Princess Knights
世界を救う、勇者と八人の選ばれし女の子達。
1.メーカー名:ミンク
2.ジャンル:シミュレーション
3.ストーリー完成度:C
4.H度:C
5.攻略難易度:E
6.オススメ度:C
7.その他:一身上の都合に加えプレイする時間を大幅に削られたため、二ヶ月近くもかかってクリアすることになったこの作品、なかなかに大変だった。
(ストーリー)
太古に神竜が創り、その神の血を引く竜人が統治する大陸・フェスタック。
長く続いた統治で神の血が弱まってきたある時、辺境の地にあるレンガルトが戦争を仕掛けてきた。
国は燃え、竜人である国王は殺された。
残された王子ランディス(主人公・名前変更可)は、ただ逃げるしかなかった。
それから三年、ある事件がきっかけで竜人の力に目覚めたランディスは、その力を振るうことが出来る女性=プリンセス・ナイツを集い、レンガルト打倒を決意し立ち上がった。
戦いを重ね、多くの女性達の協力を得て、ランディス一行は次第にレンガルトを圧倒する。
しかしその最中、彼は神竜がフェスタックを創るときに行った行為とレンガルトの関連を知り、実は振り回されているだけかもしれない自分にショックを受けることになる。
絶対の正義ではなかった自分の立場に悩む、彼の先にある答えとは何なのだろうか?
このゲームは、ステージをクリアすることによってストーリーを進めて行くシナリオ重視のシミュレーションゲーム。
クリア時の女の子の好感度によって、エンディングが変わるマルチエンディングを採用しているゲームでもある。
攻略できる女の子は仲間ユニットになる28人全員という大所帯で、全24ステージよりも多くボリュームはある。
ユニットとなる彼女達は、各々がファイター・クレリックといった6つの職業(というより得意分野)に分かれ、更に地水火風光闇の6つの属性に分かれている。
敵も同じく属性を持ち、その優劣で有利不利が決まるため、プレイヤーが組むパーティーはステージクリア重視かお気に入りのキャラ重視かを悩ませる。
1ステージの大きさは最大でも11x13程度しかないし、出せるユニットも敵味方合わせても10体までなので、小ぢんまりとした印象を受ける。
しかし、女の子のパラメータのダウンを避けるため一体も倒されてはいけないという緊張感や、敵モンスターを必要に応じて捕獲するなど、考えるべきことは多い。
またレベルアップもつらいので、その見た目とは裏腹にかなりの時間を要することになるだろう。
ただ敵のアルゴリズムは単純なので、こつさえつかめば三段階ある難易度のどれでもさして苦労することはない。
独創的で面白いのは、武器によって自身をパワーアップさせるのではなく、捕獲したモンスターを自分に融合させ、その特徴によってパワーアップを図る「ユニオン」というシステム。
これにより、キャラのステータスと使える技と属性が変化し、闇属性のファイターを水属性にして回復系魔法も使えるようにする、といった戦術においてのバリエーションの幅を広げた。
このシステムは、お金をかけて高い装備を揃えたり強力なアイテムを得る大抵のゲームに比べ、装備収集の手間を省くと同時に、オリジナリティを示すことに成功したと言える。
シナリオは、システムを重視するために判りやすい形式を採ったのか、国を追われた王子が仲間を集めて敵国を倒し、更にその背後にいる大ボスを倒すという(おそらく一番近いのがファイアーエムブレム)、いわゆる「王道」を採用した。
そこに女の子達が付加される。
反旗を翻すランディスが、レンガルト打倒に向けて進軍する途中には、戦いに身を投じた女戦士や戦いの隙間を縫うシーフ、戦いに追われた女の子達等の多くの出逢いが待っている。
他にも、腕を自慢に独自の技を磨き続ける子や、金を稼ぐために体を売る子など様々なシチュエーションが彼を待っている。
彼女達は、ランディスが与えてくれるナイツの力で現状を打破せんとするため彼に同意し、一夜を共にする。
そのためHは必ず両者同意のもとに行われ、無理矢理することがない。
ナイツになるには、竜人の精を体の中に受け入れなければならない。
それはSEXによってもたらされる。
