眠れる森のお姫さま〜Sleeping princess in forest〜

 現在(いま)とは違う時、地球(ここ)ではない場所…剣と魔法が存在する世界“アストゥーリア”。
 そんな世界の、とある国で起こった事件とは?

1.メーカー名:ペンギンワークス
2.ジャンル:ADV
3.ストーリー完成度:C
4.H度:E
5.オススメ度:B
6.攻略難易度:D
7.その他:主人公以外の男キャラの扱いが、モゥサイコー

(ストーリー)
 アストゥーリアにある小さな国“ファルエン”。
 その国の北にある“魔の森”に住むという、大魔女・カラクラム…
 その存在は、100年の昔この国の建国当初から、“国を守護せし者”として語られている。半ば伝説と仮した名前である。
 だが突如として、その魔女が災いをもたらした…。
 王女・エミーリアをさらい、ヴァルシア王に死の呪いをかけたのである。
 なぜ、“国を守護する”と呼ばれる者が牙をむいたのか?
 この行動の真意とは、いったいなんなのか…
 そしてカラクラム討伐のために、主人公・アドニス(変更可)を含めた5人が、その任を負うのであった。
 無事に姫を助け出し、王にかけられた呪いを解くことは出来るのであろうか…?


 さて、この“ペンギンワークス”というメーカーさん、九拾八式や一部では『猟奇の檻』シリーズを復活させたことで有名な所ですが、この作品はそんな雰囲気とは“ガラッ”と違いまして、俗に言う「剣と魔法とモンスターが登場する中世ヨーロッパ風ファンタジー」になっています。
 あとは、これを骨組みとして「多少のシリアス・多大なギャグ」をこめれば、本作品の肉付けは完成します。
 お話の進み方も…訳も分からずお姫様がさらわれ、途中で出てくるモンスターやお邪魔なキャラを駆逐していき、ようやくお姫様を救出する。しかし、そこには悲しい理由が隠されていて…メデタシメデタシ、とまぁ、こんな所が大まかな外装です。
 さらにシステムも、選択肢を選んでいくだけです。
 モンスターとの戦闘シーンでは、選択を間違えたなら「即刻死亡」してしまい、女の子たちと適度に付き合っていたのなら、最後に誰とも結ばれずに物語の概要だけで終わってしまう「通常エンド」になってしまいます。
 …そう、エンディングで雅史の顔が出てくるようなモノです

 少しくどくどと書きましたが、何が言いたいかというと「全体的にたいした事はやっていない。むしろ、何かの焼き増し的な物の方が多い」ということです。
 しかし、このゲームが「ありきたりでつまらない」かと言う訳ではなく、むしろ素直に楽しめる作りになっていると思います。
 理由としては、先ほど書いた「多少のシリアス・多大なギャグ」のギャグによる所が非常に大きい…八割くらいは占めているのではないでしょうか。
 それも“お約束”と呼ばれるようなギャグが殆んどです。
 一応、当初の目的である“王女の救出”には進んでいくんですが、「あんたら、本当に国を救う気ありますか?」と思うくらい話がそれていきます。
 それでも、それが鼻につかないと言いますか、もともとのキャラ設定とユーザーが感じるキャラのイメージを殆んど崩さずに、入れ替わり立ちかわり漫才していく姿は、なかなか上手くまとまっていると感じられました。
 ただ、シリアスや陵辱的なストーリーの方が好きな方には、拒否反応は多少強く出てくるのではないしょうか。
 それ程までに、ストーリーは漫才風に進んでいきます。

 ストーリーをもう一歩詳しく説明しますと、ヒロインは4人いますが、核となるお話は一本道です。
 お城で定例会議が開かれている中、突如としてカラクラムが現れ、王女をさらい王に呪いをかけてしまいます。
 それを助けるべく、王女の近衛騎士団長のイリーナを隊長に、騎士団からは主人公の他ヘンリーとエディーの2人、あと道案内役の魔法使い見習のアンディーの5人でエミーリア姫を助けに行くのですが…おおよそ最初の一人目の攻略時間は、2〜3時間でしょうか。
 はじめて5分くらいで、カラクラムの住む“北の森”に入って行き、少しするとやたら強力な魔物が出てきます。
 しかし、その魔物に一太刀も浴びせられずにお亡くなりになってしまうヘンリー、エディー、アンディーの御3人…魔物自体は、お邪魔なキャラである有名貴族のレイドリックとその配下のバルナーグが倒してしまうのですが(主人公に気を取られていたとはいえ、後ろから一撃で)、それにしても扱いが酷すぎやしませんか?
 たった30秒ほどであっけ無くやられていく男3人
 森の怖さを出したかったのか、男キャラはこれからの展開に邪魔だったんで早々に始末したかったのか……恐らく、というか間違いなく後者だろうな。
 まったくもって、何の役にも立ちません。
 本当に役に立ちません、えぇ“ロギンズ”と“メッシーナ”より更に役に立ちません(特にメッシーナ、おめぇ片腕でも戦え)。
 こいつらの存在価値は、いまだに見出せませんよ。
 …そんな訳で、いきなりイリーナとの2人パーティーになってしまいますが、これが主人公のハーレムへの最初の一歩になります。
 それまで「姫様の友人だったから近衛騎士団長になれた」や「女なのに、隊長になってしまって文句ある」と息巻いていたイリーナが丸くなって、森の途中では落ちこぼれお笑い魔法使いのメリアンを助け、カラクラムの住まいについたら彼女に仕えるメイドのルルと会って、エミーリア姫に会えたと思ったらいきなりチョコレートパフェを食べてるし…その過程で何度か魔物やらに襲われるんですけど……
「アドニスとイリーナって思いっきり強いじゃん!」
「ヘンリー、エディー、アンディー。君たちの死は全くもって無駄だったよ」
 先ほど書いたお邪魔者のレイドリックとバルナーグ。
 レイドリックのほうは、位が高いだけの嫌味な貴族なのですか、バルナーグは、マニュアルを見ると「国でも五指に入る実力者、命令されれば誰でも殺す」と書いてありながら、たった三撃で死んでしまいます
 “黒騎士”とまで言われておきながらその体たらく。
 どこかの島の物語の黒騎士とは、えらい違いです
 イリーナさん、貴女はヘンリー・エディー・アンディーの死に責任を感じておられたようですが、魔物が強力だったのも、レイドリック達が見てみぬふりをしていたのも、貴女自身の実戦経験の無さも関係ありません。
 今なら分かります。
 全て貴女と二人きりになりたかったアドニスの計算です。…ダメじゃん!
 ご冥福をお祈りします。

