ぱちもそ
 
 空を自由に飛びたい時、何が欲しい?
 一度でいいから、「もしも」の世界に行ってみたいと思わない?
 ドアをくぐるとそこはもう目的地、なんて夢の様だよね?
 …そうです。アレです。
 日本人なら誰もが知っているであろう、某有名ロボットマンガ
 この作品はあのマンガをパロディーにした、熱き物語である!(ちょっとカタリ)
 
1.メーカー名:創美研究所
2.ジャンル:ADV
3.ストーリー完成度:B
4.H度:A…だと思うが
5.オススメ度:B
6.攻略難易度:C
7.その他:皆さん、ご一緒に! ♪おいらの歌は萌え〜♪
 
 
(ストーリー)
 主人公・門司もじ太は、幼なじみの宗本みるかに下僕扱いされてストレスを溜めまくっている事を除けば、ごくごく普通の高校生だ。
 またしてもみるかに顎でこき使われ、ムシャクシャしているもじ太は、帰宅するとストレス発散も兼ねて机の引き出しにある厳選されたエロ本に手を伸ばす。
 しかし、突如その引き出しが勝手に開き、中から何かが飛び出してきた。
 あまりの非常識な事態に混乱するもじ太。そんな彼に引き出しから現れたぬいぐるみの様な物体はこう告げた。
「私の名はパチ公。未来からやってきた汎用型犬型ロボットってヤツですわ」
 
 
 まあ、何と言えばいいのだろうか…
 内容的には、実は結構普通のテキストADVで、「何もコレ、どら○もんのパロディにする必要なかったんちゃう?」というのが正直な感想だ。
 出だしのもじ太君が、かなりダメ入っていて、いかにも道化といった感じなのだが、オープニングイベントが終わって、選択肢が出てくるあたりから、人が変わった様に普通の男の子(と言うよりはいいヤツ)になってしまう。
 もちろん、それはオープニングでヒロインの1人である江戸川珠緒をレイプしてしまった負い目から来る事なのだが、ファーストプレイの時などは、ずいぶん戸惑ってしまったものだ。
 この様に「ぱちもそ」などという如何にも妖しげなタイトルの割には、意外と正統派な作りであり、ここら辺は少しイロモノのイメージで損をしているとも言えるだろう。
 ただし、流石に「ぱちもそ」を名乗るだけはあり、なかなか笑わせてくれるのも事実だ。パチ公の設定や、主人公らの名前が平仮名読みすると「もじもじた」「むなもとみるか」になるなど、パチ臭さが炸裂しまくっている
 だが、それ以上にヤバイのはキャラデザだろう。みるかはともかく、他のヒロインはどう見ても、眼鏡で気が強い委員長妖しい金髪の巨乳ねーちゃん(しかもポニー)、緑色の髪の犬ちっくロボットヤバイだろ!!!!??!?
 そうか! そういう点でも「ぱちもそ」か! うーんスゲー…
 しかし、問題はそのキャラデザの元になった作品を出したメーカーが、この作品とほぼ同時期に出した新作より、遙かに面白いという事実だろう。
 シナリオ数はバッドも含めると10、一部似た展開のものもあったので、各ヒロインごとに寸評してみよう。
 
 
宗本みるか
 一応、扱いとしてはメインヒロインに相当するので、ルートは複数存在する。しかし、その内一つはバッドエンドみたいなもので、もう一つはパチ公のアイテムを使って陵辱を繰り返すものなので、実質本ルートは一つだと言っていい。
 真面目なシナリオもHなシナリオも楽しめるのだから、バランスがいいキャラかもしれないが…
 彼女のシナリオでのキーワードである「主人公がみるかの下僕になるという約束」は、題材としては非常に面白いと思う。
 主人公が何故、みるかの下僕になったのか、どうしてみるかの前に立つと口が上手く回らなくなるのか。最初はみるかをしず○ちゃん+ジャ○アンみたいなキャラに見せるための、いわばギャグだと思っていたのだが、実際のトコロはとんでもない。
 ギャグでも何でもなく、コレは立派なトラウマというヤツだ。
 下僕になったきっかけを忘れてしまっているのもそうだし、一度脱下僕宣言をしてから、そのきっかけになった事件を思い出していくのも、みんな主人公の記憶にかつての事件から来る負い目、トラウマがあるからだ。
 ここら辺の描き方は、イベント挿入の仕方も申し分なく、かなり楽しめる。
 ただ、脱下僕宣言した直後、すぐにみるかの性格ががらりと変わるのは、どうか…
 オープニングでイヤな女オーラをバリバリに発散させていた彼女が、これ以降急激に大人しくなるのは、かなりの違和感。このイベント、起こそうと思えばゲームが始まってから、わりかしスグに起こせてしまうので、面食らってしまう事この上ない。
 まあ、これがきっかけになって陵辱ルートに進む事も出来る訳だが、ここら辺はもうちょっと上手く見せて欲しかったものだ。
 EDはオチとしてはちょっと弱い気もする。
 珠緒と和気藹々になってハッピーエンドというのも、ちょっとムシが良すぎるとも思うし。まあ、後でも書くけど委員長こと珠緒、彼女の存在はこの作品の中では、群を抜いているので外せなかったのだろうか。
 でも、せめてみるか単独EDは欲しかった所。一応、メインヒロインなんだからさ。