SEXをすることは彼女達にとって力を得るために必要不可欠な行為なので、そこに至る過程に矛盾はなく、「実は遠い血縁でした」とか、「志を同じくする同志」というだけで集うコンシューマゲームより、集団そのものに説得力が感じられる。
女の子が初めてだろうがそうでなかろうが快感に打ち震えるのは、竜人という人を超える力を持つ者のイチモツの性能(立派な上に快楽を感じさせる効果があるらしい)がそうさせるらしく、ご都合主義的だがSEXを受け入れる理由として納得できる設定もある。
本筋には、王道だけで終るのはプレイヤーに対してアピールが弱いと考えたのか、中盤から後半にかけて意外性を持たせている。
前半は立ちあがったランディスを後押しするため、やる気を喚起させるイベントが続く。
彼の力を得てレンガルトを倒す野望に燃えるアーネス、竜人を加護する精霊の守り人として彼の力を試すマレーナ、彼の目の前で身内を亡くしてしまうナオのイベントなどはそれがよく現れているといっていい。
しかし、そのやる気は中盤から登場する謎の女性ヴァネッサによって、徐々に自分の正当性に対する疑問へと変わる。
そして後半、敵の将キプロスから告げられる神竜が太古に邪神ガルデスを封印する際に行った、レンガルトの国に根付くバドムの民への行為。
ガルデスの守り人、というより生贄とされ人非人同様の扱いを、あろう事か神竜から受けたがために、その敵を討たんと神竜の加護を受ける民の国を攻めてくるという、歪んではいるが確かにある正当性にランディスは苦悩する。
しかし彼は、「復讐は復讐しか生まない、これからのことは自分たちが変えていけばいい」という自分なりの答えを見出し、悪の根幹ガルデスを倒す。
分かりやすい展開だが、ひねった上で筋を通してまとめるところに作り手の丁寧さを感じる。
ランディスのセリフにも、その丁寧さは現れている。
基本的に彼の性格が控えめなため、ゲームを通してあまり変化がないように見えるが、前半の戦争そのものに対する問題から、後半の異種族間の問題へ移る間に「しなきゃ」から「してみせる」に口調が成長を思わせる変化を見せる。
Hシーンも同様に、最初の自信なさげなものから回数を重ねるに連れ、自身のあるものへと変わる。
28人も相手をすれば当然か?
これらの面白さ、丁寧さの裏にある問題は大きい。
まず、女の子のシナリオは無いに等しいこと。
彼女達はランディスに遭遇するためのイベントしか用意されていない。
例えば、ギルドから抜け出して捕まった所を助けられたティキ。
そして、戦争で客足が減ってしまったために女体盛りを父親から強要されていたファーナ。
確かに個々の生い立ちを連想させるのだが、仲間になれば彼女達の話しはそこで全て終了してしまい、それぞれのシナリオが発生することはない。
Hシーンにしても、あるのはナイツになるための一回きり。
更に、彼女達はエンディングでその後の生活が描かれている。
ゲームクリア時にパラメータを満たした女の子を選択・結婚することがこのゲームのマルチエンディングのポイントとなっているため、ランディスが嫁として選んだ瞬間、選ばれた女の子はやっと落ち着いた生活を奪われてしまう。
画面では彼女達は幸せそうに見えるが、そこに彼女達の自由はない。
あるのは、単にマルチエンディングと設けるため、 ユニットとして使うため、Hシーンを見せるため、という存在理由だけ。
一応H二回目のシーンを持つキャラが6人いるが、仲間から外すことの出来ないクレアを含めてもシナリオ上で干渉するようなキャラはいない。
唯一関与し、散々ランディスを悩ませるヴァネッサですら「仲間にしない」事が出来るため、重要キャラ扱いされてない。
そして、シナリオもないのにゲームクリア時に条件を満たしていれば、それが何人でも、人数分(最大8人)だけ同時にエンディングが選択可能になるのも、攻略を楽にして数を用意しただけというのがありありと見えてしまい、女の子への魅力は半減だ。
次に8人パーティーという上限。
バランスは最初に述べた戦闘スタイルから、ステージ毎の人数としてた確かに適度。
問題なのは例えばドラクエ3の「ルイーダの酒場」、シャイニングフォース2の「本部」のような「集合場所」が存在しないことにある。
