シ・カ・エ・シ
 俺っちにとっては、久々のSEAGです。
 今回はみっちんの苦労を俺っちが味わうことになりました(笑)。

1.メーカー名:フォスター
2.ジャンル:SEAG
3.ストーリー完成度:E
4.H度:A
5.オススメ度:D
6.攻略難易度:E
7.その他:最近別ブランドのBeFの方が元気なんじゃない? いくらなんでも、もう少しボリュームは欲しかったぞ。


(ストーリー)
 主人公・長谷部涼は幼い頃に両親を亡くし、それからは親戚に当たる佐伯政子にひきとられ育てられた。
 しかし、もともと偏った趣味を持つ政子は、涼を女の子として育てたため、女性っぽく成長してしまった彼は現在女子校に通学している。
 それだけならば良かったのだが、一部の女子生徒に涼が男であることがばれてしまったために、彼は彼女らにそれをネタにイジメられるようになってしまう。
 家では政子に奴隷のように扱われ、学校では執拗なイジメに遭う毎日…
 涼の怒りが爆発するまで、あと少しであった…


 本来ならば総評のところで書くべきトコロだろうが、まずは一言言っておきたい。
おーい、進歩ねえぞー、っていうかむしろ悪くなった?
 酷な言い方だが、コレが解き終わって最初に感じた率直な感想だ。
 とにもかくにも色んな意味でボリューム不足で、正直コレで他のソフトと同じ値段を取られるのはやっていられない。

 まず何と言ってもお粗末なシナリオが最大のマイナス。
 もちろん、この作品はSEAG、もともとシナリオ云々よりもいかにエロを見せるか? にそのテーマが偏っているのは、俺っちも理解しているつもりだ。
 だが、この作品、実はEDが陵辱以外に存在しない。
 涼が恋心を抱いておりメインヒロイン扱いになっている春日夕子とラブラブになるというEDが存在するのだが、これは実はバッドエンドで、このEDの直後にGAMEOVERの文字がご丁寧に出てくるぐらいだ。
 この作品のテーマはタイトル通り、主人公が今までにイジメを受けた相手に仕返しする事。それ故にEDにハッピー系がないのは、まあ納得は出来る。
 だが、一つ考えてほしいのは、例え報復であれ何であれ「陵辱」という行為は「本来ならば許されざる行為」なのだという事だ。
 これは俺っちが「選ばれないソフト集結」のコーナーで「虚像庭園」を取り上げた時に述べたことだが、その言うなれば背徳的な行為を物語の中で肯定したければ、何故そんな行為を行ってしまったのか、納得できるだけの練られたシナリオが必要なのだ。
 では、この「シ・カ・エ・シ」はどうだろうか?
 確かに幼い頃に引き取られた先の伯母・政子が涼に偏った教育を施したのは悲劇としか言いようがないが、ソレを差し引いてもとても納得出来るシロモノじゃあない。
 学校でのイジメの原因となった菅谷真紀・橋本望に自慰現場を目撃されたのは、あきらかに涼の過失だし、その後彼女らの言いなりになるのも全て涼の弱気に起因している。
 挙げ句に仕返しを決意する理由が、直接的な理由はともかく「日頃励ましてくれる夕子ちゃんのために、強い男になるんだ」である。
 …どうにかして…
 いくら夕子が励ましてくれると言っても、それをまるで免罪符のようにして仕返しを実行していく主人公には殺意すら覚えるゾ。
 ただ、俺っちが一つ評価しているのは、実は常日頃から涼に優しく接してくれる夕子が単なる親切心だけでそうしているのではなかったという事。
 彼女は学校の新庄先生にたびたび陵辱を受けており、そんな「かわいそうな自分」よりも更にヒドい目に遭っている主人公を見ることによって、心の安らぎを得ていたというオチなのだが…
 シビアではあるが上手だとも思う。
 今の世の中、何かを卑下することによって自身の安心感を得る輩はゴマンといる。
 いや、事の大小を抜きにすれば多かれ少なかれ、そのような部分が心のどこかにあるものだ(自分はそうじゃない、なんて偽善をかますほど厚かましくはないのでね)。
 そして、そんな夕子に自分の決意を語ったあとに彼女の本心を知り、夕子の陵辱を決意する下りはこの作品で唯一納得出来るポイントだ。
 可愛さ余って憎さ百倍、という訳でもなかろうが、いくら涼自身の勝手な思いこみとは言え信じていた人間に裏切られたのだから、復讐する理由としても十分だろう。
 いささか唐突すぎる感はあるが。
 しかし、シナリオ的に美点としてはコレぐらいで、あとはあっけないという表現がピッタリなあっさり風味な文章力や、数多くの物語の齟齬(BADENDへの流れ方とか、夕子のトイレに涼が乱入とかね)など、問題はあまりに多い。

