ONE2 〜永遠の約束〜 
 永遠の世界の物語、少し装いを変えてますが、是非前作をプレイしてからどうぞ

1.メーカー名:BASESON
2.ジャンル:マルチシナリオADV
3.ストーリー完成度:A
4.H度:C
5.オススメ度:A
6.攻略難易度:D
7.その他:続編のようで続編でなく、無関係のようで無関係でなく、非常に面白いスタンスの作劇だった
 

(ストーリー)
 主人公:貴島和宏は、単身赴任の父親の健康管理のため父と2人暮らしすることになり、2学期から櫻衣学園2年に転入してきた。
 見知らぬ町での慣れない生活に戸惑う中、それでも及川という悪友や学級委員の小菅奈穂といった知り合いもできた。
 そんなある日…。


 この物語は、タイトルから分かるとおり、1998年に発売された『ONE 〜輝く季節へ〜』の第2作だが、直接的には続編という形ではない。
 前作の登場人物は1人も登場しないし、舞台となっている町も前作とは何の関係もないからだ。
 また、前作はTacticsブランドだったのにわざわざ違うブランドから出しているし、周知のとおりスタッフは抜けてしまっている。
 その上、基本的には「永遠の世界」という前作のメインテーマも引きずっていないのだ。
 前作での「永遠の世界」は、“永遠に変わらないものを求める者が辿り着く場所”だったが、今回ヒロイン達が消えてしまう理由は、“自分の存在意義を見失ってしまった”ことによる。
 つまり、「永遠の世界」の定義そのものが違っているわけだ。
 それなのにどうして「2」を名乗れるかというと、非常に説明しづらいのだが前作の設定を引きずっている雰囲気があるからだ。
 一口では説明できないので、各ヒロイン毎にまとめながら書いていこう。
 攻略した順ではないことを先に断っておく。

(小菅奈穂シナリオ)評価:A
 和宏は、前の学校と代数幾何の進度が違うため、周りに追いつくためのプリントをやる羽目になったが、自力では解けず、奈穂の助けを借りることにした。
 やがて和宏は、奈穂が学級委員で生徒会の執行部に所属し、そば屋でバイトして自活しているという超多忙なくせに、お人好しで人に頼まれると何でも引き受けてしまうことを知る。
 そして、奈穂が幼いころに母に捨てられ、その際、「良い子にしていれば迎えに来るから」と言われたことを支えに「良い子」でい続けていることを知った。
 奈穂が無理をしすぎないように手伝いを始めた和宏だったが、それに伴って及川の様子がおかしくなってきた。
 及川が奈穂を好きだと知り、自分もまた奈穂を好きだと気付いた和宏。
 そんなとき、奈穂に母から迎えに行くと連絡が来たという…。

 奈穂のシナリオは、このゲームのサブタイトルである「永遠の約束」と、OPテロップの「あなたの優しさで私を壊して」の両方がキーワードとして登場する唯一のシナリオであり、それ故に奈穂がこのゲームのメインヒロインと言える。
 結論から言えば、「良い子にしていれば迎えに来る」という“永遠に自分を支えてくれる約束”は、奈穂が自我を保つために生みだした幻想に過ぎない。
 その言葉自体は本当にあったのだとしても、「迎えに行く」という連絡が入ったというのは奈穂の妄想であり、奈穂は毎年11月9日が近付くとその妄想を引っぱり出して母を待ち、その日の夜になると「日にちを間違えた」と結論して妄想を片づけるのだ。
 及川も、かつて奈穂がそうしているのを目撃しており、それだけに一歩引いていたり、和宏に訳の分からない助言をするということになる。
 これは奈穂の自我を守るための防壁であり、和宏はそれを壊すことで奈穂を現実に引き戻すことになる。
 結果、奈穂は1年にわたって行方不明になるのだが、困ったことに、奈穂がみんなの記憶から消えたのかどうかということについては、はっきりとは語られない。
 奈穂がいなくなっても誰も何も言わないということについては言及されているのだが、それはどちらかというと「誰も気にしない」というニュアンスが強く、記憶から消えたという意味合いが感じられないのだ。