 
江戸川珠緒
 イヤ、すんごいシナリオ。
 どれぐらいスゴいかと言うと、あまりのラブコメぶりに俺っちが3分間部屋の中でのたうち回ったぐらいスゴいのだ。
 も〜う「ぱちもそ」なんてふざけたタイトルからは想像出来ないレベルで、純愛・青春・ラブコメなのであーる!
 つーか、この作品の真のヒロインはどう考えても、コイツだろう。
 シナリオのバリエーションが一番豊富なのも彼女だし、他のヒロインのハッピーエンドが、みんなで和気藹々として終わってたり、パチ公と安穏な暮らしを送るとかいうモノだったのに対し、唯一、一人の女性としてキチンと結ばれるハッピーエンドを迎えるため、一番しっくり来るのだ。
 特にハッピールートのシナリオは二転三転する、かなり面白いものになっている。
 起承転結どころの話ではない。面白い見せ場が数多く盛り込まれてるし、予想外の展開もあって、飽きが来ない。
 また、他シナリオの伏線もばっちり張ってあって、なかなか優秀なシナリオに仕上がっている。
 それをシナリオライターさんが狙ったのかどうかはともかく、非常に説得力がある。
 よくよく、考えてみればパチ公の目的は、あくまでも「もじ太にハッピーセックスライフをプレゼントする事」であり、別に特定の女の子ともじ太をくっつけるためにやってきた訳ではない。
 そして、パチ公が来た事によって、一番運命を大きく変えられたのは(悪く言えば被害にあったのは)、パチ公を手に入れたもじ太と、それによってレイプされる事になる珠緒なのである。
 この事件があったからこそ、ベニーは生まれてきた訳だし(詳しくは下のベニーの項参照)、本来「一生童貞のまま過ごす」筈だった主人公が、急にモテまくる様になった要因でもある訳だから。
 珠緒は、この「ぱちもそ」という作品の一番の主軸を担っている、重要なキーキャラクターなのだ。
 そして、そのキーにあたるこのシナリオをキチンと綿密に描いた事が、この作品の出来が良くなった重要要素なのは間違いない、と俺っちは思うのだが。
 

ベネット・スミス(ベニー)
 かなりアヤしい存在である彼女だが、その正体はパチ公が来た未来とは別軸に存在する未来からやってきた、宗本みるかの記憶を引き継いだロボットである。
 何と言っても、自分はもじ太が好きだから他の女の子に取られたくない、という思いと今存在しているみるかともじ太に上手くいって欲しい、と思っている事がせめぎあっているトコロが、ベニーシナリオの見所だろう。
 だから、ベニーは最初からもじ太に積極的にアプローチする反面、自分ともじ太とのセックスシーンをわざとみるかに見せつける様な、ちょっと危ない後押しをしてみたりもする。
 しかし、このシナリオで面白いのは、ベニーが「パチ公が未来からやってきた事によって作り出された世界」からやってきた存在だという事だろう。
 パチ公がやってきた事により、珠緒がレイプされた。この事実は、実際のトコロかなりもじ太にとって重要なファクターであり、彼の運命の転機だったらしい。
 現に、ベニーがもといた世界は、もじ太と珠緒は結婚しており、珠緒と結ばれるシナリオと同軸の存在ではないにせよ、かなりそれに近い世界だった様だ。
 ベニーは、そうなってしまう原因であるパチ公の破壊を目的にしている訳だが、珠緒のシナリオでも、彼女が襲われる時(未来のみるかであるコイツは、当然その事を知っているはずなのだ)にわざわざ主人公を図書館に誘い、珠緒が自殺するきっかけを作ったりもする。
 シナリオ途中でもじ太自身に「狂ってる…」と言われるが、なかなかどうして確かに、女の執念の恐ろしさを見せつける凄まじいストーリーである。
 片腕を失いながら、今までの事を説明するベニーはかなりの迫力だ。
 しかし、これだけハードなシナリオやっておきながら、やっぱりオチはみるかのハッピーシナリオと同じくみんなで和気藹々で終わってしまうんだよなあ…
 ここら辺、もうちょっとちゃんと収拾つけて欲しい。
 せっかくのいいシナリオが台無しにならないタメにも、ね。

