先生だ〜いすき
 新人教師と(背の)ちっちゃなおんなのこたちとのラブラブエッチ物語

1.メーカー名:SCORE
2.ジャンル:ほわほわふにゃ〜ADV (意味不明)
3.ストーリー完成度:E
4.H度:D (趣向のあう方には、多分B)
5.オススメ度:Z
6.攻略難易度:F
7.その他:こんな物、プレゼントされた日にゃぁ…(溜息)


 数々の代表作を発表したブランドを擁するネクストンに新たなブランド「SCORE」が誕生し、そして本作品がその輝かしき第1作目となった。
 …それがコレかいっ!? というツッコミを独り寂しく入れながら、この危険物を注意深く開封する。
 「先生だ〜いすき(はあと)」……いえ、私は別に好きぢゃない。
 「イっちゃえ!つるぺた微少女たち!」……そんなシュミないんですが。
 どうも某双子ゲーム攻略以来ヘンな誤解を受けているようでなかなか心辛い物を感じつつ、微(かすか)とはまたビミョーな表現だなとパッケージ見ながらそんな事を独りごちる。
 「ねっ、先生!わたしたち、もう大人だよっ!」
  うそつけぇ!!!
 容姿に関しては成長差や遺伝的形質など様々であり、これをとやかく言うべきではないのだが、実際シナリオを進めていくとこの娘達が、お世辞にも大人のカテゴリーに分類できる存在でない事はすぐに判る。
 登場人物中の約2名は、オツムのレベルからして幼稚園児並み。
 他のお子様も、高校生とまではいわないが、せめて中○生ぐらいに見えたならまだマシだったかも。
 だってこの容姿は、犯罪レベルでしょぉ? (爆笑)


(ストーリー)
 教師志望である桐島 和也(変更可)は当年25歳。
 不況の真っ最中にあって、公務員の競争率は予想以上に高く、ことごとく面接に落ち就職浪人確定目前だった。
 経済的理由から悠長に就職浪人などしてられない和也にも、一応両親が遺してくれた遺産もあるにはあったのだが、いつか家庭を持ち子供の事でどうしても必要になった時に使ってこその親孝行だと、常日頃から考え自らを戒めていた。

 そんな時、『聖カタリナ学院』院長兼理事長を務めている叔母から、願ってもない申し出を受ける。
 試用期間付きだったが、自分の元で働いてみないかと。

 そして、新任教員としての生活が始まった。
 カタリナ学院の寮舎・リトルバーズハウス〜小鳩寮〜を、新たな住処として。


 ゲームシステムは、同社で培ってきた技術が反映されているのだろう、素晴らしく安定しており操作も軽快だった。
 セーブエリアは、通常の記録エリアが59、これにクイックセーブまでついていて、難易度から推察する必須数量を遙かに超えた仕様にただ唖然。
 でもなぜか、クイックロードは無かったりと、お茶目さに苦笑い。

 進行ルートが一目で判る分岐表…ルートツリーを表示する機能や既読スキップにバックログと、これに「音声リプレイ」機能まで一通り装備されている。
 本作品で語らずにはいられないのが、このルートツリー表示機能だ。
 便利な事この上なく、アレコレ考え込まずとも、これを見れば一目瞭然という親切設計。

 いやそれよりも力を入れて書きたいのは、ツリーに表示されているイベントシーン名だ。
 コリすぎて「何を伝えたいのか解らないほど長ったらしい番組のサブタイトル」を書き綴った新聞の番組欄はよく見かけるが、こちらはその正反対。
 何を表現したいのかとツッコミ入れたくなるタイトルが目白押しなのだ。

 「ス○タでうにゃ〜〜〜〜っ!」
 「第一形態・○○○」
 「ちょっとつまんでみまSHOW」
 「かけヌケる青春! ぶっかけて」
 「きみは立ち続けることができるか」
 「極上の先っちょですな〜〜!」
 「由比先輩、もう我慢できねえっス」
 「やぶさめ!?!」
 「仲良し姉妹♪ 灼熱地獄風呂編」
 「オーイエ〜! にぎりっぱなし」
 「絶倫! ぱぱのあばれん棒」
 「ひさしぶりの大物ですわ」
 〜などなど。
 さて、羅列したこれらのタイトルから、シーンを推し量れる物はあるだろうか?
 小庶民たるワタシには不可能でしたわ。(笑)


