうのだ。
 ましてや、彼女が気持ちを改めた時期を省略して話を進めてしまうため、せっかくの告白シーンからの流れが白々しくなってしまう。
 もっと早く登場させてじっくりとエピソードを絡めて、場合によっては独立したルートを辿らせるくらいの思い切りがなければ、こういうキャラクターは立たない。
 とにかく細かい失敗が目立ち、磨きぬかれた悪印象しか残らないという醜悪なシナリオと化してしまった。

 リスティーが早く登場しなければならなかった理由はもう一つある。
 彼女にエルシー(エルシー・トゥエンティが正式名称だが、これはコードナンバーLC-20の意)という名前を強要する怪しい人物・佐波田や、その背後にいる劉会長なる存在だ。
 つまりリスティや知佳は、彼等にとって兵器的な存在価値を持つ貴重なサンプルで、様々な実験や研究を必要とされて監視下に置いているらしい。
 それらの設定が突飛かどうかはあえて触れないでおくにしても、なんだかおかしな印象しか受けない。
 これらって、こんな短いゲーム期間の中で描き切れるようなレベルの物語なのだろうか?
 思うのだが、これはヘタをしたらそれだけで独立したゲームが作れるかもしれない規模の基本設定だろう。
 決して、サブシナリオの一つ程度のクラスのものではないのだ。
 知佳の担当医の矢沢から始まり、病院関係者にも一切絵や音声がないというのも相変わらずだが、本来これは専門に突っ込んで徹底的に描き込んで、初めて説得力やカタルシスが生まれるもの。こんな圧縮レベルでは、何の感傷も抱けないのだ。
 ラストに登場する美緒の父親は、一体何だったのだろうか?
 まさかそれを出すだけで意外性ある結末になりえたなんて思っているのでは…
 あくまで本作を、寮の管理人と住人達がおりなすドラマとするのであれば、これは完全に選択を間違えている。
 
 知佳編でも語った通り、リスティ編の終盤は知佳編と非常に酷似した部分が目立つ。
 明らかにどちらかがもう一方のアレンジなのだろうが、ほとんど同じ印象しか受けない。
 どちらかのシナリオをクリアしていれば、容易に想像が出来てしまう展開と結末だからだ。
 佐波田や劉についても、顔もその陰謀の全体像も不明瞭のままで決着してしまうため、あってもなくてもどうでもいい程度の存在に堕してしまう。
 知佳達の超能力に目をつけて物語を発展させるのはいいのだが、本来知佳や周辺の人々は、これを“病気”として捉えていた筈だ
 その認識がいつのまにか“特殊能力”になり、そのまま集束している。
 なんだか途中でさりげなく論点をズラされた評論の様だ。
 
 こういった問題のお陰で、せっかくのハッピーエンドが全然引き立たない。
 リステイー自身、打ち解けた後の仕草や言動は結構面白かったり可愛かったりするのだが、それもなんか蛇足的に取りつけた要素にしか思えなくなる。
 知佳編では、ゆうひに“ボケとツッコミ”を仕込まれて関西弁で話したりする微笑ましいイベントがあったりしたが、不思議とメインシナリオではそういったエピソードが記憶に残らないのだ。
  
 リスティーはこの他のシナリオでもちらちらと登場し、ものによっては知佳と仲良しになっていたり他キャラと親しくしていたりするが、このシナリオでは“知佳の良きライバル”となっている。
 こういう変化は、面白いのではないかと思う。
 一つのゲームで、主人公に複数の展開が用意されている以上、すべてにおいて徹底した設定を押し着せる必然性はない。多少異なっても、それが程良く面白い要素になりえているのならばアリだと私は考えている。
 
 しかし、このシナリオにしか出てこないリスティのクローン達“LCシリーズ”の扱いはどうにも…
 彼女達まで、リスティーと同様に幸福な環境に置くという結末には、正直頭を痛めた。
 後に真雪編で詳しく触れるが、ここにもどうやら作者の“絶対ハッピーエンド主義”が見え隠れしていて非常に違和感を覚えてしまう。
 
 私にとっては、このシナリオは本作ワースト2の出来映えとしか言い様がなかった…。
 
 …さて、それではワースト1は誰かというと…
  
 
かめへん、かめへん