Ripple〜ブルーシールへようこそっ〜
  今度の舞台はテーマパークだ…
 え、あのゲームの続編じゃないの?

1.メーカー名:戯画
2.ジャンル:アミューズメントパークADV
3.ストーリー完成度:C
4.H度:D
5.オススメ度:C
6.攻略難易度:E(一部キャラのみD)
7.その他:某ファミレスゲームを意識しすぎな気がしないでもないのは、多分気のせい…?


(ストーリー)
 プータローな主人公「本多惣一(変更不可)」は、8/4からオープンする総合アミューズメントパーク「ブルーシール」のアルバイトに運良く採用されることになった。
 惣一の目標はプータローである現状から脱して、ブルーシールの正社員に採用される事である。
 アルバイト仲間の女の子達は、魅力的な子がイッパイ。
 惣一は正社員採用を目指しながらも、女の子達と親密になるために、仕事に恋に奔走するのだ。


 なんとなくパケ買いしてみた本作だが、買ってみて戯画のゲームだと気づいた時には「踏んじゃったかな〜?」とやや後悔。
 イマイチ戯画のゲームには良い思い出がないので結構覚悟してプレイしてみたけど、良い意味で裏切られた。
 まあ、欠点も結構有ったんだけど、概ね満足出来た。
 では、ゲームレビューどうぞ。

 このゲームは7/20から8/31までのプレイ期間で、その期間内でブルーシールの仕事をこなしつつ女の子と仲良くなる流れとなっている。
 ゲーム期間は7週間と長いように思えるが、スケジュール消化とイベント以外に余計な描写が無い為、意外にスムーズにストーリーを進行する事ができる。
 ゲームシステムは育成要素とADVパートに分かれており、三日〜四日分の仕事スケジュールを組む事によって選んだ仕事に対応したパラメーターと、一緒に仕事をした女の子(場合に拠っては複数)の好感度が上昇するシステムを採用している。
 このゲームシステムは、カクテルソフトの名作「Piaキャロットへようこそ!!」シリーズと似たものとなっているので、特に難解な訳ではない。
 スケジュールを決める際にも、一部のキャラを除く全員のスケジュールが表示されているので、攻略対象の女の子に対して同じスケジュールを組み易くなっているのは親切と言えるだろう。

 登場するヒロインは全員一癖も二癖も在るような面白いキャラクター達なので、飽きる事無く楽しんでプレイする事ができる。
 主人公である惣一も嫌味のない愉快なキャラクターであるため、ヒロイン達に振り回されている場面がより面白く盛り上げることに成功している。

 これだけだったならば良質なゲームと言えるのだが、残念な事に本作は、良い所の他に悪い所もかなり目立ってしまう
 最も目立った悪い部分は、育成要素を含んでいるのに各ヒロインの攻略にパラメーターが全く関わっていないところだろう。
 ここで、パラメーターに付いて少し触れておきたい。
 パラメーターは「体力」「知識」「信頼」「会話」「人情」の5種類となっている。
 先程説明しているように、ブルーシール内での各仕事に対応した能力が上昇するようになっているのだが、本作のおかしな部分はこの上昇するパラメーターを自分で選ぶ事が出来ないのである。
 厳密に言うのならば、攻略目的のヒロインと同じ仕事をしていれば、パラメーター数値に関わらずにストーリーが進行するのだ。
 本来の育成ゲーム的要素が含まれているゲームなら、ヒロイン毎に攻略に必要なパラメーター値というものが設定されており、その数値に拠って攻略の成否が判定されるのだが、本作ではそのようなシステムが取られているような様子が見受けられない。
 もしかしたらプレイヤーにはそう見えないだけで、本当はパラメーターにはちゃんとした意味があるのかもしれない。
 でも、目的の女の子と同じ仕事だけを延々選び続けているだけでは、明らかにパラメーターに対して存在意味を見出す事が出来ないのは間違い無い。

 ヒロイン毎の繋がりに対しても不満が出てしまう。
 序盤の親睦パーティーにて、奈海とあおいが惣一を巡る複雑な関係を形成した描写をしておきながら、それ以降は奈海ルートだろうとあおいルートだろうと、この三者の関係は最初の方の僅かな描写でしか表現されない。
 確かに奈海とあおい、それぞれのヒロイン毎の展開を考えるとこの関係をクローズアップし過ぎる訳にはいかない。
 だが、これだけ面白い三者の関係をすんなり終わらせるのは勿体無いとしか言いようが無い。
 ダラダラと引っ張るのは反対だが、もう少しくらいは三者の関係を掘り下げてくれても良かったのではと思えてくる。
 他のヒロイン同士の関係も意外にあっさりし過ぎているのも追記しておこう。

