恋愛CHU!彼女の秘密はオトコのコ?

ちゅーちゅー、ちゅーちゅー。Yearrrrrrrr!
1、2、3、ハイっ!!

1.メーカー名:SAGA PLANETS
2.ジャンル:恋愛アドベンチャー
3.ストーリー完成度:C
4.H度:C
5.攻略難易度:C
6.オススメ度:C
7.その他:私の所にも、誰かがいきなりやってきてくれないかなー。


(ストーリー)
 「橘慎治(主人公:名前変更可)って言います。鷹宰(たかつかさ)学園っていう男女交際禁止のお堅い進学校へ通って云々…」なんていうメールを、サイトで知り合った“NANA”という女の子と交わすようになって久しい。
 ある日、自分一人しかいなかった男子寮の自室に、相方が入ることになった。
 ところがやって来た相方は、僕を見るなり抱きついて愛の告白をしてくるじゃないか!
 そして、身を預けようと服を脱いだその姿は、女の子だった。
 彼女の正体は、メール相手の“NANA”こと神崎七海。
 彼女は僕に会うため、親に無理を言って細工をしてもらい、男子として学園に転校してきたのだという。
 校内での、彼女の立居振舞いにひやひやしながら過ごす日々。
 僕はNANAの素性を気にとめることなく、部活動をして、ボランティアでパン屋に通い、特別授業にいそしむ。
 
 ずっとそんな日々が続けばいいと思っていたのに…


 シナリオの途中にある選択肢を選んでいく、オーソドックスで解り易いAVG。
 女の子四人という最近にしては控えめなゲームなので、メインの神埼七海以外はさくさく攻略できる。
 しかし、一キャラに一つサブキャラクタールートもしくはダークストーリーへの分岐が用意されていて意外と幅が広い。
 更に、クリアに必須な外出イベントをこなすために「勉強」コマンドで学力を保つ必要があり、簡単なだけで終らせない工夫がされている。
 出てくる女の子は、メインヒロインの神埼七海、幼馴染の佐伯美月、パン屋の娘の月島花梨、特別授業でペアを組んでいる須藤澪の四人。
 それぞれバッド・ノーマル・トゥルーエンドがあり、美月と花梨にはサブキャラが、澪にはダークストーリーが、七海はその両方を足したストーリーが用意されている。
 一回のプレイは三時間もあればおつりがくるが、見た目やプレイの手軽さに反して、手応えは十分感じる。
 操作の方も、一度出てきたテキストは飛ばせる、音質を調節して処理の負担を軽減出来る等の細かい注意点はきちんと踏まえてあるので、不満が無い。
 だから、全体的にみてバランスがとれている。

 シナリオは、舞台こそ同じだが四人ともそれぞれが独立したストーリーとなっている。
 七海以外の三人は、プレイ時間の短さからこぢんまりとした感じで、三本立てのショートストーリーに見える。
 幼馴染に引っ張り込まれた新聞部で美月の情熱に触れ、学園の推奨するボランティアの一環として向かったパン屋で、振るわない店をなんとかしようとする花梨に慕われ、特別授業では澪の心を解きほぐす。
 美月と花梨は、お決まりのパターンとして用意されたと言えなくも無いが、サブシナリオへの導入や、エンディングへの分岐は、どれも無難にまとめられている。
 メインの七海は話が別で、何も気にせずプレイすると何の盛り上がりも見せずに終るが、トゥルーシナリオに入ると意外なほど過酷な運命が七海を待っている。
 七海の体に問題を課すことも、別の環境に飛ばされるわけでもない。
 あるのは、学園に圧力がかけられるほどの力を持った名家のエゴ。
 少女に与えられた最後の自由時間が、このゲームの真の舞台なのだ。
 一ヶ月という短い時間を、好きな人と過ごしたいと願う気持ちは終盤になるにつれよく伝わってくる。
 七海本人に真実を語らせ無かったのは、ヒロインの一人よがりで終わらせないためのいい判断だ。
 十年の年月を経て再び出会うドラマチックなエンディングまで、是非がんばってほしい。

 その反動なのかダークシナリオは、一度入ると一本道で選択肢が無い。
 本筋の純愛路線とは180度方向性が変わるので、まさにそれを目的とした人向け。
 思う存分多くのサディスティックなプレイを楽しんで欲しい。
 行き着く先は学園の影の支配者だ

 さて、バランスもよく話も面白い本作だが、それを楽しむためにはいくらかの我慢が必要となる。
 まずHが「おあずけ」状態になってしまうこと
 ダークシナリオ以外は、クリアするのに外出イベントが必須なので、外出可能な学力を保つ必要がある。
 そのためには、寮の自室に戻ったら「勉強」コマンドを選びつづけるしかなく、「Hする」は無意味なコマンドと化す。
 美月、花梨、澪の話なら七海は途中で退場するのでまだいいが、七海のトゥルーエンドを目指すと、選べもしないのに延々見続けることになりかなり嫌味。
 最初にある七海のHシーンは、途中でプレイヤーにHを選ばせないための体裁にしか見えない。
 後半にもHイベントは発生するが、同じ理由で入れた様にしか見えない。
 逆に七海以外のシナリオでは、学力さえ保てれば七海とのHは影響を及ぼさないので、七海が去るまで、彼女はただの性欲処理用の道具と化す。
 いつでもHができる割には、見栄えの悪いコマンドだ。