 困ったことに、このころは及川と和宏の仲は決裂しているから、及川が奈穂のことを覚えているのかどうかについても全く触れられない。
 ほかのシナリオでは及川の反応がバロメーターになっているので、その辺の判断が難しいところだ。
 あおいという少女との会話で、「覚えてる人がいた」という感じのことを言っていたりして、一応みんなから忘れられているように感じられる描写もあるにはあるが、和宏は、奈穂を慕っている孤児院の子供達に会って確認もしていない。
 また、和宏自身は「忘れられたら楽になるのに」と考えており、“忘れないための努力”をしようという意図がまるで感じられないので、“忘れられた”のではなく、“誰にも気にしてもらえない”という意味合いに感じられる。
 ただ、このシナリオでの中心は、戻って来るという保証もないのに待ち続けることの辛さなので、その辺は曖昧でもいいのかもしれない。

 そういうわけで、このシナリオは単体としてはなかなかのものだが、ほかのシナリオに全く繋がっていかない。


(望月綾芽シナリオ)評価:A
 ふとしたことから、クラスの中で浮いている綾芽に興味を持った和宏は、やがて綾芽のお気に入りの場所である旧校舎の屋上で綾芽と過ごせる程度に親しくなり、その時間が楽しみになった。
 そして、綾芽を見ているうちに思い出した初恋の相手:幾美との記憶。
 隣町の親戚の家に遊びに来ているときに知り合い、ある日突然その死を知らされ、悲しい過去として封印していたものだった。
 どこか幾美に似た雰囲気を持っていた綾芽は、幾美の妹だったのだ。
 やがて綾芽から告げられた幾美の死の真相…それは、幾美が誰からも忘れられて消えてしまったという信じられない事実だった。
 今、幾美のことを覚えているのは、綾芽と和宏だけだという。
 綾芽は、幾美の存在をあっさり忘れてしまった両親や周囲の人間への絶望から、人との関わりを嫌うようになっていたのだった。
 そんな綾芽の心を解きほぐそうとする和宏は…。

 このゲームで唯一、前作と同様の「永遠の世界」に触れるのがこの綾芽のシナリオだ。
 綾芽は、前作の里村茜に位置するキャラクターとして存在している。
 すなわち、「永遠の世界」に旅立った人間が周囲の人間全てから忘れ去られてしまうことを最初から知っている存在なのだ。
 ここでは、前作で起きた事件が“永遠の世界を求めた男の子の物語”というフィクションとして幾美の口から語られる。
 幾美は、自分が居所がないと思ったから永遠の世界に旅立ってしまった。
 そうさせたのは周囲のせいだということ、そして消えてしまえばそれまでどんな人間関係を築いたとしても無意味であるということが、綾芽の周囲に無関心な態度を生んでいる。
 それが、和宏が幾美を覚えていて、なおかつ綾芽との距離を縮めようとし続けたことから、綾芽は和宏に心を許すようになる。
 だが、和宏に夢中になるということは、幾美のことを想う時間が減るということを意味している。
 ラストで、幾美のことを言われてハッとしたのは、綾芽自身が幾美のことを忘れかけていることに気付かされたからではないだろうか。
 綾芽にとってこれまで自分が生きる糧だった姉への想いと、新しく一番大切になった和宏の存在とが両立できないのではないかという不安から、全てを捨てて姉のことだけ考えていられる世界を欲した結果、綾芽は消えた。
 そして、ここから先は、和宏が茜の立場になり、綾芽は前作の主人公:浩平の立場になるのだ。
 前作で語られているとおり、「永遠の世界」に旅立った者が帰ってくるには、この世界で自分を待ち続けてくれる人の存在と、その人との間に結んだ絆が必要になる。
 幾美は、消える前日に和宏に『一緒に来てもらうわけにはいかない』という意味のことを言っている。
 だが、綾芽は一度は確かに和宏の存在を求めたから、待ってさえいればきっと帰ってきてくれる…そう信じて和宏は待ち続ける。
 そして、ラストに綾芽は帰ってくるのだ。

 構成上、前作のように“まず消えてED曲、そしてエピローグと本当のED曲『輝く季節の中へ』が流れる”という構成にはしづらかったようで、綾芽が帰って来てからOP曲が流れてエンディング、その後にED曲となる。
 エンディングにOP曲が流れるのが綾芽だけということから、彼女が特別なヒロインであることが分かる。
 また、綾芽が「あなたの優しさは私を壊してしまう」からと和宏の前から消えてしまうのも奈穂とは対照的だ。
 これらから、鷹羽は綾芽を裏ヒロインと位置づけている。