 構成としては前半が涼がいじめられるパートで、中盤のイベントでブチ切れ〜後半の仕返しモードとなっている。
 そして、前半の課程でたまった怒りゲージ次第で、後半の仕返しモードへの流れが決まるという仕組み。
 とりあえず、前半部分にもそこそこばらまかれているHシーンなど、バランスは悪くない。
 だが、最後の仕返しモードが、2回陵辱後に各々キャラが奴隷化してEDという内容(しかも全員共通)でボリュームがなく、非常にあっけない幕切れとなってしまう。
 攻略対象キャラクターは4人。それにEDが1つづつしかない上に皆共通のパターンのため短いシナリオにも関わらず、かったるいことこの上ない。
 せめて全員奴隷化とか、2キャラのからみとかでバリエーションがあれば良かったのだが、そういう工夫等は一切なし。
 せっかくの怒りゲージもこれではイマイチ役に立っていない。
 だいたい、ゲージの数値がEDに関係するのは100%かそれ未満かしかないのは、手抜きだと言われても仕方ないだろう。
 実際、夕子と真紀の二人をゲージ100%にすることは可能だし、真紀or望を100%にし、なおかつ政子の仕返しモード条件を完全に満たすの事も出来る。
 せっかく分かりやすいシステムをもってきているのになんとももったいない話である。

 ホントに誉めるところが少ないソフトだが、原画のスカイハウスさんの絵のかわいさは今回も炸裂しまくっており、どんどん進歩していくのには感心の一言につきる。
 絵自体にHっぽさもキチンと追求しているようだし、何より最近の某葉っぱ東京開発室系を真似ただけの凡百の絵に比べると、高いオリジナリティを持っており非常に好感が持てる。
 ただ、絵に関して若干の不満を述べるのなら、主人公が女性のような容姿を持つ男の子であるにも関わらず、彼が出てくるイベントCGがあまりないことぐらいか。
 どうにも実感がわかないんだよね。
 通常、Hイベント時のCGに下手に男の体が出てきてもウザいだけだが、今回の作品は主人公自体が特殊なため、なるべくCG等に顔を出すようにして、プレイヤーに「長谷部涼」という存在を視覚的に認知させておいた方が良かったと思う。
 …まあ、あまり認識したいタイプの主人公じゃないけどね…(溜息)


(総評)
 思えば、久しくSEAGから離れていた俺っち。
 しかし何なのだろう、この違和感は…SEAGってこんなにもムカツク代物だったけ? もっとあっけらかんと楽しくH、良く言えば非常に潔い作品群だと思っていたんだけど…
 この作品、実はかなりまずい点がある。
 はっきり言ってしまえば、非常にSEAGらしくないのだ。
 とても感情移入など無理な主人公の設定、陰惨としか思えないHシーンに結末、そしてそれを語り尽くしていないお手軽なシナリオ…
 酷な言い方をすればSEAGに深いシナリオを望んでいるわけじゃあない
 だが、それは上でも述べたお手軽系であるという大前提の元に成立している。少なくとも、そこに至るまでの過程が重要な陵辱物ADVで、このお手軽さを披露されるのはキツすぎる。
 かつてSEAGシリーズはDOS時代、そのお手軽さとともにリーズナブルさや、どんな環境でも対応できる汎用性の高さなどが大きなウリだった。
 しかし、今やWinに環境が移行し、CD-ROMでゲームが出るのが当たり前になってしまったご時世。
 その時勢の波にあくまでも逆らって、内容が手抜きなお手軽ADVを作り続ければどういう末路をたどるのか、少し考えて欲しいものだ
 まあ、本格ゲーム路線は別ブランドのBeFがあるにしても、ユーザーの期待を裏切らない程度の物をこれからは出して欲しいというのが今回の感想である。


(梨瀬成)

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