 シナリオの流れとしては寮での生活をメインとし、「誰と学校へ通うか」で各ヒロインへのルートを確定していくのだが、教え子の誰にも確定しなかった場合は美月ルートになるようだ。
 ひとたびルートが確定すると、それまで当たり前の様に繰り返されてきた寮内での食事シーンさえオミットされ、夜のおつとめ(笑)のみに集約されてしまう。
 「抜きゲー」などと銘打って発売してるぐらいだからここからがホンバンなのだろうが、目的にさえ到達すればあとはどうでも良いみたいな作り方は感心できない。

 小さなヒロイン達(未亡人である美月を除外)に告白され戸惑いながらも同じ想いを抱いた和也は迷わず受け入れるが、ちびっ子達は予備知識が乏しいのにも関わらず、肉体関係を結ばなくては「本当の恋人」になれないと思いこみ、その不安から和也に関係を求める。
 これは価値観の差かも知れないが、それにしたって葵・由比・智世・月夜の4人とも同じ事を云っているのにはかなり興ざめだ。
 僅かばかりの性に関する知識は、読書好きの月夜や耳年増な由比から広まったみたいだが、興味があってもそれが同じ見解に繋がるとは限らないだろう。

 広大な敷地を持つ聖カタリナ学院の小鳩寮で管理された生活を送る彼女たちが、ある意味で閉鎖的環境下にある事は解るが、しかし休日の外出などに制限が加えられているわけではない。
 麓の街に出かける機会も少なくないのだから、そういった予備知識を「仕入れる機会」は幾らでもあったはず。
 もっとも、書店に「指南書」があることすら知らないぐらい無垢だというなら話にもならないが、耳年増の由比から曲解された知識がだだ漏れしてるぐらいだから…ねぇ。


 美月以外のヒロインにプロポーズした場合、和也は歳の差・社会的立場・道徳など、様々な苦難に立ち向かっていかなければならない。
 これは単にうわべだけの言葉で片づく事でないだけに、どれほど相手を想っているかが伝わってこなければただのヘ○タイ、背徳教師で終わってしまう。
 だからこそ、「家族」ともいえる寮生との交流は、最後までしっかりと描いて貰いたかった。
 バッドエンドがないシナリオ構成なんだし、どうせならみんなにも応援して貰える様な、そんな結末に導いていたなら、より良かっただろうと思えて残念でならない。



 <西園寺 由比・智世>

 双子の姉である由比は、短めに切りそろえた黒髪に結ったリボンが子猫を連想させる躍動感あふれる娘で、負けん気が強い娘。
 事故で肉親を失い孤児となってから、ただひとりの家族である妹を第一に考え、姉として頑張ってきた。

 対して妹の智世は、長い黒髪を持つたおやかな少女で、控えめなおとなしい娘。
 守られる事に慣れているせいか自分本位な言動が目立つが、すべての価値基準が「兄姉に次いで自分」という序列に起因しているのだろうか。

 照れる仕草などは本当によく似たふたりだが、身につけたものはやはり性格に依る所が大きく、そのため対照的な印象を受ける。


[由比ルート]
 活発で目が離せない、そんな妹に「お兄ちゃん」と呼ばれたい貴兄の為にこそ用意されたシナリオ。

 快活な由比ならではのイベントを期待していたのだが、ルート確定前までの消化イベントで殆ど使い果たし、あまり特徴の無い仕上がりになっているのが残念だ。

 せっかく弓道のクラブ活動をイベントに組み込んでいるのに、色々理由を付けて他の部員がいない演出にしたがため、袴プレイのネタに成り下がってしまっているのはいただけない。
 大会などのイベントとまでは言わないが、亡き兄に憧れて始めた弓道なんだから、姉妹喧嘩のネタで終わらせず、全面に押しだしてイベントを組んでいれば、もっと印象深いシナリオになっていたかもしれない。


[智世ルート]
 おっとりとした妹にリードされたい貴兄の望みを叶えるシナリオ。

 自分が恋人では釣り合わないだろうから、せめてお兄ちゃんになって欲しいと云った告白が、なんとも彼女らしいものだと思えた。

 家庭科クラブに所属する智世のシナリオに、劇的なイベントを望むのは酷だろう。
 その代わりに料理好きという設定を活かして、和也の部屋に材料を持ち込み手料理を振る舞うイベントがあるのだ。
 その後お約束の展開になるのはご愛嬌だが、ヒロインの得意とする所をしっかりおさえたシナリオは、見ていて実に気持ちがいいものだ。


