ピュアメール -PureMail-

 少年の心は、ネットの中と現実世界の狭間で揺れ動く。

1.メーカー名:Overflow
2.ジャンル:ADV
3.ストーリー完成度:B
4.H度:B´
5.オススメ度:A´
6.攻略難易度:B´
7.その他:


(ストーリー)
 主人公・緒方圭(変更可)は人との関わりを極力持たないようにしている少年である。
 そんな彼が唯一気兼ねなく人と会話ができる時、それはチャットをしているとき…。
 インターネット上での彼の名前はA,W(変更可)と言い、けして人前には出ないが、現実の自分とは違い人気者である。
 大勢と話すこともあるが、最近はEVEという名の女性と毎日チャットしている。
 そんな彼にも、密かに思いを寄せている女の子がいる。
 同じクラスの奈川碧…学校一の美少女と言われている娘である。
 しかしある日、ふとしたきっかけで話すようになった碧に「デジカメで写真を撮って」と頼まれる。
 奇しくも前の晩のチャットで、EVEから「私の写真を送ります」と言われたその日に…。
「もしかして…いや、まさかね。だけど…万が一……」はやる気持ちを押さえ、家に帰りすぐさまメールをチェックしてみる圭。
 そこにはすでにEVEからメールが届いていた。
 そして、メールに添付されていた画像を開いてみると…。


 えーと、『ピュアメール』です。
 ゲ−ム自体の発売は去年の8月、少々古めのタイトルです。
 発売後、私の回りでは話題に上ったのですが、結局やらず仕舞いでした。
 年末へと時は流れていき、年の瀬も押し迫った頃に再び話題に上ったため、「それだったらやってやろうじゃないか」と思い立って手に入れたゲームでした(そう言えば、その前の年は『フィルムノ…』)。
 そしてプレイを始め、予想以上の出来にかなり驚いたのを憶えています。
 今考えると、この作品が昨年度の一番のタイトルかも。


 それでは、ゲームの説明をしていきましょう。
 期間は、6月13日から一学期が終了する7月21日までのおよそ40日間。
 話の進め方は選択肢を選び各ヒロインへと分岐していく方式で、内容のほうはメインヒロインの奈川碧がほぼ中心となって進んでいきます。
 何せ全部で十数個あるエンディングのうち、その半分近くを彼女が掻っ攫っていきますからね。
 で、ヒロインは全部で7人、初めのプレーで攻略できるのは碧を含めた3人となっております。
 多少ヒロインの中に「さり気にこれはチャレンジャー…(犯罪?)」と思われるのも混じっていますが、おおむね綺麗に、上手にまとまっておりました。
 話自体も、先読みが出来る部分といい意味での裏切りとのバランスがとてもよく出ています。

 では、それぞれのヒロインについて書いていきましょう。

<澤永美紀>
 奈川碧の小学校からの友人で、バスケ部所属のスポーツ少女。
 圭とは1年の時に同じクラスだった娘です。
 パソコンのことで碧と話すようになっていくと美紀が何かとアピールしてきたり、碧に嫉妬したりしますが、それは前々から…といった内容になっています。
 ゲームのタイトルがメールだったり、だいたいのヒロインとチャットをするのですが、この娘は直接的にはパソコンと無関係に進んでいきます。

 ストーリーの方なのですが、どうも他のヒロインの方々が妙に存在感がある分、多少弱い印象があります。
 より現実味あるシナリオとも取れるのですが、プレーしていても中途半端な感がありました。

 恐らく彼女の行動の起こし方が、初めの方は碧を通して、中盤以降は碧に嫉妬もしくは利用していたのではないでしょうか。

 そこで碧というフィルターが入ってしまうので、どうしても行動原理が見えにくいんですよね。
 突詰めるとシンプルに「圭のことが好きだから」になると思うのですが、それには「圭の何に惹かれたのか?」という理由が必要で、それに付随して「美紀の性格を考えると、些細な事でも1年の時から何かアクションを起こしてくるのではないか?」といった疑問も浮かんできます。