もっと単純に言えば、ファイヤーエムブレムの様に「仲間にしたキャラを好きなステージで戦闘に出す」ことが出来ない点だ。
このゲームでは、女の子を確保すればいつでも戦闘に使えるなんて事はない。
仲間が8人(クレアは外すことが出来ないため正確には7人)を超えたとき、誰かを外さなければならない。
そして、はずした女の子は二度と戻ってきてはくれない。
これは、マルチエンディングの条件として女の子にパラメータを設けたことがアダとなっている。
このゲームは、金を稼ぐことも、レベルアップも難しい。
だから、たくさんの女の子を連れてもパラメータの上げようが無いため、人数を制限したという事だろう。
だから、エンディングを見たい女の子はどんなにクリアが苦しくても必ず連れて行き、場合によっては戦闘に出すことにもなる。
女の子達は、前述のように職業と属性を持っている。
しかし、彼女達は別に次のステージに合わせた職業を伴って現れるわけではないため、現れるまま仲間にしても次ステージのフォローがきくとは限らない。
「ユニオン」である程度フォローは出来るが、バランスのいいユニットでゲームを進めることに比べると、時間もかかるし苦戦も強いられる。
結果シミュレーションを楽しみたいプレイヤーは、このステージはファイターのみでクリアして、次の面はアーチャーのみでクリアして、などの自由が制限される。
反対に女の子を集めたいプレイヤーは、ユニオン、属性、被害の少ないクリアの手順など余計なところに気を回さねばならなくなる。
どんなプレイヤーに向けて作ったのか、どっちつかずの状態でははたしてどれほどのプレイヤーが楽しんでくれるか疑問だ。
そして最大の問題が、パーティーの上限を超えた時の女の子の切り方だ。
ランディスの甲斐性の限界が8人だという設定でもあるのなら、仲間に加えてと望む女の子を断るのも納得が行く。
もちろんそんな設定はどこにもなく、それだけに彼女達との別れはランディスどころかプレイヤーにも手痛いものとなった。
彼女達は別れ際、それぞれが口々に
「ボクとキミの意見が合わなかったんだね」
「アタシを外したことを後悔するんだね」
「私がバドムの民だからか」
「私はお役に立てなかったですかぁ?」
「ボクはボクなりにレンガルトと戦っていくよ」
「また逃げ回る生活に逆戻りか」
など、どこか冷ややかなセリフを残していく。
ランディスはどうか知らないが、作り手がマルチエンディングだと提示しているゲームのキャラに対して、クリアした後以外でプレイヤーが「おまえは要らない」というはずがないだろう!
それが初プレイならなおのこと思うはずがない。
プレイヤーが考えもしない断りの選択をし、もらいたくもない冷たい言葉をもらう。
しかもそれを、次に仲間にする女の子の上にかぶせて表示するのは、プレイヤーを侮辱する行為ではないか?
せめて、宿屋に戻ってから泣く泣く別れるとか、8人揃うと「仲間にする」という選択肢が出てこなくなる、といった工夫ができなかったか?
プレイヤーの考えを無視して、女の子達にプレイヤーをさげすむセリフを言わせる。
これでプレイヤーが納得してしまったら、彼女達はHするために使い捨てにされと言えないか?
こうなると前述した通り、女の子はまさに「モノ」扱い以外のなにものでもない。
エンディングも、「ランディスに都合のいい女選び」でしかなく、プレイした努力と達成感が一気に冷める。
他にも、行く先々の街や城に変化が見られないし、もたらされる情報は皆無に等しいし、街毎に店の数は異なっても、中で売っているものもほぼ同じ。
女の子のパラメータは、エンディングに影響のある「好感度」以外意味を成さず、好感度も、店で女の子に何か買ってあげた時に笑顔になったアイテムの中で一番安い物を延々と買いあたるだけでOKというお粗末さ。
とにかく、シミュレーション部分と女の子が完全に遊離しているため、まるで別の人が作ったようにしか見えない。
以前「風と大地のページェント」でも問題点の一つとして挙げたが、例えばファイヤーエムブレムの様に、懇意の人と隣接したら会話を入れてパラメータの変化を誘ってもいいし、女の子に隣接した敵ユニットを倒したら好感度が上がるといった戦闘面での融合を図ることは出来なかったのだろうか?