 
パチ公
 もじ太を助けてくれる、犬型ロボット。立場的にはど○えもん。
 出してくれるアイテムがなかなかパチ臭くて笑える。
 また、遅刻寸前のもじ太に「バター付き食パン」をわざわざポケットから取り出して、「遅刻しそうな学生が食パンをくわえながら、通学路を走るのは定石」などと、なかなかのギャグもかましてくれる。
 しかし、家に帰るを選択し続け入る事の出来るこのルートは、パチ公が何故未来からやってきたのか、その真の理由が明かされる重要なシナリオだ。
 パチ公はもじ太を親ビンと言って慕い、どんな陵辱行為であれ喜んで手を貸してくれる。
 もじ太は、パチ公にとってはマスターであり逆らう事が許されないから、どんなに非道な行為にも手を貸すのかと思いきや…
 これまた、そういうプレイヤーの思いこみを逆手にとって利用している、上手いシナリオだ。
 パチ公はロボットだからもじ太に手を貸している訳ではない。かつて、自分が慕った未来のもじ太が、人間にどれだけヒドイ目に会わされたかを知っているからこそであり…つまり、非道な行為や陵辱に、あのトボケた顔で手を貸してくれるのは、全てパチ公自身の意志なのだ。
 このシナリオ後半の「実は私、親ビンに結構ウソついてました」から始まる、パチ公の独白はなかなかに感心させられる。
 一見「童貞のままで終わるもじ太に、ハッピーセックスライフをプレゼントする」なんて、いかにもギャグっぽいお題目も、実際は未来のもじ太が「俺は人類の半分を知らない欠陥人間だから…」と悲しそうに呟いたからこそだったという、ハードな展開は個人的にはかなり気に入っている。
 一歩間違えればギャグ&パロディになってしまうこの作品が、このシナリオ一本入っただけで、実に整合性のとれたものになっているのだ。
 もちろん、それは、この作品の大前提「未来の可能性は無限に存在する」に頼った部分も大きいのだが、本来なら単なるお笑い&パロディ設定で終わってしまうはずのパチ公の設定を、きちんとまとめているのは、実に見事。
 これで、このシナリオが番外編みたいな扱いを受けていなければ、もっと良かったのに…
 
 
 さて、この様にシナリオ関係は全体的に評価が高い本作品だが、流石に問題点もある。
 
 まず、勘弁して欲しいのがメッセージを一行一行わざわざ「 」でくくっている事
 この作品のメッセージウィンドウは四行分あるのだが、とにかくセリフの一行ごとに「 」がつくのである。それが例え、文章的につながっていたとしてもだ。
 もちろん、この仕様を意識しての事だろう、メッセージはかなり短くまとめてはいるのだが、それを一行づつ四行分まとめて表示するため、非常に文章が散発的に感じるのだ。
 はっきり言って読みにくいったら、ありゃしない。
 
 次に、シナリオのつなぎや、切り替え・省略の仕方が下手。
 みるか・珠緒のハッピールートなどは、それなりに書き込んであるし、読みごたえもあるが、それでも話の急展開が多すぎる。
 特に、珠緒陵辱ルートなどは、あれよあれよと言う間に展開され、もじ太の心理描写とかがあまり描かれないまま、最後に珠緒に刺される様にし向けて、本当に刺されて終わる、というちょっとプレイヤーおいてけぼりなシナリオで終わってしまう。
 他にも、Hシーンでコトがし終わったと思ったら、次の瞬間には翌日の学校の放課後に場面が移ったりとか、みるかと珠緒で3Pしたあと、いきなりハーレムエンドに突入したりとか、途中経過をあまり語らないで場面展開してしまうタイプのアラが目立つ。
 こういう点は細やかなコトかもしれないが、ゲームの雰囲気作りのためにも、もうちょっとちゃんと作りこんで欲しい。
 
 最後にシステムまわり、特にメッセージスキップが若干使いづらい事も付け加えておこう。既読スキップタイプなので、まだマシだが。
 いちいち、システムでメッセージスキップのON/OFFを切り替えないといけないのは、結構やりづらいものだ。
 解き終わってもBGMモードもないし…まあ、コレと言った曲もなかったが。
 
 
(総評)
 名作・大作というのには程遠いかもしれないが、良く出来た佳作としてなら、十分人に勧められる。
 意外と練られた設定、意表を突くシナリオ展開など「ぱちもそ」というタイトルにダマされると、結構イタい目を見るハメになるだろう。
 少なくとも、コレとほぼ同時期に発売された某大手メーカーの大作に比べれば、遙かに面白く楽しめた。
 とりあえず、次回作の発表もあった様なので、要チェック! だろうか。
 
PS:実は、この作品は「投稿九拾八式」に投稿を頂いたのをきっかけに採り上げてみました。この作品をオススメして下さったてく様に感謝いたします。
 
(梨瀬成)


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