 次に、メインの七海シナリオのノーマルエンドの味気なさ。
 他の三人は、先に挙げた様にショートストーリーなので、ノーマルエンドも無難にまとめられているが、七海はそうはいかない。
 彼女との会話が進むと、断片的にどんな環境で育ってきたのかが解ってくる。
 遊ぶときはおもちゃ相手に常に一人。
 学園の編入試験ではトップに匹敵する点を取りながら、学校へは行ったことが無い。
 魚が泳ぐところも見たことがなかったという。
 全てはトゥルーシナリオで明かされるのだが、ノーマルシナリオでは、金持ちの田舎の家の娘という話以外は全て置いていかれ、最後に主人公一人が勝手に盛り上がって終る
 育成系シュミレーションのエンディングならいざ知らず、ストーリーを堪能するゲームで、エンディングの文だけで全てをまとめるという行為は、たとえそれが本当のエンディングでなくてもすべきことではない。
 なぜトゥルーシナリオを前面に出さなかったのだろうか?
 七海のトゥルーシナリオへの入り方は特殊なので、気付かないと(と言っても雑誌等で発表されているが)「こんなもんか?」で終り。
 これなら「盛り上げるだけ盛り上げておいて、真のエンディングではないためショボイ終り方だった」の方が、まだ再プレイする気になれる。
 “名家に生まれる双子は忌むべきもの”というお決まりのパターンに合わせた「生体間移植のドナーとなるためだけに生かされてきた双子の姉」という七海の設定は面白かったのだから、もっとプレイヤーを惹きつける構成を考えるべき。
 ついでにいうと、ノーマルとトゥルーにこれだけ差があるのだから、七海のトゥルーエンドには単独のエンディングが欲しかった。

 また、主人公の豹変振りも気になる。
 意図的に選択肢をはずさないと気がつかないが、「よーし、がんばるぞー」的なセリフから一転、「そんなのできっこないじゃん」的すてばちな態度に変わる
 表現にあからさまな違和感を感じてしょうがない。
 ダークシナリオでの彼ならそれもいいが、通常のシナリオで「ちょっときつかったかな」とフォローをいれても何の説得力も無い。
 まとまっている割には、プレイしてみるとどこかに妙に違和感があるという、「そこそこ」な感じのゲームだ。


(総評)
 OPがOPだけにつかみはよかったのだが、ちょっと最後まで引っ張るには弱かったか。
 それでも面白いと感じることができたのは、舞台の鷹宰学園と、須藤澪の存在に拠る所が大きい。

 鷹宰学園は、異常とも言える特徴を持って用意されている。
 バリバリの進学校であり、共学なのに男女別棟で、顔を合わせられるのは特別授業と部活動のみ。男女交際が発覚したら退学。
 学力が一定以下になったら外出禁止(これはありそう)。
 先生など、授業の邪魔と見るや「気分が悪いことにして出てくるな」と薦める始末。
 だからこそ、主人公をはじめ女の子達が普通であろうとする姿が感じ取れるのだ。
 これらの「ほんとか?」と思わせる異常さと、「あるかもしれない」というIFの感覚が、全体をうまく消化している。

 そして須藤澪。いいキャラクターである。
 七海のトゥルーシナリオを見ていないとピンとこないかもしれないが、実は七海と対称的な人物として描かれている。
 七海の選択肢と唯一かぶっているのは、二人の関係をさりげなくアピールさせたかったからだろう。
 別に二人は知り合いというわけではない。注目すべきはその立場だ。
 七海は親によって自由を奪われているが、その限られた範囲の中で、自分の意思でものを考え、行動することが出来た。
 しかし澪は、出歩いたりする自由はあっても、親によってその進路が決定されており、彼女自身「従うことが当たり前のこと」として、何の疑問も持たずに受け入れていた。
 意思があるのに動けない者と、動けるのに意志のない者。
 この対比に気がつくと、澪への感情移入は強くなる。
 主人公によって無機質な存在から脱却する様は、我々プレイヤーのいる現実世界での願望とリンクしているのだ。
 そしてダークシナリオでは、今まで知らなかった快楽に溺れる才女というシチュエーションにグッとくるものがある。
 ゲーム前半は眼鏡をかけて登場するので、もう言うこと無し。
 個人的なランクは七海より断然上だ。

 部分部分の設定が面白いのだから、作品のレベルはまだまだ上がる気がする。
 アニメやコンシューマ寄りのゲームというより、トレンディドラマに近い感じがする。

 自分のプレイした中では、風変わりな印象の作品だったので、次はどんな作品が作られるのか楽しみだ。

 とりあえずOPの歌だけでも聴いてください。
 ちゅーちゅー。

               

(Mr.BOO)


戻りマース