(香咲乃逢シナリオ)評価:B
 散歩に出掛けて道に迷ってしまった和宏は、犬の散歩中の香咲乃逢(こうさき・のあ)に出会った。
 学校で再会し、乃逢が1年で女子陸上部員だと知った和宏は、陸上部の練習に付き合うようになり、やがて乃逢の過去を知る。
 彼女は、中学時代全国8位という実力を持ちながら膝を故障し、それでも走ることへの想いを捨てきれずに櫻衣で陸上部に入ったのだ。
 大会に出るとなれば記録に拘らずにいられないという理由から大会を避ける彼女に、先輩の蔵谷が2人だけの大会を提案する。
 そして大会当日、乃逢は走っている最中に再び膝を壊してしまった。
 そして、誰もが乃逢のことを忘れ始める。

 一人称が「ボク」で、天真爛漫系だが、実はヘビーな過去を持っているキャラだ。
 “とにかく走っていれば幸せ”という彼女の態度は、実は“記録に拘って膝を壊した過去”の裏返しであり、「記録」というものを考えずに済むよう、大会を避け続けてきたのだ。
 それを知った上で提示された蔵谷のアイデアは、“雰囲気だけ大会を楽しもう”というものであり、記録を残さない=タイムを計らないという前提で、大会に向けて気合いを入れていく過程を楽しむもののはずだった。
 だが、驚くべきことに、乃逢はそんなものですら記録に拘らずにいられなかったのだ。
 それも、科学的な練習方法でないことを承知の上で、根性根性ド根性な詰め込み練習を重ねてまで、だ。
 しかも、途中で膝に不調を起こして「大会」中止の危機にさらされながら、“膝の不調を隠す走り方”を編み出すなど、どう考えても方向性を間違っているとしか言いようがない。
 その拘りは、『記録を取らない』という前提をも覆し、案の定「大会」中に膝を壊して今度こそ再起不能になってしまった。
 この“後先考えていない行動”の故に、鷹羽はどうしても乃逢に同情できない。
 周りが必死になって乃逢の膝に負担を掛けずに楽しく走ろうとしているのを承知の上で、しかも蔵谷の実力を考えれば無理しなくても乃逢の楽勝なのに、膝を壊すまで頑張るなど、自業自得以外の何者でもないどころか、恩を徒で返す事態になっている。
 事実、そのせいで和宏と蔵谷は停学まで食らっているのだから。
 「ボクの気持ちが分かるんですか?」とはよく言ったものだと思う。

 ただ、誰もが乃逢を忘れ去っていくという部分の描写に関しては文句の付けようがなく、周りが乃逢に気を使って距離を取っているかのように(和宏には)感じられるのに実は忘れているという見せ方は効果的だった。
 特に、和宏さえ忘れかけてしまい、綾芽に言われて踏みとどまるという展開は、綾芽のシナリオ展開があったればこその持っていき方だと思う。
 逆に言うと、綾芽シナリオを解いた後でないと、その意味が分からないのだが。
 そして、乃逢が“走らなくても存在していい自分”を見つけて、消えることなく現実に踏みとどまれたということが、今作での“消える”ということの性質を垣間見せてくれる。


(芹沢心音シナリオ)評価:B
 登校中に偶然出会った少女心音(ここね)は、なぜか和宏になついてしまい、大事にしていた人形を和宏に預ける。
 可愛い女の子になつかれて悪い気がしない和宏もどんどんのめり込んでいき、2人が恋人同士になるのにさほどの時間は掛からなかった。
 だが、和宏がなぜか懐かしい気がする人形のことを聞いた途端、心音の様子がおかしくなり…。

 ちょっと特殊だが、忘れていた幼なじみという形式だ。
 和宏は、幼いころに隣町の親戚宅に1週間くらいいたことがある。
 これは恐らく幾美に会ったころ滞在していたのと同じ親戚だろうが、このときに心音と出会い、別れの際に件の人形をプレゼントし、いつか迎えに来ると約束していた。
 そして、和宏が頭を打ってそのことを忘れていたということが実は伏線になっており、心音は和宏を待ち続けられずに既にこの世にはいなかったというどんでん返しが待っている。
 心音が既に消えていて一時的に戻ってきたのか、それとも幽霊だったのかははっきり語られないが、和宏の気持ち次第では彼もまた消えかねないという状況からすると前者なのだろう。
 ただ、そうすると、早川直樹のように心音に思いを寄せる生徒の存在が謎だ。
 それと、このシナリオは前作の長森瑞佳のメタファーとしても存在しているようで、膝枕して消える展開、笑顔で居続ける約束など、瑞佳のシナリオを知っているとちょっと深みが増す。