 少なくとも、名前しか覚えていないということはないと思います。
 イベントも碧と重なる部分があるので、どうしても碧の派生としか感じられませんでした。
 さらに、美紀の奴隷エンドというのもあるのですが、そちらの方は途中まで碧を調教し途中から美紀を巻き込んでいきます。
 そして、エンディングは最後の方で碧か美紀を選ぶだけ。
 せっかく最後の方まで面白く来ていたのに、終り方があっけ無さ過ぎでした。
 美紀のストーリーだけを見ても他のキャラが目立ってしまい、全体では半ばどうでもいいキャラになってしまったのは残念です。
 後半、数回圭との会話の中で碧のことを変に誤解してしまうのもテンポを悪くしてしまうだけでした。
 結局私の中では、「中出しする・しない」で「妊娠してしまうか否か?」という部分が一番印象的になってしまいました。


<結城綾華>
 圭、碧と同じクラスの学級委員長で日本有数の企業・結城グループの一つ“結城証券”の社長令嬢です。
 とまあ、この簡単な説明や見た目からは
「あぁ、タカビーなお嬢様を一般ピープルである主人公がドーニカコーニカ…」といった内容かと思ったのですが、ところがどっこい内容はかなり面白かったので、一番のお気に入りです。
 初めの内は圭にクラスの仕事をやらせたりしていて、「タカビーお嬢様を…」と思ったのですが、緑に対抗してパソコンを買ってから、いい意味でのギャグキャラとなり、「ひょっとして圭のこと一番考えているのはこいつかも」と思わせる程の態度に変わっていきます。
 そして最後には親の会社が倒産してしまうのですが、タイミングとイベント共にこの展開は私の中ではゲーム中一番の展開でした。
 ただ、あくまで綾華のシナリオではいいイベントなのですが、他のヒロインの時にまで出す必要があったのかというと少々疑問を感じました。
 それと、綾華の行動原理は対碧、対美紀とハッキリしていたため、ある程度の考えはつかみやすかったですね。


<真東悠美>
 圭たちより一年上の3年生で、学内サーバの管理を任されているお人です。
 一回目のプレーでは影も形も出て来ず、二回目以降のプレーで出てくるようになります。
 ただ二回目以降のプレーでも、ある選択肢で回避してしまうと出てきませんし、出したら出したで悠美のシナリオに行ってしまうので少々バランスが悪いキャラクターです。

 話のほうは、圭が先生のパスワードで学内ネットワークに進入し、それを悠美が見つけた事から、それをネタに「緑を襲え」と脅迫してくるという展開です。
 その訳は以前付き合っていた(と悠美は思っていた)地元で有名な不良・青葉秀朗が自分には見向きをせず、奈川碧のことを調べているから、といったものです。

 悠美自身は親しみやすい性格ですが、馴れ合いになっていた圭との関係を自らの体を使って「自分から誘ったのに、圭に襲われているような形で隠し撮りをする」ということまでします。
 これも単に圭を脅して奈川碧を襲わせる為なのですが、そんな悠美とただ利用価値が高かった圭とが、何故短時間で仲良くなっていくのか…答えは、「二人ともパソコンフェチだった」から。
 こいつのストーリーは、パソコンのハード・ソフト問わずにかなり盛り上がっています。
 はっきりいって「別に知らなくてもいいじゃん」くらいの物だらけかもしれません。
 私もパソコンフェチの部類に入るのでワクワクしながら見れたのですが、初心者にはストーリー云々よりそれだけで苦になってしまうのではないかと思いましたね。
 せっかくチャットを使って恋愛するのだから、パソコンでつながる愛も合っていいとは思いますが、いささか詰め込みすぎだったのが残念です。 悠美の登場の仕方もメインの流れとは離れているので、メインの流れに絡ませて欲しかったですね。もう一歩が欲しかったシナリオです。