 この智世ルートには、確定後にも関わらずルート分岐点が存在しており、姉妹妻ルート(仮名)に移行できる。
 背徳の極みといえるこのルート、なんと西園寺姉妹どんぶりエンディング由比・智世トゥルーエンドなのだ。
 ご丁寧にも、母親の形見の指輪を材料にして二つの指輪を作り、「ふたりにプロポーズ」までしている。

 なぜにこれがトゥルーエンドかと考えてみたのだが、肉親が彼女たちふたりきりという天涯孤独な身の上だから、どちらかを選べば即ち「ひとりは残される(孤独になる)」。
 無論これは男の身勝手な見解だと承知しているが、同じように想いを寄せてくれる由比と智世を、同じように幸せになって欲しいと願うなら、自分が諦め身を引くか、もうひとり添い遂げる人物が現れるまで待つかだと思う。

 これで表現の上での関係が「恋人」であっても、自制してふたり共と関係を結ぶ愚行を犯さなければ、高い評価を出していた事だろう。


 <紫ノ宮 美月・月夜>

 美月は聖カタリナ学院のシスター兼保険医であり、小鳩寮の寮長でもある。
 数年前にドイツ人の夫と死別し、未亡人となった。

 その娘である月夜は、父譲りの銀髪に蒼眼をもつ女の子。
 人見知りが激しく、あまりにもクールな言動は容姿以上のインパクトがある。

 美月の亡夫・シュバルツ氏と趣向の類似という偶然もさることながら、純然たる日本人である和也と似ているはずもないのに、その風貌の中にシュバルツの面影をみた美月と月夜は、知らず知らずのうちに和也に惹かれていく。


[美月ルート]
 姉さん女房・人妻万歳な内容であり、パッケージで衝動買いした貴兄にとっては、苛烈を極める苦悩のエンディングかも知れない。(笑)

 推定でも和也より5歳は年上であろう美月だが、その年齢差を感じさせない少女っぽさを秘めた人。
 だが一方で、母としての強さと優しさを強く感じさせる、そんな女性なのだ。

 この愛らしくも母性豊かな美月に和也は一目惚れしてしまったわけだが、その想いを成就するために月夜の心を蔑ろにすることは無かった。
 美月が幸せであるためには、娘の月夜が不幸になっては駄目だという事を和也はちゃんと理解しており、事故で両親を失い家族の大切さが身にしみて解っている和也だからこそと思える良いシナリオだ。

 他のシナリオにおける和也の言動に、多少なりとも疑念を抱かずにはいられなかっただけに、このシナリオは素直に彼の誠実さと潔さを讃えたいと思う。


[月夜ルート]
 づばりっ、若い娘に『ぱぱ』と呼ばれたい貴兄にぴったりなシナリオ。

 亡き父親と食の好みから煙草の銘柄まで同じで、好きな作家や愛読書も同じ、その上考え方や接し方までよく似ている、そんな和宏に父の面影を求めたのは、自然な成り行きだったのかも知れない。
 和也もそれを承知の上で月夜の想いを受け止めたのだから、どういう呼ばれ方をしても問題ではないのだが、こうも面と向かって「ぱぱ」と甘えられたら、「違う関係」の様にも見えてしまう困ったシナリオだ。

 このシナリオの中でのみ、和也の両親が遺した遺産は生命保険の類である事が解るが、冒頭で叔母と交わした話と違い、当時まだ学生だった彼が社会人として自立するまでの生活費諸々で使い切ったとある。
 これは遺産を使わずにいる理由をひけらかし自分を美化しないためにそう云っただけなのか、それとも叔母に云った事の方が嘘だったのか、真実が気になる所。
 遺産の額を詮索する意図ではないが、元々和也の考え方や人物像を推し量れる部分だっただけに、それが口からのでまかせなら、プレイヤーは一体何を信じればいいのだろうか…。


 <御影 葵・薫>

 家庭の事情で親元を離れ、姉弟ふたりだけで聖カタリナ学院に来ている。
 経済的事情という話と、実家が遠方であるから寮暮らしという話があるのだが、はたしてどちらが真実なのか。
 西園寺姉妹と共に学院から小遣いを支給されていた様にもみえたが、だとすると前者が正しいと思うのだが。