 いずれにせよ、和宏が周囲から忘れられるという展開には、前作の重苦しさが一時的にせよ復活していて良かった。
 ただし、鷹羽的には、“数年後にまるで生まれ変わりのように現れた幼い心音”というエンディングは納得がいかない。


(深月 遙シナリオ)評価:B
 副担任で音楽教師の遙が弾くピアノ(オリジナル)曲に魅せられた和宏は、足繁く音楽室に通ううち、麻生久遠という女生徒の練習に付き合うようになった。
 音大への推薦を受けるため、コンクール入賞を目指す久遠の練習を見守るうち彼女とも親しくなっていく和宏は、遙が有名な音大の出身であることを知る。
 やがて久遠は、担任の児島と『コンクール入賞を果たせなければピアノをやめて受験勉強一筋になる』という賭けをすることになる。
 そしてコンクール当日、遙がかつてコンクール会場から逃げ出したという過去を知った久遠は、動揺から調子を崩して落選してしまい…。

 誰がヒロインなのか分からない展開をするシナリオだ。
 鷹羽は、派生で久遠のシナリオがあるんじゃないかと思ったくらいだ。
 そのせいか、遙の独白が結構多く、和宏は知らないがプレイヤーには遙の過去に何かあったことが分かっている。
 結局、遙は“超えられない才能の壁”の前に挫折した人間なわけで、だったら夢に破れた先輩として、もっと早い時期、久遠がプレッシャーに襲われる前に、予め自分が限界を感じて夢を捨てたという過去を教えておくべきだったのだ。
 結局のところ、自分の陰の部分を見せないまま綺麗事で人を導こうとしてボロが出ただけのことだ。
 この点についてはあまり同情できないのだが、さりとて責められなきゃならないほどに悪いこととも言えない部分でもある。

 このシナリオでは、和宏は遙のことをほぼ完璧に忘れてしまう。
 ただ、遙のピアノ曲のメロディーだけは忘れておらず、遙はそれをよりどころにして現実に帰還する。
 遙が常に開けておいた窓の隙間が、メロディーの記憶を呼び起こし、まるでそこから帰ってきたかのように遙が後ろに立っているというクライマックスは幻想的だ。
 忘れたことさえ忘れているのにピアノ曲だけ覚えているという部分をもっと印象的に見せられたなら、このシナリオはさらに良くなったと思う。
 実は、ここでも前作の茜のシナリオを彷彿とさせる部分がある。
 和宏がいつの間にか名前も忘れて「あのヒト」としか言えなくなっている部分だ。
 茜は、消えた幼なじみの名前を言っていない。
 思い出などの具体的な出来事の記憶は残っていたらしいが、名前は忘れていたんじゃないかと思える描写であり、茜が「忘れたことさえ忘れてしまいそうで」と焦燥感に苛まれていたのは、それを自覚していたからだと思う。
  どうやら印象が強かったことは忘れにくいようで、名前のような外形的な部分はどうでもいいらしい。
 知った顔なのに名前を思い出せないというのは、実生活でもよくあることだ。
 今回の和宏も、まず名前を忘れるところから始まったわけだ。

 1つ疑問なのが、遙のせいでコンクールをメチャメチャにしてしまった久遠までもが遙を忘れていることだ。
 強い思慕があったればこそ裏切られた怒りが大きかったわけで、しかも自分の将来を左右するほどの事件の張本人への恨みをそうあっさりと忘れてしまっていいものか。
 しかも、ピアノ曲自体は、久遠も覚えていた。
 この辺りのエクスキューズも欲しかったところだ。


 まとめてみよう。
 このゲームは、大きく分けてメインヒロインの奈穂、裏ヒロインの綾芽、その他のヒロインの3種類のシナリオに分けられる。

 乃逢・心音・遙のシナリオでは、“誰からも必要とされない、存在する意味がない自分”という絶望の中、世界から取りこぼされそうなヒロインが、“強くその存在を求めてくれる相手”=和宏によって現実に踏みとどまるという展開になっている。
 ここでは、遙の“闇のような世界で、自分の意識や記憶がゆっくりとなくなっていくような感覚”という言葉に象徴されるように、明らかに前作の「永遠の世界」とは違う世界が描かれている。
 綾芽シナリオでは、素直に前作を受け継いで“自分が求めたから永遠の世界に旅立ち、現実に留まりたいと思うから戻ってくる”という展開になっている。
 綾芽は、気を抜いたら自分も幾美の存在を忘れてしまうのではないかと怯え、永遠に姉を覚えていられる、和宏という“変化をもたらすきっかけ”がいない世界を求めて消え、結局和宏という“一番好きな人”を求めて帰ってきた。。