<緒方藍>
 緒方圭は幼い頃不幸な環境で育っていて、そこから助け出してくれたのが藍の両親であり、いまの父と母でありまして…そんな圭の義妹です。
 もう当たり前のように出てきますね“義妹”。
 さて、そんな藍も妹キャラに多い「物分かりのいい妹」か「やたら甘えてくる妹」かと思いきや、
「うぜぇ、とてつもなく邪魔」。
 基本的には「やたら甘えてくる妹」で普段はむしろかわいいなと思うのですが、物語の要所に何かしらでしゃばってきたり、物語の初めから「約束は大事なんだよ」とか「お兄ちゃんはすぐ約束を破る」などなど、伏線にも何にもならないものを出しつづけます。
 “妹”に“約束”とこの娘も詰め込んでいる感はありますが、圭のことがどうしても好きで、邪険にされても引っ付いてきたり、パソコンを始めたり、EVE(奈川)とのチャットに割り込んできたりするにはよかったです。
 後述のりんのあるエンディングでは自らを犠牲にしてまで圭をまともにしようとするのは「藍、ここに極まれり」と思い切り評価ががたつくキャラでした。
 義妹とチャットいう範囲の中でめいいっぱい動き回っている、そんなキャラでした。


<青葉衣里>
 上記の藍のお友達で、札付き不良の青葉秀朗の実妹です。
 さらに母親の仕事のせいで小さい頃から虐められ、今は兄の力を借りようとする不良にストーカーまがいの行為を受けている、このゲーム中最も不幸な娘かもしれません。
 で、ストーリーの方ですがそのストーカー行為をしている先輩をだまくらかすために圭が衣里の彼氏を演じていき、その中で必要以上に自分のことを心配してくれる圭に心惹かれていくお話です。

 さて、このゲーム中一番先読みが出来てしまうストーリーです。
 危険から身を守るために恋人のフリをするという時点で7割方ストーリーが限定されてしまうのは、もはや宿命なのでしょうか?
 ただ、藍から分岐してくるシナリオなので美紀の二の舞になってしまうかと思いきや、展開が分かりやすく大して崩れなかったので、結果としてはいい位置にいるのでしょう。
 この娘だけ回想シーン登録のためにバットエンドに行かなくてはならなかったり、他のシナリオより差別化(?)がされていたのはよかったです。  


<奈川碧>
 真打登場、七色に変化するメインヒロインの奈川碧さんです。
 クラスどころか学校での人気もあり、勉強の方も試験は常にトップ10に入る頭のよさで、少し気が強め。
 見た目は典型的な万能タイプのヒロインです。
 圭とは二年から同じクラスになり、始業式の日に廊下でぶつかってしまい、その時から圭はひそかに碧に惹かれたというお約束な展開になっています。
 さて、初めの方にも書きましたが碧のエンディングは、通常・奴隷・女王やその派生で何種類かあります。
 よくもこんなにいじりがいがあったものだと思うのですが、スタート地点が突拍子ないのでその辺は何とでもなるのでしょう。という訳でここで問題になるだろうものはスタート地点と途中の展開でしょう。
 スタート地点、チャットで話していたEVEと思いを寄せていた碧とは同一人物だったというもの。
 これは実に簡単です、“偶然”以外の何物でもないでしょうね。
 そうではないと、すべてのお話が成り立たなくなってしまいますから…。

 途中の展開の方ですが、通常エンドでは圭が“圭”の立場と“A,W”の立場を使い分け、現実世界の自分に誘導(?)していきます。
 奴隷及び女王エンドでは、初めは“圭”を好きになってもらう努力しますが、圭の些細ないたずら心や碧の些細な言動などで、圭の心のバランスが崩れて行き、碧をレイプしてしまいます。
 あとは、女王にするなり奴隷にするなり思いのままといった感じです。
 殆んどのエンディングに共通していることは
 「奈川碧は“A,W”に絶対的な信頼を置いている」ということです。
 結局、圭の手の上で踊るのか、圭は真剣に碧のことを考えているのかは微妙なところですが、
「ネットであった見ず知らずの相手のことを信用するような女はそこまでいいかしら?」と、これまたすべてを否定する意見を考えてしまいました。
 唯一、“圭=A,W”とバレるエンディングで圭は「僕も君も家庭に問題があり、そのことでお互いが惹かれあった」ような事を言っているのですが、あまりそれが感じられなかったのが残念です。