 上記の部分と関わってくる事だが、ストーリー展開の速さも気になる部分だ。
 7週間という期間だが一回のプレイに一時間も掛からない。
 とにかくストーリーがスムーズに進むのだ。
 上記のあっさりしたヒロイン達の関係と相俟って、全体の印象が妙に薄く感じられてしまう。
 そしてこれは人によって好みが別れるところだが、Hシーンが存在しない方が綺麗に纏まっているヒロインが居るのである。
 アダルトゲームだからと無理にHシーンを入れなくても良いと思うが、世間的には入っていないと詐欺と感じられるのかもしれない。
 そういった面もあるのでなんとも言えないが、個人的には強引に入れるくらいなら排除しても構わないと思う。
 無理矢理入れたHシーンが原因で、その後の展開が興醒めしてしまう時があるからだ。
 例に漏れずHシーンが原因で興醒めしてしまったヒロインが二人ほど存在する。
 それは、有希カノコだ。
 この理由は各ヒロイン毎の評価で語りたいと思う。


(森本奈海)
 多分このゲームのメインヒロイン。
 脇役時にも幼馴染という特徴を生かして、ヒロインに拠っては終盤まで惣一に関わってくる。
 奈海が惣一に対して好意を抱いているのはゲーム開始当初から分かる事だが、奈海自身が必要以上にでしゃばらない優等生キャラであるために、どのヒロインとの絡みでも違和感はあまりでない。
 だが、あおいに関してはそれでは拙いとしか言いようが無い。
 何故ならば、奈海は他のヒロインと違いあおいを必要以上に意識しているのである。
 親睦パーティーにてあおいと対立しているような図式を描写して、その後もあおいとの昼食のブッキング、惣一とあおいのバーでのデートといった思わせぶりな展開を見せておきながら、その後は一切登場しないのだ。
 奈海がメインの場合では、あおいとの対立にちゃんと決着を着けているのに、あおいがメインの時にはそのまま二人の対立を有耶無耶にしている。
 その辺の不備がなければ、キャラクター的にも纏まっていたのでとても残念である。
 メインヒロインに据えた際のストーリーは、奈海が常に微笑を絶やさない理由が語られている。
 とある理由で母親に捨てられて、幼少時代を厳しい環境で過ごさねばならなくなった奈海が、唯一心の拠り所としていた惣一との約束を守り続けたために奈海は偽りの自分を作り出してしまう。
 模範的なヒロインだが、自分の思いを惣一に確かめた後の行動は驚くほど大胆になっている。
 他のヒロイン攻略時とのギャップが激しいので面白いのだが、終盤の偽りの自分を捨てた際のキャラクター性が以前と殆ど変わらないようにしか見受けられないのは残念なところだ。
 エンディングはドタバタ気味だが、奈海というヒロインを上手く纏めている。


(加藤あおい)
 奈海とは双璧をなすヒロイン。
 シナリオ展開と惣一の関係から、奈海以上に一番ヒロインらしいと言えるかもしれないヒロインである。
 他のヒロインのシナリオでも、でしゃばらない程度に顔出しをして惣一を気に掛けている部分を強調している。
 あおいのシナリオ展開は、惣一があおいを不幸にしたと思っているので、彼女に対して一歩引いた接し方をする。
 だが、当のあおいは親しげに惣一に接しているので、始終惣一が戸惑った展開となっている。
 個人的には、このシナリオがゲーム中最高の出来だと思う。
 公園でのあおいの告白、あおいを好きだがそれを受け入れる事が出来ない惣一の心情、これが実に上手く描写されている。
 普通のゲームだと大体がここで結ばれる展開だが、それを敢えてしなかったのは凄いと思う。
 実際に僕は、あの時点で終わるものだと思っていたが惣一があおいの告白を拒否したので、パラメーター不足によるバッドエンドだと思ってしまった。
 しかし、その後のあおいの部屋での展開に良い意味で裏切られる形となった
 この展開は穿った見方をすれば狙いすぎな展開といえるが、惣一とあおいの関係を実に上手く使っているので粗が見当たらない。
 そのため、その後のエンディングを引き立てるのに役立っている。