 姉の葵は、天真爛漫な元気印の女の子で、全身で喜怒哀楽を表現する。
 小動物を連想させる仕草は、その容姿を必要以上に幼く印象づけてしまう。
 さらに言葉遣いはまるで幼稚園児であり、もはや「キミいくつ?」と訊く気力も沸いてこない。

 弟の薫はヤキモチなのかひがみ癖なのだろうか、和也に対して素直とはほど遠い態度しかとらない悪ガキ。
 生意気な口を叩く割に、姉の鉄拳制裁の前にはただの泣き虫である。
 しかし、懲りるという事を知らないのか、学習能力が欠如しているのか、いつも容赦のないお姉ちゃんパンチをくらっている。
 ………当然だが、薫は攻略対象にあらず。


[葵ルート]
 愛くるしい笑顔と仕草に悩殺されたい、そんな貴兄の欲望を満たすシナリオ?

 メインヒロインである葵は、誰に対しても甘え上手で屈託のない女の子だが、自力で解決できる事には努力を惜しまない、芯の強い子だ。

 そんな葵の一途な想いを受け止めた和也だったが、このふたりの恋が実った後は、薫の存在がまったく蚊帳の外になっている。
 ただでさえ『自分の花園に忍び込んだ害虫』を駆除するかのように、和也を目の敵にしていた薫なのに、何の抵抗も見せずに葵を渡すとも思えないのだが…。

 美月ルートの話だが、「葵に手を出した」と徹底抗戦を仕掛けてきた事もある。
 無論、大人のスキンシップはルート確定後からで、薫の一方的思い込みによる誤解なのだが、そうするとアレは「葵の気持ちを知っていながら、美月と仲良くしているから許せない」という意味だったのだろうか。
 そう解釈すると、葵ルートで薫が絡んでこなくなった事も納得できる。
 しかしルート確定後も、薫を絡めたシナリオの運びに出来たなら、もっと面白くなっていた事だろう。


 ここで少し、薫の度の過ぎた悪戯について考えてみる。

 寝ている和也の頭に小便をかけようとしてみたり、食卓で消しゴムのカスをなげ散らかして食事を台無しにしてみたり。
 怪我こそしないだろうが、笑って済まされる様な事ではない。

 もっと酷いものでは、パチンコ(二股の棒に仕掛けたゴムで弾をはじき飛ばす道具)で頭をねらい打ちしたり、階段の色に合わせ茶色く塗ったバナナの皮を仕掛けたりと、シャレにならない事ばかりだ。
 パチンコの方は、頬の皮膚が切れて出血するような物を弾に使っているのだ。
 こんな物がもし目に当たりでもしたら、悪くして失明もありえる。
 また階段の方も、一度和也が転落しかかっただけでは飽きたらず再度仕掛け、これを踏んだ美月まで転落する所だったのだ。
 咄嗟に和也が抱きとめてなければ、大怪我していた可能性は高い。

 これは悪戯した薫だけでなく、それをきっちりと叱って、物の善し悪しを教えていない大人も悪い。
 ひとえに父親的存在が身近にいない環境のせいだとも言えるのだが、だからこそ和也が腹に据えかねて怒った事は間違いではない。
 まぁ怒り方にもよるのだろうが、人に怪我させる可能性とか嫌な思いをさせる事とかについては、本人の為でもあるのだからしっかりと躾る必要がある。
 こういった部分に関して、母親的存在である美月はすごく甘かったのだろう。
 「子供のする事だから」…確かにそうだが、それを叱れない大人は、子供の手本になる資格すらない。
 シナリオやイベントの関係など都合はあったのだろうが、演出としては面白いどころか不快な気分にさせられた。


(総評)
 いろんな意味でえっちくさい作品だった。(爆)

 背がちっちゃいとか童顔とかの見た目を除いたとしても、やる事なす事子供じみていて、いったいどこがオトナなんだか。
 それにしても、なんだかんだいいながら、いいように振り回され翻弄されている和也って、どの子と結ばれても尻に敷かれるんだろうな。

 教え子と教師という関係上、彼女たちが世間の風評にさらされ傷つくのだろうと本気で悩んでいた和也。
 こんな優しさを持っているからこそ、小鳩寮の女の子達は彼に惹かれたんだろうが、そこまで思い悩めるならまずは避妊具ぐらい使えと云いたい。