<関端りん>
…………………………………………………………チャレンジャー
 圭の担任である関端先生の一人娘であり、「お主どこから見ても“●学生”やろ!」ってな女の子です。
 ちなみに“●学生”というのはかなり下です。
 参考までに、こんな会話がありましたよ。
り「お小遣いは900円なの」
圭「3×3で900円?」
り「そう」
圭「じゃー、4×4=1600、5×5=2500、6×6…」
り「そう」
……………………………………………………………チャレンジャー。
「やったーぁ、なんで4年生、5年生、6年生があるのじゃー」
「ちゅーか、中出しすると“妊娠エンド”にいってしもたがや」
 はぁー、他にも変な替え歌作ったり、舌足らずな喋り方だったり。
「いやー懐かしいですね。確かにあの頃、妙な替え歌作ってましたね。まだお元気かしら? 3・4時担任のS先生

 さてと、爽やかに話をずらしたところでストーリーの方にいきましょうね。
 えぇ〜と、先生を訪ねに何度か学校に遊びに来ていたりんになつかれてしまった圭。
 そんな圭はただ日常を送っていただけなのに、ある事件がきっかけでクラスから孤立してしまいます。
 そんな圭は、同じく一人ぼっちで遊んでいたりんと再会します。そして圭はりんに変な遊びを教えていくのでした。
 やっぱりチャレンジャー。
 まあ、よく発売できましたね。
 ゲームスタート時に「男の子、女の子、ちっちゃいなどは身体的特徴を表したものです」や「登場キャラは全員18歳以上です」と見事に付け加えてあるのですが全部こいつのためでしょう。
 最初は藍のことだと思ったのに。
 半隠しキャラとしてはインパクトは大きすぎました。
 ただ、メーカー側のこのようなチャレンジ精神は大好きなので、その点は大きく評価できると思います。


(総評)
 この作品は大方気に入っているのですが、特に気に入っているのが恐ろしいほど完成されたシステムなんですよね。
 どうやらその辺は、このメーカーの前作&デビュー作である『ラージPONPON』で完成されていたみたいなのですが、かなり丁寧に作られています。
 このゲームシステムは、選択肢を追っていくタイプのゲームでは完成形ではないかと思います。
 ヒロインも若干一名を除いては、大きな欠点が無かったのは嬉かったです。
 また、以前のゲームみたいに「キャラのイメージと声優、合ってないよオイ」という事もないので評価できます。
 音楽も場に合っているものが殆んどだったので、かなり満足しています。
 今度サウンドトラックでも買いに行くとしよう。

 しかし残念にも、悠美のストーリーの終わり間近7月20日の海の日が他の娘ではちゃんと休みなのにも関わらず、「4時間目の終わりのチャイムと同時に…」との表記があったり、他のエンディングで7月17日からいきなり19日に飛んでしまっていたりして、重大なミスがあったのは悲しいですね。
 エンディング間際の盛り上がっている時なので、必要以上に鼻についています。

 それと『ピュアメール』自身とは全く関係ないのですが、圭がチャットしている場面でゲームウィンドウの下に圭が操っているパソコンのデスクトップが出てきます。
 そこにはなぜか『果てしなく青い、この空の下で…。』のアイコンがあるんですよね。
 試しに私のパソコンから『青空』をアンインストールしたら消えたのですが、これはメーカー同士の遊びなのかバグなのか? とっても不思議でした。

 

(エルトリア)

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