(飯塚カノコ)
 惣一を運命の相手と言って好意的な態度を取っているので、当初は占いを妄信的に信じているキャラクターかと錯覚させる。
 だが、後半カノコの記していた手帳によって、惣一に一目惚れしている事が語られる。
 このような占いを持ち出してくるキャラクターは、概ね占いを信じずに惚れた相手との接点を設けるために占いを使う事が多いが、カノコはその手のキャラクターとは違って占いを信じており、本来は相性が最悪な惣一となんとか上手く交際をしていこうと努力している。
 そんなカノコの行動は常に占いにより決定されているので、二人にとって良い日にデートをしたり、悪い日は会わないと徹底している。
 会ってはならない日に惣一と出会った所為で二人の中は窮地に立たされるが、その時に多少気になる部分がある。
 惣一がカノコの携帯からメールを受け取ってカノコの所に向かってしまうシーンがあるが、そのメールの送信者がイマイチ明確に描写されていないのである。
 そのメールを送った時カノコはお邪魔キャラである一条隼人と会っている。
 こういったお邪魔キャラがこういう仕掛けをした事を描写したりするのだが、そのような描写は一切されていない。
 本来はお邪魔キャラの嫌味さ加減を出すために描写すべき点なのだが、描写されていないので事故という事で解釈しなければならない。
 だが、そもそも会いたくない相手にメールを間違えて送信するものだろうか?
 それはどう考えても有り得ない事だろう。
 そういった描写もキャラの個性を引き出すためには必要なので、キチンと描写して欲しかった。

 さて先に必要が無いと触れたHシーンだが、紆余曲折在って二人が和解してお互いの気持ちを確かめるためにする事になるのだが、出勤する途中、しかもブルーシールの敷地内で出会いそのまま仕事を休みホテルに行くのである。
 思わず「をいをい」とツッコミを入れてしまうほど唐突な展開だった。
 これならば、中盤にてホテルに入りながら途中で行為を中断した部分を、最後までやらせておけば良かったように思えてくる。


(沢村有希)
 奈海に好意を抱いているせいで、有希は当初惣一を敵視している。
 展開は有希のノリが良いので、中盤まではコメディタッチで進む。
 全体的に面白く纏まっているが、Hシーンの所為でラスト付近の流れが悪くなっている。
 母親が危篤状態なので実家に帰ろうとする有希、惣一は有希が愛しい余り行かせる事が出来ないのは良いとしても、危篤の母親に会いに行く前にホテルに行くという展開は滑稽としか言いようがない。
 わざわざ新幹線を一本遅らせてまで、そういう事をする必要性が理解できない。
 危篤は後で嘘と分かるのだが、その時は知らないのに何故そういう行動に出ようとするのか?
 Hシーンを挟むのなら、有希が実家に帰ることを告げに惣一の部屋に来た時に入れておけばテンポが悪くなる事はなかっただろう。
 無理矢理的なHシーンを挟まないで、惣一には有希の実家に一緒に行ってもらいたかった。
 

(穂永圭衣)
 人との関わりを持とうとしない、無口なヒロイン。
 明らかにテーマパークという職場で働くには相応しくない性格である。
 そんな自分を変えるために、圭衣はブルーシールでアルバイトを始めたようだが、本来描写しなければならない部分があまり感じられない。
 もう少し必死に自分を変えようとしている部分が伝われば良かったのだが、際立った個性が感じられないので消極的なようにしか受け取れなかった。
 そもそも、圭衣が自分を閉ざしてしまった理由からして釈然としないものがある。
 友達がいじめられている事に気付かなかったのを恥じるのは良いのだが、それで何故自分の心を閉ざす必要があるのかが理解できない。
 友達がいじめを苦にして自殺しようとして、結果助かったとはいえ車椅子で生活しなければならなくなったのは確かにショックだろう。
 だが、自分が居なくなってから再発したいじめを防げと言うのがそもそも無理なのであり、厳しい言い方をすればそれを相談しようとしなかった友達の方が悪いのであって、圭衣が責任を感じる必要性が感じられない。
 自分の過失ならば責任を感じても問題ないのだが、明らかにおかしな責任の感じ方をしている。
 もう少しその辺を気を付ければ良い展開になっていただけに残念でならない。