 だーいぶ話がそれましたね、元に戻すとしましょう。
 そんな理由から、2人になってしまうのですが、すぐに出来そこないの魔法使いが仲間に加わります。先ほども書いた通りメリアンといいます。
 おそらくここからカラクラムに会うまでが、このゲームの面白さが詰まっている所でしょうね(けっしてメインは3人が死ぬ所ではないヨ)。
 カラクラムの所まで行くと、仲間が傷ついたり悲しい真実が出てきたりします。
 あくまでこのゲームは、キャラ同士の掛け合い漫才が面白いので…。
 ただこのメリアンも、自分では「修行中の魔法使い」としか言わないで、「誰が」師匠かは言いません。
 危険の森の中で一人で水浴びをしていたり、必要以上にカラクラムのことを尊敬しているので、すぐに“ピンッ”と来てしまいます。
 どうやらこのシナリオライターさん、笑わすのは上手いんですけど、隠すのはあまり上手くないようです。
 ただ笑いの方も“元ネタがあってこそ”というのがいくつかあります。
 一例をあげますと…
 行きたい方向の安全な道を示してくれる“マジック磁石”なる物があります。
 これを使ってカラクラムの所まで行こうとするのですが、彼女の許可無く近づこうとしているので、突然壊れてしまいます。
 そこで…
アドニス「(マジック磁石にたいして)怒ってんのかな?」
イリーナ「物に意思があるわけ無いじゃない」
アドニス「いや、分からないぞ。古来から器物霊という物があってだな…」
イリーナ「霊ってゴーストのこと?」
アドニス「そう。決して、南斗━
イリーナ「はいはいはいはい!!」
…水鳥拳ですか、水鳥拳。みずどりですか♪
 「てめえらの血は何色だーーっ!!」いいですね〜、でもPS版はかっこ悪すぎるよ…。
 あのポリゴンは酷いでしょう。
 ハッ、いかんイカン、また話がそれた。
 まあそんな訳で(どんな訳だろう?)、紆余曲折を経てカラクラムの所につきます。
 ここから先は詳しく書くとネタバレになってしまうので、簡単に書きますと、姫とカラクラムの間にはとてつもない因縁が…といった感じで、終盤に向かっていきます。
 まあ、多少オチとしては弱かったかな? というのが印象でした。

(総評)
 クソゲー、バカゲー、デジコミでは無いんですが、あまりメインとしてやるゲームでもないです。
 よい息抜き、ちょっとした気分転換にといった内容でした。
 「何かメインで攻略しているゲームの傍らに」というのが一番しっくり来ます。
 話自体もほとんど一本道なストーリーなので、2週目からは文字送りが非常に役に立つのはありがたいです。が、ずっとボタンを押しておかないといけないので、この辺は勘弁して欲しいですね。
 その他のシステム面はいたって基本通りなので、分かりづらいことは無いので安心して遊ぶことが出来るでしょう。
 男性の声の「ON・OFF」機能を付けているので、がんばっている方なのでは…(あたりまえの機能かな〜)。
 さて問題を上げるのでしたら、やはり音声、ボイスですね。
 声のキャスティング自体には違和感は感じないのですが、声が割れてしまっているんです
 せっかく話が上手くまとまっているのに、せっかくフルボイスなのに、いかんせん喋っている言葉の音質が悪いのでちょっといただけないですね。
 えぇ、ここでも男どもの声の方が、割れが酷いんですよね。
 無性に頭に響いてくるといいますか、ホントに扱いが低いな。
 ただやっぱり、あった方がシックリ来るので何とかならなかったんでしょうかね?
 声付きで「うわぁー」とか「ぎゃー」とか言ってやられていく3人。
 もう、おなかいっぱい。
 あと何かあったかな…そうそう、ルルのエンディングはどうやら他の3人をクリアしないと攻略できないようなんで、それに気付くまで結構苦労したんですが、ルルとのエンディングでこのゲーム中一番の名言を発見しましたよ。
 ルルがアドニスの家に押しかけて「働かせて欲しい」と頼むのですが、そこでルルが言った一言…
「私はメイドです。誰かに尽くしたいんです。でも尽くす人は自分で決めます」
 ここまで言い切ったメイドさんは、そうは居ないでしょう。
 是非ともこれは“メイドさん好き”のみっちんさん(と、勝手に決め付けておいて)に送りたい言葉ですね。

 結構上手くまとまっている作品でありました。
 ストーリーが一本しかないのが寂しいといえばそうなのですが、その点をカバーするだけの内容はあったと思います。
 サウンド・グラフィック・ストーリーは良いバランスを保ってるなら、大きなハズレは殆んど無いっといったところでしょう。
 ただし、悪いバランスを保っていたなら、その効果は果てしなく…まっ、機会があればやることをお薦めできる一本でした。


(エルトリア)


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