 シナリオの世界観を一手に引き受けている聖カタリナ学院についても触れておこう。
 聖カタリナ学院は、国に定められているすべての学部と、神学部、看護学部、小中高、短大、大学、大学院までもが同じ敷地に揃っている、大袈裟な言い方をするなら学園都市のようなものだ。
 そこには体育系・文化系の、教員である美月も掌握しきれないぐらい数多くのクラブが存在し、それらの部室が集まった場所は「部室村」と呼ばれているぐらいだ。

 これほど恵まれた背景を設定しておきながら、登校しても授業の描写など一切無くいきなり放課後になり、しかも和也の担当クラスの1カット(生徒の姿さえも無し)のみしか校舎内の絵が無い。
 クラブ活動の場面が出ても、ソフトボール部や弓道部に他の部員の姿は見あたらない。
 なんとテキスト上にさえ登場しないのだ。

 小鳩寮の寮生達以外で唯一登場した人物といえば、シナリオ冒頭で和也が電話で話した叔母だけで、他は部室で葵とコトに及んでいる最中に外を歩いていた足音だけ。
 学院敷地内はおろか、麓の町でも人影ひとつ描写がない。
 ゴーストタウンぢゃあるまいし、買い物もできれば遊園地でデートも出来るのに、真っ昼間から人の気配が全く感じられない世界ってのはキモチ悪い事この上ない。

 これに関連する事だが、美月以外の教員が一切登場していない。
 作品のタイトルに反する話になるが、一児の母である美月やお子様だらけの小鳩寮関係者より、同僚の中で年齢的に釣り合いのとれる女教師と仲を深める方がはるかに自然な感じもする。
 和也自身にその気が無いとしても、彼を気にとめる人物や、理事長の甥が便宜を図られて就任したように受け取り、反感を持つ者が少なからずいても不思議ではないのだが、そういった事は一切起こりえないと決めつけて組んだシナリオみたいで不自然だ。

 放課後に生徒が提出した作文に目を通すシーンがあったが、この中に同メーカーの別ブランドBaseSonから発売された「ONE2」に登場するヒロインのひとり、せりざわここねの名前があった。
 作文の内容からして後日談であることは解ったが、これが演出上のお遊びと気づかず、彼女の姿を求め探し回ってしまった。
 ここね自身ずっと想い続けている相手がいて、その彼もここねを待ち続けていたわけだから、彼女がこの作品に登場したからといって、和也とどうなる事もないだろう。
 だとしてもクラス担任なのだから、立ち絵ぐらい出てくれても良かっただろうに…。

 生活の中心…メイン舞台である小鳩寮だが、この寮舎は特別で、何かしらの事情を抱えた子供達だけが入寮している。
 一般の生徒は入寮しないため、施設の規模に対して和也と美月を含む7名しか住んでいない。
 寮生は奨学生という扱いになっている。
 福祉プログラムの一環と解釈すべきなのだろうか、こういった自立支援が学院創設当初から受け継がれてきたものであるという解説からも、創立者・聖女カタリナのひととなりを感じさせるものだ。
 また寮生に対しては経済支援として小遣い支給もされているようだが、これも将来の自立に備え経済観念を身につけさせるための教育的観点からだろう。
 しかし、どれほど好意的に解釈してみた所で、ちっとも活かされていないんぢゃ、評価のしようがない。


 それぞれの事情や境遇に負けずこの子達が明るく振る舞えるのは、ひとえに美月の人徳だともいえるのだが、和也の来る前までは、こんなにも笑顔を見せる子達ではなかったらしい。
 和也の就任は、日々繰り返される変化の乏しい暮らしに吹き込んだ風なのだ。
 そう考えるだけでも、彼が来た意義があろうというもの。
 しかし、「来たのが若い男だったから」という、年頃の娘にありがちな理由だったら、教育者としての意義より淫らな悦びばかり増えそうな気もするのだが…。


 大風呂敷を広げすぎた聖カタリナ学院についても、キャラクターの扱いについても、課題の残る作品だったが、それなりに楽しめたと思う。

 SCOREの作品がこれからどのような色を持つかはまだ判らないが、今回の反省点を活かすなら、この聖カタリナ学院の恵まれた設定を利用し、新たな物語を作っていけるのではないだろうか。


(あおきゆいな)


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