 対して、奈穂のシナリオでは、“いなくなっても誰にも気にしてもらえない存在”としての奈穂のスタンスが中心を占めているため、実際にみんなの記憶の中から消えたのかどうかという部分の描写に力が入っていないのだ。
 むしろ、このシナリオのキモは『良い子でいる』という目標に向けて涙ぐましい努力を自分に強いる奈穂と、それに対する和宏と及川のアプローチの違いにある。
 両者とも、奈穂が無理をしすぎて倒れないようにという目的は同じなのだが、和宏は無理の度合いを下げるために手伝おうとし、及川は無理だと思い知らせようとするという方法論の食い違いがある。

 そして、奈穂の“妄想の中に救いを求める”生き方を崩せないと諦めた及川と対比することで、和宏の忘れられない奈穂への想いを浮かび上がらせているのだ。
 だから、周囲が実際に奈穂のことを忘れたかどうかはあまり関係ない。
 極端なことを言えば、『奈穂が無理をしすぎて結核になったら、完治して戻ってくるまで待てるか』と置き換えてもいい。
 自分が犠牲を払ってでも一緒にいたいと思えるかどうか、そして相手を傷つけてでもより良い未来を求めるか、それを試されるシナリオだと言えよう。
 
 ともかく、制作者側が一番やりたかったのは、奈穂のシナリオだったのだと思う。
 政治的な事情で『ONE』の続編として作ることになったような気がするんだよね、奈穂の扱い見てると。


(総評)
 上記のとおり、このゲームはシナリオによってテーマが大きく違う。
 「永遠」や「約束」というキーワードすら登場しないシナリオもある。
 どうしてこのように統一性のないシナリオが揃ったのかと言えば、前作と同じように作ったのでは受けないだろうことが分かりきっているからだ。
 前作同様に主人公が消えるのでは、真新しさの欠片もない。
 だから、立場を逆転させてヒロインが消えるようにしてみたわけだが、それではシナリオの変化が付けにくくなる。
 そこで、「永遠の世界」へのアプローチを変えてみることで、シナリオ進行に変化をつけたのだ。
 その結果が、消えかけるが消えない乃逢、和宏の記憶からもほとんど消えながら帰ってきた遙、とうとう同じ姿では帰ってこられなかった心音という変化球なのだ。
 これらは、それなりに効果を出していると思う。
 前作の設定に乗っかることで、それを踏まえたシナリオ作りをするというパート2ものの特権を巧く利用している。

 だが、そのために前作を超えられなかった感も否めない。
 それなりに整っているシナリオ揃いなのに、終わってみると不思議なほど心に残らないのだ。
 前作での茜の「忘れたことすら忘れてしまいそうで」とか、「私は、とうとう待ち続ける場所さえ奪われてしまった」などのような印象的なセリフがあまりない。
 鷹羽としては、せいぜい綾芽の「こんなおっかない女を忘れないでいてくれた物好きだから」くらいだと思う。

 さて、実はもう1つ前作を強く意識している部分がある。
 それはBGMだ。
 『雨』、『永遠』は前作の同名曲のアレンジだし、『追憶』は前作の『追想』のアレンジだ。
 このように、同じ曲を使うことで作品同士の繋がりを強く感じさせるのも、「2」を名乗る大きな理由になるだろう。
 これは、絶対狙ってやっているはずだ。

 あと、本編に関係ないお遊びとして、「うー!やー!たー!」や、『森崎君の足下にも及ばない』サッカーの技術の話とか、「貴島君のくせに生意気だぞ〜!」というどこぞのいじめっ子のネタなどがばらまかれている。
 特に「オリエンタルな味と香の」そば屋と「ポレポレという名前のカレー屋さん」というトクサツファンにしか分からないようなネタを仕込んでいたのは驚いた。
 トクサツと18禁ゲームの両方をやってる人口って、そんなに多いのだろうか?

 予備知識として前作をプレイしているという条件がつくが、なかなかいい感じに作ったパート2だと思う。
 でも、さすがにパート3はネタ的に辛いだろうなぁ。




(鷹羽飛鳥)


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