井上ななか/評価C

☆駅前で、懸命にアルバイトに励む女子中学生と出会う耕介。
 彼女は、耕介の旧知の仲である千堂瞳に憧れる熱血武闘家志望の少女であった。
 色々な縁から、やがてさざなみ寮に遊びにくるようになる少女。
 彼女・ななかは薫や瞳と同じ学校に入学し、護身道部に入部する。
 しかし、とある事から足を怪我してしまい、大切な試合に出られるかどうかの瀬戸際に立たされてしまう。
 彼女の夢をかなえてやりたいと考える耕介は、十六夜に頼んで傷の治療を試みようとするが…


 すっかり完全に忘れていたのだけど、彼女は前作に登場していたキャラクターで、専用CGとボイスまで用意されているにも関わらず、主人公の親友の彼女という設定のために攻略対象になっていなかった珍しい存在である。
 ひょっとして、アンケートか何かで「どーして彼女は攻略できないんじゃ。ギャース!」とでも書かれて、やむなく導入したのではないか? などと勝手に邪推してみたりする。
 ななかと、後述の千堂瞳は再登場キャラであるため、さりげなくエピソード中に真一郎や大輔、唯子などが登場している。
 この辺の絡め方は特別しつこくなく、あくまでさらりと触れる程度のため、微笑ましいレベルを維持していて気持ち良い。
 どうやら隠しキャラ的な存在らしいのだが、このゲームの場合、攻略できるキャラクターは必ず専用CGとボイスを持っているのですぐにわかってしまう(逆を返すと、攻略対象以外ならばたとえどんなに重要な存在でも決してCGか声のどちらかは出さない)。
 キャラデザもずいぶんこなれており、パッと見の印象は前作よりもかなり良い。
 そのポーズが、前作のものとほとんど同じというのにも笑わせてもらった。
 
 ここで前作と本作の関連が見えてくるのだが、どうやら「2」は「1」よりも最低1年以上前が舞台の物語らしく、第三部(翌年)以降が「1」の舞台という事になる。
 「1」で、七瀬が「そういう方面の人間とも何回か出会った事がある」と言っていたが、それに薫も含まれている事がこれで証明される。
 これらが、あらかじめ設定されていたものなのか、それとも後付けのものなのかは断定できないが、かなり面白い符号要素だと思う。

 さてななか編だが、実は第三部をメインに活躍するキャラクターの割には、かなりいい線を行っているシナリオだ。
 前作ではあまり描かれていなかった、ななか自身の護身道への考え方がしっかり述べられていて、良い補完を行っている。彼女が唯子と違って根っからの努力家であるという事も伝わってきて、非常に爽快な雰囲気を作っている。
 ななか編に突入するとプレイ期間が延長され、さらに年をまたぐ事になる。
 第三章は丸々ななかをめぐる話にシフトするため、描き込みは意外に緻密になる。
 主人公が、ななかの怪我を治療するために死ぬ思いをするというくだりはとても面白く見られる。
 十六夜の力だけでは治療はならず、多量の霊力を放出しなくてはならないという。そのため主人公が供給源に志願するが、これは薫編や十六夜編でも語られている通り、主人公が潜在的に持つ高度な霊能力があるからこそ出来る行為だ。
 ななかが元気になる度に、死の淵に立たされる主人公は面白いのだが、これ以前にすられたアルバイト料をこっそり補充して返すという優しい一面を見せているため、この極端な行動にも説得力が生まれている。
 しかし、このシナリオでは主人公が霊能力を持っている事は明確にされていない。
 後に十六夜の言葉でフォローが入るが、主人公が自らこの力を主張する場面は明らかなミステイクだ
 ただ、そんな失敗もさほど気にかからない展開に仕上がっているので、良いのではないかと感じる。
 こういった行為の果て、ななかの想いが主人公に傾いていくのはすごく自然なのだが、告白からHシーンまでの流れにいささか不自然さを感じてしまう。
 どうも一部のシナリオには、告白イコールHオーケーと早急に解釈して行為に及んでしまうという場面が存在するのだが、ななか編でも同様だ。
 考えてみると、ななかは他のヒロインよりもかなり長い期間を経た上で結ばれている筈なのだ。
 ゆうひの数倍以上に至っているのだが、いかんせん遅刻組なのでその印象が弱いのが難点か。
 だが、それなりに秀逸な出来なのは、疑う余地もないのだ。

★で、以前ここで私は「ななかシナリオと前作の統合性が取れていないのでは」と書いた。
 トゥルーエンドはいいとして、十六夜に治療を依頼しないと発生するバッドエンドで、ななかは明らかに大輔だと思われる彼氏を作って幸せそうにしているのだ。
 バッドエンドの時期は9月。7月での病院イベントからしばらく遭っていなかったうちに二人の仲は進展したらしい。
 …で、ここで私は大きな勘違いをしていた。前作が、ななかが一年生の時の12月からスタートだという事を、すっかり失念していたのだ!
 だから、当初「大輔と付き合い始めた時期があわねーんじゃねーの?」と思いこみ、おろかにも整合性の不一致をエラそうに書き込んでしまったのだ。
 念のため再度やり直し、もう一回前作を立ち上げて確認。
 こいつは、思いっきり私のミスでした。訂正前の文章は、どうか忘れてくださいm(_ _)m
 
 それから、このシナリオがみなみシナリオから分岐する理由は一体…いや、どーでもいいんだけど。

 このシナリオの見所は、十六夜をななかに見せないために“ニセ気孔師”を演じるゆうひの奇演ではなかろうか。
 彼女のシナリオでも、これだけ面白い姿は見られない。ゆうひファン必見のイベントだ。

 ちなみに、ななかとのエンディングを迎えると、瞳は「1」の主人公・真一郎と付き合っている事になる。
 そしてこれが、瞳シナリオ最大の問題点の引き金になっていくのだが…

ええっ、いいんですかー?