とにかく、シミュレーションからかけ離れた女の子の扱いだけがかみ合わないという印象の強いゲームだ。
(総評)
シミュレーションは特徴的で、ファイヤーエムブレムを始めとするストーリー重視の類いの中では、間違いなく面白い部類に入るゲームだろう。
レベルアップは、前半が苦しいがある程度上がると永久パターンが使えるため、多少時間はかかるが結構楽に上がる。
各ステージにあるターン制限は、これを防ぐために設けられたのだろう。
ユニオンのために捕獲するモンスターにも上限はあるが、パーティーの人数や持ち技を考えるとバランスはいい。
小ぢんまりとした作りも、いきなり大掛かりなシステムをプレイヤーに突き付けるより堅実だし、プレイする側にとって遊び易くていい。
ストーリーは「ロードス島戦記」のロードスとマーモのような民族の関係が、ゲーム中のレンガルトの勢いや後半の邪神復活を軽いものにさせない。
Hを除けば、コンシューマレベルの作品として煮詰めてみたくなる雰囲気さえ漂わせている。
それだけに、パラメータ操作をはじめ、ユニット的にも女の子の扱いがずさんなのは残念だとしか言いようがない。
これでは、一歩間違うと「ヤルダケやって気に入った女の子をはべらせた鬼畜男が、世界征服を目論むゲーム」になってしまう。
惜しいのは、王道パターンにシナリオ構成がおんぶに抱っこしてしてしまったため、ランディスの超えるべき壁だったはずのキプロスと、ストーリーのけん引役という重要な役割を持ちながら、他の女の子達と同列にされてしまったヴァネッサという二人のキーキャラの弱さ。
キプロスは、オープニングでランディスの父を倒すというレンガルトにとっての大金星を挙げているのに、その後はランディスの成長ぶりをレンガルト城で聞きながら、うろたえるばかり。
終盤やっと出てきたと思ったら、その頃には既に最高レベルに達しているランディスに瞬殺されて、あえなく退場という情けなさ。
ヴァネッサは、ランディスに徐々に自分がレンガルトの民と同じバドムであることや、過去に神竜が行ってきたことなどを生い立ちと共に明かしていく、 ゲーム中唯一本編で素性が明かされたキャラだ。
にも関わらず、実は今までの敵対行動は芝居で、本来の自分の目的はガルデスの倒し方を探ることだったとストーリー上で判明したとたん、切捨て可能な1ユニットに格下げとなる。
仲間にしなければ、彼女は無言のままランディスのもとを去る。
一番重要なキャラが一転、一番惨めなキャラへと貶められる。
最初からいるのに切ることも出来ず、最後までレベルアップが難しい上に対した能力を持たないクレアより、ストーリー上の重要性もユニットとしての能力も上で、何よりキャラが立っているヴァネッサこそ切るべきではないキャラだと思えるのに、この扱いは何なのだろう?
ヴァネッサでさえこの扱いなのだから、他の女の子達がただのモノ扱いなのは当然のことなのかもしれない。
とにかく言えるのは、それまで私がプレイしたシミュレーションゲームの中でも、特に戦闘と女の子がかけ離れてしまっている稀なゲームだったということ。
私以外の人がプレイすればまず間違いなく「HCGを挟むだけのシミュレーションゲームで、Hゲーどころかギャルゲーにもなってない」と選ばれなかったソフトの方へ一蹴されて終りだろう。
実際私も、今回の評論では女の子に関しては誉めてない。
改めて、シミュレーションをHゲージャンルへ持ちこむことの難しさを実感させられたゲームだった。
余談だが、ゲーム開始直後、ランディスは竜人の血を引く最後の一人だった。
しかしその血が目覚めた後、彼はナイツを増やすため、このゲームの中で28人の女の子達に自分の精を与えることとなった。
一度ナイツになれば、その力が消えないことはイノアのエンディングで語られていたので、彼の竜人としての精が強力なのは間違いない。
とするならば、28人の内の何人かは一撃必殺があってもおかしくないだろう。
つまりランディスは、国を救うのみならず竜人の血が絶えることも救っていたことになる。
なかなか大した青年だ。
これで、国も竜人も安泰だね。
(Mr.BOO)