(矢部真帆乃)
 オタク少女。
 病気の弟を抱えており、その病気を治すためにいろいろな事をやっている。
 ハッキングやら不法侵入を行って、弟の病気を何とかしようという姿勢は凄いのだが、それで何故ブルーシールなのかが理解できない。
 弟の病気である骨髄性白血病を治すためには髄液の移植手術を行わなければならないのだが、そのドナーを探すためにブルーシールでのアルバイトを始めたらしい。
 だが、そんな事をする必要性がハッキリ言って感じられない。
 最初は新鮮な死体を捜すためにブルーシールの中央管制室に侵入するのだが、そもそも大企業である川上商事のデータベースに侵入して情報を探っても、所詮は一企業である川上商事に新鮮な死体の情報なんぞ有る筈がないのではないだろうか?
 仮に有ったとしても、死体をどうやって手に入れるのかという問題も発生してくる。

 ちなみに、無茶をやるのと無茶苦茶は意味が違う。
 終盤のイベントで、惣一を助けるために真帆乃がブルーシールの全システムがダウンさせるのだが、プロのシステム管理者が手に負えない事態を真帆乃が容易く解決している。
 自分でやったことなので元に戻す事は容易い事だが、普通常識的に考えたら周りがそれでは納得しないのではないだろうか。
 仮にもプロが数人で挑んでも出来ない事を一人で解決したら、普通は疑われるはずだ。
 動機が不明なため疑われないのかもしれないが、それでも違和感として付き纏ってしまう。
 展開的には面白いのだが、あまりにもぶっ飛んだ事が目立ち過ぎるのは残念なところだ。


(河野朝奈・河野夕奈)
 ロリ双子。
 在る病気の所為で成長速度が他者よりも遅いという設定だが、正直どうでもよく思えてくる。
 我侭な二人に振り回される惣一は、充分にその役どころを発揮している。
 そして、病気の所為で明日をも知れない命である二人には正直同情も出来た。
 だが、他のヒロインに比べて微妙に全体の展開が浮いているようにしか感じられない。
 しかも、この二人だけ何故か2パターンエンディングがある。
 二人だから二つというだけなのかもしれないが、あまり意味が有るようには見えない。
 一つはHシーンが一切ないエンディングで、もう一つはHシーンがあるエンディングなのだが、HシーンのあるエンディングはHシーン込みで作られているため特別違和感はない。
 だが、Hシーンのないエンディングの方が綺麗にまとまっているので、どうしてもHシーンが有る方が見劣りしてしまう。
 どうせならHシーンのないエンディング一本にして欲しかった。


(川上由里己)
 研修生のお目付け役で、当ゲームで一番攻略が面倒なヒロイン。
 他のヒロインとは違い、どこで仕事をやっているか表示されないために当初は戸惑ってしまうが、仕事時に表示されるアニメーションの左側で由里己が監督していれば好感度が上がってイベントが発生するようになっている。
 ちょっと回りくどい攻略過程を通過しなければならないが、有る意味当然とも言える。
 研修中の人間が上司の行動予定を把握する事はまず出来ない。
 しかも、上司が監督をする研修が分かればその時だけ自己アピールする人間が出てきてもおかしくないので、正確な研修態度というものが分からなくなってしまう。
 だから、惣一が由里己の予定を知らないのは当たり前なのだ。
 しかし、所詮はゲームなのでそこまで徹底する必要性はないような気がする。
 展開は面白いのだが、予定を組むのに失敗しやすいので何度もやり直しをさせられなければならないのは残念だった。


(総評)
 問題なく遊ぶ事が出来る完成度だ。
 システム的な問題も少なく、操作系も充分及第点だとレベルに達している。
 欲を言えば、せめてフルスクリーンのみではなく、ウインドウモードとの切り替えが出来たら良かった。
 ストーリーの全体的な雰囲気がコメディタッチなので、楽しんでプレイできるところは良いのだが、意味のないパラメーター上げとイベントの少なさが目立ってしまう。
 パラメーターの必要性ともう少しイベント数を多くするなどの改善を行えば、充分に良作と成り得たのが残念でならない。

 ストーリーもスムーズに進むのは良い事だが、その流れにもう少し肉付けしても問題ないのではないだろうか。
 折角良いヒロインが揃っているのだから、もう少し各ヒロインを掘り下げて語って欲しいものである。

 それと、全体を通して見てもテーマパークという舞台設定にそれほど意味が見受けられない。
 テーマパークという舞台をもう少し上手く扱えば良かったのだが、イマイチ料理しきれていなかった。
 これでは別に、テーマパークではなくて学園モノでもやっていけそうに思えてくる
 その辺に気を付けて、次回作では舞台設定の必然性も考慮していただきたいところだ。


(乾電池)


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