Princess Memory

 彼が戦う理由、それは少女の笑顔のために。
1.メーカー名:エフアンドシー
2.ジャンル:RPG
3.ストーリー完成度:C
4.H度:E
5.攻略難易度:D
6.オススメ度:C
7.その他:ただのお使いゲームなだけではなかったよ。

(ストーリー)
 孤児だったコリンは、イーディン大陸のはずれにある村でサリアン・ポーニィの姉妹と一緒に育ってきた。
 ある日サリアンに「村外れの洞窟には宝が眠ってるだろうから、そーゆーのあたしにプレゼントしてくれないかなー」とせがまれたコリンは、いわれるままに洞窟に足を踏み入れ、そこで人形の様に立つ少女と出会う。
 無感情の彼女を放っておく訳にもいかず、とりあえず連れ帰り、フィーリアと呼ぶことにした。
 彼女はコリンの持ち帰るプレゼントの数々により徐々に表情を取り戻していくが、どこかに人間らしさが足りない。
 フィーリアに足りない何かを求めて、彼は更に、深部へと冒険を進めていった。

 Hゲーでは数少ないRPG。
 「Ys」のような画面で行うターン制の戦闘と、入る度に地形の変わる洞窟内は、いわゆる「トルネコの不思議なダンジョン」だ。
 このゲームは、フィーリアに洞窟内の宝箱に眠る様々なプレゼントアイテムを与えるため、幾度となく村との往復を繰り返す。
 そのために全体が単調化するので、これを地形の変化でカバーした。
 またこれにより、宝箱の位置とその中身が定位置を持たなくなるので、必要なアイテムを探すため、コリンが何度も洞窟に足を運ぶ理由にもなっている。
 一度クリアすると、最初から最高レベル(レベル30)でさくさくプレイできるとか、話をする女性キャラが、ADVの様に複数のポーズをもって画面上に現れる、マルチエンディングがある、といった部分もある。
 小さいキャラクターに全てを任せることなく、女の子を全身で強調するゲームは一般ゲーでも稀だ。
 画面切り替えの無い戦闘も、余計な緊張をしなくていい。
 全体的にまとまった、遊びやすいゲームといえる。

 シナリオは、別にコリンによって世界が救われるわけではなく、制覇されるのでもない。
 彼が洞窟を探検をして、魂の抜け殻となった少女・フィーリアを元に戻すために奮闘して、自分にできることを確立していく話。 
 全てが終わった時、コリンは「私のためにこんなに傷ついて」と泣くフィーリアに、「僕がこうしたかったんだ」と答える。
 このセリフに、コリンの成長の全てが凝縮されている。
 冒険を通して段々と成長していく様子は、スムーズにプレイヤーを納得させる。
 シナリオこそ変化しないが、エンディングは三人分用意されている。
 義姉のサリアンは、弟だったはずのコリンがいつのまにか男らしくなっていたことに気づく。
 しかし、自分は家の宿屋を継ぐ身。
 いつか出て行くであろう彼とは一緒にいられないという思いから、自分の気持ちに素直になれない。
 妹のポーニィは、本を読んではそこに夢を見る内向的な女の子。
 コリンを以前から気にしていたが、彼にとって自分は足手まといにしかならないことを判っているため、やはり素直になれない。
 フィーリアは二人とは逆に、感情を取り戻す度に段々素直になる。
 しかし素直過ぎて、自分の記憶が戻った時に、彼にこれ以上迷惑をかけたくなくて一人立ち去ろうとしてしまう。
 三人とも、直接的な言葉はあまり使わずに、そうだろうと思わせる会話が楽しい。
 フィーリアの変化に併せて会話が進むので、バランスもいい。
 彼女によって動き始めるそれぞれの心の動きを、ゆっくり味わって欲しい

 さて、判り易いゲームだからだろうか、苦しい部分もまた目立つ。
 まず、洞窟との往復というスタイル。
 洞窟は単調さを回避したといっても、本家「トルネコ」の様にひたすら深く潜るのではなく、アイテムを集めること、話のフラグを立てることが目的なので、洞窟そのものの魅力に欠けている。
 またフィーリアにアイテムを渡す行為は、サリアン、ポーニィを攻略する上ではフィーリアを無視しなければならないので、ただの作業と化す。
 洞窟のアイテムも、一フロアに地図が何枚も出て来たり、フロア毎に外にワープできるのにやたら回復アイテムが出て来たりと、出現率にばらつきがある。
 中盤で行われているバザーは、ミニゲームに見えるだけのただのお手伝いと、一度回るとすべて準備中になって二度と見られなくなる催し物ばかり(占いだけ無制限)という、まさにフラグを立てるためだけのイベント内容。

 キーコンフィグも無いし、何よりジョイパッドに対応していない。
 難しい操作も無く、使うボタンは二つだけなのに、終始キーボードを持ち出し続けるのはいかがなものか。
 シナリオはまとまっているが、20時間はかかるプレイが、実は最高レベルでのモードなら4時間程で終わってしまうので、ボリュームが少なく感じる。
 Hは、Hゲーとしての体裁を保つために入れられたとしか思えないほど意味無し。
 これなら、イベントCGを増やしてくれたほうがいい。
 一般ゲーにある手馴れたスタイルを取り入れたせいだろうか、少々作りが甘い印象を受ける。
 とはいえトルネコタイプは、RPGで女の子を引き立たせる方法として相性がいいようだ。
 簡単なゲームなので、一度プレイして、それを実感して欲しい。


(総評)
 一言でこのゲームを説明すると、「DQVのアレフガルド」にすむ少年が、「FFY」の世界からきた女の子のために、「トルネコのダンジョン」で戦うゲームである。
 私的には、ドリームキャストで4800円のソフトとして出せば売れるのでは? と思う。
 パソコン版で出したのは、ボリュームの少なさと、このゲームの特徴である「情報の少なさ」のためだろう。
 本作は、モンスターやアイテムは別として、ほとんど名前がない。
 プレイヤーに与えられるのは、コリン以下数名の名前。
 都・砂漠・草原が存在するという、イーディン大陸の辺境が舞台だということ。
 フィーリアがいた所は、蒸気機関の発達したブリタニア王国で、彼女はそこの第三王女だということだけである。
 他は、村・洞窟・旅人・長老・王様等の、一般的な名称のみ。
 フィーリアは一族の名前どころか、彼女の本名も出ない。
 ほとんどが、プレイヤーの想像に委ねられているのだ。
 これをプレイヤー主体のいいゲームと見るか、設定の手を抜いた悪いゲームと見るかは、まさにプレイした本人にしか決められない。
 難しいところである。
 こんなリスクを背負っていては、発売するのにお金のかかるコンシューマー方面に出られないのは当然だ。
 しかし「情報の少なさ」は、私にいい刺激を与えてくれた。
 エンディングと、この世界の種明かし(一発ネタに近い)になってしまうので多くは語れないが、どんなゲームをプレイするとしても「見たままを全て鵜呑みににしてはいけない」ということを再認識させられた。
 宿屋で寝ることは、「寝る」という行動を取ることであって、別に「地球が一回りする」ことと同義ではない。とだけ言っておこう。
 サリアンとポーニィは、日常と異なる世界を夢見るも、突きつけられた現実に言葉を失う。
 言葉を失った理由には、正直、私もびっくりした。
 このように、ゲームキャラのみならずプレイヤーをも巻き込んで意表を突いてくるゲームは、はっきり言って大好きだ。
 次も、「想像とびっくり」をさせてくれる作品を期待したい。

 (Mr.Boo)


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